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論文データベース(最新論文順)

米新政権への北京の期待と不安
―― 米中関係のリセットは可能か

2020年12月号

チェン・リー   ブルッキングス研究所中国センター ディレクター

米大統領選挙後の中国のソーシャルメディアは全般的に安堵と楽観主義にあふれていた。バイデン次期政権の誕生を歓迎していた。だが、そうした楽観ムードも短期間で変化するかもしれない。4年前、北京はトランプ大統領誕生を同様に歓迎していたからだ。北京の指導者の多くは、トランプのことを一緒に何かを達成できるビジネスマンとみていたが、これは希望的観測にすぎなかった。中国の外交エスタブリッシュメントは、警戒と慎重さを維持しつつも、バイデン政権の誕生で関係が改善すればよいと考えている。だが、トランプの対中政策を形作った条件の多くがいまも存在するだけに、米中という超大国間関係のリセットはそう簡単ではないだろう。

イラン政策をトランプから救うには
―― イランとの関係正常化を模索せよ

2020年12月号

トリタ・パーシ  クインシー研究所 上席副会長

トランプ政権は、後継大統領のイラン政策を枠にはめ、アメリカが離脱した核合意の運命を封印したいと考えている。トランプは最後の10週間を利用して、洪水のごとく、経済制裁を乱発してイランを締め上げ、新政権の課題を実現不可能な状況に陥れるつもりだ。だが、バイデンはかつてオバマが(イラン強硬策にアメリカを向かわせようとした)ネタニヤフイスラエル首相を出し抜いたように、トランプの裏をかいて、核合意を超えて両国の関係を大局的に捉えるべきだろう。例えば、イランとの直接的な外交関係をもてば、アメリカがこの地域の紛争を避け、問題があるとワシントンが考えるイランの政策により効果的に影響を与えられるようになる。・・・

世界を修復し、建設する
―― ポストトランプ外交の前提

2020年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会会長

深刻な混乱を引き起こしたこの4年間の米外交は、パンデミックとともに、アメリカと世界に大きなダメージを与えてきた。アメリカの名声そして戦後75年にわたって構築されてきた貴重な同盟関係や国際的制度が深く傷つけられた。トランプ路線を覆すのは歓迎されるとしても、それだけでは問題は解決しない。修復と建設が必要だ。修復とは、存在するが壊れているものを再び機能させることで、建設とは、新しく何かを創造することだ。最初の6―9カ月のバイデン外交は修復に徹すべきで、建設の機会や特定領域の必要性に対処していくのはその後でなければならない。真っ先に取り組むべきはパンデミック対策であることは、はっきりしている。その後にも、地球環境問題、中国、北朝鮮と問題は山積している。

パンデミックとデジタルなつながり
―― 貧困国におけるコミュニティパワー

2020年12月号

リチャード・セネット コロンビア大学 資本主義社会センター・シニアフェロー

世界の貧困地域における感染者にとって、唯一の対策は(隔離や)行動規制だけであることが多い。地元の医師や看護師でさえ外科用手袋やその他の防護具を調達できずにいる。こうして、貧しいコミュニティは、最後の手段としてオンラインネットワークを、医療ケアの代わりとして使うようになった。もちろん、人工呼吸器や高度な治療薬を代替できるわけではない。それでも、かつては存在しなかった「つながり」という、非常に重要な社会サービスが提供される。こうして、互いに支援サービスを提供し、小額の送金を確認し、地方を含む遠くにいる家族とつながることができる。貧しいコミュニティは、オンラインネットワークを利用して、日常的なリスクを軽減し、パンデミックとその後のロックダウンが必然とする不況と孤立に対処していくだろう。

対途上国ワクチン供給の覇者
―― 中国は途上世界の救世主へ

2020年12月号

エイク・フライマン オックスフォード大学博士候補生  ジャスティン・ステビング インペリアル・カレッジ・ロンドン教授

世界保健機関(WHO)は、途上国の重症化リスクがある人々に20億回分のワクチンを提供するイニシアティブを促進しているが、中国とは違って、アメリカは構想への参加を拒否している。実際、世界人口の半数以上が暮らし、国がワクチン接種費用を負担するのが財政的に難しいアジアやアフリカそして中東の新興国では、中国メーカーのワクチンが圧倒的なシェアを握りそうだ。2021年、世界の注目を「健康シルクロード」に向けることで、中国は世界の技術大国かつ公衆衛生の擁護者として自らを「リブランド」しようとしている。これに成功すれば、一流の技術大国という名声に加えて、中国は、途上世界のパートナーとの友好関係を強化し、「グローバルリーダー」の称号への国際的支持を得ることになるだろう。

