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国防と安全保障に関する論文

イラン攻撃論の再浮上という迷走

2014年2月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団副会長(研究担当)

米上院のタカ派集団が、イランにウラン濃縮の能力や施設を維持することを認めるようないかなる最終合意も認めないという内容の法案(イラン非核法案)を提出したことをきっかけに、軍事攻撃論が再浮上している。だが、軍事攻撃を含む、いかなる手段を通じても、イランのウラン濃縮を完全に止めさせるのは不可能だ。むしろ、イスラエルがイランに対する軍事攻撃を実施すれば、イスラエルの国際的正統性は地に落ち、イスラエルの核解体を求める圧力が大きくなるだけでなく、対イラン経済制裁への国際的支持は解体していく。交渉の最終目的はイランのウラン濃縮を完全に止めさせることではない。短期間で核兵器を生産できる能力をイランに与えないようにその能力を枠にはめることだ。オバマ政権の戦略が、イスラエルやうまく考案されていない米議会の冒険主義で損なわれるのを放置すべきではない。

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

CFR Interview
イランとの関係改善は実現するか
―― 核協議とシリア危機の新ファクターとは

2013年10月号

モフセン・M・ミラニ
南フロリダ大学戦略外交センター所長

オバマ大統領は「アメリカはイランの体制変革を模索していないし、イランは(核不拡散条約で認められた)原子力の平和利用を試みる権利を持っている」と国連演説で語り、ロウハニ大統領も「イランの国防ドクトリンのなかに核兵器という言葉は存在しない」と明言した。ただし、オバマは、イランが国内でウラン濃縮を進めることを認めるつもりはない。ここが重要なポイントだ。今後、両国の立場をいかに交渉で埋めていくか。イランにはアメリカとの和解を望んでいない力強い強硬派集団が存在するし、ロウハニの動きを監視している。微妙な問題をめぐって拙速な動きをみせれば、彼は国内的に障害を抱え込むことになる。アメリカは、シリア問題をめぐるジュネーブ2にイランを招待するとともに、5プラス1(国連安保理5常任理事国とドイツ)とともにイランとの二国間交渉を試み、外交チャンネルを増やすことで、イランの意図を見極めるべきだろう。・・・・・・

北朝鮮は経済改革を模索している
―― 崩壊か経済改革か

2013年8月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院准教授

北朝鮮は2030年までに崩壊すると予測する専門家もいるが、平壌はすでに中国流の経済改革導入への道を歩みつつあるとみなすこともできる。これを理解するには、中国はどのような手順で改革へと歩を進めたかを考える必要がある。1960年代に核兵器を獲得した北京は、1970年代に対米デタントによって体制の安定と安全を確保した上で、経済改革路線を優先させるようになった。つまり、今日の北朝鮮は1970年の中国同様に、経済改革に着手する前に、まずワシントンから体制の安全に関する保証を取り付けたいと考えている段階にある。金正恩は「経済建設」の次の局面に進みたいと考えていると示唆し、4月1日には実務派テクノクラートの朴奉珠を首相に登用して、経済成長の舵取りを委ねている。朴奉珠が北朝鮮の首相に抜擢されたこと自体、金正恩が経済を重視し、改革志向を持っていることの現れとみなせる。平壌の穏健派に力を与えるためにも、アメリカは強硬策ではなく、北朝鮮の安全を保証し、経済改革にむけた環境整備に手を貸すべきだ。体制を揺さぶり、崩壊を待つ路線を続ければ、偶発事件によって次なる朝鮮戦争が誘発される恐れがある。

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

ウラジーミル・プーチンはシリア紛争とチェチェン紛争を同列にとらえ、シリア紛争のことを「国家を標的にし(国家解体を狙う)スンニ派の過激主義勢力の、数十年におよぶ抗争の最近の戦場にすぎない」とみている。アフガン、チェチェン、数多くのアラブ国家を引き裂いてきたスンニ派の過激主義勢力と国家の戦いがシリアで起きているにすぎない、とプーチンは考えている。だからこそ、彼は「自分がチェチェンで成し遂げたことをアサドがシリアで再現し、反体制派の背骨を折ること」を期待し、シリアに対する国際介入に反対してきた。仮にプーチンがアサドを見限るとしても、その前に、「体制崩壊に伴う混乱の責任を誰がとるのか」という問いへの答を知りたいと考えるはずだ。誰がスンニ派の強大化を抑え込むのか、誰が北カフカスその他のロシア地域に過激派が入り込まないようにするのか。そして、誰が、シリアの化学兵器の安全を確保するのか。プーチンは、アメリカや国際コミュニティがアサド後のシリアに安定を提供できるとはみていない。だからこそ、シリアという破綻途上国を支援し続けている。

