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2026年9月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2026年9月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2026年9月号 目次

イラン戦争とトランプの迷走

  • イラン戦争の教訓
    トランプの失策とパウエル・ドクトリン

    コリ・シェイク

    雑誌掲載論文

    もちろん、戦争は複雑で状況に左右される。トランプ大統領が「パウエル・ドクトリン」の指針に従っていれば、イラン戦争ははるかにうまく進んだと断言することはできない。それでも、ドクトリンの基準を無視したことが、作戦をさまざまな形で失敗へと追い込んだことは疑いようがない。トランプは新たな戦争のあり方を見いだしたのではなく、敗北する新たな方法を見いだしたに過ぎない。パウエル・ドクトリンの核心は、文民指導者が単に「何かをする」ためだけに軍事力へ訴えることを抑制することにあった。パウエルは、軍事力が極めてまれにしか行使されず、行使される場合も、必ず外交、経済、同盟関係など他の国力の手段と統合された戦略の一環として用いられることを望んでいた。

  • イラン軍と抵抗の枢軸
    ネットワークのレジリエンス

    ピーター・ソールズベリー、ヴォルフ=クリスティアン・パエス、ヘンリー・トンプソン

    雑誌掲載論文

    イスラエルによるハマス攻撃やヒズボラに対する破壊作戦、シリアのアサド政権の崩壊、さらにはアメリカとイスラエルによる2月以降のイランに対する大規模な空爆を経ても、イランを中核とする抵抗の枢軸(ヒズボラ、フーシ派、イラクのシーア派武装勢力)は、追い込まれながら、結局は再生し、復活している。指導者が殺害され、製造拠点や倉庫が爆撃され、補給路が遮断されても、これらの勢力は結局、再生する。分散化された指導体制、供給網・訓練網・技術共有によって再編と適応を続けているからだ。イランおよび「抵抗の枢軸」を構成する勢力を完全に打倒するのはおそらく不可能だが、彼らが突きつける脅威を抑えることは依然として可能だろう。

  • 変貌したイラン国家の未来
    神権国家からナショナリスト国家へ

    ナルゲス・バジョグリ、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    戦争を経て誕生した新しいイランは、神権体制ではなく、ナショナリズムによって規定される権威主義国家へ変貌している。この国は、戦争に勝利したと確信している新たな支配階級である将校集団の自信とテクノクラートの精神によって特徴づけられている。戦争を終結させ、イランの戦果を固め、経済制裁の解除よりも、ホルムズ海峡を通過する海上交通への課金による経済的利益確保への道を開く合意を求めている。戦争はイランを弱体化させるどころか、むしろ力を与えたという確信に根ざす自信が、新しいイランの国際的な展望を形作っている。

  • イランの戦略目的は何か
    戦闘ではなく、戦争に勝利する

    ナルゲス・バヨグリ

    Subscribers Only 公開論文

    イランは、アメリカとイスラエルの空爆を生き延びているだけではない。戦略レベルで、敵対国を深刻な経済的・政治的問題に直面させている。テヘランの最終的な戦略目的は、米軍が湾岸地域に駐留し続けることの政治的代償を、維持できないほど高くすることにある。イラン・イラク戦争の経験から、テヘランは攻撃を耐え、戦力を分散し、再編成する能力を強化してきた。多くの高官が殺害されたにもかかわらず、革命防衛隊が機能を維持できているのもこのためだ。すでに、湾岸諸国は対米連携の価値について真剣に疑問を抱き始めている。

  • 中東の安定とシーア派の未来
    シーア派の国家への統合を

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    軍事的には、抵抗の枢軸はいまや粉砕されている。この枢軸を設計したイランの戦略家たちは高齢化し、アラブ世界のパートナーの多くは、イスラエルの攻撃で殺害されている。だが、抵抗の枢軸を支えてきたイラク、レバノン、シリアに残されたシーア派コミュニティに、それぞれの国で政治的未来、つまり、国境を越えたイデオロギーに代わる国内での役割と経済的機会を提供しない限り、中東の安定は再び脅かされる。生き残るためにシーア派が国境を越えた宗派的な共同体政治を模索すれば、広範な地域が不安定化する。シーア派が新しい中東秩序に利害をみいだせなければ、イラン封じ込めも難しくなる。

