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2016年4月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2016年4月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年4月号 目次

日本の新安全保障ビジョン

  • 日本の新しいリアリズム
    ―― 安倍首相の戦略ビジョンを検証する

    マイケル・オースリン

    雑誌掲載論文

    日本の地域的役割の強化を目指し、民主国家との連携強化を試みるために、安全保障行動の制約の一部を取り払おうとする安倍首相の現実主義的な外交・安全保障路線は、北朝鮮と中国の脅威という地域環境からみても、正しい路線だ。たしかに論争は存在する。市民の多くが平和主義を求める一方で、識者たちは日本の安全保障に対する脅威を憂慮している。しかし、そうした社会的緊張には、孤立主義や介入主義といった極端な方向に日本が進むことを防ぐ効果がある。超国家主義が日本を近隣諸国に対する侵略と戦争へと向かわせた1930年代と違って、現在の日本は、アジアを豊かさと安定へと導く「リベラルなシステム」を強化し、擁護していくために、古い制約を解体しつつある。再出現した権威主義国家がグローバルな平和を脅かすような世界では、日本の新しいリアリズムが太平洋地域の今後10年を形作るのに貢献し、アジアを特定の一国が支配するような事態にならないことを保証する助けになるはずだ。

  • 豪潜水艦調達と日独仏の競争
    ―― アメリカは誠実な仲介者を

    ジョナサン・D・キャバリー

    雑誌掲載論文

    同盟諸国に「中国の拡大主義に抵抗する試みを強化するように」と働きかけてきたアメリカにとって、オーストラリアが新型の潜水艦を導入するのは歓迎できるニュースだろう。フランスやドイツにとって、共同開発・生産契約を受注できれば、重要で魅力的なディールになる。日本にとっては、契約を受注することはさらに大きな意義がある。契約を受注すれば、日豪のインフォーマルな同盟関係が強化され、中国を封じ込める上で大きな価値をもつからだ。アメリカ政府もこの見方を受け入れ、水面下では日本が契約を受注するのが好ましいと考えているようだ。しかし、前回の潜水艦調達をめぐって大きな失敗を犯したオーストラリアが今回求めている基準はかなり高く、日独仏のいずれにとっても、これを満たすのは容易ではない。重要なのは、軍事予算を押し潰すことなく、必要とする潜水艦をオーストラリアが調達できるかどうかであり、アメリカはその調達をめぐる「誠実な仲介者」の役割を心がけるべきだろう。

  • 日本の新安全保障戦略の真意はどこに

    J・バークシャー・ミラー

    Subscribers Only 公開論文

    前回防衛大綱がまとめられて数年しか経っていない現状で、新たに防衛大綱が慌ただしく改訂されたことをもって「安倍晋三首相は、東シナ海の問題をめぐって、一か八かの瀬戸際政策を北京に挑むつもりだ」と結論づける専門家もいるし、中国国防部は日本の防衛大綱について「地域の緊張を高め、地域情勢を混乱させようとしている」と強く非難している。だが、日本の国家安全保障戦略が右傾化していると騒ぎ立てるのは間違っている。安倍首相の挑発的な靖国神社参拝は問題があるが、政府が試みている安全保障改革と首相の個人的な見解を混同すべきではない。新戦略や日本版NSCは、中国問題だけでなく、幅広い分野において迅速に重大な国家安全保障上の決定を下すために不可欠なツールだ。日本の新しい安全保障戦略についてバランスのとれた解釈をするには、中国にばかり焦点を合わせるのではなく、日本を取り巻く安全保障環境、アメリカの主要な地域同盟国としての日本の役割、そして、日本がアジア・太平洋地域の安全保障を促進する有資格国であるという全ての点を考慮する必要がある。

  • 変貌した東南アジアへ帰ってきた「古い日本」

    ジョシュア・クランジック

    Subscribers Only 公開論文

    いまや東南アジアにおける日本の存在感は大きくなっている。アベノミクスに啓発された東南アジア諸国はヨーロッパ流の緊縮財政でなく、景気刺激策をとろうと試みている。さらには、タイ、ミャンマー、インドネシアにおける政治的混乱、タイにおける大気汚染、ベトナムでの深刻な経済停滞を前にしても、中国企業とは違って、日本企業が投資の約束を守ることへの認識と評価も高まっている。経済停滞と援助予算の削減とともに衰退した日本の東南アジアへの影響力がいまや回復しつつある。すでに東南アジアを3度訪問した安倍首相の努力は、東南アジアとの貿易交渉や投資、現地の世論において着実に実を結びつつある。しかし問題もある。援助、インフラ投資、戦略的つながりに焦点を合わせるだけで、民主主義や市民社会について日本が言及することはほとんどない。日本は、かつてスハルトその他の独裁政権に用いたのと同じ戦略を安易に踏襲してしまっている。・・・

