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論文データベース(最新論文順)

サイバー防衛の柔軟性とアクティブ・ディフェンス
――ペンタゴンの新サイバー戦略とは

2011年7月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会・対テロ・国家安全保障担当シニアフェロー

米政府のネットワークをターゲットにした洗練されたサイバー攻撃に対する人々の懸念が高まるなか、ペンタゴンは7月中旬に「サイバー空間における作戦計画に関する新戦略」を発表した。だが、公開された戦略には目新しい部分はほとんどない。サイバー防衛面での同盟諸国との国際合意、国際協調、パートナーシップについてははっきりと指摘されているが、これらを別にすれば、新しい要素はない。ウィリアム・リン国防副長官が2010年9月にフォーリン・アフェアーズで発表した論文で、これらのほぼすべては指摘されていたし、そうでないものについては、事前にプレスリリースされていた。つまり、戦略をリリースしたのは「アメリカはサイバー空間を軍事化するのではないかという諸外国の懸念」を低下させることが大きな狙いだったようだ。これを別にすれば、サイバー攻撃を受けて劣化したコミュニケーション環境でも活動を継続する柔軟性を確保するという重要な概念が示されている。だが、「アクティブ・ディフェンス」という概念が、ハッカーにとっての攻撃コストを引き上げることになるかどうかは、わからない。・・・・

「カダフィを権力ポストから追放するというアメリカの政策目的」と「それを実現するために進んで何をするか」の間に大きなギャップが存在する。このため、アメリカ政府は大きな混乱に直面している。短期的には目的を引き下げて、状況を安定化させるしかない。停戦を強く求めるべきだし、これ以上多くの人命が失われないように手をつくす必要がある。このためなら、当面、カダフィが権力ポストに居座り続けるのを認め、この間、リビアが短期的に二つに分断されることになっても仕方がないだろう」(R・ハース)

朝鮮半島は依然として緊張している。北朝鮮は、早ければ2011年の夏にも3度目の核実験を実施する可能性があるし、韓国に対してさらに大きな攻撃をする恐れもある。北朝鮮は、「おとなしくしているかと思えば、次に挑発行動をとるというサイクル」で動いていることを忘れてはならない。一方、韓国では、チョンアン号事件、ヨンピョン島砲撃事件以降、政府だけでなく、市民も北朝鮮に対する強硬路線をとるように求めるようなった。すでに、韓国が核開発を試みるべきかどうかも議論の俎上(そじょう)に載せられている。独自に核開発を試みるべきか、あるいは、アメリカの戦術核の再配備を求めるかどうかをめぐって熱い論争が起きている。かたや北朝鮮はますます核兵器を維持していく路線を固めつつある。リビアでの事態の展開が、核兵器が必要だとみなす金正日の確信をいっそう強めていると考えられる。実際、リビアをNATOが空爆した後、北朝鮮政府は、リビアのケースは「核を解体すれば、いかに危険な事態に直面するかの具体例だ」と表明している。

ユーロとEUを救うには
――  「ハードな」ケインズ主義を導入せよ

2011年6月号

ヘンリー・ファレル ウッドロー・ウィルソン・センター フェロー
ジョン・クイッギン クイーンズランド大学オーストラリア研究委員会フェロー

危機に直面したユーロ経済を前に、ドイツはユーロ参加国にさらに厳格な歳出削減を制度化するように求め、2011年3月に各国は、ドイツ同様に、歳出削減措置を国内で法制化し、これを憲法に盛り込むことに合意した。だが、厳格な歳出削減措置は、ヨーロッパ経済に短期的なダメージを与えるだけでなく、長期的にはEUの政治基盤そのものを揺るがしかねない。いかなる政治制度も、有権者に経済の調整コストを繰り返し負担させながら正統性を維持していくことなどできないからだ。金本位制下の国家はまさしくこの轍を踏んで失敗した。厳格な歳出削減策で何とか債券市場を安定させることに成功しても、すでに損なわれているEUの政治的正統性がさらに損なわれれば、EUそのものが存続のリスクにさらされる。将来の経済危機のリスクを最小化し、経済危機に陥ったときに政治的に維持できない厳格な緊縮財政をとらないで済むような長期的な制度を導入するために、ヨーロッパは再びケインズに学ぶ必要がある。

