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論文データベース(最新論文順)

CFRインタビュー
環境対策技術開発に民間資金を向かわせるには

2008年5月号

イボ・デブア 国連気候変動枠組み条約事務局長

今後25年間にわたって、予測されているペースで世界経済が成長を続けるとすれば、われわれは、エネルギーインフラに20兆ドルを投資しているはずだ。だが、地球温暖化対策に配慮せずに20兆ドルをエネルギー部門に投資するとすれば、温室効果ガスの排出量は50%上昇する。
 エネルギー部門への20兆ドルの投資への補助金を出すよりも、民間市場での環境技術開発を刺激するために、各国政府が協調すべきだと思う。
 民間の資金の流れを、地球温暖化対策からみて適切な方向へと向かわせること、つまり、もっと大きな民間の資金を温暖化対策に向かわせるにはどうすればよいかを考えていかなければならない。

CFRインタビュー
ヨーロッパはイラクからの
米軍撤退など望んでいない

2008年5月号

ジョセフ・ジョフィ 独ツァイト紙編集・発行人

アメリカにとって、冷戦期における最大の戦略的重要性を持つ地域はヨーロッパだったが、いまや、それは大中東地域だ。世界のナンバーワン国家が怖じ気づいて、中東から逃げ出すとなれば、スーパーパワーとしての役割を放棄することになる。
 米民主党候補が公約しているように、イラクからの撤退を強行すれば、「非常に大きな戦略的帰結に直面することになる」と指摘するジョセフ・ジョフィは、「アメリカが中東から撤退することを望んでいるヨーロッパの指導者はいないと思う」と指摘し、「私はオバマがナイーブで理想主義的なジミー・カーターのような人物でないことを望む」とコメントした。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
戦争と経済
――イラク戦争のもう一つの問題

2008年5月号

ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス副会長

歴史的にみて、大がかりな戦争を始める前には、戦費のどの程度を税金でまかなえるか、どの程度の債務を背負い込むことになるかについての熱い論争が展開されてきた。南北戦争前には、25%を税金で支払い、75%を借金でまかなうことが合意されていた。
 第二次世界大戦期にも、税金と借金の比率を半々とすることで合意が形成されていた。だが、イラク戦争の場合、そうした戦費調達の議論は一切行われなかったし、同世代で大半の重荷を担うという話もなかった。それどころか、減税の話がでているし、通常、戦期には抑え込まれるはずの国内支出もイラク戦争期には増大している。
 イラク戦争の戦費の多くは透明性に欠けるし、いかにして戦費を調達するかについての議論も事前には行われなかった。今後、われわれはイラク戦争をめぐってこの点を問題として取り上げていく必要がある。

ジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州選出)は、これまでの選挙キャンペーンで「自分は外交領域での多種多彩な経験を持っている」と強くアピールしてきた。彼は、イラク増派策を強く支持し、議会共和党の指導者、ブッシュ政権の高官同様に、イラクでの戦争を、アメリカの安全を脅かすイスラム過激派との対テロ戦争の一環とみなしている。
 一方でマケインは、地球温暖化対策、核軍縮、移民対策、拷問と描写されることもある(テロ容疑者への)尋問スタイルなどをめぐっては、共和党の主流派とははっきりと異なる立場を示している。
 マケインの外交アドバイザーには多様な考えの持ち主が多く、大枠でとらえても、そこには「リアリスト」対「ネオコンサーバティブ、強硬派」という図式がみてとれる。すでにこうした構図のなかでアドバイザー集団間の影響力をめぐる派閥抗争が起きていると伝える報道もある。だが、「そのようなとらえ方では彼の顧問たちの多様な思想の詳細を把握できないし、マケイン自身の外交知識を過小評価することになる」と考える専門家もいる。
 現在のところ、共和党の指導者トレント・ロット、ボブ・ドールにも仕えた経験を持つ元議会スタッフ、ランディ・シューヌマンが外交政策を、元議会予算局長のダグラス・ホルツイーキンが経済政策を取り仕切っている。
 マケインがアドバイスを得ている専門家には、いわゆるリアリストとして知られるヘンリー・キッシンジャー、リチャード・アーミテージ、一方では、ネオコンサーバティブの論客であるウィリアム・クリストル、ロバート・ケーガンなども含まれている。
 選挙キャンペーンにおいては、ケーガンを始め、元国務省のリチャード・S・ウィリアムソン、国防・安全保障問題の専門家ピーター・W・ロドマン、そして、国家安全保障とエネルギー問題のアドバイスをしている元中央情報局(CIA)長官のR・ジェームズ・ウールジーが主要な外交顧問とみなされている。
 メディアは顧問集団同士が影響力を競い合っていると報道している。ニューヨーク・タイムズ紙は2008年4月に、マケインの顧問を務めるリアリスト集団は、共和党保守派、あるいは、ネオコンサーバティブの影響力が高まりをみせていることに懸念を強めていると伝えたが、そうした対立は誇張されているとみる専門家もいる。

