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論文データベース(最新論文順)

米大学生への留学の薦め
―― 国際問題と外国への感性を高めるには

2016年4月号

サンフォード・J・アンガー ガウチャー大学名誉学長

アメリカ人には、外国に関する知識や理解がほぼ例外なく欠落している。しかも外交予算は削られ、メディアも国際報道を減らしている。いまや大統領選挙の論争においてさえ、外交問題について十分な情報に基づく議論を聞くことはない。このために、アメリカの価値を反映し、大衆も支持するような、冷静で一貫性のある外交政策の策定と実施が妨げられている。必要なのは、大学のカリキュラムの一環として外国に留学し、貴重な知見を得てアメリカに帰ってくる大学生を大幅に増やすことだ。アメリカの現在そして過去のリーダーの多くは、若くて感受性が強いときに、外国に留学し、外国でさまざまな活動に従事した経験を持っている。この事実は、企業、政府、科学、教育、非営利組織、芸術など分野を問わない。留学生の増加をアメリカの社会と外交政策の改善につなげていくには、留学プログラムへの参加者の数と多様性を大幅に拡大する必要がある。

ローマ史はわれわれに何を問いかける
―― 近代政治への教訓

2016年4月号

マイケル・フォンテーヌ コーネル大学准教授(古典)

ローマ人はすでに5世紀末までに、その後、19世紀半ばまで西洋世界が実現できなかった高度な生活レベルを享受していた。そこには水洗トイレ、大理石のキッチンカウンター、屋内暖房、美容歯科まであった。ローマはこのライフスタイルを「元老院とローマの市民」(SPQR)として知られる、市民と選挙で選ばれる指導者との関係を通じて保障していた。そうした古代ローマの歴史には近代政治の教訓とできるエピソードが数多くある。移民問題、予防攻撃、ポリティカル・コレクトネス、宗教集団への対応、マイノリティの扱いなどだ。紀元前146年にローマがカルタゴ相手に最終的に勝利を収めて以降の歴史は、新たな一極世界における覇権が伴う問題が何であるかもわれわれに教えている。その後、ローマでは対外的な敵の消失によって、内的な権力抗争が展開されるようになり、小さな脅威でさえも帝国の存続を脅かす脅威とみなされるようになった。・・・

イノベーションと 「70対20対10ルール」
――ルース・ポラットとの対話

2016年4月号

ルース・ポラット アルファベット CFO(最高財務責任者)

ルース・ポラットは、テクノロジー企業のエグゼクティブとしては異例のキャリアの持ち主だ。2015年5月にグーグル、その数カ月後にグーグルの持ち株会社アルファベットの最高財務責任者(CFO)に就任するまで、彼女は米金融大手モルガン・スタンレーのCFOだった。2008年の金融危機では、経営不振に陥った米保険最大手AIGの処理について連邦準備制度理事会(FRB)と、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の処理について米財務省と協力した経験をもっている。オバマ政権下の2013年には、財務副長官候補に名前が上がったこともある。政治サイト「ポリティコ」はポラットのことを「ウォール街でもっともパワフルな女性」と呼んだが、今は「シリコンバレーでもっともパワフルな女性の1人」だ。(聞き手はジョナサン・テッパーマン、フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

グローバル化したイスラム国
―― 増殖する関連組織の脅威

2016年4月号

ダニエル・バイマン ジョージタウン大学教授

欧米諸国が、国内の若者たちがイラクやシリアへ向かうことを心配していればよかった時代はすでに終わっている。ジハード主義者たちが、中東だけでなく、中東を越えたイスラム国のさまざまな「プロビンス」を往き来するようになる事態を警戒せざるを得ない状況になりつつある。「プロビンス」を形づくる関連組織の存在は、イスラム国の活動範囲を広げる一方で、地域紛争における関連組織の脅威をさらに高めており、いずれ関連集団による対欧米テロが起きる恐れもある。だが、われわれは「コア・イスラム国」の指導者と、遠く離れた地域で活動するプロビンスの間で生じる緊張をうまく利用できる。適切な政策をとれば、アメリカとその同盟国は「プロビンス」と「コア・イスラム国」に大きなダメージを与え、相互利益に基づく彼らの関係を破壊的な関係へと変化させることができるだろう。

CFR Events
流動化するサウジ
―― 原油、イラン、国内の不安定化

2016年4月号

バーナード・ハイカル プリンストン大学教授(近東研究)、カレン・エリオット・ハウス 前ウォールストリートジャーナル紙発行人

サウジの社会契約は石油の富による繁栄を前提にしており、(原油安が続き)民衆が望むレベルの繁栄を提供できなくなれば、政府は政治的に非常に困難な事態に直面する。原油以外の歳入源(経済の多角化)について、さまざまな議論が行われているが、これまでうまくいったことはない。・・・リヤドは、歳出を削減して民衆の反発を買うよりも、非石油部門の歳入を増やそうとしている。これまで膨大な浪費を続けた国だけに、節約で一定の資金を手許に残せるが、最終的には、痛みを伴う是正策が必要になるだろう。(K・E・ハウス)

サウジは、イランのことをイスラム国以上に深刻な脅威とみなしている。イランは非国家アクターを操り、イラクからシリア、レバノン、パレスチナ、イエメン、おそらくはバーレーン、さらには、サウジ東部のシーア派を含む、サウジ周辺の全地域(と国内の一部)で影響力を拡大しているからだ。リヤドは、地域的、あるいは中東全域の地政学的優位をめぐって、イランとのゼロサムの関係にあるとみている。(B・ハイカル)

