2025.12.29 Mon
<1月号プレビュー>
同盟諸国そして日本のジレンマ
―― 瀬戸際の軍事・経済安全保障
同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。・・・(ケリー、ポアスト)
ワシントンは核不拡散政策の厳格な順守を見直し、カナダ、ドイツ、日本という少数の同盟国による核武装をむしろ奨励すべきだろう。この3カ国は、合理的な政策決定と国内の安定という面で実績があるし、アメリカとその同盟国に大きな恩恵をもたらしてきた戦後秩序の再建に貢献できる。(グレーフラート、レイモンド)
信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。(オニール)
米同盟諸国のジレンマ
―― リスクヘッジを模索せざるを得ない
2026年1月号 ロバート・E・ケリー 釜山国立大学 教授(政治学) ポール・ポアスト シカゴ大学 准教授(政治学)
同盟諸国はトランプのやり方に耐え、持ちこたえているようにみえる。しかし、これまで以上に状況を深く憂慮している。アメリカによる安全の保証を確信できなければ、どうなるだろうか。同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。ワシントンの支援を期待しつつも、同盟諸国は、問題発生時にアメリカがいない事態に備え、リスクヘッジを始めている。
同盟国の核武装で戦後秩序の再建を
―― 独日加の核武装シナリオ
2026年1月号 モーリッツ・S・グレーフラート ユーラシア・グループ 国際問題研究所 フェロー マーク・A・レイモンド オクラホマ大学 准教授(国際関係論)
ワシントンは核不拡散政策の厳格な順守を見直し、カナダ、ドイツ、日本という少数の同盟国による核武装をむしろ奨励すべきだろう。この3カ国は、合理的な政策決定と国内の安定という面で実績があるし、アメリカとその同盟国に大きな恩恵をもたらしてきた戦後秩序の再建に貢献できる。ワシントンにとって、このような「選択的な核拡散」は、パートナーが地域防衛でより大きな役割を担い、アメリカへの軍事依存を減らすことも可能にする。これらの同盟諸国にとって、核武装は中ロなどの地域的敵対勢力の脅威だけでなく、同盟関係への関与を弱めるアメリカの戦略見直しに対する信頼できる防護策となる。
関税が揺るがした同盟関係
―― サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退
2026年1月号 シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)
必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。