  • イラン戦争のグローバルな帰結
    対米不信と中国の影響力拡大

    イアン・ブレマー、フィラス・マクサド

    Subscribers Only 公開論文

    イラン戦争を経て、中東諸国は、イランとイスラエルの脅威を軸に対立する二つの陣営に分かれつつある。一方には、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)を中核とし、アメリカと連携する「アブラハム連合」があり、その対極にはサウジ、トルコ、パキスタンなどのスンニ派の主要国を中核とするイスラム連合が存在する。後者はイランだけでなく、イスラエルも脅威とみなしている。中東における対米不信が高まるなか、戦後の中東でより大きな役割を果たせる立場にあるのが中国だ。特に、貿易、エネルギー、デジタルインフラの分野で、中国と地域諸国との協力が進むだろう。「アメリカはもはや信頼できず、ワシントンへの長期的な依存を減らすことを戦略的必要性」とみなしているのは中東諸国だけではない。ヨーロッパ、アジアでも、この認識が広がりつつある。

  • 中東におけるアメリカの未来
    軍事的成果と戦略的敗北?

    デーナ・ストラウル

    Subscribers Only 公開論文

    イラン戦争で圧倒的なパワーをみせつけつつも、アメリカは戦略目標を達成できず、中東におけるアメリカへの信頼も失墜している。実際、イラン戦争でアメリカは兵器備蓄を危険なまでに浪費し、もはや、同じレベルの戦争を現状で戦う力は残されていない。米市民は、これ以上の中東関与を望んでいないし、湾岸諸国もアメリカ以外にも防衛パートナーを求め始めている。アメリカにとって、現在の中東における最大の問題は、軍事的成果を戦略的勝利に結びつけられずにいることだ。今回の戦争は、アメリカパワーの決定的な矛盾を象徴するものとして歴史に刻まれることになるのかもしれない。

核兵器は必要ではない

  • 核抑止力の崩壊?
    問われる核の存在理由

    ローズ・ゴットモーラー

    雑誌掲載論文

    もはや核戦力では、安価なドローンによる敵の集中攻撃を抑止できない。この事実を、核保有国と核兵器の開発を望んでいるかもしれない非核保有国は、改めて認識する必要がある。実際、イスラエルの核抑止力は、イランの通常兵器による攻撃に対する歯止めにはならなかった。ウクライナに攻撃された核大国ロシアも同様だった。核保有を目指す国々は、代わりに通常兵器で防衛力を強化し、通常兵器やハイブリッド攻撃に対するレジリエンスを高める方法を模索すべきだろう。核兵器は、安全保障を確実にするどころか、新しく不安を抱かせるような危険を招き入れるだけかもしれない。

  • 形骸化した抑止力
    多様化する攻撃の領域と能力

    アンドリュー・クレピネビッチ

    Subscribers Only 公開論文

    冷戦後にアメリカが圧倒的な軍事的優位をもっていた時代は終わり、すでにわれわれは、ロシアと中国という二つのリビジョニスト国家と競い合う時代に足を踏み入れている。軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、新しい軍事能力の登場によって、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、ハイリスクの環境において人間がどのように行動するかに関するこれまでの理解が覆され、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。これらが重なり合うことで、厄介で不可避の結論に行き着く。現在の最大の戦略的課題は大国間抗争の時代への回帰でもなければ、先端兵器の拡散でもない。それは、抑止の形骸化に他ならない。

  • 全面戦争の時代へ
    包括的紛争時代の多様な抑止力

    マーラ・カーリン

    Subscribers Only 公開論文

    戦争は人間と知的マシンとが協力して、よりスピーディーに展開され、無人機(ドローン)などの自律型ツールに大きく依存するようになった。宇宙とサイバー空間がますます重要され、しかも、「紛争勢力が多様化」している。国、テロ組織、武装集団が入り乱れているだけでなく、ウクライナ国軍にはスペイン内戦以来と思われる規模の国際的義勇兵が参加している。世界が目撃しているのは、過去の理論家が「総力戦」と呼んだものに似ている。だが、新テクノロジーと経済のグローバル化ゆえに、現代の戦争はかつての総力戦の焼き直しではない。全面戦争の時代における抑止をより信頼できるものにするには、戦争の定義が変化し、さまざまな抑止が必要になっていることを理解しなければならない。

