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2021年3月号発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2021年3月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2021年3月号 目次

米中衝突が規定する世界へ

  • 米中衝突を制御するには
    ―― 対立のエスカレーションと戦争リスク

    ケビン・ラッド

    雑誌掲載論文

    ワシントンが経済のディカップリング(切り離し)と全面的な対中対決路線を選べば、世界のあらゆる国はどちらかにつかざるを得なくなり、エスカレーションリスクは高まる一方となる。ワシントンと北京がそのような結末を回避できるかについて、専門家が懐疑的な見方をしているのは無理もない状況にある。必要なのは米中間の「管理された戦略競争」枠組みだろう。双方の安全保障政策と行動に一定の厳格な制約を設けつつも、外交、経済、イデオロギーの分野ではオープンで全面的な競争を展開する。一方で、二国間アレンジメントや多国間フォーラムを通じて、特定の分野では協力する。このような枠組みを構築するのは難しいとしても、不可能ではないだろう。そうしない限り、壊滅的な結末に直面する恐れがある。

  • 米外交再創造のとき
    ―― 路線修復では新環境に対応できない

    ジェシカ・T・マシューズ

    雑誌掲載論文

    世界もアメリカもあまりにも大きく変わってしまった以上、トランプ前の時代に戻るのはもはや不可能だ。長年の同盟関係に疑問を投げかけ、権威主義的な支配者にエンゲージし、国際組織や条約から離脱するに及び、アメリカ外交の基盤は大きく切り裂かれてしまった。しかも、社会が二極化し、上下院ともほぼ政治的に二分されている。ほとんどの政策変更が政治論争化するのは避けられない。そして、グローバル世界のパワーは分散し、アメリカの国際的名声は失墜している。バイデンが直面するのはとかく慎重で、ときにはアメリカに懐疑的な姿勢を示す外国のパートナーたちだ。ワシントンが自らの目標を達成したければ、米社会の傷を癒すとともに、世界を説得する力を取り戻さなければならない。

  • ザ・アリーナ
    ―― 米中対立と東南アジア

    ビラハリ・カウシカン

    雑誌掲載論文

    中国の国家規模と経済の重みが東南アジア諸国の不安を高め、習近平国家主席の強引な外交路線がそうした感情をさらにかき立てている。しかし、こうした不安もアジア最大のパワーとの政治的、経済的つながりを維持していく必要性とともに、バランスよくとらえなければならない。「中国かアメリカか」、いずれか一つとの排他的な関係を選べる国は東南アジアには存在しない。アメリカが中国に対してあまりにも強引なスタンスをとれば、事態が紛糾するのではないかという地域的懸念を高め、あまりにも控えめな態度をとれば、見捨てられるのではないかと不安になる。だが「国家は競争する一方で、協力することもできる」。これこそ基本的に東南アジアがアメリカと中国の関係に期待していることだ。

  • 封じ込めではなく、米中の共存を目指せ
    ―― 競争と協調のバランスを

    カート・M・キャンベル、ジェイク・サリバン

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの対中エンゲージメント路線は、すでに競争戦略に置き換えられている。だがその目的が曖昧なままだ。エンゲージメントでは不可能だったが、競争ならば中国を変えられる。つまり、全面降伏あるいは崩壊をもたらせると、かつてと似たような見込み違いを繰り返す恐れがある。それだけに、米中が危険なエスカレーションの連鎖に陥るのを防ぐ一連の条件を確立して、安定した競争関係の構築を目指す必要がある。封じ込めも、対中グランドバーゲンも現実的な処方箋ではない。一方、「共存」はアメリカの国益を守り、避けようのない緊張が完全な対立に発展するのを防ぐ上では最善の選択肢だ。ワシントンは、軍事、経済、政治、グローバルガバナンスの4領域において、北京との好ましい共存のための条件を特定する必要がある。

