1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

アメリカ社会を分裂させた終末論
―― ドナルド・トランプに政治的に向き合うには

2017年1月号

アリソン・マックイーン スタンフォード大学准教授(政治学)

トランプがキャンペーンで用いてきた終末論にとらわれ続ければ、政治への参加を断念してもはや打つ手はないと諦念を抱くか、世界を善と悪で区別し、自分とは意見の違うものを中傷し、自らが信じる最終的な正義を暴力に訴えてでも実現しようとするようになる。こうしたビジョンがかつてヨーロッパで宗教戦争を引き起こし、現在はイスラム国(ISIS)を戦闘へ駆り立てている。これと似たレベルの二極化が今回の米大統領選挙キャンペーンによってアメリカ社会でも生じている。極右のスティーブン・バノンが首席戦略官・上級顧問に指名されたことで、アメリカ人は人種や宗教的な憎しみを公言するライセンスを得たと感じているかもしれない。われわれは心理枠組みを変えなければならない。トランプの勝利によって終末の世界に向かうと考えてはならない。トランプに反対する勢力は、現状を終末論ではなく、悲劇としてとらえ、マックス・ウェーバーが言うように「あらゆる希望が潰えたときにも、勇気を失わないしっかりとした心をもたなければならない」。・・・

仏大統領選挙の行方
―― 混乱するフランス政治とロシア

2017年1月号

デヴィッド・カディアー ジョンズ・ホプキンス大学 フェロー(環大西洋研究センター)

これまで長い間、外交政策部門については手堅いコンセンサスが存在したフランスでも、いまやロシア政策をめぐって合意が揺るがされている。特に仏露関係がフランスの大統領選挙の争点の一つに浮上している。極右勢力のポピュリスト政党、国民戦線はロシアとのイデオロギー・組織・財政的なつながりをもち、かなりの支援を受けていることで知られている。マリーヌ・ルペンはおそらく2017年春の選挙で2次投票へ進むと考えられている。問題はルペンと大統領を争うと予想される共和党の指導者たちも「ロシアに対してこれまでとは違う路線をとるべきだ」と主張していることだ。共和党はウクライナ危機後に欧州連合(EU)がロシアに課した経済制裁の解除を求め、2016年4月には非拘束とはいえ、対ロシア経済制裁の緩和に向けた議会決議の採択を主導している。共和党のフランソワ・フィヨンは自らの外交提案の中核の一つに「ロシアとの和解」を据えている。・・・

「イスラム国」後のイラク
―― 解放後になぜ混乱が待ち受けているか

2016年12月号

ベラ・ミロノバ ハーバード大学国際安全保障フェロー
モハンマド・フセイン イラク石油リポート クルド支局副ディレクター

イスラム国の台頭によって、水面下に抑え込まれてきたイラクの民族・宗派対立が表面化し、再燃しつつある。モスルをイスラム国(ISIS)の支配から解放する作戦が進められるなか、この武装集団を打倒した後のイラクがどのような状態に陥るかが問われ始めているのはこのためだ。スンニ派対シーア派の対立だけではない。アラブ人とクルド人の対立が先鋭化する一方で、クルド人勢力、シーア派、スンニ派など、同じ民族・宗派集団の内部対立も再燃している。しかも、シーア派とスンニ派の対立がトルクメン人コミュニティに、クルド人勢力内の対立がヤジディ教徒コミュニティに飛び火している。こう考えると、イラクからイスラム国を締め出しても、おそらくイラクにおける武装集団の数が減ることも、社会暴力のリスクが低下することもないだろう。イラクの混乱は収束へ向かうどころか、これまでイスラム国が支配してきた地域で新たに暴力的な抗争が起きることになる。・・・

エリートを拒絶した英米の有権者たち
―― ブレグジットからトランプの勝利まで

2016年12月号

ダグラス・マレー  英ヘンリー・ジャクソン協会  アソシエート・ディレクター

キャメロンとクリントンは、これまでの経済政策が多くを犠牲にして一部の人に有利な状況を作りだしていることに対して満足のいく解決策を示せなかった。仮にクリントンが大統領に選ばれていても、大衆の不満が聞き入れられただろうか。そうはならなかったはずだ。大衆の懸念に軽く同意することはあっても、大統領になれば、この問題への対応を試みることは、ほとんど、あるいは全くなかっただろう。「エリートが自分たちの懸念に耳を傾けることはない」と考えられている環境で、緊急ボタンを押すのは正当な行動だし、おそらくは有権者として唯一の責任ある行動だったかもしれない。イギリスの大衆にとってのエリート主義のシンボルは欧州委員会だったが、アメリカの大衆が選挙でターゲットにしたエリートはヒラリー・クリントンだった。

凋落する日本の大学教育
―― 負の連鎖を断ち切るには

2016年12月(Web公開論文)

デビン・スチュワート カーネギー倫理国際関係協議会シニアフェロー

日本企業の採用担当者からみれば、大学は人材を供給してくれる存在にすぎない。彼らは学生が大学で何をしたかよりも、大学名に注目する。成績さえ無意味とみなされる。だから学生は勉強しようという気にならないし、教員は教えようという気にならない。その結果、大学は学生にとって「レジャーランド」になっている。だが、大学3年になると、恐ろしい就職活動が始まる。これが「心に一生の傷を残す」と学生たちは言う。日本の教育は、就職活動を軸に構成されていると言ってもいい。だが、教育システムは、(経済や社会の)ダイナミズムを強化する大きなポテンシャルを秘めているし、世界における日本の役割を擁護し、国内経済の躍動性を高めるうえでも、質の高い教育が不可欠だ。日本の大学は学生たちのクリティカル・シンキング(批判的思考)、イノベーション、グローバル志向をもっと育んでいく必要がある。

