本誌一覧

2017年2月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2017年2月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2017年2月号 目次

<2017年の政治潮流>

  • リベラリズムを脅かす「他者化」メカニズム
    ―― 2017年をとらえるもう一つの視点

    ジェフ・コルガン ブラウン大学准教授(政治学)

    雑誌掲載論文

    「他者」を特定することで、誰が仲間で、誰がそうでないかを区別する心理的ルールが育まれ、これによって国も社会も集団も連帯する。一方で、そうした他者がいなくなれば連帯は分裂し始める。例えば、ソビエトという他者が崩壊して脅威でなくなると、アメリカの政党は「内なる他者」に目を向けるようになった、共和党が毛嫌いする対象は「共産主義者」から「ワシントンのエリート」に置き換えられた。民主党は(性差、人種、民族、性的指向、障害などのアイデンティティを擁護する)「アイデンティティ政治を善か悪かの道徳的バトル」と位置づけた。そして、両党の他者化トレンドを自分の優位に結びつけたのがドナルド・トランプだった。問題は、多くの人が他者を区別する心理がどの程度リベラリズムやグローバル化の脅威となるかを認識していないことだ。忍び寄る非自由主義の脅威を食い止めるには、われわれは他者化の必要性が存在しないふりをするのではなく、その必要性にいかに対処するかを考える必要がある。

  • 民主的安定という かつてない時代の終わり
    ―― 非自由主義的代替モデルとトランプの台頭

    ヤシャ・モンク ハーバード大学講師(政治理論)

    雑誌掲載論文

    われわれは新しい時代へのシフト、つまり、この半世紀にわたってわれわれが当然視するようになった民主的安定という、かつてない時代の終わりの始まりを目の当たりにしているのかもしれない。これまでと違うのは民主主義に対する代替モデルが生まれていることだ。プーチンは、すでに他国が模倣できるような「非自由主義的な民主主義モデル」を確立している。つまり、リベラルな民主主義は、1930年代のファシズム、1950年代の共産主義のような、イデオロギー上のライバルに再び直面している。しかも、トランプ大統領の誕生で、この半世紀で初めて、世界でもっともパワフルな国が、リベラルな民主的価値の促進や世界のリベラルな民主国家を脅威から守ることにコミットしなくなる恐れがある。・・・

  • 統合で内破するヨーロッパ
    ―― ヨーロッパ統合とメンバー国の分裂

    エドアルド・カンパネッラ 金融エコノミスト

    雑誌掲載論文

    ヨーロッパ・プロジェクトの設計者たちは、単一市場を立ち上げて、共通通貨を導入し、アイデンティティを共有すれば、メンバー国の国家主権をトップダウンで弱めていけると考えていた。しかし、経済統合プロセスが、地域的なアイデンティティをかつてない形で刺激し、メンバー国の国家主権をボトムアップで脅かすようになるとは予想もしていなかった。現実には、このメカニズムによって、「ヨーロッパが統合を深めれば深めるほど、より多くのメンバー国が分裂しかねない」状況にある。統合やグローバル化から恩恵を手にできる国内地域とそうでない地域の格差を広げ、緊張をさらに高めてしまうからだ。国家分裂によって、主権をもつヨーロッパの主体が拡散していけば、EUはその調整コストのために膨大なコスト負担を強いられ、金融投資家はパニックに陥り、出口へと殺到する。ヨーロッパが分離独立をめぐる危険な先例を作り出さないように、より啓蒙的な方法を見出すべき理由はここにある。

<トランプのアメリカと中国>

  • グローバリズム・イデオロギーの終焉
    ―― 米中は何処へ向かうのか

    エリック・X・リ 上海在住ベンチャーキャピタリスト、政治学者

    雑誌掲載論文

    世界をグローバルスタンダードで統一しようとする「グローバリズム」のビジョンは、アメリカの中間層の多くにダメージを与えた。冷戦の勝利からわずか一世代のうちにアメリカの工業基盤は空洞化し、インフラは荒廃し、教育制度は崩壊し、社会契約は引き裂かれた。トランプ大統領の誕生は偶然ではない。これは、エリートたちが長期にわたって無視してきた米社会内部の構造的な変化が蓄積されてきたことの帰結に他ならない。中国の指導者たちはこの現実を適切にとらえ、対応する必要がある。対応を誤れば、貿易戦争、地政学的な対立、軍事衝突さえ起きるかもしれない。幸い、中国の考えは、主権国家を重視し、多国間ルールよりも二国間合意を重視するトランプのビジョンに基本的にうまく重なり合う。協調できるだけの叡知とプラグマティズムを米中がもっていれば、おそらくいまよりも安定した世界を保証するグローバル統治に関する新しいコンセンサスを形作れるはずだ。

