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2026年8月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2026年8月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2026年8月号 目次

創造的破壊と政治危機

  • AIの経済機会と政治危機
    危機を回避し、創造的破壊を生かすには

    ジェームズ・A・デビッドソン、マシュー・J・スローター

    雑誌掲載論文

    米市民の過半数が、人工知能(AI)は雇用を創出する以上に削減するとみなし、若年層に限れば、81%が「AIは雇用機会を低下させる」と考えている。技術としてのAIは大いなる経済的ポテンシャルを秘めているが、適切に管理されなければ、雇用危機を引き起こす。状況に不満を抱く若者を中心に深刻な政治的、社会的危機に今後遭遇するかもしれない。重要なのは、新技術が引き起こす労働市場の混乱を乗り越え、将来の恩恵を十分に確保できるかだ。歴史が示すところは明白だ。創造的破壊が政府の政策対応のペースと範囲を超えるとき、イノベーションに対する抵抗が生じる。幸い、混乱への解決策はある。

  • AIと経済革命
    人間のツールとして生かす政策を

    ジェームズ・マニュイカ、マイケル・スペンス

    Subscribers Only 公開論文

    AIが突きつける危険、それが引き起こす壊滅的なダメージを防ぐための国際的AI規制の必要性を指摘する議論は多い。しかし同様に重要なのは、AIの生産的な利用を促すポジティブな政策の導入だろう。AIが経済に与える最大の影響は、人間の仕事のやり方を変化させることだ。仕事を構成するタスクの一部、全体の30%程度は、AIによってオートメーション化されるが、職業そのものがなくなることはない。但し、能力の高いマシンと協力して仕事をこなすことになるために、新たなスキルが必要になる。現在AIが世界に与える最大のリスクは、文明を破滅させることでも、雇用に大打撃を与えることでもない。それは、現在の経済格差を今後何世代にもわたって拡大するような形で開発され、使われる恐れがあることだ。これを回避する政策が必要になる。

  • 人工知能への備えはできているか
    うまく利用できるか、支配されるか

    ケネス・クキエル

    Subscribers Only 公開論文

    AIは良くもあり、悪くもある。賢いが、鈍い部分もある。文明の救世主であるとともに、世界の破壊者でもある。実際、どのようにして決断を導き出しているか分からないし、それを人間が解明することもできない。特に、汎用人工知能(AGI)については、「独自に進化し、人間が管理できなくなるのではないか」と懸念され、特定型AIについても「デザイナー(である人間)がその意図を完全に伝えられず、壊滅的な結果が引き起こされるのではないか」と心配されている。一方で、AGIのことを心配するのは、火星が人口過剰になることを心配するようなもので、先ず、(AGIに関して)想定されていることが実現する必要があると主張する専門家もいる。イノベーションの進化ペースをどの程度「警戒」し、(機械のメカニズムに関する)説明の「正確さ」をどこまで求め、(個人データを利用することによる)パフォーマンス強化と「プライバシー」のバランスをどこに求めるか。社会がこれらのバランスをどうみなすかで、人間がAIとどのような関係を築いていくかが左右される。

  • 人工知能の恩恵とリスク
    誰も勝者になれない世界を回避するには

    ポール・シャーリ

    Subscribers Only 公開論文

    19世紀の産業革命は世界に大きな経済成長だけでなく、戦車、機関銃、毒ガス兵器をもたらした。人工知能(AI)はこれらに匹敵する変化を誘発することになる。AIは医療から交通に至るまでのあらゆる分野で大きな恩恵とともに大きなリスクも生み出す。最大のリスクは、AI軍事システムを最初に開発した国が、ライバル国に対して圧倒的な優位を手に入れられるために、いい加減なテストだけで、システムを一刻も早く導入せざるを得ないと考えるかもしれないことだ。こうして非常に深刻な問題が作りだされる。AIシステムの導入を競い合うのではなく、その安全性の検証と研究に多国間で投資すべきだ。そうしない限り、「誰も勝者になれない世界」が創り出されることになる。