  • 岐路にさしかかった日本の外交・安保政策
    ―― 変化した国際環境で問われる日米同盟の価値

    ジェラルド・L・カーチス

    Subscribers Only 公開論文

    日本は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みてきた歴史を持っている。そしていまや、中国の台頭、北朝鮮の核開発、アメリカの経済的苦境という国際環境の変化を前に、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。米中が対立しても、それによって必ずしも日米関係が強化されるわけではなく、現実には、自立的な安全保障政策を求める声が日本国内で高まるはずだ。鍵を握るのはアメリカがどのような行動をみせるかだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できると日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくことはない。だが、アメリカの決意を疑いだせば、日本人は独自路線を描く大きな誘惑に駆られるかもしれない。

  • 日中軍事衝突のリアリティ ―― 日中危機管理システムの確立を急げ

    アダム・P・リッフアンドリュー・S・エリクソン

    Subscribers Only 公開論文

    東シナ海をめぐる日中関係は、一般に考えられている以上に緊張している。中国軍の高官が言うように、「わずかな不注意でさえも」、世界で2番目と3番目の経済国家間の「予期せぬ紛争に繋がっていく恐れがある」。もちろん、日中はともに紛争は望んでいない。だが、東シナ海の海上と上空の環境が極端に不安定である以上、誤算や偶発事件が大規模な危機へとエスカレートしていく危険は十分にある。世論調査結果をみても、日中間の敵意はこれまでになく高まっている。しかも、偶発的衝突を制御していく力強い危機管理メカニズムが存在しない。中国軍と自衛隊の高官たちでさえも、危機エスカレーションリスクが存在することを懸念している。危機管理メカニズムが必要なことは自明だが、日中両国にそれを導入する政治的意思があるかどうか、依然として不透明な状況にある。・・・

  • 高齢社会が変える日本経済と外交
    ―― 民主改革か革命か

    ミルトン・エズラッティ

    Subscribers Only 公開論文

    日本の人口高齢化は、現役労働力の生産能力の低下と増大する年金生活者の消費需要の不均衡を軸に広範な国内緊張を引き起こし、これが日本の対外政策にも余波を及ぼすだろう。現実には「輸出から輸入へ」と貿易パターンが変化し、高い貯蓄率は低下し、貿易黒字は赤字へと向かい、日本企業の外国への進出と一方での国内市場の自由化をいっそう促すことになる。そして、日本企業の外国への生産拠点の移転によって、国の需要を満たす「大切な富」の多くが、外国へと流出すれば、「より積極的で明確な外交政策の実施」が不可欠となる。日本とアジア諸国とのつながりがより複雑になり特別化していけば、アメリカの安全保障利益とは必ずしも重なり合わない日本独自の利益認識が高まり、いずれ、日本は「外交と、そして必要なら、軍事領域でも、独自路線をとるようになるかもしれない」

  • 復活した日本
    ―― 安倍晋三首相との対話

    安倍晋三

    Subscribers Only 公開論文

中東革命の現状――石油、イスラム国、イラン

  • 踏み込むべきか、後退すべきか
    ―― 中東におけるアメリカの選択

    ケニス・M・ポラック

    雑誌掲載論文

    13世紀のモンゴルによる侵略以降、中東がかくも深刻なカオスに陥ったことはない。イラク、リビア、シリア、イエメンが全面的な内戦に陥り、エジプト、南スーダン、トルコも内戦へと向かう危険がある。すでに内戦の余波が、アルジェリア、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、チュニジアを脅かしている。内戦を終結へ向かわせるのは難しく、決意に満ちた外部からの介入がなければ、内戦は数十年にわたって続く。アメリカの次期大統領は中東政策をめぐって非常に大きな選択に直面する。安定化のためにもっと踏み込んで関与するか、あるいは、さらに距離をとって離れていくかの決定を迫られる。より踏み込んだ関与をすれば、専門家が想定する以上の資源、エネルギー、関心そして政治資源を投入しなければならない。一方、現状の管理能力を手放し、より多くのコミットメントを放棄しても、中東から後退を求める勢力が考える以上の大きなリスクを引き受けなければならなくなる。・・・