  • アジア秩序をいかに支えるか
    ―― 勢力均衡と秩序の正統性

    カート・M・キャンベル、ラッシュ・ドーシ

    Subscribers Only 公開論文

    ウィーン体制によって1815年から第一次世界大戦までの1世紀に及んだ長い平和の礎が築かれた。大国間政治が激化し、地域秩序が緊張している現在のインド太平洋はウィーン体制の歴史的教訓から多くを学べるだろう。当時も今もいかに勢力均衡を形作り、秩序の正統性を保つかが問われている。北京の行動が、アメリカやアジア諸国の「インド太平洋秩序」のビジョンと衝突するのが避けられない以上、ワシントンはシステムを強化するために他国と協力し、北京が生産的に秩序にエンゲージするインセンティブを与え、一方で中国が秩序を脅かす行動をとった場合のペナルティを他の諸国とともに考案しておく必要がある。秩序のパワーバランスと正統性をともに維持するには、同盟国やパートナーとの力強い連帯、そして中国の黙認と一定の応諾を取り付けておく必要がある。

  • 破壊された米外交
    ―― 戦後秩序の終わりと次期政権の選択

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    今後の世界では紛争がより一般的になり、民主主義はさほど一般的な政治制度ではなくなっていく。友人を安心させ、敵を抑止する同盟関係の作用が弱まっていけば、核拡散が加速し、大国の勢力圏が拡大していく。貿易はより管理され、ゆっくりと成長する程度で、縮小していくかもしれない。ドルの影響力も低下するだろう。そして戦後75年間続いた世界秩序は確実に終わる。唯一の疑問は、何が旧秩序にとって代わるかだ。その多くは、アメリカが今後どのコースをとるかに左右される。トランプの外交ブランドがさらに4年続くようなら、第二次世界大戦後から2016年までアメリカが主導したモデルが規範からの逸脱とみなされ、孤立主義、保護主義、ナショナリズムの単独行動が本流とみなされることになる。

  • 北京の影響下で
    ―― 東南アジアにとっての中国という課題

    ハンター・マーストン

    Subscribers Only 公開論文

    東南アジア諸国の対中認識は二つの考えの間で揺れ動いている。経済成長を中国の台頭に依存しているために、中国との貿易を続けたいと考える一方で、中国の強大化する経済力、外交力、軍事力を警戒している。南シナ海を含む東南アジア地域で北京が強硬外交をとり、武力行使も辞さない路線をとっていることに神経を尖らせている。実際には、中国と東南アジアの親密な関係を示唆する神話の多くは虚構のようだ。「ミャンマーが中国の衛星国のような存在になった」とみなすのは安易すぎるし、カンボジア人の多くも、中国の影響力拡大を警戒している。むしろ、東南アジアに共通しているのは、中国に傾斜することに対するリスクヘッジ戦略をとっていることかもしれない。・・・

民主主義モデルVS. 権威主義モデル

  • カルト集団とポスト真実の政治
    ―― アメリカの政治的衰退

    フランシス・フクヤマ

    雑誌掲載論文

    ソーシャルメディアは民主的議論の前提となる共通の事実認識さえ消滅させてしまった。実際、共和党員の77%が2020年の米大統領選挙で大きな不正があったと考え、4分の1近くが、Qアノンが主張する異様な陰謀論を信じている。しかも、民主党、共和党の政策の違いをめぐる対立が、文化的アイデンティティをめぐる分断線として硬直化している。しかも、共和党はもはやアイデアや政策に基づく政党ではなく、カルト集団のような存在と化してしまった。大きな不確実性は、今後、共和党内で何が起きるかにある。共和党の主流派が権限を再確立するのか、それともトランプが基盤を維持するのか。

  • 追い込まれた民主主義
    ―― 台頭する権威主義、後退する民主国家

    ヤシャ・モンク

    雑誌掲載論文

    冷戦終結以降、世界が目の当たりにしてきたのは、民主主義の後退と言うよりも、むしろ、中ロなどの権威主義国家の復活だった。アメリカとその民主的同盟諸国は、この歴史的瞬間の重要性を理解し、民主体制から民主国家が後退していくのを食い止める一方で、中国やロシアのような権威主義体制に対する統一戦線を維持していかなければならない。今後数十年は、民主主義と独裁体制間の延々と続く長期的競争によって特徴付けられることになる。実際、内に権威主義諸国を抱えるようになったEUとNATOは機能不全に陥り、価値を失っていくかもしれない。民主国家が大胆な行動を起こさない限り、さらに憂鬱な未来に直面する。