  • 生成AIとプロパガンダ
    高度な偽情報にどう対処するか

    ジョシュ・A・ゴールドスティン、ギリシュ・サストリー

    Subscribers Only 公開論文

    チャットGPTなどの対話型AIは、人間が書いた文章かAIによるものかが分からず、大量生産が可能なコンテンツを安価に生成する能力をもっているために。プロパガンダに悪用される恐れがある。実際、AI生成プロパガンダでオンライン空間を埋め尽くせば、疑念の種をまき、真実を見極めるのを難しくし、人々は自分の観察さえ信用できなくなる。社会と共有する現実への信頼を失う危険もある。「こうした言語モデルのアクセスを誰が管理するのか、誰を危険にさらすことになるのか、AIに人間の会話を模倣させるのは望ましいのか」。政府、企業、市民社会そして市民は、こうしたモデルの設計や使用法、そしてそれがもたらす潜在的なリスクを管理する方法について、発言権をもつべきだ。

  • テクノロジー・ワールド
    地政学革命としての人工知能

    ケビン・ドラム

    Subscribers Only 公開論文

    産業革命は世界を変えたが、機械が人間の筋肉の代役を果たすようになっただけで、人の頭脳が依然として必要とされたために、高賃金雇用が数多く創出された。しかしデジタル革命を担うのは、人間の頭脳を代替する人工知能(AI)だ。本質的に、人間レベルのAIは人間ができることすべてをより巧みに遂行できる。おそらくロボットはすべての仕事の4分の1(25%)以上を担うことになると考えられている。しかも、真に開花するまでに100年以上を要した産業革命とは違って、デジタル革命による雇用喪失はわずか数十年で加速していく。これに比べれば、中国の台頭などの21世紀の地政学的動向は、あと20年もすれば、どれも、取るに足らぬ問題にすぎなくなる。どの国が世界最高のAIを保有しているかですべては決まるし、政府形態も流動化していく。

  • 人工知能と「雇用なき経済」の時代
    人間が働くことの価値を守るには

    アンドリュー・マカフィー、エリック・ブリュニョルフソン

    Subscribers Only 公開論文

    さまざまな事例を検証し、相関パターンを突き止め、それを新しい事例に適用することで、コンピュータはさまざまな領域で人間と同じか、人間を超えたパフォーマンスを示すようになった。道路標識を認識し、人間の演説を理解し、クレジット詐欺を見破ることもできる。すでにカスタマーサービスから、医療診断までの「パターンをマッチさせるタスク」は次第に機械が行うようになりつつあり、人工知能の誕生で世界は雇用なき経済へと向かいつつある。今後時給20ドル未満の雇用の83%がオートメーション化されるとみる予測もある。労働市場は大きく変化していく。新しい技術時代の恩恵をうまく摘み取るだけでなく、取り残される人々を保護するための救済策が必要になる。間違った政策をとれば、世界の多くの人を経済的に路頭に迷わせ、機械との闘いに敗れた人を放置することになる。

  • 世界はAIを統治できるのか
    手遅れになる前に規制を

    イアン・ブレマー、ムスタファ・スレイマン

    Subscribers Only 公開論文

    AIシステムの恩恵が明らかになるにつれて、システムは巨大化し、機能は改善され、安価になり、あらゆるところに存在するようになる。しかし、自動車を運転するシステムは戦車も操縦できる。病気を診断するアプリケーションは、新たな病気を誕生させて兵器化できるかもしれない。世界の指導者たちはAIを規制する必要性を口にするが、依然として規制に向けた政治的意思が欠落しているようだ。AIを最大限に制約すれば、生活を変えるようなプラス面を見送ることを意味するが、AIを最大限に自由化すれば、破滅をもたらしかねないマイナス面のすべてを引き出す危険を伴う。これを回避するための、規制・統治レジームとは何か。

台湾と朝鮮半島の近未来

  • 拡大抑止の崩壊と米同盟諸国
    韓国とNATOの選択

    ジェニファー・リンド、ダリル・G・プレス

    雑誌掲載論文

    冷戦期とは違って、いまや戦争は主に地域的なもので、アメリカは対外関与を控えつつある。このような世界で、アメリカが遠く離れた同盟国のために核戦争を遂行すると信じるのは難しい。自国の安全のためにアメリカが自己破滅のリスクを冒すとは確信できずにいる同盟国は数多くある。実際、韓国は、自国の安全保障に責任を負わなければならないと最終的に判断するかもしれない。ヨーロッパ諸国も、東欧における核抑止力を強化するために何らかの措置を講じる必要があるとの結論に達するかもしれない。今後、核開発や核共有が検討されることになるだろう。ワシントンにとっての最善の選択肢は、同盟国が独自の抑止アプローチを形作れるように支援し、新しい抑止体制への移行期における戦争リスクを低下させることだろう。

