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論文データベース(最新論文順)

リベラルな国際主義の再生を
―― 貿易の自由化と経済安全保障

2023年6月号

ピーター・トルボウィッツ ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 教授(国際関係論)
ブライアン・ブルグーン アムステルダム大学教授(国際政治経済)

冷戦が終わると、共産主義の膨張主義や核戦争に対する懸念が後退し、欧米の有権者は、かつては論外とされてきた政党や候補、政策に賭けることも厭わなくなった。反グローバリズム感情が台頭し、貿易自由化や多国間協調を支持する政党への欧米有権者の支持率は50%近くも低下した。その結果が、ブレグジットであり、ドナルド・トランプだった。しかも冷戦後には、極右、極左勢力が、反グローバリズムと社会的保護政策を支持し、労働者階級の有権者を取り込もうと試み、これに成功した。欧米社会の反グローバリズム感情を抑えるには、国際政策が国内における労働者階級の家庭に恩恵をもたらすことを実感できるようにしなければならない。世界に国を開くことと国内の経済安全保障を守ることの間のバランスを取り戻す必要がある。

アメリカは中東をいかに失ったか
―― 米中東戦略の妄想

2023年6月号

リサ・アンダーソン コロンビア大学 名誉教授(国際関係)

ワシントンの中東戦略は「妄想」に過ぎなかった。それは、高潔な意図を抱いた政治家たちが、実際には知識も関心もほとんどない地域に「壮大なアイデアを押し付ける」ことで作り上げられてきた。ワシントンは長年、促進すべき何かではなく、「阻止すべき何か」で、中東をネガティブに定義してきた。現在のアメリカは中東で何を促進したいのか。ワシントンが中東におけるアメリカの国益を定義しない限り、間違ったエンゲージメント政策をとり、再び、何かを阻止することに終始するだけだろう。中国の最近の外交的勝利が示唆するように、そのような阻止戦略で失敗するケースは今後ますます増えていくだろう。

ウクライナ戦争とグローバルサウス
―― 多極世界における途上国の立場

2023年6月号

マティアス・スペクター ジェトゥリオ・ヴァルガス財団 教授(国際関係論)

インド、インドネシア、ブラジルからトルコ、ナイジェリア、南アフリカにいたるまで、世界の途上国の多くは、ウクライナ戦争を含めて、主要国との厄介ごとに巻き込まれるのを避け、将来への保険、リスクヘッジ策をとるようになった。物質的な譲歩を得るためだけでない。自らの地位を高めるためにリスクヘッジ策をとり、多極化を国際秩序における地位向上のチャンスとして前向きに捉えている。欧米は、グローバルサウスの主要国が北京やモスクワの政策に幻滅しつつあることが作り出す機会にもっと注目すべきだろう。主要途上国は、気候変動対策だけでなく、世界経済の混乱を阻止する上でも、中国の台頭やロシアの復権を管理していく上でも欠かせない存在だ。・・・

大国間競争とインドの立場
―― 対話促進者としてのポテンシャル

2023年6月号

ニルパマ・ラオ 元駐米インド大使

他の国家と同様に、自国の利益に即して行動するインドにとって、ロシアとのパートナーシップを断ち切れば、国益を損なうことになる。当然、ロシアを孤立させることを求める欧米の要請には応じない。インドはすべての国々と協調する権利をもっている。北京に対するワシントンの対抗バランス形成の一翼を担うこともない。米中対立では中立の立場を維持している。インドは14億人以上の人口を抱え、急速に経済成長を遂げている国であり、ほとんどすべての国と貿易を行い、良好な関係を維持している。世界の緊張が高まるなかでも、インドは世界に成長を広げ、対話を促進していくポテンシャルをもっている。

多極世界という神話
―― 多極構造でも二極構造でもない世界

2023年6月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマスカレッジ教授(政治学)
ウィリアム・C・ウォルフォース ダートマスカレッジ教授(政治学)

米中が二大国であることは間違いないが、多極構造を成立させるには、ほぼパワー面で互角の大国が、少なくとも、もう一つ存在しなければならない。だが、フランス、ドイツ、インド、日本、ロシア、イギリスなど、3位に入る可能性のある国は、いずれも米中と互角のパワーをもつ国とは言えない。中ロ関係がアップグレードされても、この二カ国は地域的軍事大国に過ぎない。地域的なバランシングが可能な二つの大国が一緒になっても、グローバルなバランシングはできない。そのためには、ロシアと中国がともにもっていない、そして、すぐにはもつことができない軍事力が必要になる。現状は、部分的ながらも、依然としてアメリカの一極支配構造にある。

