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論文データベース(最新論文順)

日本のプラグマティズム外交の代償
―― 安倍外交の成果を問う

2017年5月号

トム・リ ポモナカレッジ助教授

フィリピンのドゥテルテ大統領、ロシアのプーチン大統領、アメリカのトランプ大統領のようなとかく論争のある指導者たちと進んで接触する安倍首相は、長期的な経済・安全保障上のアジェンダのためなら、自らの信条を傍らに置き、短期的に政治リスクの高い動きをとることも辞さないつもりのようだ。確かに、世界的にネオリベラルな規範が衰退するなか、反リベラル主義を掲げる指導者たちと関わりを持つことの政治リスクが少なくなっているのは事実だろう。しかし、こうした権威主義的指導者と付き合うことで、果たして結果を出せただろうか。さらに、民主国家としての日本の名声を危機にさらしてはいないだろうか。権威主義的な指導者たちと付き合うことに派生するリスクからみれば、安倍首相にとっては世界の民主主義のリーダーという日本の名声を守ることがよりプラグマティックな路線ではないだろうか。そうしない限り、いずれ彼は歴史の間違った側にいる自分を見出すことになるだろう。・・・

仏大統領選挙は何を問いかける
―― 出現した新しい政治ダイナミクス

2017年3月号(掲載予定)

カルロ・インヴェルニッツィ・アクセッティ ニューヨーク市立大学助教(政治学)

フランス政治の主役だった右派左派の二大政党の公認候補が、二人そろって決選投票に進めそうにないという驚くべき事態が起きている。第一回投票を想定した世論調査によれば、両候補を合わせても得票率35%に達しない。おそらくはルペンとマクロンの対決になると思われる決選投票の結果は、フランス、ひいてはヨーロッパ政治の新時代の幕開けを告げるものになるだろう。ルペンは「根なし草のグローバル化支持者」と「愛国者」との対決こそが、今後の政治闘争では重要になると主張している。一方、マクロンは「保守主義」と「反動」に対抗して自らは「進歩」の側に立つと述べている。両者の対立は、冷戦終結後の欧米世界における新自由主義的社会経済モデルをめぐる対立であり、そこで問われているのは、冷戦後、欧米世界が基本としてきた社会モデルと民主主義そのものだ。

ブレグジット後のヨーロッパ
―― 統合の本来の目的に立ち返るには

2017年3月号(掲載予定)

マティアス・マタイス ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院(SAIS)助教(国際政治経済学)

欧州統合プロジェクトの設計者たちが欧州連合(EU)の現状をみれば、さぞや落胆するだろう。1950年代にエリートたちがヨーロッパ経済共同体(EEC)を創設したのは「第二次世界大戦後のヨーロッパで国民国家システムを再生するためだった」からだ。当時は、主権国家は段階的に市場を開放するが、国内経済が悪化したときに対処できるように、国家に一定の自己裁量権を残すというコンセンサスが存在した。だが1980年代半ばにヨーロッパのエリートたちは、統合によって国民国家システムを強化するのではなく、新しい超国家的統治システムの構築へとギアを入れ替えた。そしていまやイギリスがEUからの離脱を選んだことで、EU史上最悪の政治危機が引き起こされつつある。欧州の指導者たちは、統合の目的を新たに描き、統合プロセスの管理メカニズムを再確立する必要があるだろう。

ドゥテルテの対中・対米戦略のバランス ―― 穏やかな対中アプローチの真意

2017年3月号

ジェシカ・リョウ ノースカロライナ州立大学助教

長年の同盟国であるアメリカと「決別し、中国と手を組む」つもりだというドゥテルテ発言は世界を驚かせたが、この発言は「インフラ上の深刻な問題を改善することで、貧困層の生活を改善していく」という彼の選挙公約と密接に関連している。アメリカはドゥテルテのインフラ計画に資金提供する資源も政治的意思ももっていないが、一方の中国は潤沢な資金だけでなく、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を擁している。すでにドゥテルテは1件のAIIBからの融資を成立させ、中国との間で総額240億ドルに達する13件の二国間融資をまとめている。問題は、親米国フィリピンでの対中感情がよくないこと、そして、このやり方が必要以上にアメリカを刺激していることだ。ドゥテルテが中国資本の一部を取り込むチャンスがあるのは、国内で彼の支持率が高い間だけだろうし、ワシントンは、選挙公約を実現する上で必要なドゥテルテの(中国を念頭においた)経済戦略をもっと許容すべきだろう。

中国のグローバル・リーダーシップという神話
―― 中国はグローバル化モデルにはなり得ない

2017年3月号

エリザベス・C・エコノミー 外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)

世界のリーダーとしての役割を続けることへのワシントンの意思が不透明化するなか、世界は、たとえ一時的であっても、アメリカに代わってリーダー役を担える国を求めている。習近平がそれに興味を示しているという理由だけで、中国が世界のリーダーとしての条件を満たしていると考える専門家さえいる。すでに中国がグローバルなリーダーシップに必要な資質を身に付けているのは事実だろう。世界第2位の貿易大国で、世界最大の常備軍を擁し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路のような新しい組織や構想を提案するなど、中国はすでに世界のリーダーのように振る舞っている。しかし、その開発モデルがもたらした環境、医療・衛生、その他の社会問題に関して中国モデルは模倣に値するものだろうか。世界における人権侵害について何も語らず、国内の人権問題を長年にわたって認めてこなかった国をグローバルリーダーと呼べるだろうか。・・・