  • ヨルダンとイスラム国
    ―― なぜヨルダンでは大規模テロが起きないか

    アーロン・マジッド

    雑誌掲載論文

    サウジアラビア、イラク、シリアとは違って、これまでのところヨルダン国内ではイスラム国による大規模なテロ攻撃は起きていない。国内のイスラム国関連の事件による犠牲者数は、多くて5人。ヨルダンの治安部隊、情報機関が洗練された高い能力をもっているとしても、それだけで「なぜヨルダンがイスラム国のテロを回避できているか」のすべてを説明するのは無理がある。おそらく他の中東諸国とは違って、ヨルダン政府が民意を汲み取る明確な姿勢をみせてきた結果、社会の混乱を抑え、テロのリスクを抑え込めたのかもしれない。「民主体制ではないが、ヨルダンはアラブ諸国のなかでも数少ない、市民が政府への要望や不満を表明できる国だ」。ヨルダンではアブドラ国王とムスリム同胞団はともに相手に対して寛容な立場をとっている。そこに問題への政治的解決策が存在することが、大がかりな社会的混乱も過激派テロもヨルダンで起きていない最大の理由ではないか。

  • 流動化するサウジ
    ―― 原油、イラン、国内の不安定化

    バーナード・ハイカル、カレン・エリオット・ハウス

    雑誌掲載論文

    サウジの社会契約は石油の富による繁栄を前提にしており、(原油安が続き)民衆が望むレベルの繁栄を提供できなくなれば、政府は政治的に非常に困難な事態に直面する。原油以外の歳入源(経済の多角化)について、さまざまな議論が行われているが、これまでうまくいったことはない。・・・リヤドは、歳出を削減して民衆の反発を買うよりも、非石油部門の歳入を増やそうとしている。これまで膨大な浪費を続けた国だけに、節約で一定の資金を手許に残せるが、最終的には、痛みを伴う是正策が必要になるだろう。(K・E・ハウス)

    サウジは、イランのことをイスラム国以上に深刻な脅威とみなしている。イランは非国家アクターを操り、イラクからシリア、レバノン、パレスチナ、イエメン、おそらくはバーレーン、さらには、サウジ東部のシーア派を含む、サウジ周辺の全地域(と国内の一部)で影響力を拡大しているからだ。リヤドは、地域的、あるいは中東全域の地政学的優位をめぐって、イランとのゼロサムの関係にあるとみている。(B・ハイカル)

  • グローバル化したイスラム国
    ―― 増殖する関連集団の脅威

    ダニエル・バイマン

    雑誌掲載論文

    欧米諸国が、国内の若者たちがイラクやシリアへ向かうことを心配していればよかった時代はすでに終わっている。ジハード主義者たちが、中東だけでなく、中東を越えたイスラム国のさまざまな「プロビンス」を往き来するようになる事態を警戒せざるを得ない状況になりつつある。「プロビンス」を形づくる関連組織の存在は、イスラム国の活動範囲を広げる一方で、地域紛争における関連組織の脅威をさらに高めており、いずれ関連集団による対欧米テロが起きる恐れもある。だが、われわれは「コア・イスラム国」の指導者と、遠く離れた地域で活動するプロビンスの間で生じる緊張をうまく利用できる。適切な政策をとれば、アメリカとその同盟国は「プロビンス」と「コア・イスラム国」に大きなダメージを与え、相互利益に基づく彼らの関係を破壊的な関係へと変化させることができるだろう。

  • パックス・アメリカーナの終わり
    ―― 中東からの建設的後退を

    スティーブン・サイモン

    Subscribers Only 公開論文

    湾岸戦争以降のアメリカの中東介入路線は、アメリカの歴史的規範からの逸脱だった。それまでアメリカとペルシャ湾岸諸国は、安定した石油の価格と供給を維持し、中東の政治的安定を維持していく必要があるという認識だけでなく、1979年以降はイラン封じ込めという戦略目的も共有していた。この環境において中東への軍事介入路線は規範ではなかった。いまやシェール資源の開発を可能にした水圧破砕法の登場によってアメリカの湾岸石油への直接的依存度も、その戦略的価値も低下し、サウジや湾岸の小国を外交的に重視するワシントンの路線も形骸化した。一方、アメリカがジハード主義の粉砕を重視しているのに対して、湾岸のアラブ諸国はシリアのバッシャール・アサドとそのパトロンであるイランを倒すことを優先している。こうして中東の地域パートナーたちは、ワシントンの要請を次第に受け入れなくなり、ワシントンも、アメリカの利益と価値から離れつつあるパートナーたちの利益を守ることにかつてほど力を入れなくなった。・・・