  • 米中関係の本質
    競争的共存の条件

    汪錚

    雑誌掲載論文

    半導体であれ、レアアースであれ、米中双方は相手に対する手段や影響力をもっているが、どちらもそれを決定的には行使できない。これは、米中が「グローバルな経済・技術システムから相手を完全には排除できない状況を共有していること」を意味する。ともに相手を傷つけられるが、戦略的に無意味な存在に追いやることはできない。だからこそ米中は、デカップリングにも、新たな相互依存にも向かっていない。つまり両国間のダイナミクスは「競争的共存」ということになる。それには、米中がともに自制し、紛争を管理し、特に「台湾をめぐる戦略的安心感」を育むことが必要になる。

  • 習とトランプの駆け引き
    揺るがされる台湾の命運

    リチャード・ハース、デビッド・サックス

    雑誌掲載論文

    中国はトランプ政権の台湾政策を揺るがし、「アメリカが台湾をどう扱うべきか」についての新たな規範を確立しようとしている。アメリカの台湾へのコミットメントを弱めることで、台北を無力化し、自国の影響下に引き込もうとしている。実際、アメリカが台湾へのコミットメントを弱めれば、台北の防衛への決意、地域同盟のネットワークも弱まり、中国に有利な状況が生まれる。これを回避するには、ワシントンは台湾支援の継続と抑止力の強化への意思を明確に示す必要がある。

  • 同盟の流動化と核拡散潮流
    次の核時代に備えよ

    ギデオン・ローズ

    Subscribers Only 公開論文

    最近の展開からも、ウクライナやその他の国々への防衛支援をめぐるアメリカのコミットメントが完全には信用できないことは明らかだろう。ワシントンが安全保障コミットメントを果たすとは信用しなかったフランスのドゴール大統領は正しかった。拡大抑止(核の傘)はまやかしであり、それを信じた人々はお人好しのカモだった。なぜフランスに倣って、核戦力を獲得して、国の安全を確保しないのかと多くの国がいまや考えているはずだ。このまま秩序が解体し続ければ、韓国は、おそらく、この拡散潮流に乗って最初に核を保有する国になるだろう。ソウルが核武装すれば、東京もそれに続き、最終的にはオーストラリアもこれに加わるかもしれない。ヨーロッパでも同じ流れが生じつつある。

  • 韓国の核武装を認めよ
    北朝鮮の脅威とアメリカの干渉

    ロバート・E・ケリー、キム・ミンヒョン

    Subscribers Only 公開論文

    大陸間弾道ミサイルを開発した平壌は、いまや核兵器でアメリカの都市を攻撃する能力をもっている。このために、アメリカが(自国が反撃されるリスクを冒しても)韓国への安全保障コミットメントを果たすかどうかがいまや問われている。しかも、米韓同盟を批判してきたドナルド・トランプが大統領としての2期目を迎える。北朝鮮の核の兵器庫が拡大し、トランプ政権下のアメリカが後ろ盾としての信頼を失うにつれて、韓国の市民やエリートの核武装オプションへの支持は高まる一方だ。問題は、ワシントンが韓国の核武装路線に否定的なことだ。同盟国が危険にさらされたままの状態にあることを求めるのではなく、ワシントンは、ソウルが安全保障への道を自ら見つけることへの障害を取り払うべきだろう。

  • 形骸化するアメリカの拡大抑止?
    中ロによる切り崩し策

    デイヴィッド・サントロ

    Subscribers Only 公開論文

    中国の指導者たちにとって、アメリカの核の傘による拡大抑止は防衛戦略ではない。北京は「中国の台頭を封じ込め、後退させようと、ワシントンは、オーストラリア、日本、韓国など、北京からみれば、中国の勢力圏にある国に拡大抑止を押しつけている」とみている。概念面から拡大抑止を批判するだけではない。北京は、アメリカの軍事的役割を低下させ、米同盟国に対して軍事的・経済的威嚇策をとり、対米抑止力を強化し、ロシアとの協調を模索している。アメリカと地域同盟諸国が安全保障協力を強化しない限り、米拡大抑止戦略は今後、致命的に損なわれていくだろう。

