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2026.3.17 Tue
トランプが開けたパンドラの箱
―― イラン、イスラエル、湾岸諸国
今回の「壮絶な怒り」作戦は、パンドラの箱を開けてしまった。そこには、達成可能な明確な目標もなければ、エスカレーションを抑えるための道筋もない。空爆でインフラを破壊し、政府の能力を弱体化させ、指導層を排除できるかもしれないが、まとまりのある政治的代替策を準備することはできない。(バエズ)
現実には、中東でイスラエルのリーダーシップを望む者など誰もいない。むしろ、地域諸国はイスラエルの暴走するパワーを警戒し、脅威とみなし始めている。民衆蜂起の再燃を恐れる湾岸の指導者たちは、アラブ民衆のイスラエルに対する怒りを十分に感じとり、それを政策に織り込んでいる。(リンチ)
国境を越えたイデオロギーに代わる国内での役割と経済的機会を提供しない限り、中東の安定は再び脅かされる。生き残るためにシーア派が国境を越えた宗派的な共同体政治を模索すれば、広範な地域が不安定化する。シーア派が新しい中東秩序に利害をみいだせなければ、イラン封じ込めも難しくなる。(ファンタッピー、ナスル)
トランプが開けたパンドラの箱
―― 目標もエスカレーション回避策もない(3/1/2026)
2026年4月号 アリ・バエズ 国際危機グループ(ICG) イラン・プロジェクト ディレクター
今回の「壮絶な怒り」作戦は、パンドラの箱を開けてしまった。そこには、達成可能な明確な目標もなければ、エスカレーションを抑えるための道筋もない。空爆でインフラを破壊し、政府の能力を弱体化させ、指導層を排除できるかもしれないが、まとまりのある政治的代替策を準備することはできない。しかも、イランは革命防衛隊、情報機関、治安部隊といった組織を維持しているし、これらはまさにこのような事態に備えて整備されてきた。アメリカの賭けが「空爆で上からイラン政府を叩き、イラン民衆が地上で政府を倒す」ということなら、その賭けには先例とできるような明確な歴史モデルは存在しない。
イスラエルの覇権幻想
―― 破壊では平和は築けない
2025年12月号 マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学、国際政治)
中東の地域的リーダーシップは軍事的優位だけでは得られない。他の地域大国の一定の合意や協力が必要になることをイスラエルは理解すべきだ。現実には、中東でイスラエルのリーダーシップを望む者など誰もいない。むしろ、地域諸国はイスラエルの暴走するパワーを警戒し、脅威とみなし始めている。民衆蜂起の再燃を恐れる湾岸の指導者たちは、アラブ民衆のイスラエルに対する怒りを十分に感じとり、それを政策に織り込んでいる。これまで中東における軍事的拡張主義やガザを破壊する行動をとっても、大きな代価を支払わずに済んできたために、イスラエルは今後も問題にはならないという感覚をもっているが、それは大きな間違いだ。
中東の安定とシーア派の未来
―― シーア派の国家への統合を
2026年3月号 マリア・ファンタッピー イタリア国際問題研究所 アソシエートフェロー バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院 教授(国際問題・中東研究)
軍事的には、抵抗の枢軸はいまや粉砕されている。この枢軸を設計したイランの戦略家たちは高齢化し、アラブ世界のパートナーの多くは、イスラエルの攻撃で殺害されている。だが、抵抗の枢軸を支えてきたイラク、レバノン、シリアに残されたシーア派コミュニティに、それぞれの国で政治的未来、つまり、国境を越えたイデオロギーに代わる国内での役割と経済的機会を提供しない限り、中東の安定は再び脅かされる。生き残るためにシーア派が国境を越えた宗派的な共同体政治を模索すれば、広範な地域が不安定化する。シーア派が新しい中東秩序に利害をみいだせなければ、イラン封じ込めも難しくなる。