ドイツが主導するヨーロッパの防衛強化
―― ベルリンに何ができるか

2017年3月号

ステファン・フローリック トランスアトランティック・アカデミー シニアフェロー

トランプのアメリカがグローバルなリーダーシップからまさに手を引こうとし、イギリスが欧州連合(EU)からの混乱に満ちた離脱プロセスに足をとられるなか、リベラルな秩序と米欧関係の今後を心配するヨーロッパ人やアメリカ人の間では、アメリカに代わってドイツが「リベラルな秩序」のリーダーになるのではないかと期待されている。しかし、これは希望的観測というものだ。ドイツはすでに国内と国境線における危機対応に気を奪われている。世界におけるリベラルな覇権国としてのアメリカにドイツが取って代わることができないのは、純粋にそうした力をもっていないからだ。しかし、ベルリンが世界の出来事に無頓着なわけではない。ドイツとそのパートナーは、(NATOからの離脱も辞さないとする)トランプの恫喝策を、機能不全に陥っているヨーロッパ政治を立て直す機会にできるかもしれない。

トランプと米欧関係の未来
―― トランプの脅威は欧州の連帯を促すか

2017年3月号

キャサリン・R・マクナマラ ジョージタウン大学教授(政治学)

ドナルド・トランプは北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」とけなし、欧州連合についても「ドイツのためのツールと化している」と、まるでその解体を支持するかのような発言をしている。これにヨーロッパはどう対処するだろうか。トランプを「異質な他者」とみなし、ヨーロッパは団結できるだろうか。それとも、彼の発言はヨーロッパのポピュリスト勢力を勢いづけるだけなのか。欧州連合(EU)が築いたヨーロッパの「想像の共同体」は、伝統的なナショナリズムがもつ強い文化や感情的なこだわりをもっていないために、トランプがEUに脅威を与えても、それによって、ヨーロッパプロジェクトへの支持と結束が生み出されるとは考えにくい。ポピュリズムの台頭を前に、ヨーロッパの政治家と市民は、EUが達成した成果を強く擁護しつつ、EUが直面する課題に対応していくしかない。一方、これまでアメリカの優位を支えてきたリベラルな制度の多くが解体していくかもしれず、この事態が、EUにとって希望の光になることもあり得ない。

トランプリスクが促す世界秩序の再編
―― 各国のリスクヘッジで何が起きるか

2017年3月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルガバナンス)

トランプ政権が同盟関係へのコミットメントを弱め、保護主義的な経済・貿易政策をとり、地球温暖化対策を放棄すれば、同盟国は、自国の安全保障、繁栄、市民の安定した生活を、独立性を高めることで強化しようと模索し始めるだろう。地政学領域では、各国は、「アメリカ」と「自国にとって重要な地域大国」、つまり、アジアにおける中国、ヨーロッパにおけるロシア、中東におけるイランとの関係を見直すことで、リスクヘッジを試みる。この流れのなかで、日本と韓国は核開発を真剣に検討するようになるかもしれないし、バルト諸国は、アメリカを見限って「フィンランド化」に踏み切るかもしれない。経済領域では、中国が主導する一帯一路構想などの、アメリカが関与していないアレンジメントを各国は求めるようになるだろう。もちろん、トランプ政権が伝統的なアメリカのリーダーシップを放棄していくにつれて、他の諸国がリスクヘッジ策をとると決まってはいない。そうなるかどうかは、「大統領としてのトランプの選択」に左右される。

平壌との交渉しか道はない
―― トランプと北朝鮮

2017年3月号

ジョン・デルーリ 延世大学准教授(中国研究)

北朝鮮の指導者が経済を第1に据え、経済開発のために国を開放するとすれば、「自分の国内での地位が安泰であると確信し、外国からの脅威を相殺できると自信をもったとき」だけだろう。したがって、ワシントンが朝鮮半島における平和の実現を望むのなら、北朝鮮経済を締め上げたり、金正恩体制を切り崩す方法を探したりするのを止め、平壌がより安心できる環境が何であるかを考える必要がある。国の崩壊を心配しなくてよくなれば、北朝鮮の民衆も、生き延びることよりも、繁栄を享受したいと考えるようになる。欠乏を和らげ、外の世界と彼らを遮断している壁を崩すことで、世界は北朝鮮民衆の多くを救うことができる。したがって、トランプがまず試みるべきは、アメリカが安全を保証することを条件に、北朝鮮の核開発プログラムの凍結を交渉することだろう。金正恩を経済開発に向かわせ、遅ればせながら北朝鮮に変革の道を歩ませるには、この方法しかない。

伝統的な対中政策への回帰を
―― トランプと中国

2017年3月号

スーザン・シャーク カリフォルニア大学サンディエゴ校 21世紀中国センター議長

国内の不安定化を心配し始めた習近平は、(不満の矛先が政府ではなく、外に向かうように)国内のナショナリズムを鼓舞するような対外強硬路線をとり、一方で、国内における反政府運動の兆候があると、直ちにこれを粉砕している。この状況でトランプ政権が北京を挑発する路線をとれば、民衆に弱腰だとみなされることを警戒する北京は、台湾とアメリカに痛みを伴う経済懲罰策をとり、台湾海峡あるいは南シナ海で挑発的な軍事行動に出る恐れがある。しかも、中国を敵として扱えば、気候変動、感染症、核拡散などの重要なグローバルアジェンダをめぐって、両国が協議するのは不可能になる。いまやホワイトハウスの主となったトランプは、ニクソン政権以降の歴代の米政権がとってきた慎重な対中アプローチへと立ち返る必要がある。これまでのアプローチを完全に覆すのではなく、トランプはうまく機能してきたものは温存し、そうでないものだけを変化させるべきだ。

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