  • 封じ込めではなく、米中の共存を目指せ
    競争と協調のバランスを

    カート・M・キャンベル、ジェイク・サリバン

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの対中エンゲージメント路線は、すでに競争戦略に置き換えられている。だがその目的が曖昧なままだ。エンゲージメントでは不可能だったが、競争ならば中国を変えられる。つまり、全面降伏あるいは崩壊をもたらせると、かつてと似たような見込み違いを繰り返す恐れがある。それだけに、米中が危険なエスカレーションの連鎖に陥るのを防ぐ一連の条件を確立して、安定した競争関係の構築を目指す必要がある。封じ込めも、対中グランドバーゲンも現実的な処方箋ではない。一方、「共存」はアメリカの国益を守り、避けようのない緊張が完全な対立に発展するのを防ぐ上では最善の選択肢だ。ワシントンは、軍事、経済、政治、グローバルガバナンスの4領域において、北京との好ましい共存のための条件を特定する必要がある。

  • 米中の大いなる取引を
    関係リセットの条件

    呉心伯

    Subscribers Only 公開論文

    世界には、米中がともに繁栄する余地が十分に残されている。トランプ大統領と習近平国家主席の相性は悪くなく、生産的なつながりを形作れるかもしれない。トランプは、中国、ロシア、アメリカという主要国が互いの国益を尊重し、紛争を回避する世界秩序を広く模索しており、これは中国の立場とも重なり合う。つまり、北京とワシントンの指導者は、現在の世界では、米中間の勢力均衡だけでなく、大国間協調(米中間の積極的な連携)が必要であることに同意している。米中の経済問題、台湾、朝鮮半島、日本、南シナ海問題をいかに管理し、国際システムをいかに改革していくか。これらで、米中関係の今後は左右されるだろう。

  • 台湾と中国の新しい関係を
    米中双方との対話を

    鄭麗文

    Subscribers Only 公開論文

    台北は、北京との管理された対話チャンネルを開く必要がある。信頼できる抑止力を維持し、現状の変更につながるかもしれない挑発的行動を避けるとともに、海峡間の開かれた対話チャンネルを再開・維持することで、紛争リスクを低下させられるからだ。アメリカにとっても、複雑な関係を管理する有能なパートナーは、常に安心感を与える必要のある依存国よりも好ましいはずだ。北京にとっても、台湾との安定した関係を構築することは、圧力をかけて台北をワシントンとの排他的な連携へと向かわせるよりも、すぐれたやり方だろう。鍵は透明性にある。二大国は台湾が相手国とどのような関係にあるかを理解する必要がある。それによって双方が台湾の安定と繁栄から恩恵を引き出せるようになる。

  • 拡大する中国のアジア勢力圏
    変化する米中のバランスと台湾

    レベッカ・リスナー、ミラ・ラップ・フーパー

    Subscribers Only 公開論文

    将来の歴史家は、2026年5月の米中首脳会談を「パワーバランスが中国に有利な方向へ変化し、インド太平洋地域における勢力圏の確立を本格的に始めた瞬間」として記憶することになるかもしれない。認識すべきは、21世紀において、勢力圏は19世紀や20世紀のように軍事的・地理的な支配形態としてだけでなく、重要な技術やインフラの領域で自然に形作られていくことだ。トランプが習近平への譲歩を検討しているいま、その可能性はさらに高まっている。だが、アジアでの中国の勢力圏は、米中間に安定をもたらすパワーバランスを生み出すどころか、壊滅的な危機や紛争の可能性を高めることになるかもしれない。今後の鍵を握るのは、やはり台湾だ。

ユーラシアと新秩序の模索

  • ハートランド対リムランド(上)
    次の世界秩序をめぐる抗争

    マイケル・ベックリー、ハル・ブランズ

    雑誌掲載論文

    中国・ロシア・イラン・北朝鮮などの「ハートランド」勢力が、軍事・経済・技術・デジタルネットワークを通じて米主導の「リムランド」秩序に挑戦している。アメリカ、欧州、東アジアなどのリムランド連合は、経済規模、技術力、市場、金融・資源面で優位にあるが、その力を戦略的に組織化できていない。ハートランド勢力は「領土的な勢力圏に分割され、産業上のチョークポイントで支配される世界」を望んでいる。現状で問われているのは、リムランドがまとまりのあるパワーの中枢として行動するのか、それとも緩やかで脆弱な集合体のままであるかだ。国際秩序を有利に形作れるかは、リムランド連合がそのパワーを戦略に転換できるかにかかっている。

