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アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

The Future of U.S.-Chinese Relations

Henry A. Kissinger 元米国務長官で、現在はキッシンジャー・アソシエーツ会長。このエッセーは、近く出版予定の『中国について』の後書きからの抜粋。

2012年3月号掲載論文

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

  • 「権威主義国家」と「手負いの超大国」の関係
  • 中国による軍事覇権か対中包囲網か
  • 「新しい中国」にどう接していくか
  • コミュニティの形成か紛争か
  • レトリックのリスク

<「権威主義国家」と「手負いの超大国」の関係>

訪米最終日の2011年1月19日、胡錦濤国家主席はオバマ大統領とともに共同宣言を発表し、両国は「前向きで協調を重視する包括的な米中関係」へのコミットメントを共有していると表明した。アメリカは「成功を収めて繁栄する力強い中国が世界でより大きな役割を果たすことを歓迎し」、中国は「地域的な平和と安定そして繁栄に貢献するアジア太平洋国家としてのアメリカを歓迎する」。二人はこう表明することで、互いに相手がもっとも気にしている部分の立場を明らかにした。

以来、米中両国政府はこの目的の実現に取り組んでいる。双方の高官たちが相手国を訪問し、主要な戦略、経済問題を協議する枠組みも制度化された。軍部間の交流も再開され、重要なコミュニケーションチャンネルも開かれている。一方、非公式のトラック2レベルでも、米中関係の進化が模索されている。

だが、協調を深める一方で、対立と論争も生じている。両国における数多くの集団が、「自国の優位を求める米中抗争が起きるのは避けられず、すでにその局面に突入している」とみている。この視点からみれば「米中協調は時代遅れであり、ナイーブ」ですらある。・・・

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