フォーリン・アフェアーズ・リポート2026年10月号 目次
論争 米同盟関係の未来
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中国と米同盟関係の未来
同盟規模の拡大を雑誌掲載論文
二期目のトランプ政権の同盟諸国との対立を前に、同盟関係の崩壊を予測する悲観論が内外で広がりをみせている。だが、現在の危機は、むしろ、トランプ大統領のキャラクターに派生している部分が大きいことを認識すべきで、むしろ、世界の現実に目を向けるべきだ。今後、中国が世界における優位を確立していくと考えられる。幸い、いまやアジアと欧州の同盟国の脅威認識は一致している。同盟諸国の政策立案者たち、そしてトランプ後のアメリカの指導者たちにとって、同盟の規模(拡大と統合)こそ中国との均衡を図り、今後に備える唯一の道であることが明らかになりつつある。
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「ポストアメリカ」世界の現実
非秩序のなかの生存戦略雑誌掲載論文
米主導の国際秩序はすでに空洞化し、世界は分断、ルール無視、経済・技術上のチョークポイントの武器化が進む「非秩序」の時代に入っている。だが、アメリカの同盟諸国は、ワシントンが旧秩序の支援や同盟諸国の支援から手を引いていることを、いまも理解していない。ヨーロッパ、日本、韓国は、旧秩序の復活を待つのではなく、アメリカ依存を減らし、柔軟な連携、技術主権、自立した防衛力を組み合わせる生存戦略を築くべきだ。各国は旧秩序が消え去ったことを認め、世界は秩序を完全に失った非秩序の状態に陥ると考えられることを認識すべきだ。地政学に対する新たなアプローチを模索する必要がある。
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揺るがされたアメリカへの信頼
不安定化する世界Subscribers Only 公開論文
トランプは、立場を後退させる前にまず取引を提案する。戦争を拡大する前に、戦争を終わらせると約束する。同盟国を叱責し、敵対国を受け入れる。唯一のパターンとは、パターンが存在しないことだ。一部の分析家が指摘するように、トランプのアプローチは一時的な国際的勝利を一部でもたらしている。だが長期的には、このアプローチでアメリカが強化されることはない。最終的に、各国は他国と連帯して国を守る道を選ぶはずだからだ。その結果、アメリカの敵対国リストは増え、同盟関係は弱体化する。つまりワシントンはますます孤立し、その威信を回復する明確な道筋を見失う可能性がある。
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米同盟諸国の苦悩
アメリカ後の選択肢を求めてSubscribers Only 公開論文
安全保障と防衛をアメリカに依存する同盟民主諸国を中心に形成された戦後世界は、トランプによってすでに破壊されている。国内に分断を抱え、国防より社会保障の支出を優先する傾向のある同盟諸国は、トランプのやり方が永続化しないことを願い、時間稼ぎをして、様子見をしている。だが、それは賢明ではない。同盟を不必要な重荷とみなすトランプの立場を、アメリカ人も共有し、グローバルリーダーの重荷を背負うことにはいまや消極的だからだ。同盟諸国は、早急にアメリカ後に備えるべきだ。核開発を含めて、国防領域の自立を試みる国も出てくるかもしれない。同盟諸国がアメリカに代わる選択肢をもたないことは、危険であるばかりか、無責任と言えるだろう。
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新勢力圏の形成へ
大国間競争から大国間共謀へSubscribers Only 公開論文
中国やロシアと競争するのではなく、トランプ政権は中ロと協力することを望んでいる。トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion) 」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。他の大国から有利な譲歩を引き出すために、トランプがビスマルクのような外交の名手になる可能性もある。しかし、ナポレオン3世のように、よりしたたかなライバルに出し抜かれてしまうかもしれない。
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米中の大いなる取引を
関係リセットの条件Subscribers Only 公開論文
世界には、米中がともに繁栄する余地が十分に残されている。トランプ大統領と習近平国家主席の相性は悪くなく、生産的なつながりを形作れるかもしれない。トランプは、中国、ロシア、アメリカという主要国が互いの国益を尊重し、紛争を回避する世界秩序を広く模索しており、これは中国の立場とも重なり合う。つまり、北京とワシントンの指導者は、現在の世界では、米中間の勢力均衡だけでなく、大国間協調(米中間の積極的な連携)が必要であることに同意している。米中の経済問題、台湾、朝鮮半島、日本、南シナ海問題をいかに管理し、国際システムをいかに改革していくか。これらで、米中関係の今後は左右されるだろう。
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米同盟諸国のジレンマ
リスクヘッジを模索せざるを得ないSubscribers Only 公開論文
同盟諸国はトランプのやり方に耐え、持ちこたえているようにみえる。しかし、これまで以上に状況を深く憂慮している。アメリカによる安全の保証を確信できなければ、どうなるだろうか。同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。ワシントンの支援を期待しつつも、同盟諸国は、問題発生時にアメリカがいない事態に備え、リスクヘッジを始めている。
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同盟の流動化と核拡散潮流
次の核時代に備えよSubscribers Only 公開論文
最近の展開からも、ウクライナやその他の国々への防衛支援をめぐるアメリカのコミットメントが完全には信用できないことは明らかだろう。ワシントンが安全保障コミットメントを果たすとは信用しなかったフランスのドゴール大統領は正しかった。拡大抑止(核の傘)はまやかしであり、それを信じた人々はお人好しのカモだった。なぜフランスに倣って、核戦力を獲得して、国の安全を確保しないのかと多くの国がいまや考えているはずだ。このまま秩序が解体し続ければ、韓国は、おそらく、この拡散潮流に乗って最初に核を保有する国になるだろう。ソウルが核武装すれば、東京もそれに続き、最終的にはオーストラリアもこれに加わるかもしれない。ヨーロッパでも同じ流れが生じつつある。
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核抑止力の崩壊?
