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論文データベース(最新論文順)

選挙と民主主義
―― 選挙年と有権者の選択

2024年10月号

フランシス・フクヤマ スタンフォード大学 シニアフェロー

選挙が提供するのは、政策上の失敗に対する指導者の責任を問い、成功したとみなされる指導者に報いる機会だ。選挙が危険になるのは、単に疑わしい政策を押し付けようとするだけでなく、自由で民主的な基本制度を弱めることを望み、実際に弱体化させる指導者が台頭したときだ。民主主義が衰退していると考えるリベラル派の多くは、この流れを覆すために何かできることはないかと問いかけている。実際には、この問いへの答えは単純で退屈なものだ。仲間とともに投票にいくか、あるいは、もっと積極的に行動したいのなら、民主的な政治家が選挙で勝利できるように、立場を共有する人々を動員するために活動することだ。「選挙の年」の結果からくみ取るべき教訓は、ポピュリストや権威主義的政治家の台頭は必然ではないということだ。

アメリカは東南アジアを失うのか
―― 中国へなびくアセアン諸国

2024年10月号

リン・クオック ブルッキングス研究所 フェロー(アジア政策)

東南アジアを対象とする2024年の調査で、この地域の連携パートナーとして中国がアメリカよりも支持されるという初めての結果がでた。アメリカがイスラエルを強く支持していることが、中国に有利な方向に流れを変えた大きな要因と考えられる。イスラム教徒が多数派を占める東南アジアの3カ国すべてで、台湾ではなく、イスラエルとハマスの紛争が地政学上の最大の懸案に選ばれている。米外交にはダブルスタンダードがあり、中国に関する利己的な目標をもっているというイメージも、アメリカの立場への支持拡大を妨げている。失った地域的支持をワシントンが取り戻していくのは容易ではない。

気候変動と民主主義
―― 異常気象と選挙

2024年10月号

カレン・フロリーニ クライメート・セントラル 副会長(ストラテジック・インパクト担当)
アリス・C・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境担当)

いまや選挙の障害を作り出しているのは、偽情報、外国政府による干渉、選挙結果の改ざんだけではない。気候変動が引き起こす異常気象もそうだ。ハリケーン、洪水、山火事、熱波などさまざまな災害によって、有権者は選挙権をますます行使しにくい環境に直面している。カナダは、2023年の森林火災で地方選挙の実施に手間取り、パキスタンは2022年の国政選挙前に、国土の3分の1が洪水で覆われる事態に陥った。投票所、IDカード、通信ネットワークが被害を受け、破壊されても、投票という民主主義の基本的権利を市民が行使できるような対策をとる必要がある。

途上国を債務危機から救うために
―― アフリカのポテンシャルを開花させるには

2024年10月号

マーク・スズマン ビル&メリンダ・ゲイツ財団 最高経営責任者

2022年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国債の金利を引き上げると、低所得国の通貨は下落し、資本市場へのアクセスを失った。サハラ以南のアフリカでは、19カ国がデフォルトに陥るか、そのリスクに直面している。しかも、低所得国が直面している問題は、無分別な借金の結果ではなく、気候変動が引き起こしたショック、パンデミック、そして戦争の結果なのだ。低所得国を債務危機から救い出し、世界的な成長を回復させるために、先進諸国政府は、世界銀行への資金拠出を増やし、債務救済を強化していく必要がある。

カマラ・ハリスとドナルド・トランプ
―― 中国にとってどちらが好ましいか

2024年9月号

王緝思 北京大学国際戦略研究院 院長
胡然 北京大学国際戦略研究院 研究員
趙建偉 北京大学国際戦略研究院 研究員

中国の戦略家たちは、アメリカの対中政策が今後10年間で変わるという幻想は抱いていない。世論調査結果や中国に関する超党派のコンセンサスがワシントンに存在することから考えても、2024年11月に誰が米大統領に選出されようとも、その対中政策は戦略的競争と封じ込めに重点が置かれ、協力と交流は後回しにされるはずだ。トランプ、ハリス、どちらが大統領になっても、中国にとって厄介で不利益をもたらす相手になる。一方で、大規模な軍事衝突や経済的・社会的な交流の全面的断絶を求めてくることもないだろう。ただ、ワシントンにおける現在の思想のどの部分が最終的に支配的になるのかを、われわれは理解しようとしている。

新興大国と覇権国
―― 衝突は不可避なのか

2024年9月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー 米外交問題評議会シニアフェロー

覇権国と新興大国は、衝突する運命にあるのか。現実には、台頭する新興国は、既存の規範の多くを守り、一部の側面を拒絶するときも他の新興大国と協力して慎重に行動する。そうすることで、現秩序のなかで自らの台頭を強化すると同時に、新しい秩序を構築する力をつけるまで、覇権国を弱体化させようとする。だが、覇権国が国際秩序をどのように管理するかで、対立が紛争に発展するかどうかが左右される可能性もある。覇権国にとって、新興大国の脅威に対処する最善の方法は、新興大国と対立したり、打ち負かそうとしたりすることではなく、国際秩序を利用して封じ込めることかもしれない。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

イスラエルとヒズボラ
―― かつてない衝突へ

2024年9月号

アモス・アレル ハーレツ紙 国防アナリスト

いまやイスラエルは、北の国境地帯におけるヒズボラとのさらに大規模な戦争の瀬戸際にあるようだ。イスラエルとヒズボラの立場は、リタニ川以南への影響力をめぐって真っ向から対立している。仮にバイデン政権が、国境周辺からのヒズボラの撤退を含むイスラエルとヒズボラ間の合意をまとめても、イスラエルの指導者たちは、ヒズボラとの決着を望む国内の声を無視するわけにはいかないだろう。イスラエル、レバノンは、民間人と国のインフラにかつてないダメージが及ぶような、全面戦争に直面する危険がある。

民主党の外交戦略
―― リスクの外交的管理を

2024年8月号

ベン・ローズ 元米大統領副補佐官 (戦略コミュニケーション担当)

誰が米大統領になろうとも、世界戦争は避けなければならない。深刻化する気候変動危機に対応し、人工知能などの新技術の台頭に取り組んでいく必要もある。問題を解決するために、アメリカがブラフや軍事力増強だけに依存するわけにはいかない。むしろ、外交に焦点を合わせなければならない。ウクライナの経済を支えて国家基盤を強化し、ロシアとの長期的交渉に備えさせるべきだ。イスラエルを支える一方で、パレスチナ人の新たな指導者の育成とパレスチナ国家の承認に向けて努力する必要がある。そして、台湾の軍事能力に投資する一方で、北京とのコミュニケーションチャンネルをつくり、問題の平和的解決への国際的支持を動員しなければならない。

イギリスの新外交政策
―― 健全化した外交姿勢、山積する課題

2024年8月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会 シニアフェロー

イギリス市民の多くは、ヨーロッパとの関係修復に前向きになり、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への支持も高まっている。「NATOや防衛に前向きの姿勢をとり、ウクライナを支持し、少なくとも反ヨーロッパではない」。このイギリスの外交アウトルックは、労働党政権の外交基盤としても有望だろう。だが、イギリスは、山積する外交課題に直面する一方で、低成長や多額の公的債務の重荷に苦しみ、高齢者介護や公的医療保険制度(NHS)をはじめとする公共サービスへの投資を求める大きな国内圧力にさらされている。

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