  • ハートランド対リムランド(下)
    リムランドはまとまれるのか

    マイケル・ベックリー、ハル・ブランズ

    雑誌掲載論文

    リムランド経済は、ハートランド経済よりも規模が大きく、先進的であるだけでなく、より自立した世界経済として機能できる多様性も備えている。だが、リムランドの最大の強みである「多様性」は、一方では弱点でもある。脅威への共有認識が希薄で、インドやサウジのような二股国家を内に抱え、アメリカへの信頼も失墜している。課題は、リムランドを拡大することではない。いかに一体性、一貫性を高めるかだ。現在、問われているのは、リムランドがまとまりのあるパワーの中枢として行動するのか、それとも緩やかで脆弱な集合体のままであるのかだ。

  • 大陸国家と海洋国家
    アメリカの混乱と世界秩序

    S・C・M・ペイン

    Subscribers Only 公開論文

    中国やロシアのような大陸覇権国は、国際システムを巨大な勢力圏に分割すべきだと考える。一方、海洋で守られ、侵略される危険が小さい海洋国家は、争うのではなく、富を蓄積することに専念する。領土ではなく富にパワーは根ざすとみているからだ。だが、現在のアメリカは、まるで大陸国家のように振る舞っている。あまりにも多くのアメリカ人が、海洋国家秩序の恩恵を当然視し、その欠点ばかりを指摘し、その過程で、地理的・歴史的な優位を無駄に浪費している。貿易障壁を築き、近隣諸国を脅し、国際機関を弱体化させるといった大陸国家のパラダイムに回帰すれば、アメリカは再起不能に陥るかもしれない。

  • 新たなユーラシア秩序
    進化する中ロ連携と米同盟関係の再編

    ジュリアン・スミス、リンジー・フォード

    Subscribers Only 公開論文

    中ロが秩序形成で連携し、ユーラシアでより統一された競争空間を作り出している。これに対し、アジア・ヨーロッパ諸国は連帯し、急速に相互関係を変化させている。こうした新しいネットワークは、ワシントンがそれにどう関わるかで、アメリカの利益にプラスにもマイナスにも作用する。だが、ワシントンは、アジアとヨーロッパの同盟諸国に(歩み寄って連携するのではなく)自分の地域に留まるようにと促している。現実には、アジアとヨーロッパの境界線は曖昧になりつつある。アメリカは同盟諸国が構築する新たなネットワークに抵抗するのではなく、それへの影響力を適切に行使すべきだろう。

  • ユーラシアで進行する露欧中の戦略地政学
    突き崩されたヨーロッパモデルの優位

    アイバン・クラステフ、マーク・レナード

    Subscribers Only 公開論文

    ベルリンの壁崩壊以降、ヨーロッパはEUの拡大を通じて、軍事力よりも経済相互依存を、国境よりも人の自由な移動を重視する「ヨーロッパモデル」を重視するようになり、ロシアを含む域外の近隣国も最終的にはヨーロッパモデルを受け入れると考えるようになった。だが、2014年に起きたロシアのクリミア侵攻によってその前提は根底から覆された。しかも、ウクライナへの軍事援助をめぐって欧米はいまも合意できずにいる。一方でプーチンは、ハンガリーを含む一部のヨーロッパ諸国への影響力を強化し、ユーラシア経済連合構想でEUに対抗しようとしている。だが、ウクライナをめぐるロシアとの対立にばかり気をとられていると、思わぬ伏兵・中国に足をすくわれることになる。海と陸のシルクロード構想を通じて、ユーラシアを影響圏に組み込もうと試みる中国は、ウクライナ危機が進行するなか、すでに東ヨーロッパでのプレゼンスを高めることに成功している。