問われる核の存在理由Subscribers Only 公開論文
もはや核戦力では、安価なドローンによる敵の集中攻撃を抑止できない。この事実を、核保有国と核兵器の開発を望んでいるかもしれない非核保有国は、改めて認識する必要がある。実際、イスラエルの核抑止力は、イランの通常兵器による攻撃に対する歯止めにはならなかった。ウクライナに攻撃された核大国ロシアも同様だった。核保有を目指す国々は、代わりに通常兵器で防衛力を強化し、通常兵器やハイブリッド攻撃に対するレジリエンスを高める方法を模索すべきだろう。核兵器は、安全保障を確実にするどころか、新しく不安を抱かせるような危険を招き入れるだけかもしれない。
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米国と同盟諸国の軍備協調を
国境を越えた防衛イノベーションをSubscribers Only 公開論文
中ロ・北朝鮮・イランという敵対勢力は、防衛産業や技術だけでなく、戦力をめぐる連携を深めている。一方、アメリカと同盟諸国は、防衛力強化を主として国内プロジェクトとして扱っている。だが、現実には、アメリカと同盟国が防衛技術に関して協調することの重要性は高まっている。イラン戦争からも明らかなように、ドローン、AI、自律システム、弾薬などの開発領域で、単独で十分な規模とスピードを得るのは難しいからだ。現在の脅威に対処するには、国内での防衛力強化だけでなく、同盟諸国間の企業、大学、投資家、政府からなるネットワークを利用して、資本、技術的ノウハウ、生産能力、サプライチェーンを集団的に結集していく必要がある。
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ホルムズ危機の新地政学
石油ショックと米中の影響力雑誌掲載論文
ホルムズ危機の本当のリスクは、その衝撃が穏やかなものだったために、主要国がそのリスクを侮り、自国の対応能力を過信することかもしれない。実際、ホルムズ危機の第2幕は、第1幕よりもはるかに大きな被害をもたらす危険がある。在庫や備蓄が少なくなる一方で、需要が回復しているからだ。非ホルムズの代替ルートの脆弱性は高まり、石油インフラは攻撃されている。つまり、バッファーがいつまで持つか分からない。世界が将来のショックに備えるには、クリーンエネルギーや原子力への投資を含めて、レジリエンス強化のための対策が急務だろう。石油ショックへの米国と中国の影響力が高まる一方、途上国が大きな危険にさらされる構造が生まれていることも認識しなければならない。
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流れは米中デタントへ
戦略的安定の本質雑誌掲載論文
第2次トランプ政権の発足以降、双方にとって米中関係は「大きすぎて潰せない」ことがすでに明らかになっている。2025年の関税とレアアースをめぐる激しい衝突は、ともに相手の弱点を突けることを明らかにする一方で、両国の相互依存関係が極めて深く、経済対立をめぐって慎重な行動が必要であることを双方に再認識させた。対米競争を受け入れ、それを管理していくという北京の姿勢は「中国の自信の高まり」を反映している。いまや、戦略的安定をめぐる認識の共有へと流れは向かっている。台湾という火種は依然としてなくなっていないが、北京とワシントンは新しい均衡を見出しつつある。
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人工知能をどう捉えるか
AIと人間性の未来雑誌掲載論文
バチカンが公表したAIに関する「マニフィカ・フマニタス」の副題は、「人工知能時代における人間性の擁護について」とされている。そこでは「われわれは機械内部での思考は知りえないし、そこには人間が知るに値する思考など存在しない」とされている。しかし真実はその逆だ。アンソロピックの指導者たちは、2028年末までに「人工知能システムが自らに指示を出して、さらに賢いバージョンの人工知能システムを作り出せるようになる可能性」が50%以上あるとみている。機械がわれわれの道徳観を理解することはないとしても、人間が機械を制御しようと望むのなら、われわれはまず機械を理解しなければならない。AIの仕組みを理解したうえで、国際的な安全規制、税制改革、再分配策の研究を進める必要がある。
Current Issues
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ウクライナの新しい現実
選挙、民主主義、ドローン雑誌掲載論文