  • プーチン主義というイデオロギー
    ―― 侮れない思想の力と米ロ関係の未来

    マイケル・マクフォール

    雑誌掲載論文

    ロシアに関するアメリカの考えはミスパーセプションによって歪んでいる。専門家の多くは、例えば、ロシアは衰退途上国家だと誤解している。現実には、ほとんどの米市民が考えるよりもはるかに強大な軍事、サイバー、経済、イデオロギー領域のパワーをもつ、世界有数の強国の一つとしてロシアは再浮上している。事実、プーチン主義はヨーロッパだけでなく、アメリカでも新たな支持者を獲得しつつある。ワシントンは、あまりにも長い間、米ロ間競争のこのようなイデオロギー的側面を軽視してきた。ワシントンは、ロシア社会全体との結びつきを深めながらも、プーチンのイデオロギー・プロジェクトに対抗していく必要がある。

  • 分裂と相互不信をいかに修復するか
    ―― 寸断されたアメリカの政治と社会

    イザベル・ソーヒル

    Subscribers Only 公開論文

    「すべてのアメリカ人の大統領になる」。現状からみて、これほど難しい課題もない。支持政党を分ける大きな要因はもはや政策ではなく、心の奥底にある価値観やアイデンティティだ。このために(自分の支持政党ではない)「もう一つの政党」は反対政党であるだけでなく、敵とみなされている。そして政治とは、共通の問題に対処していくための妥協点をみつけることではなく、自分の側が相手に勝利を収めるための闘いとみなされている。バイデンはブルーカラーの労働者、高齢の文化的伝統主義者、急進的な変化を恐れる女性たちに寄り添っていくつもりだ。警察の予算を打ち切ることはなく、中産階級の増税もしない。彼は社会を統一したいと考えている。取り残された人々に手を差し伸べ、すべてのアメリカ人が意見の違う人々をより尊重するように求めることから始めるべきだろう。それが、アメリカの魂を取り戻すことになる。

  • 民主主義とポピュリズム
    ―― トランプ後のアメリカ

    ヤシャ・モンク

    Subscribers Only 公開論文

    トランプが(選挙は盗まれたという)大統領選挙に関する自分の嘘を多くのアメリカ人に真実だと思い込ませ、対立候補の当選が認定されることに抗議して何万人もの支持者を動員できたという事実は、かなり多くの人がこの種のポピュリズムのアピールを受け入れていることを意味する。「大統領か憲法か」の選択に直面して、彼らはトランプを選んだ。しかし、米議会を襲撃した暴徒をアメリカの真の姿とみなしてはならない。バイデンは、トランプの反民主的な過激主義を非難する上で明確かつ率直でなければならない。しかし一方で、トランプに投票した人々のことを、救いようのない嘆かわしい人々と描写することなく、危険なデマゴーグへの忠誠を放棄するようにアプローチし、「すべてのアメリカ人の大統領になれること」を立証しなければならない。

  • 民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
    ―― モスクワの策略に立ち向かうには

    ジョセフ・R・バイデン、マイケル・カーペンター

    Subscribers Only 公開論文

    ロシア政府は政治腐敗まみれの泥棒政治システムを守ろうと、その生存を外から脅かす最大の脅威と彼らがみなす「欧米の民主主義」に対する国境を越えた闘いを挑んでいる。欧米を攻撃することで国内の政治腐敗や経済的停滞に人々が目を向けないようにし、ナショナリズム感情を煽り立てて国内の反体制派を抑え込み、民主主義国家を守勢に立たせることで欧米諸国が国内の分断線対策に専念せざるを得ない状況を作り出そうとしている。この環境なら、モスクワは国内の権力基盤を固めることに専念し、「近い外国」に対して思うままに影響力を行使できる。だが、プーチンとその取り巻きたちは、アメリカの民主主義の最大の強さは市民の政治参加にあることを理解していない。米大統領が対策を拒んでも、われわれが行動を起こす。

  • 「アメリカは敗北しつつある」
    ―― 米中競争についての北京の見方

    ジュリアン・ゲワーツ

    Subscribers Only 公開論文

    2008年の金融危機を前に、北京の指導者たちは欧米の衰退が実際に始まったと考えるようになった。マルクス主義的な歴史の流れを信じる北京の指導者たちは、毛沢東の言う救いようのない「反動勢力」で無為に中国を抑え込もうとするアメリカは挫折すると考えてきた。この考えが中国の習近平国家主席の世界観を規定している。それだけに、ワシントンは中国の能力と目的を評価するだけでなく、「北京の指導者たちがアメリカをどのように認識しているか」を踏まえた戦略をとるべきだ。アメリカが衰退の一途をたどっているという中国の指導者たちの思い込みを覆す戦略が必要だ。中国とうまく競い合うためにアメリカが実行しなければならないことの多くは、アメリカが管理できる範囲内にあり、まだ行動のための時間も残されている。