CFR Interview
シリア、イランのヒズボラ・コネクション

2013年3月号

マシュー・レビット
ワシントン近東政策研究所 シニアフェロー

シリアでアサド政権が追い込まれていくにつれて、ヒズボラは、シリアにある自分たちの兵器を、レバノン山岳地帯の洞窟に設けた兵器庫など、安全な場所に移したいと考えている。イスラエルが空爆で攻撃したのは、そうした兵器を積んでレバノンに運びだそうとしていたトラック車列だった。スンニ派の過激派、シーア派の過激派は、アサド体制の崩壊に備えて、それぞれ自分たちに忠実な武装勢力の組織化を進めている。われわれが目にしているのは、紛争の第2局面に向けた兵器の備蓄・調達に他ならない。さらに、イランがヒズボラへの武器提供をシリア経由で行うことが多いことも、今回の空爆の構図に関係している。現状ではヒズボラとイランは非常に緊密な関係にあり、アメリカの情報コミュニティは、両者の関係を「戦略的パートナーシップ」と描写している。

サイバー戦争の虚構と現実

2013年1月号

ブランドン・バレリアーノ
グラスゴー大学講師
ライアン・マネス
イリノイ大学PHDキャンディデート

イランのウラン濃縮施設をシャットダウンに追い込んだ「スタックスネット」、テキストやオーディオデータをコピーした上で、ハッキングしたコンピュータ上のすべてのファイルを消し去る「フレーム」。これら洗練されたサイバー兵器の登場で、いずれ、電力供給網、交通システム、金融市場に加えて、政府そのものが脅威にさらされるようになり、今後の国家間関係、外交関係そのものが塗り替えられていくのだろうか。そうなるかどうかは、現状におけるサイバー戦争の抑止と自制のメカニズムが維持されるか、それとも崩れるかに左右される。現状では、いかなる国もまともなサイバーディフェンスを築けておらず、攻撃する側も、もし反撃されたらどうなるかを考えざるを得ず、これが抑止と自制を促している。サイバー戦争が脅威となるのは、それがひどく乱用され、多発するようになった場合、あるいは、サイバー空間の脅威対策に多くの資金がつぎ込まれ、本当の脅威への対応が手薄になった場合だろう。

イランではなく、イスラエル に対するレッドラインを設定せよ
――アメリカのネタニヤフ問題

2012年10月号

マイケル・C・デッシュ ノートルダム大学教授

「イランに対してレッドラインを示せなかった国際社会(アメリカ)に、イスラエルの行動を縛る道義的権限はない」。イスラエルのネタニヤフ首相は、イランに対するレッドラインを示すことを拒絶したオバマ政権への怒りを露わにし、単独でのイラン攻撃を明確に示唆する発言を繰り返している。だが、怒りを感じるべきはアメリカ人のほうかもしれない。アメリカにイランに対するレッドラインを示すように求め、それが受け入れられなければイランの核施設への単独攻撃も辞さないと表明したネタニヤフは、これまであらゆる面でイスラエルを支援してきたアメリカを、イランとの戦争に巻き込もうとしている。現状でレッドラインを定義して、適用するとすれば、それはイランに対してではなく、イスラエルの指導者たちに対してだろう。イスラエルはアメリカの国内政治に干渉すべきではないし、アメリカを不必要な戦争に引きずり込むのをやめるべきだ。

CFR Interview
イランの核開発プログラム
――曖昧な意図と空爆の可能性

2012年10月号

デビッド・オルブライト 科学国際安全保障研究所(ISIS)会長

これまでイランは自国のウラン濃縮について「小規模な研究炉のための核燃料を生産している」という立場を示してきた。だが、すでに研究炉用の核燃料は十分すぎるほどに生産されている。つまり、民生部門用だけなら、もう核燃料(濃縮ウラン)をつくる必要はない。ここに矛盾がある・・・すでに、イランは相当量の兵器級ウランを生産できる状態にある。核兵器生産を決断すれば、すぐにでも兵器級ウランの生産(濃縮)に取りかかれる。だが、今のところテヘランは核兵器を作ると明確には決断していないようだ。・・・イランの立場は曖昧だ。可能であれば、核兵器を生産したいと考えている。だが、実際に核兵器の開発に乗り出せば、(武力行使を含めて)非常に大きな力がかかってくること、核兵器を手に入れる前に体制が崩壊してしまう危険があることをテヘランは理解している。

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