  • トランプの保護主義路線に中国が報復すれば
    ―― 勝者なき重商主義と貿易戦争

    エドアルド・カンパネッラ ウニクレディト銀行ユーロ圏エコノミスト

    雑誌掲載論文

    「中国を為替操作国のリストに入れ、世界貿易機関(WTO)に提訴し、中国製品の輸入関税を引き上げる」とトランプはこれまで何度も繰り返してきた。彼は中国からの輸入を抑えることで公正な競争基盤を取り戻せば、アメリカ国内の製造業は復活すると主張しているが、それは妄想にすぎない。アメリカの製造業雇用はかつてなく減少しているが、一方で工業生産量が歴史的な高水準に達していることの意味合いを考える必要がある。アメリカのブルーカラー雇用の減少は、生産性を高めるテクノロジーの進歩によるものだ。しかも大統領の貿易上の権限は150日間にわたって上限15%の関税を課すことだけで、それ以上を望むのなら、議会の承認を得なければならない。しかも、議会の同意を確保しても、彼のやり方はWTOルールに抵触するだろう。結局、アメリカの労働者階級の雇用の改善はほとんど見込めないばかりか、世界経済に取り返しのつかないダメージを与える恐れがある。

  • 中国とアジアの新しい現実
    ―― アジアを求めるアジア

    エバン・A・ファイゲンバーム シカゴ大学ポールソン研究所副所長

    雑誌掲載論文

    世界でもっとも急速に成長している国々を取り込まなければ、国際システムは機能しない。中国やインドといった新興国をきちんと仲間に入れなければ、これらの国はよそに目を向けるだけだ。逆に言えば、今後ほとんどの国際機関で、新興国の発言力が強化されるにつれて、自由主義的な価値をもつヨーロッパ諸国の発言力は低下していく。但し、中国に現在の国際システムを全面的に覆すつもりはない。むしろ、現在のシステムの不備を補完しようと試みている。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)はその具体例だ。ワシントンはAIIBや一帯一路構想を、アメリカの試みにダメージを与える策略とみなすべきではない。むしろこの構想は、アジア諸国が投資や経済協力に関して、欧米に頼るのではなく、お互いを頼り始めた証拠だろう。その結果、アジアは2030年までに、アメリカが台頭する前に存在した統合された大陸、つまり「アジア太平洋」ではなく「アジア」になっていく可能性が高い。

  • アジア重視戦略を超えて
    ―― 米中関係の新しいロードマップ

    ケビン・ラッド 前オーストラリア首相

    Subscribers Only 公開論文

    中国の台頭、アメリカの財政・経済危機を前に、アジアにおける米主導の枠組みの耐久性が疑問視され始め、戦略的リスクヘッジ思考がアジア各国の首都に漂い始めていた。オバマ政権はアジア・リバランシング戦略を表明することで、アメリカの戦略的ファンダメンタルズを再確立したが、もはやそれだけで、平和を維持していけるわけではない。今後におけるアジアの中核課題は、米中間の大がかりな対立を回避し、地域的な繁栄を支える戦略的安定をいかに維持していくかにある。そのためには、米中が相手のことを完全に理解し、両国を対立へと向かわせかねない国内の流れ、そして地域的な力学をうまく制御していく必要がある。当然、米中サミットの制度化を含む、より奥深く制度化された米中関係が必要になる。そうしない限り、21世紀のアジアも、新興大国の台頭に伴う憂鬱な歴史的パターンに翻弄されることになる。

  • アジアにおけるアメリカと中国
    ―― 相互イメージと米中関係の未来

    ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

    Subscribers Only 公開論文

    中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

  • 中国の対外行動をいかに制御するか
    ―― 台頭する中国とアメリカの
    アジア外交

    トマス・J・クリステンセン プリンストン大学教授

    Subscribers Only 公開論文

    グローバル金融危機をアメリカや他の主要国よりもうまく凌いだ中国のエリートたちは、国際的な対応への自信を深め、中国人の多くも他国に譲るのはもう止めて、自国の利益をもっと積極的に主張すべきだと考えるようになった。ナショナリズムも台頭した。一方、危機を契機に、輸出市場に多くを依存する自国の経済モデルの持続可能性を北京は心配するようになった。別の言い方をすれば、中国は大国に台頭したが、「依然として、非常に多くの国内問題と不安を内に抱える途上国でもある」。この有毒な組み合わせが、対中関係を管理していくのを難しくしている。だが、米中が明確に衝突コースへと向かうと決まっているわけではない。アメリカの力を認識し、北京がどこまでアメリカや東アジアを含むアメリカの同盟国と協調するつもりがあるか、その境界を見極めれば、リスクを抑え込むことができるはずだ。