Current Issues

  • なぜ世界はパンデミックに敗れたのか
    ―― 国際協調を阻んだナショナリズムと保護主義

    ヤンゾン・ファン

    雑誌掲載論文

    「協調性のない、混沌とした国中心の反応」。これが、世界のCOVID19パンデミック対策の特徴だった。必要とされる「グローバルな危機へのグローバルな対応」からはかけ離れていた。国際協調体制がうまく築かれなかったことについて、世界保健機関(WHO)を非難する分析者もいる。しかし、最大の理由は、米中対立によって対応が政治化され、ナショナリスティックで保護主義的な対応がとられたことにある。米中間の緊張は、アウトブレイクに関する調査だけでなく、ウイルスの拡散を封じ込めるための協調行動をまとめるWHOの能力も抑え込んでしまった。必要なのは、パンデミックコントロールを、あらゆる国が貢献すべき「グローバルな公共財」として位置づけることだろう。

  • ジェノサイド認定の意味合い
    ―― 中国のウイグル人弾圧問題の行方

    ジョン・B・ベリンジャーIII

    雑誌掲載論文

    トランプ政権末期、ポンペオ国務長官は、中国政府は新疆ウイグル自治区でウイグル人やその他の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)に手を染めており、ウイグル人を含むマイノリティに対して「人道に対する罪」を犯していると表明した。ジェノサイド認定が表明されると、歴史的に、制裁や軍事介入を含む重要な行動をとるように政府に求める議会、市民団体、メディア、大衆の圧力は大きくなる。だが、ジェノサイド認定は、トランプ政権が末期にとった他の行動同様に、バイデン政権の対中関係改善能力を封じ込める作用をしており、実際に、それがポンペオの意図だったのかもしれない。そうでなくても、バイデン政権はウイグル人に対する中国の行動を力強く非難しただろうが、ジェノサイドの認定を支持すれば、政権が中国に対してより懲罰的な行動をとることを求める市民の圧力を高めるのは避けられない。

  • 次のパンデミックに備えよ
    ―― グローバルな対応をいかに整備するか

    ジェニファー・ナッゾ

    Subscribers Only 公開論文

    パンデミックの経済的、社会的余波は、今後数十年は続き、おそらく、今回の危機が21世紀最後のパンデミックになるわけでもないだろう。現在の公衆衛生構造は「感染症の(局地的な)アウトブレイク」を前提としている。だが「世界のほぼすべての国が同じようにリスクにさらされるパンデミック」には別のアプローチが必要になる。事実、パンデミックを前に、限られたリソースしかもっていない世界保健機関(WHO)、世界銀行などの国際機関が大きな圧力にさらされた結果、各国は独力で感染症対策を実施せざるを得ない状況に追い込まれた。パンデミックに対する真のグローバルな対応を実現するには、各国はデータ共有を含めて、共同の試みをすることに合意しなければならない。そうしない限り、次の危機でも、対応が小さすぎて、遅すぎることが立証されることになる。

  • 次のパンデミックに備えるには
    ―― COVID19の教訓とは何か

    マイケル・T・オスタホルム、マーク・オルシェイカー

    Subscribers Only 公開論文

    ワクチンが開発されて利用できるようになるか、多くの人が感染して集団免疫が達成されれば、現在の危機は終わる。しかし、ワクチンであれ、集団免疫であれ、それが短期間で実現することはなく、そこに至るまでの人的・経済的コストはかなりのものになる。しかも、将来における感染症アウトブレイクはより大規模で、致死性も高いはずだ。言い換えれば、現在のパンデミックは、世界のあらゆる疫学者や公衆衛生当局者が悪夢とみなす深刻な感染症(ビッグワン)ではおそらくない。次のパンデミックは、1918年のスペインかぜと同様に壊滅的な「新型インフルエンザウイルス」になる可能性が高い。COVID19を次のパンデミックがどれほど深刻なものになるかの警告とみなすべきだし、再び手遅れになる前に、アウトブレイクを封じ込めるために必要な行動を促す必要がある。