  • 未来の戦争にどう備えるか
    不確実な未来と歴史の教訓

    スティーブン・ピーター・ローゼン

    Subscribers Only 公開論文

    現在のアメリカの安全保障にとって最大の脅威は何か。中国か、ロシアか、イスラム過激派か。核兵器は時代遅れなのか、それとも未来なのか。このような不確実な状況では、将来に向けてどのような兵器を調達すべきかさえはっきりしない。但し、歴史を顧みれば、既知の敵との戦争準備に成功した国はクラウセヴィッツ型か孫子型に分けることができる。露仏戦争の際のロシアなど、クラウセヴィッツ型は、自国の能力と敵の能力についての総合的な情報に基づき戦争の準備をする。一方、冷戦期の米海軍の対ソ潜水艦戦略など、孫子型は、敵についての詳細な研究に重点を置いて戦争に備える。「最近の過去にばかり固執すれば予測を誤るのは避けられない」とみなす考えは正しいかもしれない。しかし、最近の過去を含む歴史の分析は、依然として、未来の多様な不測の事態に対応する計画立案の助けになる。

  • 驚異的なドローン革命
    ウクライナからいかに学ぶか

    ジョン・ファイナー、デイヴィッド・シャイマー

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナ軍の前線部隊は、ドローンの戦場におけるパフォーマンスを軍需企業に伝え、企業側はこれを基にシステムを常に改善し続けている。アメリカを含む世界のほとんどの国々は、兵器のフィードバックと改善という領域でウクライナに大きな後れをとっている。すでにウクライナとロシアは、ドローンなどの防衛技術にAIを徐々に組み込むことで、イノベーションをさらに進化させている。もしアメリカがウクライナ支援から手を引けば、実績のある防衛技術や戦場における知見、ロシアの軍事パフォーマンスに関するデータへのアクセスを失う危険がある。

  • 自律型戦争の夜明け
    ドローンを制御するAI

    エリック・シュミット、グレッグ・グラント

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアもウクライナも、ハードウエア、ソフトウエアそして戦術をよどみなく改良し続けているために、この戦争は息を呑むようなスピードで進化している。膨大な数の監視用ドローンを飛ばすことで、ほぼすべての部隊の動きが可視化され、前線付近で動くものは、それがなんであれ、数分以内に攻撃される。ドローンが敵のドローンと戦うケースも増えている。自律型ドローンスウォーム(大編隊)の攻撃を調整できるAIの開発がいまや焦点とされている。戦争の第1段階はハードウエアの有無が戦況を左右し、双方が新しいタイプのドローン、ペイロード、弾薬に投資したが、次の段階はソフトウエアが焦点になるだろう。

  • 核廃絶か、止めどない核拡散か

    ジョナサン・シェル

    Subscribers Only 公開論文

    核不拡散が達成不可能とみなされれば、アメリカ政府は核拡散を認め、「核武装した世界」に向けた安定的移行プロセスの管理という目標を掲げるようになるかもしれないし、現実に、より多くの核保有国が存在する国際秩序へと世界は向かっている。核不拡散政策と核の保有による抑止戦略を両立させようとするアメリカの核政策は、道徳的にも、軍事・外交的にも、そして法的にも一貫性を欠く自己破綻の処方箋にほかならない。実際には抑止論で正当化される核の兵器庫の存在こそが核拡散を刺激しているのだから、抑止政策や核の保有と核不拡散政策とは両立し得ず、本気で核の拡散を阻止するには核廃絶を目標とするしかない。

  • 核のない世界は実現できる

    アイボ・ダールダー、ジャン・ローダル

    Subscribers Only 公開論文

    世界はより多くの核保有国と核分裂物質、警備体制が十分ではない原子力施設の増殖に特徴付けられる時代へと足を踏み入れつつあり、その結果、核を入手しようとしているテロリストの試みはより簡単になり、核兵器が現実に使用されるリスクも高くなっている。核兵器を暫定的に保有する目的を「他のアクターによる核兵器の使用を阻止することに制限し、アメリカが保有する核弾頭の数を1千個へと削減し、世界におけるすべての核分裂物質の所在を明らかにし、それを監視するための包括的な核管理レジームを立ち上げ、核廃絶に向けた最大限の国際的連帯をとりまとめていくべきだ。いま、核廃絶の道を歩みださなければ、いずれ核兵器が本当に使用される日がやってくるリスクを受け入れざるを得なくなる。