ウクライナにおけるドローンの台頭は、ロシアとの戦場だけでなく、その政治と社会も変化させている。ドローンのイノベーションが民間主導で進められてきたために、市民の軍事戦略への関心が高まる一方で、伝統的なレガシー兵器を手がける軍需企業の新興テクノロジー企業への反発が高まっていた。ゼレンスキーが、このタイミングで、ドローンインフラの展開を支えてきた主要な設計者の一人であるフェドロフ国防相を解任したことで、2026年7月を境に一気にウクライナの政治と社会は流動化した。いまやキーウは、この新しい現実への対応を迫られている。
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ポスト・ネタニヤフのイスラエル
戦争路線からの決別はできるか雑誌掲載論文
複数地域で軍事行動を続けるイスラエルの「終わりなき戦争」路線に出口はあるのか。多くの人が、ガディ・アイゼンコットが、ネタニヤフを抑えて10月の選挙で勝利すれば、この強硬路線がどの程度変化するかを考えている。安全保障政策の根本的な転換は難しくても、西岸の入植や暴力の抑制、ガザ統治へのパレスチナ自治政府の関与には見込みが出てくるかもしれない。レバノンやシリアとの対立の緩和や、サウジアラビアとの関係正常化も期待できるようになるかもしれない。元イスラエル軍参謀総長が新しい指導者になれば、ひどく右傾化したイスラエルをどう変化させていくのか。
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経済成長で債務を克服できる?
AI経済ブームの幻想Subscribers Only 公開論文
アメリカの債務拡大の軌道は持続不可能であり、債務危機に直面すれば、世界経済に衝撃が走り、ドルの地位も脅かされる。一部には、目覚ましいAIの技術的進化がもたらす生産性の向上と経済成長によって、アメリカの債務問題はいずれ問題ではなくなるとみる人もいる。だが、多くのエコノミストは、AIによって今後10年間の生産性上昇率が従来のトレンドから上振れする幅は1―2%程度とみている。しかも、人口の高齢化、グローバル化の後退に派生するコスト負担によって恩恵は部分的に相殺されるだろう。仮にAIが新たに大きな歳入をもたらしても、国防費の増額、環境災害対策など、歳出を求める圧力は大きい。実際、歳入をはるかに上回る歳出を続けることを求めてきた政治圧力を軽減することは、AIにもできないだろう。
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欧州とロシアの軍事パワー
変貌した脅威に備えよSubscribers Only 公開論文
ロシア軍は戦争で大きなダメージを受け、多くの犠牲者を出しているが、それでも、戦前の兵員規模を維持し、ドローンや精密攻撃の能力を高め、防衛産業の生産能力を強化している。北大西洋条約機構(NATO)諸国は、ロシアのお粗末な戦績や、目に見える弱点を理由に油断してはならない。偵察と精密攻撃の両方をリアルタイムで実行できる安価な無人システムや自律型システムが支配する戦場で、どのような作戦行動をとればいいのかをNATOはまったく分かっていない。ヨーロッパはロシア軍の弱点を過小評価せず、ウクライナ戦争の教訓、特に大量ドローンと精密攻撃への対応を踏まえて、将来の抑止と防衛体制を早急に見直す必要がある。
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驚異的なドローン革命
ウクライナからいかに学ぶかSubscribers Only 公開論文
ウクライナ軍の前線部隊は、ドローンの戦場におけるパフォーマンスを軍需企業に伝え、企業側はこれを基にシステムを常に改善し続けている。アメリカを含む世界のほとんどの国々は、兵器のフィードバックと改善という領域でウクライナに大きな後れをとっている。すでにウクライナとロシアは、ドローンなどの防衛技術にAIを徐々に組み込むことで、イノベーションをさらに進化させている。もしアメリカがウクライナ支援から手を引けば、実績のある防衛技術や戦場における知見、ロシアの軍事パフォーマンスに関するデータへのアクセスを失う危険がある。
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再生したロシア軍
戦闘経験から学習・応用へSubscribers Only 公開論文
