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国防と安全保障に関する論文

形骸化した抑止力
―― 多様化する攻撃の領域と能力

2019年2月号

アンドリュー・クレピネビッチ ハドソンインスティチュート シニアフェロー

冷戦後にアメリカが圧倒的な軍事的優位をもっていた時代は終わり、すでにわれわれは、ロシアと中国という二つのリビジョニスト国家と競い合う時代に足を踏み入れている。軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、新しい軍事能力の登場によって、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、ハイリスクの環境において人間がどのように行動するかに関するこれまでの理解が覆され、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。これらが重なり合うことで、厄介で不可避の結論に行き着く。現在の最大の戦略的課題は大国間抗争の時代への回帰でもなければ、先端兵器の拡散でもない。それは、抑止の形骸化に他ならない。

対北朝鮮外交の破綻に備えよ
―― 「最大限の圧力」を復活させるには

2019年1月号

エリック・ブルーアー 新アメリカ安全保障センター 客員フェロー

「核・ミサイル実験の結果に十分に満足しており、今後は核兵器とミサイルの量産に焦点を合わせていく」。金正恩のこの発言が彼の真意なのかもしれない。しかし、すでに韓国と中国は経済制裁措置を緩め、トランプ自身、「北朝鮮の核問題は解決された」と発言している。つまり、外交路線が破綻した場合に、北朝鮮を締め上げるための国際的試みを復活させるのは非常に難しい環境にある。現状での平壌の外交が、経済制裁を緩和させ、自国の核の兵器庫を受け入れさせるための、いつも通りの策略に過ぎないのなら、経済制裁履行のスローダウンは金の思惑通りということになる。「北朝鮮を完全に破壊する」とトランプが恫喝策をとった時代、軍事攻撃の危険があった時代へ回帰していくのを懸念するのなら、適切なタイミングで、より大きな国際的圧力をかける路線へ移行していくことを今から考えておく必要がある。

米中核戦争は絵空事ではない
―― なぜエスカレーションリスクが高いのか

2018年12月号

カイトリン・タルマージ 米ジョージタウン大学准教授(政治学)

専門家の多くは、米中核戦争はあり得ないと考え、想定外のシナリオとみているが、そう思い込むのは考えものだ。例えば、台湾をめぐる軍事対立が核戦争へとつながっていくリスクは、多くの政策決定者や分析者が考えている以上に高い。実際、ペンタゴンの通常戦力による戦闘モデルを中国に当てはめるのは、核戦争へのエスカレーションを引き起こす処方箋のようなものだ。最大の問題は、中国が通常戦力と核戦力を渾然一体として配備しているために、通常戦力だけを叩くのが難しいことにある。つまり、中国の通常戦力を叩く大がかりなアメリカの軍事キャンペーンは、相手の核戦力も脅かしてしまう。戦況を前に、北京が、アメリカの意図に関する解釈を大きく見直したときに大きな危険が待ち受けている。中国の指導者は、まだ使える状態の核兵器を、中国の核戦力をもっとも脅かしている米空軍基地に対して先制使用する恐れがある。・・・

米中戦争を回避するには
―― アメリカの新中国戦略に対する10の疑問

2018年12月号

ケビン・ラッド 元オーストラリア首相

40年間に及んだアメリカの対中エンゲージメント政策にはすでに公的にピリオドが打たれ、いまやそれは「戦略的競争」に置き換えられている。対中強硬論は、米議会を含むアメリカの政府機関、ビジネスコミュニティの支持を広く集めているようだ。しかし、政策決定者は、この戦略を政策レベルで運用していく上で、数多くの予期せぬ事態に直面することを想定しておくべきだ。戦略的競争が、関係の打ち切り、対立、封じ込め、そしておそらくは武力紛争へ急速にエスカレーションしていくリスクも考えなければならない。対立の帰結はどのようなものになるか。封じ込めは成功するのか。諸外国はどう反応するか。第3の道は存在するか。考えるべき設問は数多く存在する。

北朝鮮非核化の失敗と予想外の安定
―― 非核化という虚構がもたらす機会と脅威

2018年12月号

ジョシュア・シフリンソン ボストン大学准教授(国際関係論)

皮肉にも、アメリカが真の非核化合意を実現できなかったがゆえに、韓国、北朝鮮、中国、アメリカ、日本がいずれも現状を受け入れられるような北東アジアの秩序が確立されるかもしれない。北朝鮮が核武装に成功した結果、北東アジアの関係諸国間のパワーと利益の棲み分けが進んでいる。北朝鮮体制の存続は事実上保証されている。アメリカは、引き受けられるリスクからみて、応分の影響力を確保し、中国もこれまでのように地域紛争に引きずり込まれ、同盟国を失うことを心配する必要がなくなった。偶発的で予想外かもしれないが、関係諸国にとって、これはもっとも問題が少ない安全保障構造かもしれない。

