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論文データベース(最新論文順)

再び原油価格変動の時代へ
―― 原油価格の低下は何を意味するのか

2014年12月号

ロバート・マクナリー/ラピダン・グループ代表 マイケル・レビ /米外交問題評議会シニアフェロー(エネルギー・環境問題担当)

世界経済の停滞とリビアでの原油増産によって2014年夏に原油価格は低下し始めた。供給が増える一方で需要が低下すれば一般に価格は低下する。トレーダーたちはサウジが市場の安定を保つために減産に踏み切ると考え、1バレル90ドルが底値だろうと想定していた。だがサウジは価格の低下を受けいれ、拙速な減産はしないと示唆することで、市場に衝撃を与え、その結果、原油価格はさらに急激に低下した。問題は、価格変動を抑えるサウジの生産調整能力が低下していることだ。シェールオイルの増産が市場を一時的に安定化させた可能性もある。だが、数多く存在するシェールオイル企業の経済・財政状況はそれぞれ違っているために、変化に向けて一つの方向に生産を調整するのは容易ではない。サウジの生産調整能力ほど大きな市場インパクトはない。・・・

中国とロシアによる反欧米同盟
―― 中ロを結びつける六つの要因

2014年12月号

ギルバート・ロズマン プリンストン大学教授(社会学)

2012年、「中華民族の偉大なる復興」をスローガンとする「中国の夢」を表明した習近平国家主席は、中国がその中枢に位置するアジアの新しい地政学秩序を思い描いている。プーチン大統領も、旧ソビエト諸国をロシアが主導するユーラシア連合構想を表明している。重要なポイントは、両国が冷戦期の中ソ対立を再現しないように、十分に配慮していることだ。モスクワと北京の指導者たちは、欧米の影響力を抑え込むという両国が共有する利益枠組みが損なわれないようにしたいと考えている。実際、モスクワと北京は欧米秩序の正統性に対抗する外交路線をとることを心がけ、両国の野心的な外交政策については互いにコメントするのを控えている。中ロの結びつきは、一般に考えられているよりもはるかに強い。

イスラム国とイラクの現実

2014年12月号

ジェーン・アラフ アルジャジーラ・アメリカ・イラク特派員

イラクのクルド自治区議会は、(イスラム国に包囲された)シリアのクルド人を支援するために民兵組織ペシュメルガをシリアに派遣することを決議し、トルコ政府も一定数のペシュメルガがトルコを経てシリアに入り、コバニでの戦闘に参加することを認めた。一方で、コバニからの難民がトルコを経由してイラクのクルド人地域へと流れ込んでいる。その数は現地の収容能力をはるかに超えた1万1000人に達している。・・・イラク軍はすでに崩壊している。バグダッドの防衛にあたっているのはシーア派の武装組織で、イランがこうした武装集団を支援している。一方で米軍が空爆を実施している。・・・(イスラム国支配下にある地域では)イスラム国は国としての権威をアピールしようと試みている。行政組織を運営しようと試み、教師たちに教壇に戻るように促し、すべてはうまくいっているとみせかけようとしている。だが、これは真実ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン、cfr@orgのコンサルティング・エディター)

2014年9月初旬、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリは、「インドにジハードの旗を揚げる」と表明した。この意外な戦略には伏線がある。2014年の総選挙で、(西洋近代文明やイスラム教に批判的で、ヒンドゥー教徒が唯一卓越性を持つとする)ヒンドゥー至上主義を唱えるインド人民党(BJP)が勝利し、これまで反イスラム主義的な発言をしてきたナレンドラ・モディが首相に就任したからだ。BJPのヒンドゥー至上主義を基盤とする好戦性をモディが抑え込まなければ、新たに不満を抱いたイスラム教徒が、すでにアルカイダと協力している過激派組織に加わるケースが今後増えていくかもしれない。モディがヒンドゥー至上主義路線を貫き、イスラム教徒がインドの経済・文化から疎外されていると感じれば、過激主義を支持するインドのイスラム教徒が増え、イスラム原理主義台頭のポテンシャルは高まっていく。

(憲法を改正して)大統領選挙に再出馬するかどうか。確かに「なぜ大統領を続けないのか。われわれはあなたのことを信頼している」という声を耳にする。とはいえ、「後継者をうまく育てられるかどうかが、成功の指針だ」という私の両親の教えもある。人々の声と両親の教えの間のバランスをとる必要がある。・・・(私が、日本の防衛力強化をむしろ支持しているのは)第二次世界大戦後に日本がフィリピンに好ましい)行動をとってくれたからだ。戦後、フィリピンに本当の友情を示してくれた戦略的パートナー国が二つ存在した。それがアメリカと日本だった。・・・外国の人々に、フィリピンが戦略的に重要な場所に位置し、資源にも恵まれていることを伝えたい。資源の最たるものは人材だ。人々は勤勉で誠実、しかも柔軟性に富んでいる。いまや、長く抑え込まれてきたフィリピンのポテンシャルが解き放たれようとしている。