  • 中国のイスラム教徒収容所
    ――なぜウイグル人を弾圧するのか

    リンジー・メイズランド

    Subscribers Only 公開論文

    中国政府は、100万以上のイスラム教徒を西部の「再教育施設」に拘束していると言われる。・・・人権団体によれば、多くの場合、彼らにとって唯一の罪はイスラム教徒であることだ。・・・収容所内で何が起きているかについての情報は限られているが、(施設および)中国から脱出した人物の証言によると、CCPへの忠誠とイスラム教の放棄を求められ、共産主義の賛美と標準中国語の学習を強制される。中国政府は、ウイグル人が過激化し、分離主義が高まることを恐れており、収容所は中国の領土保全、政府、広く中国市民に対する脅威をなくすための手段だと考えているようだ。「新疆ウイグルでの出来事は国内問題である」と主張する北京は、外部の調査ミッションを受け入れるように求める国際社会の圧力を退けている。多くのイスラム国家も、中国との経済的絆や戦略的関係を優先し、中国内での人権侵害に目をつむっている。

  • ロヒンギャ危機の解決に向けて
    ―― 国際社会が果たすべき役割

    ジョナー・ブランク、シェリー・カルバートソン

    Subscribers Only 公開論文

    ミャンマー政府はバングラデシュに逃れたロヒンギャ難民の帰還を認めると発表しているとはいえ、大規模な難民を発生させた集団暴行にミャンマーの治安部隊や政治家たちが果たした役割を考えると、政府のコミットメントを額面通りに受け取るわけにはいかない。基本的な市民権のはく奪、そしてロヒンギャが国を後にせざるを得なくなった暴力という問題に対処しなければ、帰還を認めるとしたミャンマー政府の約束も永続的な解決策にはならない。国際社会はミャンマー政府に対してロヒンギャを再び国に受け入れるだけでなく、他の全ての少数民族が享受している安全と市民権を与えるように求めるべきだし、大規模な難民流入に直面するバングラデシュを支える必要がある。これらが実現しない限り、100万を超える人々が安心して暮らせる国をもたずにさまよい続けることになる。

中国の政治・経済的未来

  • 北京の反独占禁止策?
    ―― 中国のビッグテックと産業政策

    ジョシュ・フリードマン

    雑誌掲載論文

    専門家の多くは、アリババやテンセントなど、中国のビッグテックによる市場独占を阻もうとする北京の熱意を、フェイスブックやアップルを何とか抑え込もうとする欧米の試みと重ね合わせて捉えている。だがそれは、間違いだ。北京が警戒しているのは市場独占による圧倒的なパワーそのものではない。北京は、イノベーションの方向性への統制を強化し、民間大企業のパワーを共産党の産業政策の目的実現へと向かわせたいと考えている。北京が望んでいるのは党が望むイノベーションの方向に民間企業を従わせ、巨大企業が収益拡大のために党の方向から外れないようにすることにある。

  • 新エリート階級と中国の格差
    ―― オリガークか独裁か

    ブランコ・ミラノビッチ

    雑誌掲載論文

    民間経済部門が力強く成長すれば、新しい社会経済階級が誕生する。この集団を取り込もうと、北京は共産党メンバーになるように彼らに働きかけて、取り込みを図るが、結局、彼らは社会の他の部分からも共産党メンバーの大半からも浮いた政治・経済的な上流階級となる。このようなエリートの力をどのように管理できるだろうか。一見すると、中国の不平等は、急速な成長と都市化から予測できた副産物のようにも思える。しかし、格差に対処するには、この新エリート層の高まるパワーを抑制するかどうか、そうするとしてどのように抑えるかという難しい選択に直面する。下手をすると、中国に残される選択肢はオリガーキーか独裁ということになる。