  • 忌まわしきイラク紛争の現実
    ―― もはや分権化か分割しか道はない

    アリ・ケデリー

    Subscribers Only 公開論文

    イラク治安部隊の崩壊とシーア派武装勢力の台頭は、バグダッドの影響力をさらに弱め、イラク国内におけるイランの影響力を高めた。イランの影響下にあるシーア派武装集団は、スンニ派地域に攻め入っては残虐行為を繰り返し、結局は、スンニ派住民たちをイスラム国支持へと向かわせている。一方で、イスラム国が罪のないシーア派住民を爆弾テロで殺害すると、シーア派武装勢力への人々の支持が高まり、イラク政府はますます弱体化する。スンニ派とシーア派、アラブ人とクルド人、それぞれの宗派・民族集団の内部抗争という構図での地域的な代理戦争と紛争が同時多発的に起きており、イラク近代史におけるもっとも危険に満ちた時代が今まさに始まろうとしている。イラクが第2のシリア、つまり、市民を脅かし、大規模な難民を発生させ、ジハード主義を育む空間へと転落していくのを阻止するには大胆な措置が必要だ。おそらく各派の民族自決を認める必要がある。・・・

  • 封じ込めではなく、イスラム国の打倒と粉砕を

    ヒラリー・クリントン

    Subscribers Only 公開論文

    結局のところ、米軍機やドローンによる攻撃を含む、われわれが利用できる全てのツールを用いて、テロの危険がある全ての地域で対策をとらなければならない。外国人戦士のイスラム国への流入と流出、テロ資金の流れを遮断し、サイバースペースでの闘いを試みることが、イスラム国との戦いには欠かせない。今後の脅威に対抗していく上でも、これらの試みが対策の基盤を提供することになるだろう。・・・われわれの目的をイスラム国の抑止や封じ込めではなく、彼らを打倒し、破壊することに据えなければならない。・・・「スンニ派の第2の覚醒」の基盤作りを試みる必要もある。・・・アサドがこれ以上民間人や反体制派を空爆で殺戮するのを阻止するために、飛行禁止空域も設定すべきだ。有志連合メンバー国が地上にいる反体制派を空から支援して安全地帯を形作れば、国内避難民もヨーロッパを目指すのでなく、国内に留まるようになる。・・・

  • イノベーションと 「70対20対10ルール」
    ―ールース・ポラットとの対話

    ルース・ポラット

    雑誌掲載論文

    ルース・ポラットは、テクノロジー企業のエグゼクティブとしては異例のキャリアの持ち主だ。2015年5月にグーグル、その数カ月後にグーグルの持ち株会社アルファベットの最高財務責任者(CFO)に就任するまで、彼女は米金融大手モルガン・スタンレーのCFOだった。2008年の金融危機では、経営不振に陥った米保険最大手AIGの処理について連邦準備制度理事会(FRB)と、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の処理について米財務省と協力した経験をもっている。オバマ政権下の2013年には、財務副長官候補に名前が上がったこともある。政治サイト「ポリティコ」はポラットのことを「ウォール街でもっともパワフルな女性」と呼んだが、今は「シリコンバレーでもっともパワフルな女性の1人」だ。(聞き手はジョナサン・テッパーマン、フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

  • ローマ史はわれわれに何を問いかける
    ―― 近代政治への教訓

    マイケル・フォンテーヌ

    雑誌掲載論文

    ローマ人はすでに5世紀末までに、その後、19世紀半ばまで西洋世界が実現できなかった高度な生活レベルを享受していた。そこには水洗トイレ、大理石のキッチンカウンター、屋内暖房、美容歯科まであった。ローマはこのライフスタイルを「元老院とローマの市民」(SPQR)として知られる、市民と選挙で選ばれる指導者との関係を通じて保障していた。そうした古代ローマの歴史には近代政治の教訓とできるエピソードが数多くある。移民問題、予防攻撃、ポリティカル・コレクトネス、宗教集団への対応、マイノリティの扱いなどだ。紀元前146年にローマがカルタゴ相手に最終的に勝利を収めて以降の歴史は、新たな一極世界における覇権が伴う問題が何であるかもわれわれに教えている。その後、ローマでは対外的な敵の消失によって、内的な権力抗争が展開されるようになり、小さな脅威でさえも帝国の存続を脅かす脅威とみなされるようになった。・・・