  • 新しい世界の創造へ
    もう過去には戻れない

    レベッカ・リスナー、ミラ・ラップ・フーパー

    Subscribers Only 公開論文

    トランプ政権の2期目が終わる頃には、古い秩序は修復不可能なまでに崩壊しているだろう。トランプ後を担う大統領は、多極化した、複雑な国際秩序を理解し、そこでアメリカがどのような役割を果たすかを決めなければならない。すべてを見直す必要がある。民主的価値へのコミットメントにはじまり、同盟関係、貿易、国防戦略までのすべてを再検証しなければならない。そうしない限り、ポスト・トランプの遺産という視点だけで米外交の将来を考え、これに過剰反応する危険がある。いまや、新しいテクノロジー、台頭する新興国が出現し、これに、長年の緊張が組み合わさることで、カオスが作り出されている。「ポスト・プライマシー」ビジョンの形成が急務だ。

  • 「中国の偉大な復興」と栄光の記憶
    偉大な過去の神話と屈辱の世紀

    エリザベス・エコノミー

    Subscribers Only 公開論文

    習近平の「中華民族の偉大な復興」というスローガンは中国民衆の共鳴を呼んだ。これは「屈辱の世紀」に耐えた中国を「正しい地位」に復帰させ、国際秩序の中心を超えたその上に位置づけるというストーリーだ。しかし、朝貢外交の時代を下敷きにするこの歴史認識は正しいとは言えない。現実には、周辺国は中国を怒らせずにわが道を行くために、さまざまな口実を駆使し、場合によっては真っ向から中国の意向を無視してきた。正確でない歴史認識を基に未来を語る中国に、われわれはどう対処していけばよいのか。実際、習近平政権は、外国のアイデアと資本が入ってくるのを制限する一方で、中国の対外的な政治的、経済的、軍事的影響力の強化を模索している。・・・

  • プーチンの思想的メンター
    A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義

    アントン・バーバシン、ハンナ・ソバーン

    Subscribers Only 公開論文

    2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・

中東の変化と世界の変化

  • 中東におけるアメリカの未来
    軍事的成果と戦略的敗北?

    デーナ・ストラウル

    雑誌掲載論文

    イラン戦争で圧倒的なパワーをみせつけつつも、アメリカは戦略目標を達成できず、中東におけるアメリカへの信頼も失墜している。実際、イラン戦争でアメリカは兵器備蓄を危険なまでに浪費し、もはや、同じレベルの戦争を現状で戦う力は残されていない。米市民は、これ以上の中東関与を望んでいないし、湾岸諸国もアメリカ以外にも防衛パートナーを求め始めている。アメリカにとって、現在の中東における最大の問題は、軍事的成果を戦略的勝利に結びつけられずにいることだ。今回の戦争は、アメリカパワーの決定的な矛盾を象徴するものとして歴史に刻まれることになるのかもしれない。

  • イラン戦争のグローバルな帰結
    対米不信と中国の影響力拡大

    イアン・ブレマー、フィラス・マクサド

    雑誌掲載論文

    イラン戦争を経て、中東諸国は、イランとイスラエルの脅威を軸に対立する二つの陣営に分かれつつある。一方には、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)を中核とし、アメリカと連携する「アブラハム連合」があり、その対極にはサウジ、トルコ、パキスタンなどのスンニ派の主要国を中核とするイスラム連合が存在する。後者はイランだけでなく、イスラエルも脅威とみなしている。中東における対米不信が高まるなか、戦後の中東でより大きな役割を果たせる立場にあるのが中国だ。特に、貿易、エネルギー、デジタルインフラの分野で、中国と地域諸国との協力が進むだろう。「アメリカはもはや信頼できず、ワシントンへの長期的な依存を減らすことを戦略的必要性」とみなしているのは中東諸国だけではない。ヨーロッパ、アジアでも、この認識が広がりつつある。

  • 変貌したイラン国家の未来
    神権国家からナショナリスト国家へ

    ナルゲス・バジョグリ、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    戦争を経て誕生した新しいイランは、神権体制ではなく、ナショナリズムによって規定される権威主義国家へ変貌している。この国は、戦争に勝利したと確信している新たな支配階級である将校集団の自信とテクノクラートの精神によって特徴づけられている。戦争を終結させ、イランの戦果を固め、経済制裁の解除よりも、ホルムズ海峡を通過する海上交通への課金による経済的利益確保への道を開く合意を求めている。戦争はイランを弱体化させるどころか、むしろ力を与えたという確信に根ざす自信が、新しいイランの国際的な展望を形作っている。

