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論文データベース(最新論文順)

プーチンは「ロシアを失う」のか
―― 幻想と恐怖の政治の終焉?

2022年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

2021年秋に反ウクライナキャンペーンを開始し、2月にウクライナに侵攻するまで、ロシア市民のプーチン支持率はゆっくりとだが着実に上昇し、11月に63%だった支持率は2月には71%へと、ここ数年のピークに達した。だが、ルーブルが暴落し、ロシアの国際的な孤立が深まるなかで、政府がこのまま幻想を主張し続けるのは難しくなる。プーチンはすでにウクライナを失っている。しかも、ロシアとロシア市民を彼と同じように孤立させてしまったこの戦争の結果、プーチンはロシアも失うのか、それともロシアを自分とともに自滅させるのだろうか。賃金や雇用、必需品や医薬品へのアクセスが失われるとともに、ロシア社会のムードは変化し、状況は一変していくかもしれない。

激変する欧州安全保障構造
―― ロシアのウクライナ支配がヨーロッパを変える

2022年4月号

リアナ・フィックス  ジャーマン・マーシャル財団 レジデントフェロー  マイケル・キメージ  カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアがウクライナを支配するか、広く不安定化させれば、米欧にとって困難な新時代が始まる。ヨーロッパにおけるアメリカの優位は制約され、ヨーロッパは、EUやNATOの中核メンバーしか守れなくなり、加盟国以外の国は孤立する。米欧の指導者たちは、欧州安全保障構造の見直しとロシアとの大規模な紛争を回避するという二つの課題に直面し、いずれにおいても、核武装した敵と直接対決するリスクを考慮しなければならなくなる。アメリカと同盟国は、ウクライナでのロシアの軍事行動の結果、新たな欧州安全保障秩序を構築するという課題に十分な準備ができていないことを認識することになるだろう。欧米はロシアを過小評価してはならない。希望的観測に基づくストーリーに依存すべきではない。

ロシアのウクライナ侵攻と中国の立場
―― 中ロ関係は、台湾はどうなるか

2022年4月号

イアン・ジョンソン CFRシニアフェロー(中国担当) キャシー・ファン CFRリサーチアソシエート(中国研究)

中国はロシアとウクライナの対話を求めつつも、明らかにロシア擁護の立場をとっている。中ロ両国の経済は相互補完関係にあるし、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は個人的に強い絆で結ばれているようだ。2月25日の電話会談でも、習は「交渉が望ましい」と述べるにとどめ、プーチンを批判した様子はなく、ロシアを経済・貿易面で支援するように指示したと報道されている。実際、中国が、欧米諸国に輸出できなくなったロシアの天然ガスやその他の資源の長期的なバイヤーになることは十分に想定できる。今後数年間は、中国がロシアの資源をとやかく言わずに購入して、対ロシア制裁を相殺することになるのかもしれない。・・・仮にロシアがウクライナの一部を手に入れ、傀儡政権を樹立し、経済制裁に持ちこたえれば、中国のナショナリストは台湾に目を向け、自分たちも同じことができると考えるかもしれない。

中国のロシア危機
―― 対ロ協調のバランスシート

2022年4月号

ジュード・ブランシェット  戦略国際問題研究所  中国研究担当チェア  ボニー・リン  戦略国際問題研究所  ディレクター(チャイナ・パワー・プロジェクト)

北京は、欧米の政策は冷戦メンタリティによって導かれていると嘆くが、欧米の専門家は、北京とモスクワの接近を前に1950年代初頭の中ソ同盟を思い出している。ロシアによるウクライナ攻撃は、ロシアとヨーロッパの対立を固定化し、重要なパワーを「ロシアと中国」、「アメリカとヨーロッパ」という二つのブロックに区分することで、結局は、中国が激しく反対している冷戦期の安全保障構造が再現されることになる。問題は、中国が(米欧ロという)三つのプレイヤーのなかでもっとも弱い国と同盟を結ぶことになることだ。実際、ウクライナに関する危険なゲームをいずれ中国は後悔することになるかもしれない。

ウクライナ侵攻というプーチンの大きな誤算
―― ウクライナ民衆の決意を支えよ

2022年4月号

チャールズ・A・クプチャン  米外交問題評議会シニアフェロー(ヨーロッパ担当)

プーチンの攻撃的で拡張主義的な野心を明らかにした今回の侵攻は、軍事的境界で分断されるヨーロッパへと時計の針を巻き戻すことになるかもしれない。ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアのNATO4カ国はウクライナと国境を接しており、新たな脆弱性に直面する危険がある。ロシアの侵攻が欧米と中ロブロックとの冷戦2.0を引き起こすことも考えられる。しかし、北京がモスクワと距離を置くようになる可能性もある。プーチンは物理的な意味でウクライナ支配を再び確立するかもしれないが、政治的、道徳的な意味での支配は実現できない。「誰がウクライナを失ったのか」というロシア人の質問への答えはプーチンということになるだろう。

