押し寄せる難民が「域内移動の自由」というEUの中核原則を脅かし、ギリシャ危機はユーロの存続に依然として大きな圧力をかけている。しかも、イギリスでは、EU脱退の是非を問う国民投票が近く実施される。どうみてもEUの存続は、かつてなく脅かされている。一方で、統合支持派はギリシャなど、ソブリンリスクを抱え込んだ諸国への寛大な救済策が政治的に許容されたことそのものが、統合が成功していることを裏付けていると言う。しかし、ユーロ圏メンバー国が団結したのは、ギリシャのユーロ脱退コストが、救済コストよりも高くつくことがわかっていたからだ。結局、EUにおけるドイツの事実上の覇権が今後さらに強化されていくだろう。だが多くの国にとって、ユーロ危機は、(緊縮財政を求める)ドイツの影響力を野放しにするとどうなるかを認識する機会でもあった。「欧州連合は少しずつ、『非民主主義的なドイツに支配されるヨーロッパ』へと変化している」という批判も出てきている・・・。