  • イラン戦争と出口のない交渉
    何が交渉の進展を妨げているのか

    モハマド・アヤトラヒ・タバール

    Subscribers Only 公開論文

    テヘランは、彼らが「ワシントンのアプローチ」とみなすものと同じ交渉スタイルをとっている。つまり、予測不能で、強い立場からのみ交渉し、ほとんど譲歩せずに相手に大幅な譲歩を迫るやり方だ。このために、少なくとも現状では、真の平和をほぼ実現不可能にするゼロサムの構図が存在する。こうして、新たなニューノーマル、つまり、アメリカがイランに対してある種の封鎖を続け、イランがホルムズ海峡に対して何らかの封鎖を維持し、双方が絶えず小競り合いを続け、全面的な紛争に逆戻りする可能性も残る状況が形作られていくのかもしれない。

  • イランの戦略目的は何か
    戦闘ではなく、戦争に勝利する(2026/3/26)

    ナルゲス・バヨグリ

    Subscribers Only 公開論文

    イランは、アメリカとイスラエルの空爆を生き延びているだけではない。戦略レベルで、敵対国を深刻な経済的・政治的問題に直面させている。テヘランの最終的な戦略目的は、米軍が湾岸地域に駐留し続けることの政治的代償を、維持できないほど高くすることにある。イラン・イラク戦争の経験から、テヘランは攻撃を耐え、戦力を分散し、再編成する能力を強化してきた。多くの高官が殺害されたにもかかわらず、革命防衛隊が機能を維持できているのもこのためだ。すでに、湾岸諸国は対米連携の価値について真剣に疑問を抱き始めている。

  • イラン戦争とサウジ
    アメリカ後の中東と新多国間枠組み

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    サウジアラビアは、イランであれ、イスラエルであれ、地域覇権国の出現は望んでいない。一方で、アメリカの安全保障関与はもはや信用していない。引き続きアメリカに一定の支援を求めつつも、サウジは、今後、エジプト、パキスタン、トルコとの地域的連帯を深化させ、中国への依存度を高めていくと考えられる。ペルシャ湾の安全をめぐるイランとの合意も模索するだろう。イランは、リヤドに「サウジ国内の米軍基地がイラン攻撃に利用されないこと」を保証するように求め、一方、サウジはイランに「自国領土がもはやイランやその代理勢力による報復の標的とされないこと」を保証することを期待するだろう。

  • イランとアメリカ
    対立の歴史を終わらせるには

    バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    12日間戦争は明らかにイランを弱体化させ、これまでのテヘランの戦略は、持続不可能な状態に陥った。この現状なら、ワシントンはイランを封じ込めたままにし、イスラエルに時折「草刈り」をさせることもできる。だが、テヘランに外交を試みることもできるはずだ。テヘランとの関係を新たな軌道に乗せ、イランの外交・核政策と政治指導層内のパワーバランスの双方を変えるような新たな外交取引を模索すべきだろう。たとえ両国の歴史が失われた機会に満ちていようと、過去が必ずしも今後のプレリュードである必要はない。両国はイランの核能力に関する緊急の合意をまとめるためだけでなく、信頼を築き、両国関係の新たな道筋を示すためにも、外交を受け入れる必要がある。

  • 異常気象にどう対処するか
    米中の適応格差の意味合い

    アリス・C・ヒル、メンギエ・チュー

    雑誌掲載論文

    中国の指導者たちは、気候変動リスクとその悪影響を抑えるための「適応」の必要性を真剣に受けとめて、国家主導型の対策をとっている。これは、何世紀にもわたって、中国の政治的正統性が、洪水や干ばつなどの自然災害を管理する政府の能力と結びつけられてきたからだ。一方、アメリカの場合、国レベルでの「適応」努力は存在しないも同然で、現状では、州や都市レベルでの対策がとられているにすぎない。今後予想される異常気象に備えるための長期計画では、中国はアメリカをはるかにリードしている。ワシントンは今こそ適応策への投資を優先しなければならない。もし行動を起こさなければ、米経済は、膨大な電力を必要とするAI領域を含めて、重大な結末に直面することになる。

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