ヨルダンとイスラム国
―― なぜヨルダンでは大規模テロが起きないか

2016年4月号

アーロン・マジッド アンマン在住ジャーナリスト

サウジアラビア、イラク、シリアとは違って、これまでのところヨルダン国内ではイスラム国による大規模なテロ攻撃は起きていない。国内のイスラム国関連の事件による犠牲者数は、多くて5人。ヨルダンの治安部隊、情報機関が洗練された高い能力をもっているとしても、それだけで「なぜヨルダンがイスラム国のテロを回避できているか」のすべてを説明するのは無理がある。おそらく他の中東諸国とは違って、ヨルダン政府が民意を汲み取る明確な姿勢をみせてきた結果、社会の混乱を抑え、テロのリスクを抑え込めたのかもしれない。「民主体制ではないが、ヨルダンはアラブ諸国のなかでも数少ない、市民が政府への要望や不満を表明できる国だ」。ヨルダンではアブドラ国王とムスリム同胞団はともに相手に対して寛容な立場をとっている。そこに問題への政治的解決策が存在することが、大がかりな社会的混乱も過激派テロもヨルダンで起きていない最大の理由ではないか。

踏み込むべきか、後退すべきか
―― 中東におけるアメリカの選択

2016年4月号

ケニス・M・ポラック ブルッキングス研究所シニアフェロー

13世紀のモンゴルによる侵略以降、中東がかくも深刻なカオスに陥ったことはない。イラク、リビア、シリア、イエメンが全面的な内戦に陥り、エジプト、南スーダン、トルコも内戦へと向かう危険がある。すでに内戦の余波が、アルジェリア、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、チュニジアを脅かしている。内戦を終結へ向かわせるのは難しく、決意に満ちた外部からの介入がなければ、内戦は数十年にわたって続く。アメリカの次期大統領は中東政策をめぐって非常に大きな選択に直面する。安定化のためにもっと踏み込んで関与するか、あるいは、さらに距離をとって離れていくかの決定を迫られる。より踏み込んだ関与をすれば、専門家が想定する以上の資源、エネルギー、関心そして政治資源を投入しなければならない。一方、現状の管理能力を手放し、より多くのコミットメントを放棄しても、中東から後退を求める勢力が考える以上の大きなリスクを引き受けなければならなくなる。・・・

豪潜水艦調達と日独仏の競争
―― アメリカは誠実な仲介者を

2016年4月号

ジョナサン・D・キャバリー ウッドロー・ウィルソン・センター フェロー

同盟諸国に「中国の拡大主義に抵抗する試みを強化するように」と働きかけてきたアメリカにとって、オーストラリアが新型の潜水艦を導入するのは歓迎できるニュースだろう。フランスやドイツにとって、共同開発・生産契約を受注できれば、重要で魅力的なディールになる。日本にとっては、契約を受注することはさらに大きな意義がある。契約を受注すれば、日豪のインフォーマルな同盟関係が強化され、中国を封じ込める上で大きな価値をもつからだ。アメリカ政府もこの見方を受け入れ、水面下では日本が契約を受注するのが好ましいと考えているようだ。しかし、前回の潜水艦調達をめぐって大きな失敗を犯したオーストラリアが今回求めている基準はかなり高く、日独仏のいずれにとっても、これを満たすのは容易ではない。重要なのは、軍事予算を押し潰すことなく、必要とする潜水艦をオーストラリアが調達できるかどうかであり、アメリカはその調達をめぐる「誠実な仲介者」の役割を心がけるべきだろう。

日本の新しいリアリズム
―― 安倍首相の戦略ビジョンを検証する

2016年4月号

マイケル・オースリン アメリカン・エンタープライズ研究所 レジデントスカラー、日本研究ディレクター

日本の地域的役割の強化を目指し、民主国家との連携強化を試みるために、安全保障行動の制約の一部を取り払おうとする安倍首相の現実主義的な外交・安全保障路線は、北朝鮮と中国の脅威という地域環境からみても、正しい路線だ。たしかに論争は存在する。市民の多くが平和主義を求める一方で、識者たちは日本の安全保障に対する脅威を憂慮している。しかし、そうした社会的緊張には、孤立主義や介入主義といった極端な方向に日本が進むことを防ぐ効果がある。超国家主義が日本を近隣諸国に対する侵略と戦争へと向かわせた1930年代と違って、現在の日本は、アジアを豊かさと安定へと導く「リベラルなシステム」を強化し、擁護していくために、古い制約を解体しつつある。再出現した権威主義国家がグローバルな平和を脅かすような世界では、日本の新しいリアリズムが太平洋地域の今後10年を形作るのに貢献し、アジアを特定の一国が支配するような事態にならないことを保証する助けになるはずだ。

「ドイツ主導のヨーロッパ」に挑むイタリア
―― マッテオ・レンツィはヨーロッパに代替策を提供できるか

2016年3月号

アンドレア・マモーン ロンドン大学ロイヤルホロウェイ 歴史学講師

ドイツが主導するヨーロッパ政治への反発はかつてなく高まっている。親ヨーロッパ派であるはずの経済エリートたちでさえ、ドイツが主導するヨーロッパ政治に不信感を募らせ、(緊縮財政にこだわるベルリンの頑迷な路線がヨーロッパ各国の投資と経済の再生を阻んでいると考えている。こうしたドイツ批判の急先鋒を担いでいるのが、イタリアのマッテオ・レンツィ首相だ。実際、ドイツ主導で進められた経済政策は景気を浮揚させることに成功していないし、失業率も低下していない。ローマはようやく、ベルルスコーニ政権期に失った信頼性と外交的停滞を回復しようと試み、巻き返しを図りつつあるようだ。実際、レンツィがEU内部で力を結集できれば、ナショナリズム、極右、反EU勢力とは関係のない、ドイツパワーへの代替策を提供できるかもしれない。

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