  • 核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

    チャールズ・ファーガソン

    Subscribers Only 公開論文

    非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

民主主義の再生はあるか

  • 民主主義の修復、それとも革命
    市民議会で民主主義を救えるか

    シェリ・バーマン

    雑誌掲載論文

    イエール大学の研究者、エレーヌ・ランデモアは、もはや選挙では「政治腐敗に手を染めやすい職業政治家を生み出すだけで、民主主義は機能しない」と断じ、むしろ、「市民議会における直接統治」の可能性に期待を託している。だが、ランデモアの著作を取り上げた、評者のシェリ・バーマンは、選挙や政党を廃止して代議制民主主義を置き換える立場には懐疑的な立場をとり、必要なのは、そのような革命ではなく、むしろ、選挙制度改革・市民教育・グラスルーツ連帯の再構築を含む代議制民主主義の「現実的な修復だ」という立場を示している。

  • 民主主義は市長たちが守る
    独裁者の最大の敵

    ニーナ・ハチジャン

    雑誌掲載論文

    いまや世界の都市と市長が、独裁者から民主主義を守る重要な防波堤の役割を果たしている。権威主義的な国の指導者は、多元主義や市民参加そして民主主義の牙城である都市と市長たちを目の敵にし、予算削減や政治的弾圧の標的にしている。一方、市長たちは国境を越えた連携を模索し、民主主義の後退に抵抗している。中央ヨーロッパの市長たちが組織した「自由都市協定」には、すでにアジアやアメリカの都市の市長たちも参加している。世界の市長たちは、その行政地域における個人の権利や民主主義の規範・制度を守ることで、権威主義者たちが国家支配を固めるのを阻止している。

  • ハンガリーを超えて
    世界の民主化運動が学ぶべき教訓

    ロリーヌ・レーデイ

    Subscribers Only 公開論文

    「政府に友好的なオリガルヒを通じて経済的影響力を行使し、党に忠実な支持者を責任者に任命して社会・文化・メディア組織を支配する」ビクトル・オルバンの権力システムは、国内で「競争的権威主義」体制を築こうとする世界の独裁者たちのモデルとされてきた。だが、この支配体制にも、権威主義政権の与党に有利な選挙の区割りと制度にも、落とし穴は存在した。民主派は、野党勢力を結集し、与党が作り出した社会的分断を逆手にとり、その政治腐敗、悪化する行政サービスや高インフレへの対応に失敗したことを選挙の争点に据えた。ハンガリーでの民主派勢力の成功は、競争的権威主義体制下にある各国の野党が学ぶべき教訓を示している。

  • トランプと競争的権威主義の台頭
    米民主主義は崩壊するのか

    スティーブン・レヴィツキー、ルーカン・A・ウェイ

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの司法省、連邦捜査局、内国歳入庁(IRS)などの主要政府機関や規制当局をトランプの忠誠派が率いるようになれば、政府はこれらの政府組織を政治的な兵器として利用できるようになる。ライバルを捜査と起訴の対象にし、市民社会を取り込み、同盟勢力を訴追から守れるからだ。こうして競争的権威主義が台頭する。政党は選挙で競い合うが、政府の権力乱用によって野党に不利なシステムが形作られていく。政治家、ビジネス、メディア、大学、市民団体も権威主義政権の大きな権限と圧力を恐れて、立場を見直して声を潜める。競争的権威主義の台頭は、アメリカだけでなく、世界の民主主義にとって重大で永続的な帰結をもたらすことになるだろう。

  • 新しい独裁者たち
    なぜ個人独裁国家が増えているのか

    アンドレア・ケンドール=テイラー、エリカ・フランツ、 ジョセフ・ライト

    Subscribers Only 公開論文

    極端に私物化された政治体制が世界各地に出現している。(プーチンのロシアや習近平の中国など)広く知られているケースを別にしても、バングラデシュからエクアドル、ハンガリーからポーランドまでの多くの諸国で権力者が自身に権力を集中させようと試みている。権力者個人に権力を集中させる政治システムは、冷戦終結以降、顕著に増加しており、この現象は大きな危険をはらんでいる。世界が不安定化するなかで、多くの人が、強権者の方が激しい変動と極度の混乱に対するより優れた選択肢をもっていると考えるようになれば、民主主義の基層的価値に対する反動が起きかねないからだ。実際、社会の変化と外からの脅威に対する人々の懸念が大きくなるとともに、秩序を維持するためなら、武力行使を躊躇しない強権的で強い意志をもつ指導者への支持が高まっていく恐れがある。