<ロシアと欧米の攻防>

  • 冷戦後のロシアの変節を辿る
    ―― 欧州との一体化から大ユーラシア構想へ

    ドミトリー・トレーニン カーネギー・モスクワセンター ディレクター

    雑誌掲載論文

    冷戦終結直後のロシアにとって、ヨーロッパはあこがれの対象であり、見習うべきモデルだった。だがいまやロシア政府はロシア文明とヨーロッパ文明とは明らかに別物だと考えている。伝統的にロシアに不信感をもっているイギリスが程なくEUを離れるなか、フランスで独自路線を重視するドゴール主義が復活し、ドイツがロシアに友好的な東方外交を復活させることをモスクワは期待している。そうなれば、ロシアとヨーロッパの関係は、経済領域を中心に雪解けを迎え、ロシアにとって大きな貿易パートナーとしてのEUが復活する。だが、そうした関係の改善も、短期間ながらも、ロシアがヨーロッパの一部になることを夢見た1990年代へと時計の針を巻き戻すことはあり得ない。プーチンが2010年まで口にしていた大ヨーロッパが出現することは当面あり得ない。モスクワでは、この構想はすでに中国、インド、日本、トルコ、そしてEUで構成される大ユーラシア(経済)構想に置き換えられている。

  • 政治的サイバー攻撃の次なるターゲット
    ―― 「コンプロマート」からヨーロッパを守るには

    ソーステン・ベナー 独グローバル公共政策研究所 共同設立者、ミルコ・ホーマン 同研究所プロジェクトマネジャー

    雑誌掲載論文

    2016年の米大統領選挙へのロシアの介入は、明らかにドナルド・トランプを利することを目的にしていた。2017年、ともに選挙を控えている独仏は、アメリカのケースを検証し、周到な対策をとってロシアのデジタル攻撃に備えるべきだ、現状ではフランスもドイツもそうした攻撃への備えができていない。ロシアの「コンプロマート(不名誉な情報)」オペレーションは必ずしも特定候補に有利な環境を作り出すことが目的ではない。むしろ、選挙プロセスを混乱させ、民主的政府の名声を汚すことで、民主的な規範や制度への信頼を失墜させ、(欧米が批判してきた)ロシアの道徳的基準と欧米のそれが大差ないことを示すことが狙いだ。欧米は長期にわたってロシアを包囲し、その基盤を揺るがそうとしてきたとモスクワは考えており、彼らにしてみれば、欧米の民主的制度に対する攻撃はその報復なのだ。・・・

  • 蘇るロシアの歴史的行動パターン
    ―― プライドと大きな野望、
    そして脆弱なパワーという現実

    スティーブン・コトキン プリンストン大学教授

    Subscribers Only 公開論文

    自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・

  • なぜプーチンは米大統領選挙に干渉したか
    ―― トランプ支援とロシアの国内政治

    グレゴリー・フェイファー 米ジャーナリスト

    Subscribers Only 公開論文

    ドナルド・トランプが(「自分はロシアのプーチン大統領を尊敬している」と語ったことで)、プーチンが見逃すはずもない絶好のチャンスが作り出された。互いに相手を気に入っている2人は、「アメリカの政治エスタブリッシュメントを切り崩したい」と考えている点でも立場を共有している。ロシアが外国をターゲットにしたサイバー攻撃を政治的武器として使い始めたのは少なくとも10年ほど前からだが、大統領選挙のさなかに特定の大統領候補を支援しようとアメリカにサイバー攻撃を試みたのは、今回が初めてだ。しかし、プーチンの目的はロシア国内にある。自分が作り上げた統治システムと80%以上の高い支持率を維持していく上で、間違いなく効き目があるのはアメリカに挑戦していることを国内でアピールすることだからだ。これほど確かな得点稼ぎの方法はそう多くない。プーチンにとって、選挙キャンペーンが展開されるアメリカで、自分が話題にされるだけで十分なのだ。