石油の富と呪縛
 ――なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させ、資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。
 史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

チャベス革命の虚構
――無謀な理想主義者の挫折

2008年5月号

フランシスコ・ロドリゲス/元ベネズエラ国民議会チーフエコノミスト

「貧困層に優しいチャベス」という仮説は、事実からかけ離れている。石油高騰からの経済ブームの恩恵を貧困層に再分配するという点で、チャベス政権が過去のベネズエラの政権と異なる措置をとってきたことを示す証拠は、驚くほど少ない。実際には、「チャベスの経済モデル」に画期的なところは何もない。多くのラテンアメリカ諸国が1970年代から1980年代にかけて経験したのと同じ、破滅的な道のりをたどっているだけだ。チャベス政権がその貧困対策の偽りの「成果」をうまくアピールできた最大の理由は、おそらく先進国の知識人や政治家が、ラテンアメリカの開発問題は、金持ちで特権的なエリート層による貧しい大衆の搾取にあるというストーリーを安易に信じ込んでいたためだ。19世紀ならともかく、この見方を現状判断の枠組みにするのは間違っている。

アメリカの相対的衰退と無極秩序の到来
――アメリカ後の時代を考える

2008年5月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

現在の国際システムの基本的特徴は、国がパワーを独占する時代が終わり、特定の領域における優位を失いつつあることだ。国家は、上からは地域機構、グローバル機構のルールによって縛られ、下からは武装集団の挑戦を受け、さらには、非政府組織(NGO)や企業の活動によって脇を脅かされている。こうしてアメリカの一極支配体制は終わり、無極秩序の時代に世界は足を踏み入れつつある。そこでは、相手が同盟国なのか、敵なのかを見分けるのも難しくなる。特定の問題については協力しても、他の問題については反発し合う。協調で無極化という現象を覆せるわけではないが、それでも、是々非々の協調は状況を管理する助けになるし、国際システムがこれ以上悪化したり、解体したりしていくリスクを抑え込むことができる。

石油の富と呪縛
―― なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させる。資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

人道的悲劇にどう対処する
――人間の安全保障と「保護する責任」

2008年5月号

スティーブン・グローブズ ヘリテージ財団研究員
スチュワート・M・パトリック グローバル開発センター研究員

「大量虐殺、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する犯罪から」他国の人々を「保護する責任」を引き受ければ、「アメリカの主権、国家安全保障や外交政策をめぐる意思決定権の一部を、国際社会の気まぐれに委ねることになる」。「保護する責任」は、説明責任を負わない市民社会のアクターが盛り上げた正統性のない規範であり、この規範は、アメリカの行動の自由を制約し、不必要にアメリを紛争に巻き込んでしまう。(S・グローブズ)
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「もちろん、問題が起きている地域のすべてにわれわれが介入するわけにはいかない。だが、これをどこにも介入しないことのいいわけとしてはならない。大量虐殺や人道に対する犯罪が起きないように努め、それでも悲劇的な事件が起きた場合には、介入してそうした行動をやめさせることは、アメリカの道徳的利益に合致する」(S・M・パトリック)

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