皇太子率いる全体主義国家の誕生
―― もはやかつてのサウジにあらず

2018年12月号

マダウィ・アル=ラシード ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 客員教授

サルマン国王は王族間のコンセンサスを重視する伝統的な統治モデルを一掃し、息子であるムハンマド・ビン・サルマン(MBS)を皇太子として王国のトップポジションに据える道筋を作った。MBSは副首相、国防相、経済開発評議会議長、政治安全保障委員会議長を兼務し、サウジのソフトパワーツールも管理している。忠誠委員会は、そのメンバーたちが2017年のいわゆる反政治腐敗弾圧によって拘束された後、解体された。皇太子は王族会議も解散し、宗教エスタブリッシュメントを周辺化しただけでなく、批判派と金融エリートも拘束した。サウジの君主制はいまや1人が絶対的権力をもつ全体主義体制へ変化している。完全な服従と皇太子への忠誠を求めるサウジの新全体主義の環境のなかで、カショギ殺害事件は起きた。・・・

個人独裁国家と核の脅威
―― 新しい抑止概念の構築を

2018年12月号

スコット・セーガン スタンフォード大学教授

核を保有するか、獲得するかもしれない個人独裁国家が台頭している。事実、北朝鮮による核のブレイクスルーによって、現在の世界は、その行動を予見も牽制もできない個人独裁者が数百万の人々の運命を握っている。ワシントンは長期的な軍備管理にコミットしつつも、一方で、保有する核、その核ドクトリンを個人独裁国家の核武装という課題に適応できるように見直す必要がある。こうした個人独裁者の行動をうまく抑止し、必要なら、相手と「効果的かつ倫理的に」戦い、打倒できるような小型核を中心とする、個人独裁者をターゲットとする抑止戦略を準備する必要がある。

中東で進行するパワーバランスの再編
―― なぜトルコはイラン、ロシアに接近しているか

2018年12月号

コリン・P・クラーク ランドコーポレーション シニア・ポリティカルサイエンティスト
アリアネ・M・タバタバイ ランドコーポレーション アソシエート・ポリティカルサイエンティスト

エルドアンは自らのことを「現代のスルタン」とみなしているようだし、「トルコはイスラム世界をリードできる唯一の国だ」と明言している。そうだとすれば、サウジはアンカラの同盟国からライバルへと姿を変える。実際、カショギ殺害事件は、トルコとサウジ間の緊張の高まりを示す一連の流れのなかで起きた最近の事例にすぎない。湾岸諸国内部で今も続いている対立においても、トルコはイランとともにカタールを支持している。しかも、クルド問題を含む現在の利害からみても、アンカラにとって、アメリカやサウジよりも、イランやロシアと協力する方が合理的だ。実際、シリアにおける利益認識を共有するトルコ、イラン、ロシアの関係強化は、シリアをめぐる外部パワー間のバランスだけでなく、中東地域全体の地政学地図も大きく塗り替えていくかもしれない。

外交的経済パワー乱用の果てに
―― 米単独行動主義で揺らぐ同盟関係

2018年11月号

ジェイコブ・ルー 前米財務長官
リチャード・ネフュー 前国務省次席コーディネーター(経済制裁政策担当)

経済制裁が機能するのは、制裁対象国が行動を変えることで、(制裁を緩和・解除させ)経済的窮状を切り抜けられると確信した場合だけだ。アメリカの要求を受け入れ、合意を順守しているにもかかわらず、解除された制裁の再発動という事態に直面するのなら、合意を順守しようとするインセンティブはなくなる。それだけでない。トランプ政権の関税引き上げ策や対イラン制裁に象徴される単独行動主義は、同盟関係を揺るがし始めている。仏独英などのワシントンの緊密な同盟諸国は、イラン政府と直接接触して、アメリカの制裁を回避し、核合意を維持していくために、ドルを基盤とする金融システムから決済を迂回させる方法を特定しようと試みている。仮に他の諸国が連帯してアメリカの制裁を拒絶するようになれば、ワシントンはすべての国に制裁を課すか、制裁を断念するかしかなくなる。・・・

トランプ・ドクトリン
―― 対イラン経済制裁への参加がなぜ必要か

2018年11月号

マイク・R・ポンペオ 米国務長官

トランプ大統領が引き継いだのは、第一次世界大戦や第二次世界大戦前夜、あるいは冷戦のピーク時に匹敵する危険な世界だ。しかし、先ず北朝鮮に、そして現在はイランに対して大統領がみせている破壊的なまでの大胆さは、明確で強い信念と、核不拡散と強力な同盟関係を重視する姿勢を組み合わせれば、いかに多くのことを成し遂げられるかを示している。・・・率直な態度は交渉を妨げるという、古臭い思い込みにとらわれている人々も、ターゲットを絞り込んだレトリック、現実的な圧力行使策が、アウトロー国家を変化させ、現在も変化させつつあることを認めるべきだ。・・・われわれは、(イランとの)戦争は望んでない。しかし事態をエスカレートさせれば、イランの敗北に終わることを、われわれは明白にしておく必要がある。

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