  • プーチンの戦略とヨーロッパの分裂

    マイケル・ブラウン ジョージワシントン大学エリオットスクール学院長

    Subscribers Only 公開論文

    NATOの東方拡大路線がロシアを刺激することはない。この欧米の認識は希望的観測にすぎなかった。欧米との明確な対立路線を選択したプーチンのロシア国内での支持率は高まっており、当面、状況は変化しないだろう。一方、ヨーロッパの安全保障は機能不全に陥っている。しかも、ヨーロッパはロシアからのエネルギー供給に依存している。このため、ロシアにどう対処するかをめぐってヨーロッパ諸国の足並みは乱れている。プーチンは「近い外国」におけるロシア系住民地域をロシアに編入してロシアの勢力圏を確立し、国内の政治的立場を支えるためにも欧米との対決状況を維持していくつもりだ。プーチンの野望、そして脅威の本質を過小評価するのは間違っている。欧米の指導者たちは、プーチンの最終的な戦略目的を見極めて、それに応じた行動をとる必要がある。

  • ユーラシアで進行する露欧中の戦略地政学
    ――突き崩されたヨーロッパモデルの優位

    アイバン・クラステフ ルーマニア自由戦略センター所長 マーク・レナード ヨーロッパ外交評議会理事

    Subscribers Only 公開論文

    ベルリンの壁崩壊以降、ヨーロッパはEUの拡大を通じて、軍事力よりも経済相互依存を、国境よりも人の自由な移動を重視する「ヨーロッパモデル」を重視するようになり、ロシアを含む域外の近隣国も最終的にはヨーロッパモデルを受け入れると考えるようになった。だが、2014年に起きたロシアのクリミア侵攻によってその前提は根底から覆された。しかも、ウクライナへの軍事援助をめぐって欧米はいまも合意できずにいる。一方でプーチンは、ハンガリーを含む一部のヨーロッパ諸国への影響力を強化し、ユーラシア経済連合構想でEUに対抗しようとしている。だが、ウクライナをめぐるロシアとの対立にばかり気をとられていると、思わぬ伏兵・中国に足をすくわれることになる。海と陸のシルクロード構想を通じて、ユーラシアを影響圏に組み込もうと試みる中国は、ウクライナ危機が進行するなか、すでに東ヨーロッパでのプレゼンスを高めることに成功している。

  • ロシアの政治・経済を支配するシロヴィキの実態
    ―― 連邦保安庁というロシアの新エリート層

    アンドレイ・ソルダトフ Agenture.Ruの共同設立者 アイリーナ・ボローガン Agenture.Ruの共同設立者

    Subscribers Only 公開論文

    ソビエト時代の国家保安委員会(KGB)は非常に大きな力を持つ組織だったが、それでも政治体制の枠内に置かれ、共産党がKGBをあらゆるレベルで監視していた。だが、KGBとは違って、今日のFSB(連邦保安庁)は、外からの監督も干渉も受けない。プーチン時代に入ってから2年後には、FSBはソビエト時代のKGBよりもパワフルで恐れられる存在となり、政治、外交、経済領域での大きな権限から利益を引き出していた。これは、かつてのKGBのオフィサーだったプーチンが、信頼できるのはFSBだけだと考え、この10年間で、国家機関、国営企業の数多くの要職にFSBの人材を任命した結果だった。メドベージェフ大統領が本気でロシアを近代国家に作り替えるつもりなら、まったく制御されていないFSBではなく、国の安全の擁護者を新たに作り上げる必要がある。

  • マリーヌ・ルペンとの対話
    ―― フランスの文化、独立と自由を取り戻す

    マリーヌ・ルペン フランス国民戦線党首

    Subscribers Only 公開論文

    「フランスは、欧州連合(EU)の一部であるときより、独立した国家だったときの方がパワフルだったと私は考えている。そのパワーを再発見することを望んでいる。EUは段階的に欧州ソビエト連邦のような枠組みへと姿を変えつつある。EUがすべてを決め、見解を押しつけ、民主的プロセスを閉ざしている。・・・メルケルは次第に自分がEUの指導者だという感覚をもつようになり、その見方をわれわれに押しつけるようになった。・・・私は反メルケルの立場をとっている。テロについては、移民の流れを食い止める必要があるし、特に国籍取得の出生地主義を止める必要がある。出生地主義以外に何の基準もないために、この国で生まれた者には無条件で国籍を与えている。われわれはテロ組織と関係している二重国籍の人物から国籍を取り上げるべきだろう。・・・・」 (聞き手 スチュアート・レイド Deputy Managing Editor)