  • アメリカ人学生への留学の薦め
    ―― 国際問題と外国への感性を高めるには

    サンフォード・J・アンガー

    雑誌掲載論文

    アメリカ人には、外国に関する知識や理解がほぼ例外なく欠落している。しかも外交予算は削られ、メディアも国際報道を減らしている。いまや大統領選挙の論争においてさえ、外交問題について十分な情報に基づく議論を聞くことはない。このために、アメリカの価値を反映し、大衆も支持するような、冷静で一貫性のある外交政策の策定と実施が妨げられている。必要なのは、大学のカリキュラムの一環として外国に留学し、貴重な知見を得てアメリカに帰ってくる大学生を大幅に増やすことだ。アメリカの現在そして過去のリーダーの多くは、若くて感受性が強いときに、外国に留学し、外国でさまざまな活動に従事した経験を持っている。この事実は、企業、政府、科学、教育、非営利組織、芸術など分野を問わない。留学生の増加をアメリカの社会と外交政策の改善につなげていくには、留学プログラムへの参加者の数と多様性を大幅に拡大する必要がある。

Current Issue

  • 中印の間で揺れるネパール
    ―― ネパールは中継貿易の拠点を目指せ

    ファハド・シャー

    雑誌掲載論文

    文化的にインドと近いネパールのマデシ民族の自治要求をめぐってインドとの関係が緊張するなか、ネパール政府は(インドのライバルである)中国との関係強化を模索しているかのような動きをみせている。ネパール政府は「インドは国内で差別の撤廃や自治権の拡大を求めて運動を展開しているマデシを支援している」と批判した。事実、インド政府はネパールに対して(マデシの意向に沿うような)憲法改正を促し、カトマンズは「内政干渉だ」とこれに強く反発した。一転、ネパールは中国との北部貿易ルートの開発に力を入れ、中国も開発援助の増額やさまざまな開発プロジェクトでこれに応えている。北京はチベットの治安対策面でもネパールとの関係強化に関心を持っている。中国との良好な関係を形作るのは良いことだが、結局のところ、ネパールにとって「中国はインドの代替策にはなり得ない」。むしろ、ネパールは中印貿易の中継基地として戦略的立地を生かすべきではないか。

  • なぜロシアはシリアからの軍撤収を決めたのか
    ―― 軍事紛争から外交へと流れを変えるチャンスか

    キンバリー・マーチン、ラジャ・メノン

    雑誌掲載論文

    現在のところ、プーチンは、ロシア国防省に課された目的は全般的に達成されたとみなし、今後は外交を強化すべきだと語っている。撤収の決定はたんなる資金節約のためではないはずだ。ロシアのシリア介入コストは、年間10-20億ドル程度で、途方もない金額に達していたわけではない。だがより重要なのは、今なら、プーチンが中東の泥沼に引きずり込まれるリスクを冒すことなく、勝利を宣言できることだ。空爆は機能した。介入によってシリアのアサド政権の崩壊は回避され、(サウジ、トルコなどが支援する)征服軍の攻勢によって、イドリブやアレッポを含む、一時はシリア軍が撤退を強いられていた4000平方マイル近い地域も取り戻せた。これを、停戦の永続化とシリア紛争の終わりに結びつけることができれば、プーチンだけでなく、誰もが勝者となれる。

  • 日本の新しいビジネス文化
    ―― 日本の起業家世代と社会貢献

    デヴィン・スチュワート

    雑誌掲載論文

    日本政府の高官たちも、経済再生の柱としての量的緩和と財政出動によってかろうじて成長が支えられていることに気づき始め、新戦略では「スタートアップ企業」が重視されている。ベンチャー企業と新技術への投資を奨励し、大学におけるアントレプレナーシップ(起業精神)の訓練と教育を支援し、シリコンバレーのアントレプレナー(起業家)と日本のアントレプレナーたちをセミナーやメンターシップ・プログラムを通じて結びつけようとしている。もちろん、日本の新企業に投資されたベンチャーキャピタル資金はわずか約10億ドルで、同年のアメリカのスタートアップに投資された590億ドルと比べると依然として大きく見劣りする。しかし、日本の企業文化のなかで次第にスタートアップ企業が受け入れられ始め、起業家の社会的な地位も高まっている。「いまや優秀な学生たちはグーグル、マッキンゼー、そしてスタートアップ企業に就職したいと考えている」

  • アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない

    キショール・マブバニ

    Subscribers Only 公開論文

    アジアの国際環境は多極化していく。中国が台頭しているとはいえ、誰もがアメリカがアジアでの強固なプレゼンスを維持していくことを願っているし、インドもパワーをつけて台頭しているからだ。この環境では、中国は地政学的に非常に慎重な行動をとらざるを得ない。中国にとっての悪夢のシナリオは、あまりに高圧的な路線をとって反発を買い、アメリカ、日本、ロシア、インド、さらにはベトナム、オーストラリアを結束させてしまうことだ。当然、中国はこの悪夢のシナリオが現実と化すのを避けようとするだろうし、自国の行動をもっと慎重に考えるようになると思う。誰もが唯一の超大国として中国が台頭してくるのではないかと心配しているが、私はそうはならないと考えている。(K・マブバニ)

  • 台頭する中印とインド洋の時代
    ――21世紀の鍵を握る海洋

    ロバート・D・カプラン

    Subscribers Only 公開論文

    世界の人口の75%が沿岸から200マイル以内の陸地で生活していることを思えば、世界の軍事的未来は遠大な海域で活動する能力をもつ海軍力(と空軍力)によって左右される。しかも、海軍の場合、空・陸軍以上に経済利益、貿易システムを守る上で大きな役割を果たせる。……1890年、アメリカの軍事理論家のアルフレッド・セイヤー・マハンは「海上権力史論」で、「商船を守る海軍力が世界の歴史を形作る大きな要因になる」と指摘したが、現在、中国とインドの海軍戦略家は、マハンの著作をむさぼるように読んでいる。……いまやインドと中国のインド洋をめぐるライバル競争は、あたかも海洋版「グレート・ゲーム」の様相を呈している。

  • 引き籠もるイギリスと欧州連合
    ―― EUもイギリスも衰退する

    アナンド・メノン

    Subscribers Only 公開論文

    1962年、ディーン・アチソン米国務長官は、「帝国を失ったイギリスは、まだ新しい役割を見つけていない」と指摘したが、現在のイギリスは、国際問題への関与にさらに消極的になっている。イギリスはヨーロッパだけでなく世界全般から手を引きつつあり、一方で、経済的な利益のためなら、中国の立場に配慮して地政学的な原則さえ犠牲にしていると一部では考えられている。おそらくは2016年に実施されるEU脱退の是非を問う国民投票は、イギリスの「引きこもり」が今後も続くのかどうかを判断する重要な材料になるはずだ。投票では、イギリスのパワーを強化するのは、EUメンバーのイギリスかEUを離れたイギリスかが問われることになる。問題は現在のようにイギリスがEUにおけるリーダーシップをとることを躊躇し続ければ、EUはますます非効率的になり、イギリスではEU脱退論がますます強くなり、悪循環に陥ってしまうことだ。

  • ヨーロッパの危機と分裂をどうとらえるか
    ―― ドイツの覇権、移民、分離独立の流れ

    ニゲアー・ウッズ

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    押し寄せる難民が「域内移動の自由」というEUの中核原則を脅かし、ギリシャ危機はユーロの存続に依然として大きな圧力をかけている。しかも、イギリスでは、EU脱退の是非を問う国民投票が近く実施される。どうみてもEUの存続は、かつてなく脅かされている。一方で、統合支持派はギリシャなど、ソブリンリスクを抱え込んだ諸国への寛大な救済策が政治的に許容されたことそのものが、統合が成功していることを裏付けていると言う。しかし、ユーロ圏メンバー国が団結したのは、ギリシャのユーロ脱退コストが、救済コストよりも高くつくことがわかっていたからだ。結局、EUにおけるドイツの事実上の覇権が今後さらに強化されていくだろう。だが多くの国にとって、ユーロ危機は、(緊縮財政を求める)ドイツの影響力を野放しにするとどうなるかを認識する機会でもあった。「欧州連合は少しずつ、『非民主主義的なドイツに支配されるヨーロッパ』へと変化している」という批判も出てきている・・・。

