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国防と安全保障に関する論文

ベネズエラへ軍事介入すれば
―― 長く困難な任務となるのは避けられない

2019年5月号

フランク・O・モラ フロリダ国際大学教授(政治学)

ドナルド・トランプ米大統領はベネズエラに対する「あらゆる選択肢を排除しない」と語っている。これが真意なら、どのようなことになるだろうか。可能性が高いのは、米軍の侵攻後、ベネズエラ軍が短期間で降伏してマドゥロ体制は崩壊し、キューバとロシアの軍事関係者も撤収することだ。米軍のプレゼンスゆえに、軍の元兵士たち、準軍事組織、武装集団も地下へ潜る。しかし、アメリカはベネズエラの治安部隊の再建を主導せざるを得なくなり、米軍は長期的駐留を余儀なくされる。この場合、介入に伴う社会、経済、治安対策のコストがその恩恵をはるかに上回る。それが限定的な空爆であれ、全面的な地上軍の投入であれ、介入策をとれば、初期の戦闘が終了した後、ベネズエラを安定化させるための長く困難な作戦が必要になる。・・・

INF条約離脱の本当の意味合い
―― アメリカのアジアシフト

2019年5月号

トム・ニコルス 米海軍大学教授(国家安全保障)

アメリカのINF条約からの離脱は「今後は中国との軍拡競争に専念する」と認めたようなものだ。NATOは必要に駆られてアメリカのINF条約離脱を支持したが、ワシントンのヨーロッパへのメッセージが「今後は自分で何とかして欲しい」であることは当初からはっきりしていた。しかし、新戦略兵器削減条約(新START)が2021年初頭に失効するだけに、ヨーロッパにおける新戦略をまとめる必要があるし、中国に対処する上では、中距離ミサイルを配備するだけでは不十分で、通常戦力への投資拡大や太平洋における海軍力の確立に再びコミットしなければならない。30年以上前に放棄した中距離ミサイルシステムに依存するのではなく、アメリカ政府はもっとまともな戦略計画をまとめる必要がある。

動き出したクルド統一国家への流れ
―― クルドの覚醒と中東の未来

2019年4月号

アンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

これまでクルド人は中東各国で分かれて暮らし、しかも内部対立を抱えていた。だが、シリア紛争とイスラム国勢力が作り出した混乱と騒乱のなかで国境を越えた連帯を形成したクルド人は、いまやイラク、トルコ、シリアで明確な政治的プレゼンスを確立し、ヨーロッパでも力強いディアスポラ・コミュニティが誕生している。クルド語によるソーシャルメディアと文化作品も登場している。これらの流れが重なり合うことで、汎クルドのアイデンティティが強化されている。もちろん、イラン、トルコというクルディスタン統一への障害は存在する。しかし最近のイベントによって、クルド人国家の建設プロセスはすでに始まっている。統一された、単一の独立したクルディスタンが存在しなくても、クルド人の覚醒が始まっている。・・・

現実主義志向の国際システムを
―― 民主国家の拡大志向を抑えよ

2019年4月号

ジェニファー・リンド ダートマスカレッジ 准教授(政治学)
ウィリアム・C・ウォールフォース ダートマスカレッジ 教授(政治学)

世界が直面する課題を「現状の維持を試みる自由主義国家」と「不満を募らせ、秩序を覆そうとする(リビジョニストの)権威主義国家」間の抗争として捉えるのは間違っている。権威主義国家のリビジョニズムとは異なるが、自由主義国家も、民主主義を輸出し、民主的空間の幅と奥行きを拡大するリビジョニスト路線をとってきた。むしろ、アメリカとパートナー諸国は民主主義の拡大路線を止め、これまでの成果を固めるために現実を見据えた保守路線をとるべきだろう。非自由主義的大国との長期的な競争的共存の時代に備えるには、民主空間の拡大策からは手を引き、既存の同盟関係を強化する必要がある。リベラリズムを基盤とする秩序を守るには、保守主義を取り入れなければならない。

中国は近く台湾に侵攻する?
―― 重層的誤算と戦争リスク

2019年4月号

ピーター・グリース マンチェスター大学教授(中国政治)
タオ・ワン マンチェスター大学  博士候補生(東アジア政治)

中国で対台湾強硬論が高まっている。「アメリカは台湾を守る戦闘のために部隊を送り込むとは考えにくい」とメディアは指摘し、北京も「台湾を締め付けてもアメリカは静観する」と信じているようだ。しかも、再統一を実現すれば、「習近平は毛沢東や鄧小平に劣る」とは誰も言わなくなる。一方、台湾人の多くは「中国に台湾を侵略するつもりはない」と確信している。かたや、トランプ米大統領は「(中国を刺激するような)波風をたててもたいしたことにはならない」と考えている。問題は、これらがすべて間違っており、こうした希望的観測が重なり合うことで紛争リスクが高まっていることだ。