中ロ関係の真実
―― 水面下で進む包括的パートナーシップ

2023年6月号

アレクサンダー・ガブエフ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター所長

ウクライナ戦争と欧米の対ロ制裁は、ロシアの経済的・技術的な対中依存をかつてないレベルへ引き上げている。軍事であれ、金融であれ、両国はかなりの協力関係にある。実際、習近平とプーチンが3月の会談で新たな軍事協定について折り合いをつけたと考える理由は十分にある。中国はロシアに対するさまざまな手立てをもっているが、対米関係の軋轢ゆえに、中国にとってロシアは「必要不可欠なジュニアパートナー」でもある。中国に、これほど多くの恩恵をもたらしてくれる友好国もない。地球上もっともパワフルなアメリカとの長期的な対立に備えつつあるだけに、習近平は、あらゆる支援を必要としている。

気候変動と海面レベルの上昇
―― 温暖化リスクを伝えるもう一つの指標

2023年5月号

アリス・C・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境担当)
レイフ・ポマランス 元国務副次官補(環境・開発担当)

海面上昇は、海岸線の侵食、、下水の逆流、沿岸コミュニティの水没と集団移住など、気候変動が引き起こす問題を気温上昇以上に具体的に想起させる。気温上昇を1・5度に抑えることの重要性をより理解しやすくするために、各国は気温だけでなく、海面上昇の上限を設定すべきではないか。IPCCの推定では、気温上昇が1・5度以内にとどまれば、2100年までに世界の海面が上昇する中間値は約36―76センチに収まるとされるが、温室効果ガスの排出量がほとんど減少しなければ、アメリカでは2100年までに海面が106―213センチ上昇する危険がある。すでに、国連安全保障理事会は2023年2月に、海面上昇に焦点を絞った会合を開催している。

生成AIとプロパガンダ
―― 高度な偽情報にどう対処するか

2023年5月号

ジョシュ・A・ゴールドスティン ジョージタウン大学 セキュリティー・新領域技術センター リサーチフェロー
ギリシュ・サストリー オープンAI 政策チーム リサーチャー

チャットGPTなどの対話型AIは、人間が書いた文章かAIによるものかが分からず、大量生産が可能なコンテンツを安価に生成する能力をもっているために。プロパガンダに悪用される恐れがある。実際、AI生成プロパガンダでオンライン空間を埋め尽くせば、疑念の種をまき、真実を見極めるのを難しくし、人々は自分の観察さえ信用できなくなる。社会と共有する現実への信頼を失う危険もある。「こうした言語モデルのアクセスを誰が管理するのか、誰を危険にさらすことになるのか、AIに人間の会話を模倣させるのは望ましいのか」。政府、企業、市民社会そして市民は、こうしたモデルの設計や使用法、そしてそれがもたらす潜在的なリスクを管理する方法について、発言権をもつべきだ。

中国技術革命の本質
―― 大量生産と「プロセス知識」

2023年5月号

ダン・ワン ギャベカル・ドラゴノミクス テクノロジーアナリスト

最先端の技術を持ちながら、なぜアメリカは中国に世界のソーラー産業覇者の座を奪われてしまったのか。理由は、研究開発やイノベーション、そして製品ブランディングなどの付加価値の大きい部門を重視する一方で、生産プロセスをアウトソースして軽視してきたからだ。一方、中国は、限界まで生産能力を高めることで、大量生産そのものがもたらす学習プロセスを技術イノベーションに組み込んで進化させた。このような「プロセス知識」と呼ばれるスキルが、中国を技術イノベーションの中枢へ押し上げた。先鋭的な科学技術だけでなく、中国のように労働力を活用し、製品をより良く、効率的に製造することをアメリカは学ぶべきだ。製造プロセスは、発明や研究開発というスリリングな領域のサイドショーではない。それは、技術進化に不可欠の要素なのだ。

イギリスは統一を維持できるのか
―― 構成地域ナショナリズムと連合王国

2023年5月号

フィンタン・オトゥール プリンストン大学教授

ウェールズ、スコットランド、北アイルランドだけではない。イングランドの有権者も、これまで、イギリスのアイデンティティに埋もれていたイングランド・ナショナリズムを主張するようになった。一方で、イングランドの政治家と有権者が推進したブレグジットは、北アイルランドとスコットランドでのイギリスに対する不満を増幅した。こうして、スコットランドでは、住民の過半数(52%)が独立を支持し、北アイルランドでも、イギリスを離脱してアイルランドに加わりたいという人が劇的に増えている。重層的な課題が表面化するなか、イギリスは国際秩序における位置づけだけでなく、今後も一体性をもつ国とみなされ続けるかどうかもはっきりしなくなっている。かつて世界を形作った国家は、もはや自国の形態さえ保つことができないのかもしれない。

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