次期米大統領のアジア政策
―― 同盟システムの軽視と単独行動主義
2017年1月号
ドナルド・トランプはTPPに反対し、(アメリカ人の雇用を奪う)中国からの輸入に45%の課税を適用すると公約している。そのようなことをすれば貿易戦争が起き、米経済は深刻なリセッションに陥る。数百万のアメリカの雇用が失われ、日韓を含む同盟諸国の経済もダメージを受ける。安全保障領域でも、日本と韓国に米軍の駐留コストを全額支払うように何度も求め、そうしない限り、米軍部隊の規模を削減していくと語っている。すでにアメリカのコミットメントへの信頼は揺らいでいる。トランプはまるで不確実性を作りだすことがドクトリンであるかのような発言を繰り返し、外交ツールとして経済懲罰策を振りかざす路線を強調している。新大統領は後退路線を、側近たちは単独行動主義を主張しているが、重要な部分を共有している。ともに、戦後国際秩序におけるアメリカのリーダーシップを支えてきた「同盟システム、国際的ルールや規範を基盤とする外交を求めていない」ことだ。