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国防と安全保障に関する論文

二十一世紀のアメリカ国防の課題

2000年11月号

エリオット・A・コーエン  ジョンズ・ホプキンス大学教授

米軍の二十一世紀における課題は、米本土防衛、台頭する中国、「世界的警察活動」という諸問題にいかに対応するかである。最大の課題は、冷戦型の戦略や兵器調達慣行を脱し、水面下で進行している士気の低下に対抗するために、軍構造の改編、軍教育機関の充実など、新たな課題への新戦略を構築する知的・組織的基盤を再編することにある。アジアにおける「通常戦力の支配的な優位」を手にするには、中国の台湾侵攻というシナリオにも対応できる、主に空と海での広域展開能力を持つ戦力が必要であり、ヨーロッパやペルシャ湾など慣れ親しんだ地域での戦闘よりも、むしろ、太平洋における広域をカバーでき、複雑な基地確保の問題をクリアできるような戦力へと再編する必要がある。

米本土防衛システムと中国の核戦力

2000年8月号

ブラッド・ロバーツ 防衛分析研究所研究員 ロバート・A・マニング 外交問題評議会シニアフェロー

米本土ミサイル防衛(NMD)システムを中国が自国の核抑止力に対する挑戦ととらえるのは間違いなく、大規模な核戦力やアメリカの防衛システムを圧倒するような対抗手段の構築に着手するかもしれない。ワシントン・モスクワ・北京間の調整を欠いた現在の核戦略トレンドは、「攻撃兵器」対「防衛システム」間のとめどない軍拡競争を招く危険があり、そうなればミサイル防衛によって解決されるはずの問題がより複雑化しかねない。ワシントンは、ミサイル防衛計画に中国の懸念や予想される反応を組み込む必要がある。

北京の軍事計画は中台紛争へのアメリカの介入を前提としており、アメリカの航空母艦を沈める必要性も視野に入れている。台北政府の軍事計画でもアメリカの介入が前提とされている。アメリカがどう出るかわからないと考えているのは、実際にはワシントンだけである。(フリーマン)

中国だけに焦点を絞り、台湾に苦言を呈し、アジアのほかの国々を緩衝地域としか考えなくなってしまうときに、アメリカの政策は危険な状態に陥る。中国に焦点を絞った政策ではなく、広範囲にわたる汎アジア的政策こそ、成功への処方箋である。(ウォルドロン)

核実験後の南アジアにどう向き合うか

1999年5月号

ストローブ・タルボット  米国務副長官

インド・パキスタン両国の核実験は、現在の核不拡散レジームを大きく動揺させている。「NPT(核不拡散条約)レジームの現状からの後退を食い止められなければ、昨年の核実験をきっかけにNPTから次々と脱退する国がでてくるかもしれない」。印パ両国は、核による均衡が冷戦期の米ソ間の平和を維持していたように、今回の核実験によって今度は南アジアに核の均衡による平和が到来すると信じている。だが、「冷戦が平和的に終焉したという観点からではなく、この対立関係の管理にいかにコストがかかったかという現実的見地から、あらためて歴史を見るべきである」。印パがつくりだした既成事実を前にNPTレジームを譲歩させれば、潜在的に核開発能力を持ちながらも、開発を放棄した国々を裏切ることになるし、核兵器保有国の地位を得ようとするインセンティブ(動機)を他の国に与えることになりかねない。「印パ両国が核兵器を放棄し、あらゆる核関連活動に関する査察を受け入れる」のが先決であろう。

国家間戦争から内戦の時代へ

1999年3月号

スティーブン・R・デービッド ジョンズホプキンス大学政治学教授

冷戦が終わり、今や内戦がほぼ唯一の戦闘形態となった。国家間戦争ほど関心を引かないとはいえ、各国の内戦は紛争勢力の「本来の意図とは関係のないところ」で、国境を超えた破壊的衝撃を伴う。しかも、対外的にダメージを与えるという意図に導かれていないだけに、内戦の発生を抑止するのは難しい。例えばサウジアラビアだ。世界一の石油資源を持つこの国で内戦が起きれば、油田地帯が戦場と化し、紛争勢力にその意図がなくても、世界経済は瞬く間に窒息する。しかもサウジアラビアで国内紛争が起きる可能性は現実に高い。われわれは、一刻も早く「安全保障上の脅威のすべてが、一貫した信条を持つ敵対勢力によって周到に準備されているわけではなく、具体的目的に導かれているわけでもなければ」、適切な政策をとれば抑止できる性格のものでもないことを肝に銘じるべきだ。内戦への対応を考えない限り、われわれにとって軍事的選択肢は、自国防衛の強化か予防的先制攻撃の二つしかない。

「アメリカの核の傘は必要だが、駐留米軍の規模は削減していくべきだ」。これが細川元首相が『フォーリン・アフェアーズ』に寄せた「米軍の日本駐留は本当に必要か」の提言の骨子だった。同氏は、冷戦後、東アジアの国際関係が好ましい方向へと変化するなかで、米軍のプレゼンスに対する日米の認識の隔たりが生じ、大切な二国間関係を損ねる恐れがあると警鐘をならし、特に、九五年の特別協定(SMA)に基づく日本側の経費負担は、協定が期限切れになる二〇〇〇年以降は継続すべきではないと主張した。これに対して、マイク・モチヅキ氏、マイケル・オハンロン氏は、日米同盟への貢献の度合いはアメリカの方がはるかに高いとして、日本は必要なら憲法を改正してでも、同盟国としての安全保障上の責務を負うべきだと反論した(「細川氏の日米安保論は視野が狭い」)。以下は、細川氏の提言に対する山中あき子衆議院議員による反論。(注1)

本当に国家間に戦争は起きないのか

1999年2月号

ステフェン・M・ウォルツ  シカゴ大学政治学教授

超大国間の制度・イデオロギー、利害の対立を軸とする冷戦の終結、そしてフランシス・フクヤマに代表される「歴史の終わり」的見方に促されるように、人々は民主国家だけで構成される世界がどのようなものか、つまり、民主主義と平和の相関関係に思いを巡らすようになった。このテーマは学者の研究対象であるだけでなく、現実の政策にも大きな影響を与え得る。ここに取り上げた著作が指摘するように、制度や価値を共有する国家、つまり似たもの同士は戦争しないと考えるのは果たして賢明だろうか。「根本的に異なる国家が存在しなくなれば、民主国家間の摩擦や軋轢が目立つようになるのではないか」。利害の対立がより先鋭化すれば、特に、専制君主や独裁者に対抗して力を合わせる必要がなくなれば、むしろ、民主国間で不愉快な区別や差別がなされるようになると考えてもおかしくはないのではないか?

中国・ロシアを国際秩序に組み込む道

1997年7月号

マイケル・マンデルバーム  外交問題評議会・東西関係プロジェクト議長

「正統的共産主義」がすでに崩壊・解体しているにもかかわらず、ロシアと中国はいまだに新たなシステムを構築できずにいる。そのため両国では、国内ではナショナリズムが幅を効かせ、対外的には自国の主権や地位に過度に敏感な外交路線が採用され、こうした環境を背景に、「ウクライナと台湾が、世界でもっとも危険なスポット」として浮上してきている。大切なのは、国際社会が現状の変革に反対していることを明確に伝え、彼らの現状変革の試みを今後も先送りし続けるように仕向け、すでに定着しつつあるポスト冷戦秩序のなかに、この二つの国家をゆっくりと組み込んで行くことである。いまわれわれに必要なのは、厄介で他の存在を脅かすようなロシアと中国の行動パターンが永続的ではないことを認識した上での、「忍耐強さ」である。

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