  • 追い込まれた民主主義
    非自由主義インターナショナルの台頭

    ニック・チーズマン、マティアス・ビアンキ、ジェニファー・シール

    Subscribers Only 公開論文

    非自由主義の権威主義国家が台頭を続ける一方で、民主主義国家は衰退している。2025年には45カ国が民主主義から離れて、独裁体制に移行し始めた。いまや完全な民主国家とみなせるのは、世界にわずか29カ国しか残されていないという見方もある。非自由主義の指導者たちの共通項は、権力を個人に集中させ、抑制と均衡を弱体化させ、政治的操作のために偽情報を利用することだ。さらに、多元主義を空洞化させ、反対勢力を非合法化することで、政治的権利と市民的自由を後退させる。しかも、国境を越えた非自由主義のネットワークを形作っている。すでに、世界のパワーバランスは独裁体制にとって有利な方向へ傾きつつある。民主国家連合に流れを覆す方法はあるのか。

  • 文化と民主主義の未来
    何が人々の世界観を左右するのか

    スザンヌ・ノッセル

    Subscribers Only 公開論文

    戦争、経済競争、政治対立に引き裂かれた世界では、文化の役割などサイドショーにすぎないと思えるかもしれない。だが、民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。独裁国家は、自分たちの立場を外国に拡散するために、まず、国の物語やイデオロギーを自国の民衆に押しつけるために、テクノロジーを駆使したトップダウン型の努力を続けている。こうした独裁国家の試みにもっとも効果的に対抗できるのは、欧米政府の文化担当官ではない。むしろ、リスクのある環境で日々仕事をしている作家、芸術家、キュレーターたちだ。・・・

  • 選挙と民主主義
    選挙年と有権者の選択

    フランシス・フクヤマ

    Subscribers Only 公開論文

    選挙が提供するのは、政策上の失敗に対する指導者の責任を問い、成功したとみなされる指導者に報いる機会だ。選挙が危険になるのは、単に疑わしい政策を押し付けようとするだけでなく、自由で民主的な基本制度を弱めることを望み、実際に弱体化させる指導者が台頭したときだ。民主主義が衰退していると考えるリベラル派の多くは、この流れを覆すために何かできることはないかと問いかけている。実際には、この問いへの答えは単純で退屈なものだ。仲間とともに投票にいくか、あるいは、もっと積極的に行動したいのなら、民主的な政治家が選挙で勝利できるように、立場を共有する人々を動員するために活動することだ。「選挙の年」の結果からくみ取るべき教訓は、ポピュリストや権威主義的政治家の台頭は必然ではないということだ。

ロシアの近未来

  • 欧州とロシアの軍事パワー
    変貌した脅威に備えよ

    マイケル・コーフマン

    雑誌掲載論文

    ロシア軍は戦争で大きなダメージを受け、多くの犠牲者を出しているが、それでも、戦前の兵員規模を維持し、ドローンや精密攻撃の能力を高め、防衛産業の生産能力を強化している。北大西洋条約機構(NATO)諸国は、ロシアのお粗末な戦績や、目に見える弱点を理由に油断してはならない。偵察と精密攻撃の両方をリアルタイムで実行できる安価な無人システムや自律型システムが支配する戦場で、どのような作戦行動をとればいいのかをNATOはまったく分かっていない。ヨーロッパはロシア軍の弱点を過小評価せず、ウクライナ戦争の教訓、特に大量ドローンと精密攻撃への対応を踏まえて、将来の抑止と防衛体制を早急に見直す必要がある。

  • プーチンは停戦を武器にする
    交渉をめぐるロシアの魂胆

    マイケル・キマージュ、ハンナ・ノッテ

    雑誌掲載論文

    ロシア国内での戦争への批判の高まりを警戒するプーチンは、戦闘を続けるよりも、むしろ、停戦、あるいは停戦のような取り繕いの方が好ましいと考えるかもしれない。それでも、彼がウクライナの属国化という戦争目的を放棄することはあり得ない。ロシアが停戦に応じるとすれば、それは、ウクライナや欧米を分断し、優位を得るための手段になると判断した場合だろう。結局、停戦を利用して時間を稼ぎ、ウクライナ国内の不安定化や欧米間の亀裂拡大を試みるはずだ。プーチンの思惑に根本的な変化がない限り、停戦も戦争の次段階への移行を意味するに過ぎないだろう。

