ドイツの覇権という虚構
――追い込まれたベルリン
2012年11月号
2010-11年までは、ヨーロッパの危機対応はベルリンとパリの協調によって主導され、このパートナーシップは「メルコジ」とさえ呼ばれた。だが、いまやフランスのオランド大統領は成長戦略をとることを求め、緊縮財政を求めるメルケルと衝突している。すでにギリシャ、イタリア、スペインでのドイツの評判は悪くなっているし、他の地域でもドイツは悪いイメージでとらえられ始めている。もはやドイツが、支援策をとる見返りに大幅な債務と財政赤字の削減を周辺国に求められる状態にはない。事実、ここまで危機が深刻になると、ドイツが救済パッケージに拒否権を行使すればシステミックな危機が誘発され、共通通貨圏が解体するだけでなく、単一市場のようなより大きな統合の成果さえもが脅かされてしまう。ドイツがヨーロッパ最大のプレイヤーだとしても、自分だけでルールを設定する力はなく、単独で状況を先に進めていくのはもはや無理な状況に陥っている。ヨーロッパの新しい経済・政治行動を形作るのに必要な連帯を組織しようと試みても、ドイツのプランはますます希釈されていく。すでにドイツの指導者たちも、自分たちのビジョンに限界があることを理解し始めている。