日本の「長時間労働」と生産性

2016年12月(Web公開論文)

エドアルド・カンパネッラ ウニクレディト銀行 ユーロ圏エコノミスト

経済協力開発機構(OECD)によると、週の労働時間が50時間以上に達する日本の勤労者は全体の13%。イタリア人やドイツ人でこれほど長時間働いているのは労働力人口の約4%にすぎない。こうしたワーカホリック(仕事中毒)ぶりが、日本人の健康と生産性を損なっている。過労死の問題だけではない。経営側は、長時間労働が生産性を低下させるリスクを伴うことを認識すべきだ。少ない人材をできるだけ働かせようとするよりも、社員がもっと効率的に働けるようにし、仕事へのやる気の持たせ方を変化させるべきだ。「社員がもっと効果的に働けるようにし、与えられた目標を、できるだけ少ない残業時間、あるいは残業なしで達成した人に報い、部下に残業させた管理職にはペナルティを課す」。そうした慣習が当たり前になるようにすべきだろう。ワークスタイルを見直せば、女性の労働参加を促し、出生率も上昇し労働力も増大する。この方が金融緩和を何度も繰り返す以上に、国内総生産(GDP)を押し上げる効果は高いはずだ。

貿易の停滞と海運産業の再編
―― 停止した国際貿易の成長

2016年11月号

マーク・レビンソン
米ジャーナリスト

貿易が大きく拡大する時期には貨物運賃が上昇するため、海運会社はより大きく、より高価な船舶を発注する。しかし3―4年経って船が完成するころには経済状況が様変わりしていることも多く、過剰な積載容量を抱え込んで運賃が低下し、拡大路線をすすめた海運会社が破綻することも多い。現在起きているのはこうした海運業界につきものの景気の波だが、そこに新たな要素が加わっている。2008―2009年に西半球・ヨーロッパならびに一部アジア地域をおそった金融危機の影響で、第二次世界大戦以降初めて、国際貿易の成長がとまってしまったことだ。巨額の損失を計上して経営破綻し、買収・合併され、合弁事業化されるケースが相次いでいる。2015年には、コンテナ取引量はオークランドで5%近く、東京で6%、シンガポール、ハンブルク、香港では約9%と各港で落ち込んだ。コンテナ海運業界の波乱は短期間では終わらないだろう。

ドゥテルテ大統領の挑戦
―― マニラの強権者の思惑を検証する

2016年11月号

リチャード・ジャバド・ヘイダリアン
デ・ラ・サール大学准教授(政治学)

強気のアウトサイダーだったドゥテルテは、フィリピンの有権者たちのエスタブリッシュメント層に対する反発をうまく追い風にして、大統領ポストを射止め、その後、瞬く間に権力基盤を固めていった。最近の調査では、ドゥテルテの支持率は91%という、空前のレベルに達している。彼の「対麻薬戦争」にいくら世界が懸念を示しても、外交的にはあり得ない発言を繰り返して非難されても、国内の人気や影響力が衰える気配はない。「フィリピンの抱える根本的な問題を解決できるのは強気で断固としたリーダーだけだ」という民衆の意識が高まっているためだ。ドゥテルテは、欧米でどう思われようと、残虐な麻薬取締りで民衆の支持が得られる限り、路線を見直すことはないだろう。公正に言えば、ドゥテルテは麻薬撲滅以外にも、環境、交通渋滞、インフラ整備など、さまざまな領域で積極的な取り組みをみせている。外交領域では、アメリカとフィリピンの関係の「ニューノーマル」を確立することを決意しているようにみえる。・・・

OPEC減産合意の意味合いを問う
―― なぜ大きな価格上昇が起きないか

2016年11月号

ジェフ・コルガン ブラウン大学ワトソン研究所准教授

2016年9月、石油輸出国機構(OPEC)は、メンバー諸国の原油生産総量を日産74万バレルに制限することに合意したが、各国がどの程度の減産をするかについての詳細は11月30日の会合で決めるとされている。現実には1982年以降、OPECは生産目標に合意しても、その96%を守っていない。仮に詳細な合意が11月に成立し、順守されたとしても、世界の石油生産総量の1%足らずが減少するにすぎない。この程度の減産で原油価格が大幅に上昇するとは考え難く、多少価格が上昇しても、非OPECの産油国が増産を行い、当初の価格上昇は相殺される。しかも、原油価格が1バレル60ドルを超えれば、アメリカのシェール石油産業が再び勢いを取り戻す。これはOPEC、特にサウジがまさに回避したいシナリオだ。では、なぜOPECは減産の大枠合意を発表するという行動に出たのか。・・・

トランプ後もポピュリズムは続く
―― なぜ欧米でポピュリズムが台頭したのか

2016年11月号

ファリード・ザカリア 「ファリード・ザカリアGPS」(CNN)のホスト

欧米世界ではポピュリズムが着実かつ力強く台頭している。先進国が直面する低成長や移民流入が作り出す問題に慎重に対処していくには、一連の対策を通じて、全般的に少しずつ状況を改善させていくしかない。しかし、有権者はより抜本的な解決策とそれを実施できる大胆で決意に満ちた指導者を求めている。このために多くの人が、いまや大差ない政策しか打ち出せない伝統的な政党に幻滅し、ポピュリズム政党やポピュリストの指導者を支持している。バーニー・サンダースからトランプ、ギリシャの急進左派連合から、フランスの右派政党・国民戦線はその具体例だ。アメリカ人の多くは、トランプ現象は特有のもので、より大きくて永続的なアジェンダを映し出しているわけではないと考えているが、それとは逆が真実であることを示す証拠が出揃いつつある。・・・

1 / 17512345...102030...最後 »

Page Top