  • 再生したロシア軍
    戦闘経験から学習・応用へ

    ダラ・マシコット

    Subscribers Only 公開論文

    2022年にウクライナ侵攻を開始した当時、ロシア兵たちは与えられた任務に必要な訓練さえ受けていなかった。そもそも戦争で戦うことさえ知らされていなかった。指揮系統も正常には機能しなかった。だが、もはや、当時を前提に状況を捉えることはできない。すでにロシア軍は学習組織への変貌を遂げている。モスクワは戦闘経験を蓄積・分析し、そこから得た教訓を軍および国防エコシステム全体に拡散している。戦時経験を体系的に把握し、制度に組み込むとともに、戦後の軍改革につなげようとしている。AI意思決定システムとAI搭載兵器をどのように実戦配備するかの検討もすでに開始している。

  • プーチンの対欧米戦争は続く
    ウクライナを越えた戦い

    アンドレア・ケンドール=テイラー、マイケル・コフマン

    Subscribers Only 公開論文

    プーチンの最終目的は、ウクライナではない。ヨーロッパのポスト冷戦秩序を解体・再編し、アメリカを弱体化させ、彼がふさわしいと考える地位と影響力をロシアがもつ新しい国際システムを形作ることが目的だ。ウクライナでの戦闘が終われば、ロシアはより大胆になり、軍事態勢を立て直せば、ヨーロッパの安全保障秩序を再編するための新たな戦いを始めるだろう。すでにプーチンは、欧米との戦いに備えて、ロシアの社会と経済そして外交政策を大きく変化させている。ロシアの問題は、グローバルな問題でもある。隣国に侵攻し、民主主義社会を攻撃し、国際ルールを破りながらも、制裁から逃れがちだったことは、彼のやり方に追随する者を生み出すと考えられるからだ。

  • ウクライナ戦争の世界化
    「非ヨーロッパ化する戦争」の意味合い

    マイケル・キマージ、ハンナ・ノッテ

    Subscribers Only 公開論文

    ヨーロッパは、何世紀もの間、自国のパワーを対外的に誇示してきたが、いまや非ヨーロッパ諸国がパワーを誇示する舞台となりつつある。ブリュッセル、キーウ、ワシントンは、この新しい現実と折り合いをつけなければならないだろう。北朝鮮など、ロシアに兵士や軍需品を提供する国は、ウクライナを実験場として利用することで、将来自分たちが戦うかもしれない戦争に備えようとしている。戦争の流れを形作るか、戦争を終わらせる交渉に参加することで、ウクライナ戦争後のヨーロッパ形成のプレーヤーに自国を位置づけようとする非ヨーロッパ諸国もある。その多くは、ウクライナの復興にも関与してくると考えられる。

  • ロシアのオーウェル的監視社会
    戦争と『1984』

    ニーナ・フルシチョフ

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアでは何が禁止され何が許されているのか、誰も正確に把握していない。それでも、この4年間であらゆる規制が拡大された。モスクワは、恐怖と不安を蔓延させることで、多くのロシア人を沈黙させるだけでなく、互いを黙らせるように仕向けている。そして、「伝統的な価値の保存」を命じる大統領によって、実質的に西洋文明を構成するすべての要素が拒絶されている。政府の批判派は外国のエージェントとみなされ、弾圧される。この状況のなかで、政治家も市民も、集団的狂気に駆られたかのように抑圧的な規則を次々と生み出している。

Current Issues

  • 米国に台湾を守る気はあるのか
    グレーゾーン戦略の脅威

    ボニー・リン

    雑誌掲載論文

    全面侵攻シナリオだけでなく、中国による軍事演習、海上封鎖、経済制裁、情報作戦などのグレーゾーン戦略が台湾に深刻な脅威を作り出している。こうした「直ちに対抗策に訴えるインセンティブが大きくない」グレーゾーン戦略を放置すれば、北京は大きな代償を支払うことなく、自国に有利な状況へ現状を段階的に変化させていくことになりかねない。この場合、中国は、台湾をめぐって、戦わずして勝利を収める可能性が出てくる。だが、ワシントンがエスカレーションのリスクを引き受ける政治的意思をもっているかどうか、はっきりしない。いまや、台湾を守るために、ワシントンが事態をエスカレートさせ、そのコストを負担する用意があるのかが現実に問われている。