未来を読む力
―― 将来を適切にとらえる方法はあるのか

2020年12月号

J・ピーター・スコブリック  ハーバード大学ケネディスクール フェロー  フィリップ・E・テトロック  ペンシルベニア大学教授

シナリオ立案者は、可能性のある未来シナリオは非常に数多く存在するために、「確率ではなく、もっともらしさ」の視点からしか想像できないと言う。対照的に、予測の専門家(フォアキャスター)は「可能性の高い結末の確率は計算できる」と考え、まとまりのない不確実性を定量化してリスクとして示せると言う。だが、それぞれの方法には長所があり、最適なのはこの二つの手法を組み合わせることだ。こうしたホリスティックなやり方なら、 政策立案者に「考えられる未来の範囲」と「どのシナリオが現実になる可能性が高いのかを示す定期的なアップデート」を提供できる。こうすれば、未来についての抜け目のない予測を示せる場合も出てくるだろう。

変化する中東地政学に即した政策を
―― より多くをより少ない資源で実現するには

2020年12月号

マーラ・カーリン  ジョンズ・ホプキンス大学  戦略研究ディレクター タマラ・コフマン・ウィッテス  ブルッキングス研究所中東政策センター シニアフェロー

パンデミックとその後の原油価格暴落という双子の危機によって、サウジを含む湾岸アラブ諸国は富の大幅な減少に直面し、内外でのプロジェクトをこれまでのように進められなくなっている。中国やロシアの影響力もそれほど大きくなっていない。ロシアの中東関与は依然として手探りだし、中国は経済関係の促進に熱心だとしても、地域紛争に関わって手を汚すつもりはない。要するに、アメリカは依然として大きなコストや長期的なコミットメントをしなくても、より安定した中東を形作る機会を手にしている。地域内の地政学的競争を抑え、イランの行動により効果的に立ち向かい、可能な限り(イランとサウジの)代理紛争を解決することに努力すれば、ワシントンは中東における支配的優位を失うことなく、関与を控えることができるだろう。

トランプ後もポピュリズムは続く
―― 民主主義はなぜ衰退したのか

2020年12月号

ダロン・アセモグル   マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

ポピュリスト運動は、不平等とエリートに対する怒りを背景に台頭した。しかし、なぜアメリカの有権者は不平等が拡大し、超富裕層が普通の人々を踏み台にして恩恵を得ていた2016年に、左ではなく右を向いたのだろうか。実際には、右派ポピュリズムは、トランプが共和党を乗っ取る20年以上前から強力な政治トレンドとして再浮上していた。政治を二極化させ、政治秩序を解体したのは、グローバル化、デジタル技術、オートメーション技術の拡大が伴う社会経済問題に民主制度がうまく対応できなかったからだ。再び似たような権威主義のポピュリストが登場して、権力を握ることを阻止したいのなら、この流れを理解し、対策をとらなければならない。トランピズムのルーツは、トランプで始まり、終わるものではない。

バイデン政権で民主主義は再生するか
―― トランプと民主主義の危機

2020年12月号

ラリー・ダイアモンド  スタンフォード大学フーバー研究所 上級研究員

バイデン大統領の誕生で、アメリカの民主主義が負った深い傷が自律的に癒されるわけではないだろう。この4年間で、民主的規範は完全に放棄された。しかも、今回の選挙で予想外の支持を得たために、共和党は当面、トランプ流の非自由主義的ポピュリズムに支配されるかもしれない。現在のアメリカは民主的危機のさなかにある。アメリカの民主主義のバックボーンを守る薄くとも復元力のある盾、つまり、相手への寛容と自制の精神、民主的ゲームルールへの手堅いコミットメントが崩れそうになっている。新大統領が就任する2021年1月になってもアメリカの民主主義は依然として深刻な問題を抱えたままだろう。

ならず者の超大国
―― 非自由主義的アメリカの世紀?

2020年11月号

マイケル・ベックリー タフト大学准教授(政治学)

戦後秩序のなかで、ワシントンは多くの国に軍事的保護、安全なシーレーン、米ドルと米市場へのアクセスを提供し、引き換えに、これらの同盟諸国はアメリカへの忠誠を尽くし、自国の経済や政治の自由化に応じてきた。だが、アメリカ外交の底流をなしているのは、リベラリズムよりも、アメリカファーストの思想だ。(他の先進諸国の)急速な人口高齢化そしてオートメーション化の台頭によって、アメリカのリードはさらに堅固になり、パートナーへの依存レベルが低下すれば、アメリカは国際協調よりも「外交への取引的アプローチ」を重視する「ならず者の超大国」になるかもしれない。これまでの「アメリカ世紀」が、世界におけるアメリカの役割についてのリベラルなビジョンを基盤に構築されてきたのに対し、私たちの目の前にあるのは、「非自由主義的なアメリカの世紀の夜明け」なのかもしれない。

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