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論文データベース(最新論文順)

ビンラディン後の アルカイダとジハード主義

2014年11月号

ブリンジャー・リア ノルウェー防衛研究所(FFI)リサーチフェロー

オサマ・ビンラディンのことを、作戦には関与しないシンボリックな指導者だとみなす考えは間違っているし、彼のことをグローバルなジハード主義の精神的支柱とみなすのも間違っている。たしかに、アルカイダ内においてビンラディンは首長、最高司令官として尊敬され、その命令にメンバーたちは従った。だが、殺害される前から、ビンラディンの権威とリーダーシップはすでに失墜しつつあった。アルカイダのテロリストのなかには「ビンラディンは権威主義的だし、イスラム教が求める「協議」の精神を忘れている」と公然と批判する者さえいた。ビンラディンはレトリックを弄するのはうまいが、傑出した思想的ビジョンの持ち主ではなかった。だからこそ、今後、他の指導者たちがビンラディンの役割をスムーズに担っていくと考えてもおかしくはない。・・・・

Foreign Affairs Update
日本の大災害で露呈した
グローバル・サプライチェーンの大きな
弱点

2011年5月 

マーク・レビンソン / 前米外交問題評議会シニア・フェロー (国際ビジネス担当)

日本での地震とツナミ災害のように、グローバル・サプライチェーンのどこかで予期せぬ事態が起きれば、ここで流れが遮断され、遠く離れたサプライチェーンの次のポイントへの供給が途絶えてしまう。世界でその部品を生産しているのが、予期せぬ事態に遭遇した地域の企業だけだったとすれば、話はさらに複雑になる。最終製品を市場に送り出す企業も身動きがとれなくなる。多くの人は、これまでにシリコンウエハーやメモリチップを生産してきた工場が日本での災害によって機能停止に追い込まれていることに注目しているが、他にも、供給が不足している一般には認識されていない重要部品は数多くある。

CFRミーティング
モバイル革命のこれまでとこれから

2011年5月号

●スピーカー
ランドール・L・スティーブンソン
AT&T最高経営責任者
●プレイサイダー
クリスティア・フリーランド
ロイターニュース、 グローバルエディタ-

「6~7年前まで、多くの人は私同様に、机の上にパソコンを置いていたはずだ。あなたの秘書の机の上にもPCがあった。出張に出かけるときはノートパソコンをバッグに入れ、ポケットには携帯電話を、ズボンの後ろポケットにはブラックベリーを入れていた。そしてスマートフォンが登場する。今では、これまでの複数のデバイスに分散していたさまざまな機能が(スマートフォンという)一つのデバイスに統合されている。さらに重要なのは、これらのデバイスのコンテンツを同期化できるようになったことだ。連絡先、Eメール、カレンダーを連動させられるようになった。ここからどこへいくのか。・・・・これから先に起きるのは、まさしく今から6~7年前に起きたことだ。再び、デバイスの多様化が始まる。・・・・」(R・L・スティーブンソン)

3・11は日本をどう変えていくか

2011年5月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長

日本が復興への道をたどり始める第一局面までは現政権が職責を維持するのかもしれない。だがこの局面を過ぎれば、日本の市民は指導者に対してこれまでとは異なるレベルの政治手腕を求めるようになるだろう。民主党、自民党を問わず、若手の閣僚や政治家たちは、地震とツナミ災害後、決意を示すとともにバランス感覚を発揮し、従来の政治家とは一線を画す行動をみせ始めている。歴史的にみても、日本では危機に直面すると、狼狽している長老政治家を尻目に若手が大胆な行動をみせる下克上によって時代が形作られてきた。いまや日本は、そのような時代を再び迎えつつある。・・・災害に襲われ苦難のなかにあるとはいえ、高い志をもつ若手の政治家世代が自分たちの出番を待っていることを忘れてはならない。

CFRアップデート
復興を越えた日本経済の再設計を

2011年5月号

ブライアン・P・クレイン 元米外交問題評議会国際関係フェロー
デビッド・S・アブラハム 米外交問題評議会国際関係フェロー

かなりの大きな余震が依然として続いているし、被災した数十万の人々が落ち着いた生活を取り戻すには数年の時間がかかるだろう。原発危機もまだ管理できるようになったとはいえない。だが、再建・復興も進められている。経済予測も、ゆっくりとだが地震前の数字へと戻りつつある。だが、必要なのは「復興・再建を越えた取り組み」であることを認識しなければならない。今回の危機を前に、政府は一刻も早く再建・復興を遂げ、かつてのような状態に被災地を戻すことを考えているかもしれない。だが、単に再建・復興を目指すのではなく、今回の危機を、日本経済を再設計する機会とすれば、今後の日本はより大きな繁栄を手にできるようになる。

