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論文データベース(最新論文順)

バイデン政権で民主主義は復活するか
―― トランプと民主主義の危機

2020年12月号

ラリー・ダイアモンド  スタンフォード大学フーバー研究所 上級研究員

バイデン大統領の誕生で、アメリカの民主主義が負った深い傷が自律的に癒されるわけではないだろう。この4年間で、民主的規範は完全に放棄された。しかも、今回の選挙で予想外の支持を得たために、共和党は当面、トランプ流の非自由主義的ポピュリズムに支配されるかもしれない。現在のアメリカは民主的危機のさなかにある。アメリカの民主主義のバックボーンを守る薄くとも復元力のある盾、つまり、相手への寛容と自制の精神、民主的ゲームルールへの手堅いコミットメントが崩れそうになっている。新大統領が就任する2021年1月になってもアメリカの民主主義は依然として深刻な問題を抱えたままだろう。

安倍政権の遺産
―― なぜ長期政権が実現したのか

2020年11月号

トバイアス・ハリス テネオ・インテリジェンス  副会長

安倍晋三は、2012年12月に首相に再選された後の7年8カ月にわたって政治的に生き残っただけでなく、6回にわたって選挙で党を勝利に導き、最後の数カ月まで一貫して高い支持率を維持し、日本の政治システムをこれまで誰もなしえなかった形で統治してきた。彼は有権者の多くが望んでいた安定を提供した。他の民主国家の多くがポピュリズム政治の抵抗に遭い、政治基盤が不安定化し、民主主義そのものが後退していた時期に、安定を提供してみせた。後継者に選ばれた菅義偉は、安倍政治を変化させるのではなく、踏襲していくと約束している。しかし、彼は前任者ほど幸運ではないかもしれない。・・・

迫りくる米中ハイテク冷戦
―― 北京による対抗戦略の全貌

2020年10月号

アダム・シーガル  米外交問題評議会シニアフェロー

ワシントンは、中国ハイテク大手のサプライチェーンからの排除にはじまり、そうした企業との取引禁止、テレコミュニケーションが依存する海底ケーブルの規制にいたるまで、近未来における対中技術戦略のアウトラインをすでに定めている。中国も対抗策を準備し、半導体その他の中核技術の国内開発に取り組んでいる。ハイテク企業を動員し、一帯一路イニシアティブに参加する国々とのつながりを強化し、サイバー空間での産業スパイ活動も続けている。「ハイテク冷戦」の輪郭はすでに明らかだが、この競争から誰が恩恵を受けるのかは、はっきりしない。ドイツ銀行の報告書は、米中ハイテク戦争のコストは今後5年間で3・5兆ドルを上回る規模に達すると試算している。それでも、両国の指導者は、ハイテクを国家安全保障問題とみなすことで、国内の技術開発を最速で進めたいと考えている。

バイデン政権の課題
―― 米外交の再生には何が必要か

2020年10月号

ベン・ローズ  オバマ政権大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)

トランプを指導者に選んだ共和党は、力が正義を作るという信念をもっている。国防予算の規模、外国の体制変革を追求する意欲、アメリカの経済力と軍事力への強硬な主張からもこれは明らかだ。さらに、白人キリスト教文明の先駆者というアイデンティティがアメリカに固有の例外主義を授けていると彼らは考えている。一方、民主党は正義が力を生むと考えている。米国内における欠陥や問題を是正する力や、移民を歓迎する民主国家としてのアイデンティティ、法の支配の順守、そして人間の尊厳に気を配る姿勢が、アメリカに世界のリーダーシップを主張する道徳的権威を与えているとみなしている。バイデンは、これを国内外で平常な感覚を取り戻すチャンスと説明している。その努力に、新しいタイプの世界秩序形成を加えるべきだろう。それは、ルールを押し付けることなくアメリカがリーダーシップを発揮し、他国に求める基準に自らも従い、グローバルな格差と闘う世界秩序だ。

インドのパンデミックが制御不能な理由
―― 実際の感染者数は4000万?

2020年10月号

T・ヤコブ・ジョン  インド医学研究センター評議会 ・先端研究所(ウイルス学)元所長

最近のインドにおける急速なコロナウイルスの感染拡大は、経済に大きなダメージを与えたロックダウン(封鎖措置)を緩和したことで引き起こされている。「感染の拡大を引き起こすとしても、経済を救済せざるを得ない」と考えた上での、ある意味、仕方のない政府判断だった。時とともにウイルスの毒性は弱くなりつつあるかもしれないが、感染力を高めている可能性がある。パワフルな抗ウイルス療法が登場していないにもかかわらず、インドの死亡率が比較的低いことは、こうしたウイルスの変異で説明できるのかもしれないし、おそらく、インドの人口が比較的若いことにも関係があるだろう。いずれにせよ、インドでの新規感染者が減少し、コロナウイルスが風土病化するまで、ウイルスの感染拡大は2021年初頭まで続くと考えるべきだろう。9月初旬の段階で、インドでの感染者数は約430万とされているが、実際の感染者数は2000万から4000万に達していると考えられる。