変化の時を迎えた東アジア

  • 中華民国という名称を捨て、 台湾アイデンティティの宣言を
    ―― 「一つの中国」のジレンマを解く

    サルバトーレ・バボネス シドニー大学准教授

    雑誌掲載論文

    北京が台湾を取り戻すことなどあり得ない。台湾を中国の一つの省とみなす神話を永続化させるのは無意味であり、いまや台湾は普通の国家へ歩み出すタイミングだろう。そのためには、中華民国のかつての主張を前提とする南シナ海における領有権の主張を撤回し、「台湾が中華民国である」という虚構を捨てる必要がある。それがレトリックだとしても「中国大陸での一部の権利を有している」という主張を捨て去ることだ。公式に独立宣言を出す必要は必ずしもない。中華民国というこの島の名称を台湾へ公式に変えるべきだろう。これなら、独立宣言でなく、アイデンティティの宣言になる。もはや中華民国という(中国を想起させる)名称を用いない台湾なら、アメリカ、そして世界各国は、現在のパレスチナがそうであるように、今後より積極的に台湾と交流していけるようになる。

  • 日米自由貿易協定の交渉を
    ―― 日米関係の戦略基盤を強化するには

    マイケル・オースリン アメリカン・エンタープライズ研究所 日本研究担当ディレクター

    雑誌掲載論文

    トランプは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)という複雑な多国間貿易協定を批判しつつも、「私なら必要になれば再交渉できるような、透明性があり、よりシンプルで合理化されたアメリカの労働者にダメージを与えない二国間合意をまとめる」と約束している。(多国間貿易合意であるTPPへの反対をもって)トランプのことを「自由貿易に反対する重商主義者だ」と考える評論家は、彼が現実には自由貿易政策を模索するかもしれないことを無視している。(多国間貿易合意は拒絶しても)自由貿易体制を維持していくことに本気なのであれば、トランプはまず日本と自由貿易合意を交渉すべきだろう。日米二国間自由貿易合意の原型はすでにTPPによって描かれているからだ。日米の安全保障面での協調はすでに深化しており、二国間自由貿易協定交渉を通じて関係をさらに固めていけば、日米関係の戦略基盤をさらに強化できるだろう。

  • 世界の現実に気づきだした北朝鮮民衆
    ―― 流入するデジタル情報と平壌の闘い

    ペク・ジウン ハーバード大学 ベルファーセンター・フェロー

    雑誌掲載論文

    世界でも指折りの外交交渉者が数十年にわたって金日成、金正日、そして金正恩を取り込んで魅了するか、あるいは(平壌の立場の見直しを)強制しようと手を尽くしてきたが、その全てがうまくいかず、クーデターを促す秘密工作も失敗した。核兵器の開発に成功しているために、国際社会が北朝鮮に対する体制変革路線をとり、大規模な武力行使を試みるのも難しくなった。だが一方で、北朝鮮民衆が国内外の情勢について、より正確な情報を入手するようになるにつれて、「国に裏切られた」という思いが生まれ、政府に対する不信感が広がっている。北朝鮮は内側から変わるしかない。外国の情報や文化を伝えるデジタルコンテンツの流通は、それを推進するもっとも持続可能かつ費用対効果の高い方法だろう。

  • 台湾は主権国家だ

    李 登輝/中華民国総統

    Subscribers Only 公開論文

    「中国という国は、中華人民共和国が自らの存在を宣言した一九四九年に分裂している」。したがって、「台湾の動きが国の分裂を引き起こすことはあり得ず、台湾が独立宣言をすることに中国側が警告を発する必要などない」。そもそも中華民国は一九一二年の建国以来、主権を持つ独立国家だからである。海峡間関係は、いまや「特別な国家間関係」にほかならない。必要とされているのは、台湾は国ではなく、「反抗的な一省」にすぎないとする、中国がふりかざす「虚構」を捨て去り、民主国家としての台湾の「現実」を踏まえた、海峡を隔てた国と国の「平等な立場」に立つ話し合いである。そのためにも、国際コミュニティーと海外のメディアは、これまでの「虚構」に振り回されるのではなく、台湾の「現実」を直視すべきであろう。