中国の現状と米中関係
―― 外交強硬路線と国内での人権弾圧

2011年6月号

ジョン・ポムフレット
米外交問題評議会
中国担当非常勤シニアフェロー

新指導層への権力移行プロセスがすでに始まっていることと、おそらく関係があるかもしれないが、中国はなぜ2年ほど前から対外的な強硬路線に転じたのか、その理由はいまもはっきりしない。だが、その悪影響が北東アジアのパワーバランスを微妙に変化させている。北朝鮮がチョンアン号を撃沈したときも、ヨンピョン島を砲撃したときも、中国が北朝鮮の行動を批判しなかったために、中韓関係は大きく冷え込んでいるし、日本との関係、ベトナムとの関係も依然として緊張している。一方で、クリントン長官が批判したように、中国は国内での人権弾圧を強めている。次期国家主席と広くみなされている習近平は、年内にワシントンを訪問する予定だが、ナショナリズム志向が強いと警戒されている部分もある。米中の軍事関係も経済関係もスムーズとは言えない。・・・「米中関係はすばらしく良好になることは決してあり得ないが、崩壊することもない」という朱鎔基の発言は、いまも現実を言い当てている。

パキスタンの政治から軍部を締め出すには

2011年6月号

アキル・シャー
ハーバード大学 ソサエティ・オブ・フェローズジュニアフェロー

数百発の核弾頭を保有し、インドとの火種を抱え込み、世界でもっとも危険なテロリストを国内に抱え込んでいるパキスタンを、将軍たちの好きにさせるのは余りに危険すぎる。パキスタン軍は、内外のあらゆる事態をインドとのライバル関係というレンズでとらえる習性を持っており、これがパキスタン軍の考えと行動を規定している。ザルダリ大統領率いるパキスタン人民党(PPP)、シャリフ率いるパキスタン・イスラム同盟(PML―N)のような文民政党は、概して、軍の陰で政治を行っているようなものだ。政治家を全く信用せず、「国が安定するか、カオスに陥るかを左右するのは自分たちだけだ」と自負している軍は、政治家がうまく統治を行っていないとみるや、政治に介入してきた。だが、そのためにパキスタンの文民制度が損なわれ、代議制が根付くのが阻まれ、国内に大きな亀裂が作り出された。文民による政府機関と軍事組織間のパワーの不均衡を是正しない限り、パキスタンの安定は実現しない。

ビンラディン後の アルカイダとジハード主義

2014年11月号

ブリンジャー・リア ノルウェー防衛研究所(FFI)リサーチフェロー

オサマ・ビンラディンのことを、作戦には関与しないシンボリックな指導者だとみなす考えは間違っているし、彼のことをグローバルなジハード主義の精神的支柱とみなすのも間違っている。たしかに、アルカイダ内においてビンラディンは首長、最高司令官として尊敬され、その命令にメンバーたちは従った。だが、殺害される前から、ビンラディンの権威とリーダーシップはすでに失墜しつつあった。アルカイダのテロリストのなかには「ビンラディンは権威主義的だし、イスラム教が求める「協議」の精神を忘れている」と公然と批判する者さえいた。ビンラディンはレトリックを弄するのはうまいが、傑出した思想的ビジョンの持ち主ではなかった。だからこそ、今後、他の指導者たちがビンラディンの役割をスムーズに担っていくと考えてもおかしくはない。・・・・

Foreign Affairs Update
日本の大災害で露呈した
グローバル・サプライチェーンの大きな
弱点

2011年5月 

マーク・レビンソン / 前米外交問題評議会シニア・フェロー (国際ビジネス担当)

日本での地震とツナミ災害のように、グローバル・サプライチェーンのどこかで予期せぬ事態が起きれば、ここで流れが遮断され、遠く離れたサプライチェーンの次のポイントへの供給が途絶えてしまう。世界でその部品を生産しているのが、予期せぬ事態に遭遇した地域の企業だけだったとすれば、話はさらに複雑になる。最終製品を市場に送り出す企業も身動きがとれなくなる。多くの人は、これまでにシリコンウエハーやメモリチップを生産してきた工場が日本での災害によって機能停止に追い込まれていることに注目しているが、他にも、供給が不足している一般には認識されていない重要部品は数多くある。

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