  • プーチンの中東地政学戦略
    ―― ロシアを新戦略へ駆り立てた反発と不満

    アンジェラ・ステント

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアによるグルジアとウクライナでの戦争、そしてクリミアの編入は、「ポスト冷戦ヨーロッパの安全保障構造から自国が締め出されている現状」に対するモスクワなりの答えだった。一方、シリア紛争への介入は「中東におけるロシアの影響力を再生する」というより大きな目的を見据えた行動だった。シリアに介入したことで、ロシアはポスト・アサドのシリアでも影響力を行使できるだけでなく、地域プレイヤーたちに「アメリカとは違って、ロシアは民衆蜂起から中東の指導者と政府を守り、反政府勢力が権力を奪取しようとしても、政府を見捨てることはない」というメッセージを送ったことになる。すでに2015年後半には、エジプト、イスラエル、ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の指導者たちが相次いでモスクワを訪問している。・・・すでにサウジは100億ドルを、主にロシアの農業プロジェクトのために投資することを約束し、・・・イラクはイスラム国との戦いにロシアの力を借りるかもしれないと示唆している。・・・

  • ヨーロッパの政治的混乱とイスラム主義
    ―― 代替策なきヨーロッパに苦悶する若者たち

    ケナン・マリク

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    イスラム教徒の若者だけではない。ヨーロッパの若者の多くがその政治プロセスに幻滅し、自分の声を届けられないことへの政治的無力感、メインストリームの政党も、教会や労働組合のような社会的集団も自分たちの懸念や必要性を理解していないことへの絶望が社会に蔓延している。これまでなら、そうしたメインストリームに対する不満を抱く若者の多くは政治的変化を求める運動に身を投じたが、いまやそうした政治運動も現実との関連性を失っている。そして移民の社会的統合を目指したヨーロッパの社会政策が、より分裂した社会を作り出し、帰属とアイデンティティに関する視野の狭いビジョンを台頭させてしまった。皮肉にも、こうした欧州の社会政策が、不満をジハード主義に転化させる空間の形成に手を貸してしまっている。・・・・

  • ロボットが雇用を揺るがす
    ―― デジタル経済と新社会保障政策

    ニコラ・コリン

    Subscribers Only 公開論文

    ロボットの台頭に象徴されるデジタル経済のなかで、「すてきな仕事」をしている人は今後もうまくやっていく。だが、製造、小売り、輸送などの部門で「うんざりする仕事」をしている人、決まり切ったオフィスワークをしている人は、賃金の引き下げ、短期契約、不安定な雇用、そして失業という事態に直面し、経済格差が拡大する。ルーティン化された雇用はいずれ消滅し、むしろ、一時的なプロジェクトへの人間とロボットのフォーマル、インフォーマルな協力が規範になっていく。技術的進化が経済を作り替えていく以上、福祉国家システムも新しい現実に即したものへと見直していかなければならない。最大の課題は、多くの人が仕事を頻繁に変えなければならなくなり、次の仕事を見つけるまで失業してしまう事態、つまり、「とぎれとぎれの雇用」しか得られないという状況にどう対処していくかだ。

  • 資本主義の危機と社会保障
    ―― どこに均衡を見いだすか

    ジェリー・Z・ミューラー

    Subscribers Only 公開論文

    資本主義は人々に恩恵をもたらすだけでなく、不安も生み出すために、これまでも資本主義の進展は常に人々の抵抗を伴ってきた。実際、資本主義社会の政治と制度の歴史は、この不安を和らげるクッションを作り出す歴史だった。資本主義と民主主義が調和して共存できるようになったのは、20世紀半ばに近代的な福祉国家が誕生してからだ。認識すべきは、現状における格差は、機会の不平等よりも、むしろ、機会を生かす能力、人的資本の違いに派生していることだ。この能力の格差は、生まれもつ人的ポテンシャルの違い、そして人的ポテンシャルを育む家族やコミュニティの違いに根ざしている。このために、格差と不安は今後もなくならないだろう。この帰結から市民を守る方法を見出す一方で、これまで大きな経済的、文化的な恩恵をもたらしてきた資本主義のダイナミズムを維持する方法を見つけなければならない。そうしない限り、格差の増大と経済不安が社会秩序を蝕み、資本主義システム全般に対するポピュリストの反動を生み出すことになりかねない。

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