エジプト、リビア、チュニジア、バーレーンなど、外国の原子力企業となんらかの合意を交わしていた中東・北アフリカ諸国政府は、政治的混乱のなかですでに倒れるか、政権の存続を脅かすような国内的混乱に直面している。現状では比較的安定しているヨルダンやサウジアラビアなどでもデモは起きているし、同様に、将来において、国内が極度の混乱に陥っていくリスクは存在する。・・・中東・北アフリカ情勢が混乱し、しかも、フクシマ原発危機が収束していないこともあって、ワシントンは、数億ドル規模の資金をもたらすとはいえ、北アフリカ・中東諸国の原子力施設建設契約にしだいに否定的になっている。実際、今後の紛争において、原子力施設が後方攪乱の対象にされれば、これまでの紛争の象徴とみなされてきた「炎上する油田の煙」が、「市民生活の拠点である都市、水や食糧の供給を汚染する放射性降下物」にとって代わられていくかもしれない。・・・

米ポピュリズムの歴史と今日的意味合い
―― ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交

2011年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード アメリカン・インタレスト誌コントリビューティング・エディター

ポピュリストの政治的エネルギーが高まる一方で、主流派メディア、外交エスタブリッシュメントに始まり、金融企業、一般企業の経営陣、そして政府にいたるまでの確立されたアメリカの組織への信頼が失墜しつつある。現在のポピュリスト運動の代名詞であるティーパーティー運動は、彼らが「憶測を間違え、腐敗している」とみなす各分野の専門家に対する反乱とみなせる。しかも、2010年3月にアメリカで実施された世論調査では、回答者の37%がティーパーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感を示していることを意味する。アメリカの政策決定者、そして外国政府の高官たちは、アメリカ政治における主要な勢力であるポピュリストを十分に理解せずして、もはや米外交に関する適切な判断を下すことができなくなっていることを認識する必要がある。

中東における2011年革命のルーツと行方
―― スルタン体制の終焉

2011年5月号

ジャック・A・ゴールドストーン ジョージメイソン大学教授

ムバラク、ベンアリのような中東におけるスルタン主義の独裁者は、個人の権力と権限を維持していくことにしか関心はない。従順な支持者を主要ポストに据え、制度の頭越しに政治を行う。水面下で富を蓄え、この資金を用いて指導者への忠誠を買う。いかなる形で国に資金が流れ込もうと、そのほとんどは、スルタンとその仲間内の懐へと流れ込む。軍を分裂させて、軍事エリートを自分の管理下に置く。だが、スルタン主義独裁制の下で、経済が成長し、教育制度が整備されてくると、状況に不満を抱き、「こうあるべきだ」と考える人が増え、警察による監視体制や権力乱用に対する反発も大きくなる。民衆を手なずけることを目的に体制側が実施してきた補助金その他のプログラムのコストが上昇すれば、大衆を政治から遠ざけておくのは難しくなり、軍の一部も状況への不信感を強める。これが中東革命の背景だった。これからどうなるか。スルタン体制の歴史をひもとけば、今後の展開が、考えられているよりも明るくも暗くもないことがわかるだろう。

フクシマ原発に壊滅的ダメージを与えた地震とツナミは、世界における原子力エネルギーへの関心の高まりに一気に冷水を浴びせかけた。相対的に生産コストは高いが、二酸化炭素をほとんど排出しない点が評価されてきた原子力による電力生産も、フクシマでの原発危機をきっかけに、安全基準や危機管理対策への再検証が進められ、原発推進計画そのものが見直されつつある。ドイツは、7基の(旧式)原子炉を閉鎖しただけでなく、2020年まで他の原子炉の使用期間を延長する計画のすべてを凍結した。イタリアも原子力開発のモラトリアムを延長し、他のEU諸国も原子力発電計画の見直しを行っている。専門家のなかには、「原子力が危険なテクノロジーであることが再認識された以上、いくらその安全性をエネルギー政策の会議で説いたところで、人々は納得しない」と明確に指摘する者もいる。たしかに、よりすぐれた安全機能や冷却装置を備えている新型の原子炉なら、大気への放射能拡散を引き起こした問題の一部を回避できるかもしれないが、どの程度の耐震機能を持っているかという点では疑問が残る。しかも、原子力は放射能の拡散リスクに加えて、核廃棄物、核兵器拡散のリスクも伴う。だが、地球温暖化に配慮する必要もあるし、新興国の電力需要の増大も考慮しなければならない。今後当面は、ジョン・ダッチが指摘するように化石燃料から再生可能エネルギーへのつなぎエネルギーとして、天然ガス、とくに液化天然ガスが注目されるようになるのかもしれない。

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