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国防と安全保障に関する論文

ビッグテックを分割すべき理由
―― 分割で米国家安全保障は強化される

2020年4月号

ガネシュ・シタラマン  ヴァンダービルト法科大学院 教授

大きな利益を計上し、成長し、強大化している巨大テクノロジー企業が、政府から分割される脅威から逃れようと「自分たちを分割すれば、中国が利益を手にする」と国家安全保障問題を引き合いに出していることに不思議はない。しかし、国家安全保障の観点からも、ビッグテックを競争から保護する理由はない。アメリカのビッグテックは中国と競争しているというより、むしろ中国と統合しようとしており、この状況の方がアメリカにとってより大きな脅威だ。アメリカにとって、イノベーションを生み出す最善の道筋は、統合されたテクノロジー産業ではなく、競争と研究開発への公的支出によって切り開かれるはずだ。現在のような大国間競争の時代にあって、競争力とイノベーションを維持する最善の方法は市場競争、適切な規制、そして研究開発への公的支出に他ならない。ビッグテックの分割は国家安全保障を脅かすのではなく、むしろ強化するだろう。

米軍の選択的撤退を
―― 現状維持と全面撤退の間

2020年4月号

トーマス・ライト ブルッキングス研究所 米欧センター所長

グローバルな関与からの撤退を求める立場が大きな流れを作り出しつつある。だが、それを追い求めるのは重大な過ちだ。必要なのは、外国でのコミットメントを「慎重に刈り込むこと」であって、数十年にわたってうまく機能してきた戦略を無条件に破棄することではない。現状維持でもない。アメリカの中東戦略に苛立つのは理解できる。しかし中東を理由に世界からの全面的撤退を模索するのは、ヨーロッパとアジアに関与することからアメリカが確保している恩恵を無視することになる。これらの地域には明確な目的と強力なパートナー、そして共有する利益が存在する。本当に重要な関与とそうではない関与を見分ける必要がある。

米金融帝国の黄昏
―― 金融制裁で損なわれるパワー

2020年3月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学  教授(政治学、国際関係論) アブラハム・ニューマン ジョージタウン大学  教授(政治学)

トランプ政権は、バグダッドが米軍のイラクからの撤退を強要するようなら、(世界が)みたこともない「対イラン制裁さえ控えめに思えるような、激しい制裁を(イラクに)発動する」と威嚇し、米連邦準備制度のイラク中央銀行の口座凍結さえ示唆した。ワシントンは、金融関係を帝国のためのツールに変えることで、アメリカは古代アテナイのやり方を踏襲しつつある。だが、アテナイがその後どのような運命をたどったかを理解すれば、ワシントンが、今後を楽観できるはずはない。同盟勢力を思いのままにするために金融力を用いたアテナイは、結局は、自らの破滅の時期を早めてしまった。

新しい勢力圏と大国間競争
―― 同盟関係の再編と中ロとの関係

2020年3月号

グレアム・アリソン ハーバード大学教授(政治学)

中国とロシアは自国の利益や価値のために、欧米の利益を無視して、公然とパワーを行使するようになり、ワシントンも、地政学が「大国間競争」によって規定されていることを認識している。今後、アメリカの役割は変化するだけでなく、小さくなっていく。同盟関係へのコミットメントそして同盟関係そのものを大きく下方修正しなければならない。すでに世界には複数の勢力圏が存在することをリアリティとして受け入れ、「実現不可能な野望」は放棄し、勢力圏が地政学を規定する中核要因であり続けると言う事実を受け入れる必要がある。

さらなる中東紛争を回避するには
―― 安定化には何が必要か

2020年2月号

ケリー・マグサメン アメリカ進歩センター 副会長(国家安全保障、国際政策担当)

「不必要な戦争」にこだわると大統領としての歴史的評価にどのような影響がでるか、トランプはジョージ・W・ブッシュに話を聞くべきだろうし、泥沼からいかに足を抜くかについては、オバマに電話をすべきだろう。イランにさらにペナルティを課すことを求める有志連合は存在せず、最大限の圧力も望ましい結果につながっていない。しかも、(思うままに行動してきた)トランプは国際コミュニティの潤沢な善意をうまく利用できるような立場にはない。多くの諸国は、トランプ政権のイラン政策を、イラン核合意からの離脱以降の一連のプロセスに派生する「身からでたさび」とみなしている。