  • 日本の新しいリアリズム
    ―― 安倍首相の戦略ビジョンを検証する

    マイケル・オースリン アメリカン・エンタープライズ研究所 レジデントスカラー、日本研究ディレクター

    Subscribers Only 公開論文

    日本の地域的役割の強化を目指し、民主国家との連携強化を試みるために、安全保障行動の制約の一部を取り払おうとする安倍首相の現実主義的な外交・安全保障路線は、北朝鮮と中国の脅威という地域環境からみても、正しい路線だ。たしかに論争は存在する。市民の多くが平和主義を求める一方で、識者たちは日本の安全保障に対する脅威を憂慮している。しかし、そうした社会的緊張には、孤立主義や介入主義といった極端な方向に日本が進むことを防ぐ効果がある。超国家主義が日本を近隣諸国に対する侵略と戦争へと向かわせた1930年代と違って、現在の日本は、アジアを豊かさと安定へと導く「リベラルなシステム」を強化し、擁護していくために、古い制約を解体しつつある。再出現した権威主義国家がグローバルな平和を脅かすような世界では、日本の新しいリアリズムが太平洋地域の今後10年を形作るのに貢献し、アジアを特定の一国が支配するような事態にならないことを保証する助けになるはずだ。

  • 日米同盟の古くて新しい試金石
    ――中国の脅威をいかに抑え込むか

    ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授

    Subscribers Only 公開論文

    「日本が管轄する地域を防衛する」とワシントンが表明するだけでは、日米が直面する戦略的中核問題には対処できない。中国はこれまで通り日本をいたぶり、挑発するためのサラミ戦術を続行できる。ワシントンでは中国による日本の領空や領海の侵犯は厄介な行動とみなされている程度だが、東京では主権の侵害として深刻に受け止められている。このために、「アメリカはいざというときに守ってくれないかもしれない」という懸念が払拭されず、日米同盟は揺らいでいる。重要なのは、同盟関係を強化する一方で、同盟の分断を試みる中国の試みを押し返すことだ。そのためには、重要な利益とそうでない利益を区別する必要がある。尖閣をめぐる重要な利益とそうでない利益をいかに切り分けるか。そのヒントは冷戦期のベルリン危機へのケネディ政権の対応に求めることができる。・・・・

  • 北朝鮮の崩壊を恐れるな
    ―― リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ

    スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)上席分析官

    Subscribers Only 公開論文

    朝鮮半島の統一が韓国を経済的・社会的に押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れがたいリスクを作り出すわけでもない。たしかに、朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うだろう。例えば、北の崩壊シナリオとしてもっとも現実味があるのは北朝鮮が内破し、体制が崩れていくことで、この場合、核兵器の安全な管理をいかに確保し、人道的悲劇を回避して大規模な難民が発生しないようにすることが大きな課題となる。だからといって、半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている。崩壊を経た半島統一の最大の恩恵は、北東アジアにおける主要な不安定化要因が消失することだが、特に韓国は大きな経済的恩恵を手にできる。これまで各国は、平壌が挑発的行動を前にしても、北朝鮮を不安定化させることを懸念して、経済制裁の強化や、対抗策をとることを躊躇ってきたが、今後はそのような配慮をすべきではない。統一の恩恵はリスクやコストを遙かに上回るのだから。

  • 北朝鮮を変化させるには
    ――内からの変化を促す交流を

    アンドレイ・ランコフ 韓国国民大学歴史学准教授

    Subscribers Only 公開論文

    交渉に入ることに合意し、段階的な譲歩に応じることで国際社会から援助を引き出し、その後、交渉から離脱して挑発行動を取り、より大きな見返りが期待できる状態になってから、再び交渉テーブルに戻る。北朝鮮の指導者は15年にわたってこのやり方を繰り返してきた。・・・援助なしでは生きていけない北朝鮮が援助を引き出すツールである核やミサイル開発プログラムを放棄することはあり得ない。認識すべきは、外からの圧力には効果がなく、変化は北朝鮮の内側からしか起こりえないということだ。必要なのは、アメリカと同盟国が、北朝鮮民衆に対して自分たちの生活とは違う、非常に魅力的な代替策が外の世界に存在するのを教えていくことだ。

