1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

国防と安全保障に関する論文

イラクにおけるイスラム国(ISIS)の台頭と攻勢が、イランとアメリカに連帯の機会をもたらしている。イラクの領土保全を回復し、中東全域に広がりかねない宗派間紛争を阻止し、イスラム国を打倒するという目的をワシントンとテヘランが共有しているからだ。すでにハッサン・ロウハニ大統領を始めとするイラン政府高官の多くが、イスラム国を打倒するためにアメリカと協調することに前向きであることを示唆している。勿論、アメリカとイランは、両国が協調関係に入ることに対してイデオロギー的に反対する国内勢力をともに抱えている。しかしそれでも、両国が今後協力関係を深化させていく可能性はある。イスラム国が国境線を問わぬトランスナショナルな脅威である以上、同様にトランスナショナルな対応が必要になるからだ。

レバノン化する中東
―― 重なり合う宗派主義と地政学の脅威

2014年9月号

バッサル・F・サルーク レバノン・アメリカ大学准教授(政治学)

2014年は中東におけるリアリストの地政学抗争に感情的な宗派対立が重なり合う新しい地域秩序が誕生した時代としていずれ記憶されることになるかもしれない。宗派対立へと中東の流れを変化させるきっかけを作り出したのは、2003年のアメリカのイラク戦争だった。その後、地政学抗争と宗派アイデンティティの重なり合いはシリア内戦によってさらに固定化され、これが紛争の破壊性と衝撃を高めている。最近のイラクにおける「イスラム国」(ISIS)の軍事攻勢と勝利も、「排他的で視野の狭い宗派、民族、宗教、部族主義の政治化」という2003年以降のトレンドを映し出している。いまや中東全域がレバノン化しつつある。

欧米の偽善とロシアの立場
―― ユーラシア連合と思想の衝突

2014年7月号

アレクサンドル・ルーキン ロシア外務省外交アカデミー副学長

冷戦が終わると、欧米の指導者たちは「ロシアは欧米と内政・外交上の目的を共有している」と考えるようになり、何度対立局面に陥っても「ロシアが欧米の影響下にある期間がまだ短いせいだ」と状況を楽観してきた。だが、ウクライナ危機がこの幻想を打ち砕いた。クリミアをロシアに編入することでモスクワは欧米のルールをはっきりと拒絶した、しかし、現状を招き入れたのは欧米の指導者たちだ。北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大しないと約束していながら、欧米はNATOそして欧州連合を東方へと拡大した。ロシアが、欧米の囲い込み戦略に対する対抗策をとるのは時間の問題だった。もはやウクライナを「フィンランド化」する以外、問題を解決する方法はないだろう。ウクライナに中立の立場を認め、親ロシア派の保護に関して国際的な保証を提供しない限り、ウクライナは分裂し、ロシアと欧米は長期的な対立の時代を迎えることになるだろう。

イラク内戦とイランの立場
――イランが宗派間紛争という言葉を使わない理由

2014年7月号

モフセン・ミラニ 南フロリダ大学戦略外交センター所長

テヘランの目的はバグダッドのシーア派政権を存続させることで、一方、イラク・シリア・イスラム国(ISIS)は純然たるスンニ派国家を樹立したいと考えている。とはいえ、イランは今回の戦闘を「宗派間紛争である」と明確に認めるつもりはなく、ISISのことを外国の支援に依存するタクフィリ(他の宗派を不信心とみなすスンニ派)、あるいはインフィダル(背教徒)と位置づけている。一方で、イランはすでにイラク内戦に深く関与している。イランの革命防衛隊(IRGC)はイラク治安部隊と協力して軍事作戦を主導し、テヘランはシーア派武装集団にも戦闘への参加を促している。長くシリア内戦にも関与してきたイラン軍と武装勢力は、ISISを含むスンニ派武装勢力との十分な戦闘経験をもっている。それでも、テヘランはイラクでの戦闘を「テロとの戦い」として位置づけ、ISISの資金源がサウジであるとも公言していない。その理由は・・・

欧州が対ロ制裁へ踏み込めない理由
―― ロシアとの経済関係か欧州安全保障か

2014年6月号

トム・キーティング 金融・安全保障アナリスト

最終的に、ロシアに対する欧米の経済制裁は十分なものにはならないだろう。厄介なのは、ヨーロッパの指導者たちが直面しているのがロシアからのエネルギー供給の問題だけではないことだ。この20年にわたってロシアとの関係に多くを投資してきたヨーロッパの企業は、ロシアとの経済的つながりを失うことを心配している。政治指導者たちも、経済制裁を通じてプーチンの対外路線を変化させる必要があると感じつつも、「制裁によって自国が経済的やけどを負うのではないか」と心配している。こうして、ヨーロッパはロシアに対する経済制裁をめぐって分裂し、結局は消極的な態度に終始している。他に選択肢がない状況に陥らない限り、ヨーロッパの政治家たちは自国の企業と産業を守ることを優先するだろう。

