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踏み込むべきか、後退すべきか
―― 中東におけるアメリカの選択

ケニス・M・ポラック ブルッキングス研究所シニアフェロー

Fight or Flight

Kenneth M. Pollack ブルッキングス研究所中東政策センター・シニアフェロー。専門は中東の軍事と政治。著書に Unthinkable: Iran, the Bomb, and American Strategyがある。

2016年4月号掲載論文

13世紀のモンゴルによる侵略以降、中東がかくも深刻なカオスに陥ったことはない。イラク、リビア、シリア、イエメンが全面的な内戦に陥り、エジプト、南スーダン、トルコも内戦へと向かう危険がある。すでに内戦の余波が、アルジェリア、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、チュニジアを脅かしている。内戦を終結へ向かわせるのは難しく、決意に満ちた外部からの介入がなければ、内戦は数十年にわたって続く。アメリカの次期大統領は中東政策をめぐって非常に大きな選択に直面する。安定化のためにもっと踏み込んで関与するか、あるいは、さらに距離をとって離れていくかの決定を迫られる。より踏み込んだ関与をすれば、専門家が想定する以上の資源、エネルギー、関心そして政治資源を投入しなければならない。一方、現状の管理能力を手放し、より多くのコミットメントを放棄しても、中東から後退を求める勢力が考える以上の大きなリスクを引き受けなければならなくなる。・・・

  • アメリカの選択
  • 中東で何が起きているのか
  • 内戦の連鎖
  • 内戦を終わらせるには
  • エンゲージメントを強化し、内戦を終わらせる
  • 破綻国家への転落を回避するには
  • 後退路線をとれば・・・
  • イスラエル、テロ対策
  • 石油とサウジアラビア
  • 出口なし

<アメリカの選択>

近代の中東が静かだったことはめったにないが、これほどの騒乱に包み込まれたこともかつてなかった。イラク、リビア、シリア、イエメンが全面的な内戦に陥り、エジプト、南スーダン、トルコも内戦へと向かう危険がある。すでに内戦の余波が、アルジェリア、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、チュニジアを脅かしている。一方で、イランとサウジアラビア間の緊張は、中東全域を巻き込んだ宗派戦争のリスクを浮上させ、イスラエルとパレスチナも再び低強度の紛争に突入している。クウェート、モロッコ、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦は、これまでのところ、降りかかる火の粉を凌いでいるが、周辺が火に包まれていることに脅威を感じている。13世紀のモンゴルによる侵略以降、中東がかくも深刻なカオスに陥ったことはない。

しかも、中東の騒乱が近く落ち着いていく気配はない。「現地諸国の判断に任せれば、中東の人々は目を覚まし、立場の違いを克服する」とアメリカ人が何度主張しようが、そうなることはあり得ない。外部からの関与がなければ、中東の指導者たちは、紛争を悪化させ、事態を永続的に不安定化させるような戦略を選ぶだろう。・・

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