中東の試金石

  • サルマン副皇太子とサウジの未来
    ―― 改革への長く険しい道のり

    ビラル・Y・サーブ アトランティック・カウンシル 国際安全保障センター

    雑誌掲載論文

    現在のサウジの経済システムが持続不可能であることは、サウジ政府内で堅固なコンセンサスがある。それでも(大きな権限を託された)サルマン副皇太子が経済、文化領域であまりに急速な変革を進めているために、「旧秩序が覆され、サウジの社会契約が揺るがされている」と懸念されている。しかしこのリスクは、サウジが直面する社会・経済的課題の大きさゆえのことだ。サウジが先に進むには大変革が必要だし、そうした変革は必然的にある程度の不安定化を伴う。人々が今後に不安を感じているのは無理もないが、本気で変革を試みる以外に道はない。石油経済からの離脱と経済の多様化に向けて経済を再建するだけでない。サルマンは、内に不安を募らせる大衆と批判派を抱え、イエメンでコストのかかる紛争を戦い、イランの地域的台頭に目配りし、ますます暴力的になっている近隣地域に対処しつつ、経済改革に取り組まなければならない。

  • 原油供給とアメリカの軍事戦略
    ―― ペルシャ湾岸からの米軍撤退を

    チャールズ・L・グレーザー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学)、 ローズマリー・A・ケラニック ウィリアムズ・カレッジ准教授(政治学)

    雑誌掲載論文

    湾岸石油の供給混乱を阻止するために必要なコストは、いまや軍事関与によって得られる恩恵を上回りつつある。冷戦期には国家安全保障と経済的繁栄の二つがペルシャ湾岸に関与する目的だったが、いまや重視されているのは経済的繁栄だけだ。しかもほとんどのアメリカ人が経済利益のために米軍をリスクにさらすことに否定的になり、ペルシャ湾岸への軍事介入の敷居は高くなっている。むしろ、湾岸石油の大規模な供給混乱の衝撃を緩和する非軍事的クッションに投資して、軍事コミットメントをやめるための選択肢を作り出すべきではないか。実際、戦略備蓄を増大させれば、アメリカは(ホルムズ海峡)封鎖その他で市場に供給されなくなった原油を(当面は)代替できる。消費を抑える燃費基準の引き上げも、ガソリン税の引き上げも、供給の乱れの衝撃を小さくする助けになる。短期的にはともかく、最終的には湾岸への軍事関与を打ち切るための措置をとる必要がある。

  • CFR Events
    流動化するサウジ
    ―― 原油、イラン、国内の不安定化

    バーナード・ハイカル プリンストン大学教授(近東研究)、カレン・エリオット・ハウス 前ウォールストリートジャーナル紙発行人

    Subscribers Only 公開論文

    サウジの社会契約は石油の富による繁栄を前提にしており、(原油安が続き)民衆が望むレベルの繁栄を提供できなくなれば、政府は政治的に非常に困難な事態に直面する。原油以外の歳入源(経済の多角化)について、さまざまな議論が行われているが、これまでうまくいったことはない。・・・リヤドは、歳出を削減して民衆の反発を買うよりも、非石油部門の歳入を増やそうとしている。これまで膨大な浪費を続けた国だけに、節約で一定の資金を手許に残せるが、最終的には、痛みを伴う是正策が必要になるだろう。(K・E・ハウス)

    サウジは、イランのことをイスラム国以上に深刻な脅威とみなしている。イランは非国家アクターを操り、イラクからシリア、レバノン、パレスチナ、イエメン、おそらくはバーレーン、さらには、サウジ東部のシーア派を含む、サウジ周辺の全地域(と国内の一部)で影響力を拡大しているからだ。リヤドは、地域的、あるいは中東全域の地政学的優位をめぐって、イランとのゼロサムの関係にあるとみている。(B・ハイカル)

  • サウジとイランの終わりなき抗争
    ―― 対立が終わらない四つの理由

    アーロン・デビッド・ミラー ウッドロー・ウィルソンセンター 副会長 (ニュー・イニシアティブ担当)、ジェイソン・ブロッドスキー  ウッドロー・ウィルソンセンター (リサーチアソシエーツ)

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    スンニ派の盟主、サウジは追い込まれていると感じている。原油価格は低下し、財政赤字が急激に増えている。イエメンのフーシ派に対する空爆コストも肥大化し、イランが地域的に台頭している。サウジは、複数の嵐に同時に襲われる「パーフェクトストーム」に直面している。一方、シーア派のイランは核合意によって経済制裁が解除された結果、今後、数十億ドル規模の利益を確保し、新たに国際社会での正統性も手に入れることになる。しかもテヘランは、シリアのアサド政権、イラク内のイラン寄りのシーア派勢力、レバノンのヒズボラを支援することで、地域的影響力とパワーを拡大している。シリア、イラクという中東紛争の舞台で、サウジとイランは代理戦争を展開し、いまや宗派対立の様相がますます鮮明になっている。このライバル抗争は当面終わることはない。その理由は四つある。・・・