2022年にウクライナ侵攻を開始した当時、ロシア兵たちは与えられた任務に必要な訓練さえ受けていなかった。そもそも戦争で戦うことさえ知らされていなかった。指揮系統も正常には機能しなかった。だが、もはや、当時を前提に状況を捉えることはできない。すでにロシア軍は学習組織への変貌を遂げている。モスクワは戦闘経験を蓄積・分析し、そこから得た教訓を軍および国防エコシステム全体に拡散している。戦時経験を体系的に把握し、制度に組み込むとともに、戦後の軍改革につなげようとしている。AI意思決定システムとAI搭載兵器をどのように実戦配備するかの検討もすでに開始している。
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二つのイスラエル
宗教化する政治と攻撃的対外路線Subscribers Only 公開論文
イスラエルはより貧しく、抑圧的な国になり、対外的に攻撃的になっている。イラン戦争はその具体例だ。欧米世界の多くでジェノサイドと批判されたガザにおける軍事作戦からも、その攻撃性は明らかだろう。こうした行動の背景には、イスラエル政治の宗教化と社会の経済的分断がある。リベラルで生産性の高い人々の発言力が低下する一方で、保守的で生産性の低い社会層の影響力が拡大している。反ネタニヤフのリベラル派は外への移住を試み、ネタニヤフは、超正統派と宗教的ナショナリストをまとめて政治的連立を維持しようと試みている。イスラエルは、皮肉にも、この流れによって、1979年以降のイランを後追いしようとしている。
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大いなる選択
イスラエルの孤立と戦争を終わらせるにはSubscribers Only 公開論文
ガザ戦争終結のためのトランプの和平プラン、そして今後12カ月以内に実施される総選挙によって、イスラエルは自らを改革するチャンスを手にする。この国を危機的状況から救うには、何よりもまず人質を解放させる必要があるが、同時に過激派をイスラエル政府から排除することも必要になる。ネタニヤフ政権は、メディアの監視から免れ、法の支配や自由で公正な選挙を守るのではなく、神権政治的で非自由主義的体制の確立を目指している。だが、イスラエルの未来は、市民が決めなければならない。心に大きな傷を抱え込んだ2年を経て、市民の多くは、新たな方向性、変化を求めている。
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赤字と債務にいかに向き合うか
第3の道は存在するSubscribers Only 公開論文
財政赤字と政府債務残高の増大はどの程度深刻な問題なのか。赤字と債務を懸念する原理派は、これらを最大の脅威とみなし、その削減を最優先課題に据えるべきだと主張する。一方、許容派はこれを無視してもかまわないと考えている。実際、政治家が目を向けるべきは、急を要する社会問題であり、財政赤字や債務ではないだろう。財政赤字の削減ではなく、重要な投資に焦点を合わせ、「経済にダメージを与えないように」配慮しなければならない。だが、財政赤字の削減を最優先にする必要はない。高い債務レベルに派生するリスクは、財政赤字削減策が引き起こすダメージに比べれば小さい。このアプローチなら、債務拡大の弊害と財政赤字削減の余波の間の合理的なバランスをとれるはずだ。
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衰退する日米欧経済
Subscribers Only 公開論文
かつては圧倒的なパフォーマンスを誇った日本経済も、バブル経済の崩壊とともに失速し、いまや成長のために、そして再び金融危機に直面するのを避けるために必要な、経済改革に向けた政治的コンセンサスを構築できるかどうかも分からない状態にある。そして、金融危機後のさまざまな対策を通じて「自分たちは日本の二の舞にはならない」というメッセージを市場に送った欧米諸国も、結局、日本の後追いをしている。欧米経済がこの5年間で経験してきたことは、1990年代の日本の経験と非常に似ている。今後の日米欧にとって、社会契約をいかに再定義するかが最大の政治課題になる。予算を均衡させ、再び金融危機に直面するのを回避するには、税率を引き上げ、社会保障支出を削減するしか方法はないからだ。アメリカ、日本、そしてヨーロッパ諸国は、この困難なプロセスとそれが引き起こす社会的緊張への対応に長期的に追われることになるだろう。地政学バランスはすでに東アジアへと傾斜しつつあるが、主役は日本ではない。うまくいけば傍観者として、最悪の場合にはその犠牲者として、日本は東の台頭を見つめることになるだろう。