  • 習近平と中国共産党
    ―― 党による中国支配の模索

    リチャード・マクレガー

    Subscribers Only 公開論文

    胡錦濤の後継者として習を指名した2007年当時、共産党幹部たちも「自分たちが何をしたのか分かっていなかった」ようだ。国家を激しくかき回すであろう強権者を、彼らが意図的に次期指導者に選んだとは考えられない。「妥協の産物だった候補者が妥協を許さぬ指導者となってしまった」というのが真実だろう。最高指導者となって以降の最初の200日間で、彼は驚くべきペースで変化をもたらした。共産党への批判も封じ込めた。対外的には「一帯一路」を発表し、台湾問題を「次世代に託すわけにはいかない政治課題」と呼んだ。しかも、2017年に彼は国家主席の任期ルールを撤廃し、実質的に終身指導者への道を開いた。毛沢東でさえも政治的ライバルがいたが、習は一時的ながらもライバルがいない状況を作り出している。だが、中国経済が停滞すれば、どうなるだろうか。2022年後半の次期党大会前に、習による行き過ぎた権力集中は彼自身を悩ませることになるはずだ。・・・

  • 中国経済のスローダウンと北京の選択
    ―― 債務危機かそれとも政治的混乱か

    クリストファー・ボールディング

    Subscribers Only 公開論文

    中国の経済成長率は鈍化し続けている。人口の高齢化、生産年齢人口の減少、賃金レベルの上昇、都市部への人口流入ペースの停滞、投資主導型成長の限界、外国資金流入の低下など、成長率の鈍化、経済のスローダウンを説明する要因は数多くある。だが重要なのは、中国の家計と国の債務がすでに先進諸国と同じレベルに達し、債務が名目GDPよりも速いペースで拡大していることだ。債務の急速な拡大が危険であることを理解していたのか、北京は信用拡大を抑えて管理するための措置を2018年末にとったが、2019年1月の信用拡大は、2018年の年間社会融資総量合計の24%規模に達した。北京は高い経済成長率のためなら、進んでより大きな債務を抱え込むつもりのようだ。

  • デジタル人民元とドル
    ―― 脅かされる米ドルの覇権

    アディティ・クマール、 エリック・ローゼンバッハ

    Subscribers Only 公開論文

    一帯一路を通じて世界のインフラプロジェクトに資金を提供している北京が、途上国の金融インフラに投資すれば、この構想を補完する「デジタル一帯一路」を構築できるし、中国と大規模な輸出入関係にある企業に、アリペイを使って「デジタル人民元」で取引するように促すこともできる。実際、中国のデジタル通貨を利用できるようになれば、(経済制裁の対象にされても)テヘランはドル建ての取引と決済、そして米金融機関を迂回できるようになる。迫りくる「デジタル通貨の時代」における経済的優位を守るには、ワシントンは直ちに行動を起こす必要がある。競争力のあるデジタル通貨をワシントンが開発できなければ、情報化時代におけるアメリカのグローバルな影響力は大きく損なわれることになるかもしれない。

  • 縁故資本主義と中国の政治腐敗
    ――共産党は危機を克服できるか

    楊大利(ヤン・ダリ)

    Subscribers Only 公開論文

    90年代以降、中国共産党が行政の分権化を進めた結果、地方政府のトップはかなりの自己裁定権をもつようになった。こうして地方官僚が個人的利得のために、国の資産と資源を用いる政治腐敗の無限大の機会が誕生した。安月給の役人が上司に賄賂を渡して、「おいしい」ポジションにつけてもらう巨大な売官市場も存在する。これには賄賂の「元手」が必要になるために、その影響は多岐に及び、しかもスキームに関わる誰もが、最終的に、自分の投資に対する見返りを期待する。この政治腐敗のネットワークが軍、司法、さらには中央の規制当局にまで及んでいる。共産党時代を超えて縁故資本主義が続き、中国の未来を不安定化させることになるのか。それとも、共産党はいつもの柔軟性と復元力を発揮するのか。見方は分かれている。・・・

  • 中国が望む世界
    ―― そのパワーと野心を検証する

    ラナ・ミッター  

    Subscribers Only 公開論文

    世界第2位の経済大国である中国が、ライバルが規定した条件で世界秩序に参加するはずはない。特に、2008年のグローバル金融危機以降、中国指導部は、自国の権威主義的統治システムは、自由主義国家に至るプロセスにおける一つの形態ではなく、それ自体が目的地であると明言するようになった。明らかに国際秩序を作り替えることを望んでいる。中国は間違いなく、国際社会の「舞台中央に近づきつつある」と習はすでに宣言している。今後の展開にとっての重要な鍵は、中国が世界における自らの野心を、他国にとってある程度許容できるものにできるかどうかだ。現実には、もっともらしい新世界秩序を作る中国の能力を脅かしているのは、その権威主義体質に他ならない。

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