「歴史の終わり」と地政学の復活
―― リビジョニストパワーの復活

2014年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード バードカレッジ教授(歴史・外交)

政治学者フランシス・フクヤマは、「冷戦の終わり」をイデオロギー領域での「歴史の終わり」と位置づけたが、多くの人は、ソビエトの崩壊はイデオロギー抗争の終わりだけでなく、「地政学時代の終わり」を意味すると考えてしまった。現実には、ウクライナをめぐるロシアとEUの対立、東アジアにおける中国と日本の対立、そして中東における宗派間抗争が国際的な紛争や内戦へとエスカレートするリスクなど、いまや歴史は終わるどころか、再び動き出している。中国、イラン、ロシアは冷戦後の秩序を力で覆そうとしており、このプロセスが平和的なものになることはあり得ない。その試みは、すでにパワーバランスを揺るがし、国際政治のダイナミクスを変化させつつある。いまや、リベラルな秩序内に地政学の基盤が築かれつつあるのを憂慮せざるを得ない状況にある。・・・・

プーチンの思想的メンター
―― A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義

2014年5月号

アントン・バーバシン 在モスクワ国際関係研究者
ハンナ・ソバーン 米フォーリン・ポリシー・イニシアティブ (ユーラシア分析担当)

2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・

ユーラシア主義か、栄誉ある小さな戦争か
―― 三つのシナリオとプーチンの選択

2014年4月号

アレクサンダー・モティル ラトガース大学教授

プーチンがユーラシア主義のイデオロギーや権力志向に取り憑かれ、合理的な思考を失い、ウクライナ侵略のコストと利益を判断できなくなっているとすれば、彼は今後も現在の路線を突き進むと考えるのが無難だろう。ウクライナに対する大規模な地上戦の開始を阻むものは何もない。一方、プーチンが合理的な考えを取り戻し、コストと利益のバランス、ユーラシア主義路線の余波を見極めることができれば、ウクライナと世界秩序を破壊する前に、侵略を止めるだろう。プーチンは、(ユーラシア主義の)イデオロギー、地政学的利益、そして自己利益から、今回の行動に出ている。だが指導者を突き動かすのはイデオロギーだけではない。欧米が厳格な対抗策をとれば、プーチンにもロシアにもほとんど利益をもたらさないコストのかさむ戦争への代替策、それも面目を失わずに済む代替策を模索するように促すことができるだろう。

ウクライナ危機とパイプライン
―― ヨーロッパの本当のエネルギーリスクとは  

2014年4月号

ブレンダ・シャッファー
ジョージタウン大学客員研究員

ウクライナ危機を前にしたヨーロッパ人の脳裏をよぎったのは、2009年の天然ガス供給の混乱だった。この年、ロシアがウクライナへの天然ガスの供給を停止したために、ヨーロッパ諸国への供給も混乱し、真冬に暖をとれない事態に陥った。すでにウクライナ危機からヨーロッパを守るために、アメリカからの液化天然ガス(LNG)輸出を急ぐべきだという声も耳にする。たしかに、短期的に供給が混乱する危険もあるが、長期的にみてより厄介なのは、ハブプライシングシステムの導入など、ヨーロッパのエネルギー政策が方向を違えており、しかも(天然ガス価格が高いために)石炭の消費が拡大していることだ。仮にアメリカからLNGを輸出しても、その価格は、ロシアの天然ガス価格の少なくとも2倍になる。ワシントンは、ヨーロッパへLNGを供給することの利益が明確になるまで、拙速にエネルギー輸出の決定を下すのは自重すべきだろう。

イスラエルがイラン強硬策を放棄しない理由
―― 外交交渉と空爆オプションの効果とリスク

2014年3月号

ドミトリ・アダムスキー
IDCヘルツリーヤ・政治外交大学院准教授

「イランは、現在の外交プロセスを核兵器の野望を覆い隠すために利用している。テヘランは最低限の妥協で、最大限の制裁緩和を引き出すことに成功した」。これが欧米とイランが交わした暫定合意に対するイスラエルの見方だ。さらにエルサレムは、欧米の経済制裁だけでなく、空爆を示唆するイスラエルの強硬策も、暫定合意に貢献しているとみている。今後の包括合意についても、「それに応じた方がましだとイランが考えるような状況を作り出す必要がある」とイスラエルは考えている。外交交渉で結果を出すには、一方で、イスラエルによる空爆リスクがあることをテヘランに常に意識させなければならない、と。だが空爆リスクを過度に強く意識させると、「合意に応じた方がましだ」と考えるのではなく、「どのみち攻撃してくるのだから、もはや何も失うものはない」と考え、むしろイランを先制攻撃へと走らせかねない。適切な抑止と過剰抑止のバランスを見極める必要がある。・・・

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