迫り来る中台危機に備えよ
―― 米中台のレッドラインと危機緩和策

2019年4月号

マイケル・チェース ランド研究所シニアポリティカルサイエンティスト

アメリカ、中国、台湾での政治的、政策的展開によって新たな台湾海峡危機が起きる危険が高まっている。中国が1995―96年の危機の時よりも、台北を屈服させるよりパワフルでさまざまなオプションをもっているだけに、リスクは高い。台湾統一は、習近平が重視する「中国の夢」における重要なアジェンダの一部であり、国内での正統性を強化するためにも台湾問題を解決しようとするかもしれない。一方、台湾では台湾人としてのアイデンティティが高まり、一国二制度への支持も低下し、しかも、2020年に総統選挙を控えている。そして、ワシントンはすでに中国を敵視する路線にギアを入れ替えている。状況が悪化していくのを座視するのではなく、それが不可避となった場合にうまく対応できるように態勢を整え、台湾海峡危機を阻止するためオプションを実施できる態勢を整備しておく必要がある。

一体化する湾岸とアフリカの角
―― 反目と紛争と開発のポテンシャル

2019年3月号

ザック・バーティン ブルッキングス研究所 ドーハセンター客員研究員

アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、トルコがアフリカの角に関与するにつれて、対立関係を抱えるこの地域に中東の対立構図が持ち込まれている。しかも、かつてはのどかだった紅海西岸地域に注目しているのは、湾岸諸国だけではない。中国は最近、ジブチに初の外国軍事基地を設置し、いまや紅海は米中超大国の新たな競争の舞台でもある。紅海両岸で適切に状況を管理できれば、湾岸諸国とアフリカ諸国はともに新たなエンゲージメントから恩恵を引き出せるかもしれない。特に経済の近代化を試みるアフリカ諸国は、中東からの投資と援助を利用してインフラ整備を試み、雇用を創出し、グローバル市場にアセクスできるようになる。しかし、そこに到達するためにクリアーすべき懸案は数多く残されている。

トランプとファーウェイの「政治学」
――  「合法的逮捕」と「人質外交」の間

2019年3月号

シメーヌ・カイトナー カリフォルニア大学教授(国際法)

トランプ大統領が、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟がカナダで逮捕されて数日後のインタビューで、貿易に関して中国から合意を引き出す上で有効と考えられるなら、彼女のケースに「介入する」つもりだと語ったことは、「合法的な逮捕」と「人質外交」の線引きを曖昧にする問題発言だった。当初は、逮捕が政治的な動機に基づくものではないとみなす根拠があった。実際、米司法省は企業の不正行為を巡って個々の経営幹部の責任追及を優先的に行う方針をかねて表明していた。トランプの発言は、このような了解に水を差してしまった。こうして、北京は、逮捕は政治的な動機に基づくものだという見方を強め、これを中国の技術的な発展を妨げようとするアメリカの活動の一環とみなしている。

三つの核危機シナリオ
―― 北朝鮮、ロシア、イランに対する間違った戦略

2019年3月号

ニコラス・J・ミラー ダートマスカレッジ アシスタント・プロフェサー(政治学)
ビピン・ナラン マサチューセッツ工科大学准教授(政治学)

北朝鮮による一方的核放棄というフィクションを維持し、北朝鮮の核・ミサイル実験の再開を阻止するために、トランプは金に譲歩して、一部の制裁緩和、あるいは和平合意に向けたプレリュードとしての米軍の地域的プレゼンスの再編に応じるかもしれない。これによって現状は続き、問題は先送りされる。だが、北朝鮮の核開発という現実を否定することに依存する戦略は、いずれ内側あるいは外側から破綻して暴走し始め、これが北朝鮮との新たな核危機につながっていくリスクがある。一方、INF条約からの離脱でロシアとの軍拡競争が過熱していくのも、アメリカの核合意から離脱によって、イランが核開発に立ち返り、緊張が高まるのもおそらく避けられないだろう。下手をすると、世界は三つの核危機に直面する恐れがある。

中国的世界ビジョンの盲点
―― グローバルな野心の正体

2019年2月号

オリアナ・スカイラー・マストロ ジョージタウン大学助教(安全保障研究)

北京はワシントンに代わって国際システムの頂点に立ちたいとは考えていないし、国際機関をリードしたり、中国の統治システムを世界に広めたりすることにも関心をもっていない。だが、インド太平洋地域からアメリカを締め出そうとしており、その帰結は、中国がアメリカに取って代わろうと試みた場合同様に深刻だ。カネをばらまけばアジア諸国を取り込めるし、国有企業はスパイ活動から北京が得た機密情報も利用できる。しかし中国にはアキレス腱がある。それは、中国が支配的な国家になれば、他の諸国にも恩恵がもたらされるという互恵的なグローバルなビジョンを示していないことだ。それだけに、他国も恩恵を得られる形で世界をリードしてきたアメリカが、自国第一主義に固執し、この包含的アプローチを捨て去るのは間違っている。

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