トランプと米欧関係の未来
―― トランプの脅威は欧州の連帯を促すか
2017年3月号
ドナルド・トランプは北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」とけなし、欧州連合についても「ドイツのためのツールと化している」と、まるでその解体を支持するかのような発言をしている。これにヨーロッパはどう対処するだろうか。トランプを「異質な他者」とみなし、ヨーロッパは団結できるだろうか。それとも、彼の発言はヨーロッパのポピュリスト勢力を勢いづけるだけなのか。欧州連合(EU)が築いたヨーロッパの「想像の共同体」は、伝統的なナショナリズムがもつ強い文化や感情的なこだわりをもっていないために、トランプがEUに脅威を与えても、それによって、ヨーロッパプロジェクトへの支持と結束が生み出されるとは考えにくい。ポピュリズムの台頭を前に、ヨーロッパの政治家と市民は、EUが達成した成果を強く擁護しつつ、EUが直面する課題に対応していくしかない。一方、これまでアメリカの優位を支えてきたリベラルな制度の多くが解体していくかもしれず、この事態が、EUにとって希望の光になることもあり得ない。