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中印の間で揺れるネパール
―― ネパールは中継貿易の拠点を目指せ

ファハド・シャー ジャーナリスト

Nepal's Balancing Act

Fahad Shah ジャーナリストで、Kashmir Wall、Of Occupation and Resistance: Writing from Kashmirのエディター。

2016年4月号掲載論文

文化的にインドと近いネパールのマデシ民族の自治要求をめぐってインドとの関係が緊張するなか、ネパール政府は(インドのライバルである)中国との関係強化を模索しているかのような動きをみせている。ネパール政府は「インドは国内で差別の撤廃や自治権の拡大を求めて運動を展開しているマデシを支援している」と批判した。事実、インド政府はネパールに対して(マデシの意向に沿うような)憲法改正を促し、カトマンズは「内政干渉だ」とこれに強く反発した。一転、ネパールは中国との北部貿易ルートの開発に力を入れ、中国も開発援助の増額やさまざまな開発プロジェクトでこれに応えている。北京はチベットの治安対策面でもネパールとの関係強化に関心を持っている。中国との良好な関係を形作るのは良いことだが、結局のところ、ネパールにとって「中国はインドの代替策にはなり得ない」。むしろ、ネパールは中印貿易の中継基地として戦略的立地を生かすべきではないか。

  • 対印関係の紛糾
  • 中印貿易の中継拠点を目指せ

<対印関係の紛糾>

「ネパールはインドを苛立たせるために中国カードを切り、中国への接近を試みているのではないか」。2月下旬、インドを訪問中のネパールのシャルマ・オリ首相はこの見方を明確に否定した。とはいえ、オリ首相は、恒例を破って2016年には「インドではなく、先ず中国を訪問するかもしれない」と示唆していた。実際、2015年後半にインドとネパールの関係は緊張し、膠着状態に陥った。カトマンズは「ネパール国内で差別の撤廃や自治権の拡大を求めて運動を展開しているマデシを支援している」とインドを批判した。(インドとの国境地帯に広がる平原地帯で暮らし)ネパールの人口の30%を占めるマデシとインドのつながりは強い。

9月に新憲法を導入したネパール政府に対して「自分たちにより多くの権利を認めるように」と反発したマデシの一部は、トラックや車を利用して国境線を封鎖し、インドからネパールへの医薬品や食糧などの生活必需品の輸入ルートを遮断する実力行使に出た。一方、インド政府は水面下のチャンネルを通じて、ネパールに憲法修正を促し、カトマンズは「内政干渉だ」とこれに反発した。オリがインドを訪問する数日前に、ネパール政府は新憲法の修正を約束し、これによってマデシの活動家たちはブロケードを解除した。・・・

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