開放的な新インドネシア
―― ジョコ・ウィドド大統領との対話

2014年11月号

ジョコ・ウィドド インドネシア大統領

「(州知事時代に)オフィスにいたのは1―2時間で、この時間はひたすら文書にサインをするだけだった。これを終えると市場、河川敷、スラム、村落へと出向いた。何が必要で、何を求めているかを人々に聞いた。同じことをインドネシアのためにもできる。スカイプやテレコンファレンスを利用できる。・・・(経済領域では)深海港と鉄道への投資を重視したい。可能であれば国の予算を利用するが、そうできなければ外国からの投資を募る。すでにこのプロジェクトに外国の投資家は大きな関心を示している。・・・インドネシアは、・・・あらゆる諸国の投資に門戸を開いている。私にとって、人々に雇用を与え、よりよい生活を提供するために、経済成長を実現することは極めて重要だ」。

ロシア編入後のクリミア
― ウクライナとロシアに揺れる半島

2014年11月号

テレサ・ボンド(ペンネーム) 政治分析者

地理的にはウクライナとつながり、ロシアとは海で隔てられているために、依然としてクリミアは水資源、製品、食肉、電力を含む、ほぼすべてをウクライナからの供給に依存している。だが、ウクライナは次第にクリミアへの締め付けを強化している。しかも通貨がウクライナのフリヴニャからロシアのルーブルに切り替えられたことで、食糧価格は一気に50%も上昇し、いまやチーズや魚の価格はかつての2倍に、ビールとウオッカの価格は3倍に高騰している。一方でクリミアの消費者が直面している問題をロシアが解決できるかどうかも、はっきりしない。地理的・ロジスティックな制約が常につきまとうからだ。ロシアに組み込まれたことで政治的にもっとも追い込まれているのは、半島の人口の13%を占めるタタール人マイノリティだ。タタール人の指導者は追放され、タタール人市民も厳格な監視下に置かれている。・・・

トルコとクルド人のジレンマ
―― イスラム国と軍とクルド人問題

2014年11月号

ハリル・カラベリ 中央アジア・カフカス研究所  シニアフェロー

イスラム国が作り出すトルコ・シリア国境地帯の混乱を前に、トルコ国内の政治バランスは崩れ、いまや軍部が大きな力をもちつつある。一方で、政府と国内のクルド人勢力との和平プロセスはいまや破綻しかねない状況にある。「シリアのクルド人に対するイスラム国の攻撃にトルコ政府は水面下で加担している」とみなすクルド人の怒りはピークに達している。一方、国境地帯の混乱を前に、エルドアンは国内のクルド人の動きを警戒するトルコ軍の見方と提言に配慮せざるを得ない状況にある。トルコ軍は軍のレッドラインが「トルコ国家の統合と領土保全を守ること」であることを改めて強調している。これはシリアとの国境線だけでなく、「クルド人に自治権を与えることを軍は認めない」というメッセージに他ならない。トルコは一体どこへ向かうか。その多くはクルド人が「政治的連帯」のパートナーをどこに求めるかで左右される。

シリア問題に揺れるトルコ

2014年11月号

マイケル・J・コプロ―  イスラエル・インスティチュート プログラム・ディレクター

公正発展党(AKP)政権による統治はトルコにかつてない安定をもたらした。経済成長を実現し、国内のクルド問題への対策をとったことが、こうした安定化に大きく貢献した。AKP支持者でないトルコ人も、現状からみて、「テロや暗殺、軍事クーデター、制御できないインフレの時代は遠い過去へと過ぎ去った」と考えてきた。しかし、イスラム国の台頭によって、シリアとの国境地帯が極度の混乱に陥っているために、こうした安定が大きく損なわれつつある。イスラム国がトルコを直接的に脅かすことはないとしても、シリア難民の流入に派生する経済的重み、国境地帯でのイスラム国とクルド人の戦闘に軍を投入しようとしない政府へのクルド人の反発、ナショナリズムの復活、そして説明責任を負わない情報機関の権限の濫用などがトルコを次第に不安定化させつつある。・・・

マスーム・イラク大統領との対話

2014年11月号

フアド・マスーム イラク大統領、マイケル・R・ゴードン ニューヨークタイムズ紙記者

「住民投票で独立が支持されても、直ちにクルド国家としての独立を宣言するわけではない。国家として必要になるものを整備していく必要があり、これは一種のプロジェクトとみなすべきだろう。もちろん、地域的、国際的な根回しも必要になる。このプロセスには非常に長い時間が必要になる。現状ではクルドが独立を宣言できる状態にはない。・・・連邦国家から(各地域を分けた)国家連合へと向かうべきだと考える人もいるが、イラクを三つの独立国に分けるのは、現状からみれば、現実離れしている。・・・

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