1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

中国は市場改革路線をすでに放棄している
―― GDP成長に取り憑かれ、改革を忘れた中国

2009年6月号

デレク・シザーズ ヘリテージ財団アジア経済担当リサーチ・フェロー

胡錦涛と温家宝は2002~2008年に、経済が停滞していなかったにも関わらず、国の経済への介入路線を強めていった。……市場改革の要である価格の自由化は部分的に覆されているし、当初から緩慢なペースでしか実行されていなかった民営化はすでに放棄されている。企業間の競争を促す構想も帳消しにされている。中国政府は、外国からの投資を制限し、輸出に課税することで、比較的開かれていた貿易部門への介入さえも強めつつある。中国で市場改革路線が放棄されたのは、一つには、指導層が他の全てを犠牲にしてでもGDPの成長を実現しようと試みているからだ。

金融制裁と銀行の役割
―金融でならず者国家を孤立させるには

2009年5月号

レイチェル・L・ロフラー 前米財務省グローバルアフェアーズ担当 副ディレクター

北朝鮮やイランを標的とするアメリカの最近の金融外交は、各国の政府だけでなく、民間の金融機関にも協力を求めるようになり、その結果、金融制裁はかなりの成果を挙げるようになった。ワシントンは要注意のブラックリストを公表し、各国の銀行はこのリストから疑わしい資産を突き止め、怪しげな取引を阻止し、問題のある個人や組織が世界の金融システムを悪用するのを食い止めようと試みている。銀行がこうした制裁措置に協力するのには訳がある。意図的ではなくても、「テロや核兵器の拡散に手を貸している」と新聞で報道されれば、そのブランドが大きく傷つき、ビジネス上の大きな痛手となるからだ。金融制裁は今後も問題国家に対する大きなツールになる。だが、脅威と金融システムが交錯するポイントを明確にせずに、安易に制裁措置を乱発すれば、金融措置を実施する主体である銀行側の協力を得られなくなる恐れがある。

CFRミーティング
「社会とつながった」
新しい資本主義と企業への変貌を
―新しい持続的成長の条件とは何か

2009年5月号

スピーカー ネビル・イスデル コカ・コーラ社会長兼CEO
司会 リー・カラム KERAテレビコメンテーター

 「今回の経済危機を前に、市民と政府は企業と市場の役割を見直し始めており、その議論の方向性が既にみえつつある。だが、ポピュリズムと保護主義の道を転げ落ち、貿易を阻害するような政策が取られるとすれば、経済の回復は遅れ、長期的な成長も停滞することになる。これが警告だ。一方課題とは、企業と社会の関係を再構築することだ。私は、企業の指導者がビジネスを再構築し、「社会とのつながりをもつ資本主義」を構築していくべきだと確信している。このような社会とのつながりを構築することが、21世紀において企業が持続可能な成長を確保する最善の方法だと私は信じている」 (ネビル・イスデル)。

フォーリン・アフェアーズ・コラム
対北朝鮮制裁を行い、金正日後に備えよ

2009年5月号

ビクター・チャ 前米国家安全保障会議アジア担当部長

「短期的には平壌のミサイル発射に対する制裁にむけた圧力をうまく作り出し、一方で、自由で民主的な統一朝鮮に備えた準備を長期的な観点から始める必要がある。……オバマ政権は北朝鮮を再度「テロ支援国家」にリストアップすることも検討すべきだし、金正日後の北朝鮮にどう対処していくかをめぐって中国、韓国との本格的な交渉を水面下で始め、北朝鮮が建設的な路線をとれば、その見返りに安全の保証と経済援助を与えるという取引を示すことで、(日本とともに)、潜在的な平壌の新指導層への接触を試みていくべきだろう」。

独立したアラブ世界は自由を手にできるか
―神権政治か民主主義か

2009年5月号

バーナード・ルイス プリンストン大学名誉教授

「現在のアラブ諸国政府の多くは、「民衆の忠誠心に依存しているか、あるいは民衆の従順さに依存しているか」のどちらかだ。「忠誠心」は民族、部族、宗教、あるいはこれらの組み合わせを基盤に形作られている。一方、「人々の従順さに依存する体制」とは、全体主義や共産主義の管理と強制のテクニックを用いるヨーロッパ流の独裁制のことだ。……だが、忠誠に重きを置くわけでも、これまでのように抑圧的でもなく、むしろ、同意と参加による統治の実現を模索する集団が増え、その重要性も増してきている。こうした集団の規模はそれほど大きくないし、今のところ目立つ行動はできない状態に置かれているが、このような集団が出現していること自体、きわめて画期的な出来事だ」。

日本の歴史認識と東アジアの和解を考える
――反動を誘発する謝罪路線の危うさ

2009年5月号

ジェニファー・リンド  ダートマス・カレッジ助教授

いかなる国であっても、多くの人が家族や家を失い、都市そのものが消失してしまうような凄惨な戦争の余波のなかで、自国の過去の行動を謝罪すべきだという提案が出てくると、国内で反動が起き、国論は二分される。戦後の西ドイツで謝罪路線への反動が「例外的に」小さかったのは、ドイツの統一とソビエトからの防衛という二つの外交上の大目標を実現する必要があったからだ。日本、あるいは日本と同様の立場にあるその他の国は、「謝罪」と(過去の歴史を正当化し)「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、アデナウアーがとったように、(謝罪ではなく)、過去の間違いを認め、一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだろう。この路線で東アジアの緊張が緩和されれば、自国だけでなく、世界が利益を得られるようなリーダーシップを日本は発揮できるようになる。

アメリカ衰退論は間違っている
―ワシントンは国際システムの改革を主導せよ

2009年5月号

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス大学准教授 ウィリアム・C・ウォルフォース/ダートマス大学教授

アメリカ帝国論をめぐって専門家が論争を展開していたのはわずか2~3年前のこと。それが今は、アメリカを唯一の超大国とする一極システムは急速に終焉に向かっていると広く考えられている。だが、事実を冷静に見つめれば、アメリカ帝国論がアメリカのパワーを過大評価していたのと同じくらい、最近の衰退論はアメリカのパワーを過小評価していることがわかる。……世界は新たな課題に満ちあふれているが、現在の国際システムではこれらにうまく対応できない。国際システムを新しい課題に適応できるように変革するには力ある国家のリーダーシップが必要であり、その任務に向けた協調を主導できるのは、衰退などしていないアメリカを置いて他にはない。

米中G2構想という幻想
―― 対中多国間アプローチを

2009年05月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター
アダム・シーガル 米外交問題評議会中国担当シニア・フェロー

グローバルな課題に対応していく上でアメリカは中国の協力を必要としている。だが、この観点から米中の二国間関係を強化しようと試みても、利益認識や価値観の違い、政策遂行能力の違いが災いして、うまくパートナーシップを形成するのは現実には難しい。中国との協力という言葉は心地よい響きを持つが、実際にはそれが一筋縄ではいかないことを認めなければならない。結局は混乱に直面して双方が反発しあうことになる。こうした関係悪化の下方スパイラルの渦にはまるのを避けるには、ワシントンは中国への対応をめぐって世界各国から支援を引き出すべきだ。現状における重要な問題のすべてに中国が影響を与えているとみなし、台頭途上のグローバルなパワーである中国からより多くの協調を引き出したいと考えているのはアメリカだけではない。アメリカが中国との関係を前に進めたいのであれば、他の国も中国との交渉に参加させる必要がある。

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

Page Top