北朝鮮危機と台湾有事
―― 半島危機と台湾有事のリンケージ

2022年3月号

ソンミン・チョ 米国防総省 アジア太平洋安全保障研究センター 教授 オリアナ・スカイラー・マストロ  スタンフォード大学 国際問題研究所センターフェロー

北朝鮮がアメリカとその同盟国をミサイル発射で挑発したタイミングで、中国が他の地域で行動に出る恐れがある。すでにそのリスクは高まっているのかもしれない。中国と競い合っているアメリカにとっては特に深刻なダメージになるだろう。戦略的競争の時代にある現在、朝鮮半島、東シナ海、台湾海峡は、良くも悪くも、ますます関連性とリンケージを高めている。こうした安全保障環境の変化に対応するには、日米韓の戦略家がこれらの問題をパッケージ化して捉え、対応策を考案しなければならない。金正恩や習近平を牽制するには、必要なら二つの戦争を同時に戦い、その双方に勝利できることを立証する必要がある。

変貌したサウジ経済
―― 脱石油の経済モデルと財政規律

2022年3月号

カレン・ヤング 中東研究所ディレクター(経済・エネルギー担当)

石油を財源とする福祉国家モデルはもはや維持できないことを理解したサウジの指導者たちは、社会的支出の拡大を求める圧力が高まっているにもかかわらず、規律あるオーソドックスな財政政策を模索している。消費によって牽引される経済を促し、支出を削減し、世界的な石油需要の低下を乗り切ることを重視し、無駄をそぎ落とした政府を構築しようとしている。新たな歳入源を探るとともに、原油価格の変動に応じた歳出をなくすことで、サウジ政府は湾岸諸国における財政保守の新たなモデル基盤を築こうとしている。

インド経済の復活はあるか
―― 成長を抑え込む政策的矛盾

2022年3月号

アルビン・サブラマニアン 前インド政府 チーフエコノミックアドバイザー
ジョシュ・フェルマン 元国際通貨基金 駐インド事務所代表

かつてはその経済的台頭が世界に注目されたインドも、パンデミックが広がるまでには、まるで、世界の経済地図から消え去ったかのように忘れ去られていた。だが2021年に流れは変わる。デジタルテクノロジー系スタートアップがブームに沸き返り、ユニコーンが毎月のように誕生した。こうして「インドは復活した」と考える人も出てきた。だが、そのポテンシャルを開花するには、政府はインドのビジネス・投資環境(ソフトウエア)を改革しなければならない。貿易障壁を引き下げ、世界のサプライチェーンへの統合拡大も目指すべきだ。安定した経済環境を構築・維持するために、政策立案過程そのものも改善する必要があるだろう。問題は、そのいずれも現実になる気配がないことだ。・・・

中東における宗派対立の再燃
―― カギを握るイラン核合意の再建

2022年3月号

ヴァリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(中東研究)

中ロが中東への関心を高め、イランが頑迷な路線を崩さず、スンニ派アラブ諸国がアメリカの安全保障コミットメントをかつてなく疑いだしたタイミングで、ワシントンは中東における活動を手控えようとしている。シーア派イランの優位を覆そうとするスンニ派の動きが地域的に広がりをみせている。しかも、混乱のなかで各国の社会契約が破綻し、国が機能不全に陥るなか、過激派の動きが勢いづいている。より安定した地域秩序への道を切り開かない限り、アメリカは遠ざかろうと試みても、結局、中東の地域紛争に引きずり込まれるだろう。大きな鍵を握るのが、イランとの核合意を再建できるかどうかだ。交渉が決裂すれば、イランとアメリカは危険な対立の道を再び歩み始め、アラブ世界を巻き込んで、宗派対立もさらに激化することになるだろう。

アメリカは台湾をめぐる戦争で敗北する軌道にある。だが今からでも路線を見直せる。既存のすぐに手に入る軍事資源の分配を見直し、より効率的な計画を立て、重要な同盟関係をうまく生かせば、アメリカは早ければ2020年代の半ばまでには、台湾をめぐる戦争を阻止し、必要であれば相手に勝利する能力を手に入れているはずだ。中国共産党の自制心や10年以上先にならなければ利用できない技術に賭けるのではなく、アメリカの議会と政府は、新たな太平洋防衛戦略を遂行しなければならない。「バトルフォース2025」を新たに構築すれば、アメリカとその同盟国は、中国の侵攻を短期的に抑止し、必要に応じて撃退できるようになる。

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