気候変動には現実主義で対処せよ
―― 社会革命ではなく、リアリズムを

2020年9月号

ハル・ハーベイ  エナジー・イノベーションCEO

国際社会は気温上昇を一定の範囲内に収める上で排出可能な温室効果ガスの累積上限をほぼ使い切ってしまっている。しかし、打つ手はある。二酸化炭素相当物排出のほぼ75―80%は、世界20カ国の4大排出源(発電所、自動車、建物、工場)における化石燃料の燃焼が原因だからだ。逆に言えば、これら20カ国の四つの産業部門の意思決定者と規制当局者に対象を絞りこんだ対策をとる必要がある。電力、運輸、建設、製造のすべてにおいて、エネルギー関連の資金の流れが化石燃料からクリーンなエネルギーへシフトしていくように政策を見直すことだ。各部門の実際の意思決定者を正しく把握し、どのようにそれが機能しているかを理解し、圧力をかける方法をみつけなければならない。必要なのは、ターゲットを絞り込んだ現実主義的アプローチだ。

サウジアラビアとMBSの野望の終わり?
―― 壊滅的事態を避けるには

2020年9月号

F・グレゴリー・ゴースIII  テキサスA&M大学教授

パンデミックと原油価格崩壊という難局のなか、サウジの財政赤字は急増し、企業も迷走を続けている。ハッジ(メッカ巡礼)の規模も大幅に制限され、王国の士気は低下している。原油価格が1バレル当たり約40ドルに戻っても、サウジは財政バランスを取るために必要な歳入の半分しか得ていない。どうみても、コストのかかるイエメンへの軍事介入、ビジョン2030の壮大なプロジェクトを見直すべきタイミングだろう。しかもトランプ政権とサウジ王室との関係はアメリカ国内で激しく批判されている。ムハンマド皇太子にとって、トランプファミリーとの関係はプラスに作用したかもしれないが、2021年に誕生するかもしれない民主党政権への対応も考えておく必要があるだろう。

一国二制度の終焉
―― 私たちが知る香港の終わり

2020年9月号

ジェーン・ペルレス   前ニューヨーク・タイムズ紙 北京支局長

2019年の混乱を前に、習近平は香港がもつ特有の権利を憂慮するようになった。こうして彼は、香港を中国の主権内の問題と定義することで、アメリカやその同盟国が中国に反対することのコストを引き上げ、現地での抗議行動を封じ込めるための迅速な動きをみせた。6月30日に導入された国家安全法によって、香港は北京のいいなりにならざるを得なくなり、実際、香港の抗議運動は抑え込まれている。分離主義、テロ、破壊・転覆工作、そして「外国パワーとの共謀」は、国家安全法ですべて犯罪と定義されているために、大陸に引き渡されるリスクを冒すことなく、香港の民主活動家が共産党の指令に反対することはいまやほぼ不可能になった。次期米大統領が、中国共産党による世界有数の活気ある社会の乗っ取りという事態を覆すのは容易ではないだろう。

ネイティブアメリカンの民族浄化
―― 「この土地はあなたのものではない」

2020年9月号

デービッド・トルーアー  南カリフォルニア大学教授

先住民族を東部から締め出すための19世紀の強制移住プログラムに連邦政府は7500万ドルを費やしたが、その経済的見返りは大きかった。彼らの土地を民間に売却することで、買収費用を約500万ドル上回る約8000万ドルの収入を得た。北部の資本家は、インディアンがいなくなった土地への投資、つまり、奴隷が綿花の苗を植え、収穫し、加工するビジネスへの投資から莫大な利益を上げた。1840年代には、これらの土地で、7万2500トンもの繰り綿が生産された。その結果、1830年代に「アラバマの奴隷人口は2倍以上に増えて25万3000人に達し、1830年代の終わりには、奴隷のほぼ4人に1人が、かつてはクリーク族の土地だった農園で働いていた」。先住民を締め出した政策の真の勝者は、奴隷を所有する南部の農園主と、彼らに投資したニューヨークの資本家だったのかもしれない。

神の時代の終わり?
―― 世界における宗教の衰退

2020年9月号

ロナルド・F・イングルハート ミシガン大学名誉教授

「生き延びられるかどうか」。人間の歴史において、これは長く不確実な命題だった。そのような時代に宗教は「世界は完全無欠の神(あるいは神々)の手に委ねられている」という安心感を与えてくれた。「宗教の教えに従えば万事うまくいく」と考えられてきた。しかし経済発展と技術的進歩の結果、人間は飢餓を逃れ、疾病に対処し、暴力を抑えられるようになった。高い出生率を維持する必要性と結びつけられてきた一連の宗教的考えが廃れてきた。生き延びられるだろうかという不安が低下し、寿命が延びると、女性を家庭に縛りつけ、同性愛者にアイデンティティを隠すことを強いた宗教的戒律を守ることに多くの人が消極的になった。もちろん、現在のパンデミックが何年も続いたり、新たな大恐慌が起きたりすれば、こうした文化的な変化も逆転し始めるかもしれない。だが、現在のトレンドが続けば、伝統的な宗教的権威が社会道徳に対して持つ影響力は、低下し続けることになる。

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