  • サウジの男性後見システムを撤廃せよ
    ―― 女性と経済を抑え込む後見システムとは

    ハラ・アルドサリ アラブ湾岸研究所客員フェロー

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    サウジでは女性が自分で何かを選択できることはほとんどなく、常に男性後見人の判断に従わなくてはならない。女性が自分の人生を管理できるとすれば、後見人がその女性の意思を尊重してくれる場合だけだ。女子校の関係者は緊急時でも救急車や消防士を敷地内に入れることはできない。刑務所も、男性後見人の同意がなければ女性を釈放できない。後見人制度はサウジ経済にも悪影響を与えている。女性が労働力に参入しない限り、今後、サウジの家計所得は今後20%減少し、一方で女性の労働が認められれば60%増加すると予測されている。政府は労働法を見直して、後見人の許可がなくても、女性が働けるようにしたが、法改正が徹底されていないために、ほとんどの企業は後見人の同意なしで女性を雇うことはない。・・・・

  • 漂流する米・サウジ関係

    F・グレゴリー・ゴース テキサスA&M大学 行政大学院教授(国際関係)

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    戦後のアメリカとサウジの関係を支えてきた複数の支柱に亀裂が入り始めている。両国を「反ソ」で結束させた冷戦はとうの昔に終わっている。イラクのサダム・フセインが打倒されたことでペルシャ湾岸諸国への軍事的脅威も消失した。しかも、米国内のシェールオイルの増産によって、(中東石油への関心は相対的に薄れ) エネルギー自給という夢が再び取りざたされている。一方サウジは中東全域からイランの影響力を排除することを最優先課題に据え、中東政治で起きることすべてを、イランの勢力拡大というレンズで捉えている。当然、アメリカが重視するイスラム国対策にも力を入れようとしない。すでに「サウジとの同盟関係に価値はあるのか」という声もワシントンでは聞かれる。しかし中東が近い将来、安定化する見込みがない以上、リヤドとの緊密な関係を維持することで得られる恩恵を無視するのは愚かというしかない。・・・

  • シェールガス資源が塗り替える世界の地政学地図

    アビエザー・タッカー テキサス大学オースチン校 エネルギー研究所アシスタントディレクター

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    非在来型(シェールガス)資源の発見によって世界のエネルギー供給は大きく拡大し、近い将来に、供給が需要を上回るようになる。どうみても、世界のエネルギー価格は今後低下していく。すでに、アメリカの天然ガス価格は、2008年当時と比べて4分の1へと低下し、これが世界的な波及効果を持ち始めている。新技術が可能にしたシェールガス資源の開発によって、いまや経済・貿易領域での国家間の力関係も、エネルギーをめぐる地政学も変化の時を迎えている。これまでよりもはるかに安いエネルギー価格で規定される新しい世界では、石油や天然ガス資源が地政学秩序に与える影響も低下していく。すでにエネルギー供給国・ロシアと消費地域であるヨーロッパの関係は変化しつつあり、ロシアと中国の関係も今後変化していくだろう。この地政学環境の変化によって、資源の富に依存してきた独裁者の命運もいずれ尽きることになるかもしれない。

  • シェール革命の地政学的衝撃

    ロバート・ブラックウィル 米外交問題評議会シニアフェロー ミーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール教授

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    シェール革命によって、世界のエネルギー生産の中枢はユーラシア(ロシア)や中東から他の地域へとシフトし始めている。このグローバル規模での生産と供給のシフトは何を引き起こすか。おそらくエネルギー価格を大きく引き下げる。エネルギー輸出に歳入の多くを依存するロシアと中東産油国は、エネルギー価格の低下によって苦しい財政状況に追い込まれ、政治的安定が揺るがされるかもしれない。一方、供給の拡大と多角化によって世界のエネルギー輸入国は大きな恩恵を手にする。日本や韓国のような東アジアの同盟諸国は、北米からより多くのエネルギー資源を直接輸入し、安定した供給を確保し、エネルギー安全保障を確立するだろう。アメリカの新たなエネルギー資源を、非友好的なエネルギー供給国によって同盟国やパートナーがいたぶられるのを阻止するために用いることもできる。今後、グローバルなエネルギーの流れは大きく変化し、経済関係だけでなく、地政学環境も変化していく。・・・

  • 石油シーレーンの安全確保と海軍力

    デニス・C・ブレア 元米太平洋軍司令官 、ケネス・リーバーサル ミシガン大学政治学教授

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    ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

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