  • 米国と同盟諸国の軍備協調を
    国境を越えた防衛イノベーションを

    コリン・H・カール、トビアス・ヴェストナー

    雑誌掲載論文

    中ロ・北朝鮮・イランという敵対勢力は、防衛産業や技術だけでなく、戦力をめぐる連携を深めている。一方、アメリカと同盟諸国は、防衛力強化を主として国内プロジェクトとして扱っている。だが、現実には、アメリカと同盟国が防衛技術に関して協調することの重要性は高まっている。イラン戦争からも明らかなように、ドローン、AI、自律システム、弾薬などの開発領域で、単独で十分な規模とスピードを得るのは難しいからだ。現在の脅威に対処するには、国内での防衛力強化だけでなく、同盟諸国間の企業、大学、投資家、政府からなるネットワークを利用して、資本、技術的ノウハウ、生産能力、サプライチェーンを集団的に結集していく必要がある。

  • グレーゾーン事態と小さな侵略
    台湾、尖閣、スプラトリー

    ダン・アルトマン

    Subscribers Only 公開論文

    小さな侵略・征服行動の背後には明確な戦略がある。それを取り返すのではなく、仕方がないと侵略された側が諦めるような小さな領土に侵略をとどめれば、あからさまに国を征服しようとした場合に比べて、全面戦争になるリスクは大きく低下する。だが現実には、中国による台湾侵攻、封鎖、または空爆のシナリオばかりが想定され、(金門島・馬祖島、あるいは太平島を含む)台湾が実行統治する島々を中国が占領するという、より可能性の高いシナリオが無視されている。そうした小領土の占領を回避する上でもっとも効果的なのが、(応戦の意図を示す小規模な)トリップワイヤー戦力、特にアメリカのトリップワイヤー戦力だ。だが、そうした戦力が配備されていないために、尖閣、スプラトリー、台湾など、中国との潜在的なホットスポットの多くで抑止力が不安定化している。

  • 習とトランプの駆け引き
    揺るがされる台湾の命運

    リチャード・ハース、デビッド・サックス

    Subscribers Only 公開論文

    中国はトランプ政権の台湾政策を揺るがし、「アメリカが台湾をどう扱うべきか」についての新たな規範を確立しようとしている。アメリカの台湾へのコミットメントを弱めることで、台北を無力化し、自国の影響下に引き込もうとしている。実際、アメリカが台湾へのコミットメントを弱めれば、台北の防衛への決意、地域同盟のネットワークも弱まり、中国に有利な状況が生まれる。これを回避するには、ワシントンは台湾支援の継続と抑止力の強化への意思を明確に示す必要がある。

  • 防衛産業をどう再建するか
    再生に向けた日本の長い道のり

    マシュー・フィンケル

    Subscribers Only 公開論文

    日本の防衛産業が硬直化し、競争力がない理由の一つは、唯一の顧客が予算の乏しい自衛隊だったことに関係がある。だが今や、武器輸出の制限が緩和され、そうした「現状」が驚くべきスピードで崩れ始めている。政治的にも文化的にも、これまでとは大きく異なる防衛ビジョン、それも、現在の産業政策や安全保障上の課題とより一体性のあるビジョンへの再編が日本で進んでいる。中国はこうした日本の動きに不快感を示し、中国の政府系メディアは、これを軍国主義への回帰と批判している。だが、他のアジア諸国の解釈は違うようだ。それでも課題は多い。実際、生産能力不足、人材不足、中国依存、輸出体制の弱さ、サイバーセキュリティの脆弱性をいかに克服していくかが、今後問われることになる。

  • 関税が揺るがした同盟関係
    サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退

    シャノン・K・オニール

    Subscribers Only 公開論文

    必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。

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  • これまでとは異なる反米感情
    ―― 信頼喪失の奥深さ

    リチャード・ワイク

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    ピュー・リサーチ・センターが実施した最新の世論調査によると、調査対象とされた36カ国の多くで、アメリカへの評価は、われわれが2002年に調査を開始して以降、もっとも低い水準へと落ち込んでいる。いまや、アメリカの移民・貿易・軍事政策は大きな反発の対象にされ、アメリカの民主主義や個人の自由へのコミットメントそのものに対する信頼も低下している。これまでとは違って、アメリカが自由や国際協調を重視する国だというイメージそのものが揺らいでいる。世界秩序の旗手として世界中の多くの人々が抱く期待に応えられていないのだ。この信頼喪失は簡単には挽回できないかもしれない。

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