現存する大国間戦争のリスク
―― 楽観派はどこで間違えたか

2019年12月号

タニーシャ・M・ファザル ミネソタ大学准教授(政治学)
ポール・ポースト シカゴ大学准教授(政治学)

「戦争が起きる頻度は着実に低下している。大国間戦争などもはや考えられず、あらゆるタイプの戦争がますます起きにくくなっている」。このように現状を捉えるコンセンサスが広がりをみせている。だが、この考えは間違っている。たしかに第三次世界大戦は起きていない。だからといって、それは、大国間平和の時代がそこにあることを意味しない。戦争が少なくなっていると過信すれば、いかなる衝突も瞬く間に危険な方向にエスカレートしていく恐れがあることを軽くみなし、壊滅的な結末に直面することになりかねない。国際政治の混沌とした本質からみれば、大規模な紛争が発生する可能性は常に存在する。

北極圏と大国間競争
―― 中ロに出遅れたアメリカ

2019年11月号

ヘザー・A・コンリー 戦略国際問題研究所 ディレクター(ヨーロッパ)

地球平均のほぼ2倍のペースで温暖化が進んでいるために、北極圏の環境は大きく変化している。海氷の後退によって、新たに航路が生まれ、レアアース、水産資源、巨大な石油・天然ガス資源を含む手つかずの資源へのアクセスが開かれつつある。中ロは、こうした変化がもたらした経済的、軍事的なチャンスを積極的に模索している。北京は一帯一路を北極圏に広げ、周辺諸国の一部の港湾、鉄道、地下ケーブル、エネルギー開発に投資し、これを「北極(氷上の)シルクロード」と呼んでいる。モスクワも新たに生まれた北極海航路に対する主権を主張し、中国の海洋シルクロード構想と北極海航路を一体化させることを提案している。・・・

日韓対立と中国の立場
―― 東アジア秩序の流動化の始まり?

2019年10月号

ボニー・S・グレーサー  戦略国際問題研究所 ディレクター(中国パワープロジェクト) オリアナ・スカイラー・マストロ   アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 レジデントスカラー

日韓関係の亀裂を利用しようとする中国の最終目的が何かは明確ではない。韓国にアメリカとの同盟関係を破棄するように公然と促してはいないし、第二次世界大戦期の残虐行為にペナルティを課す対日キャンペーンを展開するようにけしかけてもいない。むしろ、日韓関係の緊張をアメリカのリーダーシップの衰退として認識させようとしている。アジアにおける米同盟システムが十分に傷つくほどに緊張が高まることを望みつつも、日韓関係が完全に破たんしてしまうほど悪化することは望んでいない。とはいえ、北京は、近隣諸国が中国のことを「アメリカよりも信頼できるパートナー」と位置づけることを望んでいる。もちろん、その結果、東アジアの優先順位とパワーが大きく変化すれば、アメリカの地域的立場は形骸化し、アジアの戦後秩序は再編へ向かうことになる。

中国ミサイル戦力の脅威
―― INF条約後の米アジア戦略

2019年10月号

アンドリュー・S・エリクソン 米海軍大学教授(戦略学)

ヨーロッパの安全保障に配慮して)米ロが締結したINF条約は、これまでもワシントンのアジア戦略に対する拘束を作り出してきた。この間に、中国は世界有数の通常ミサイル戦力を整備し、(米ロ間では)生産が禁止されてきたタイプの地上配備型の射程500―5500キロのクルーズミサイル、弾道ミサイルを十分過ぎるほどに開発している。実際、サイバー空間のディスラプティブテクノロジー(破壊的技術)を別にすれば、中国のミサイル戦力を中心とする軍備増強が、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力を形骸化させる最大の要因になるかもしれない。ワシントンはこれに対抗して地上配備型ミサイルを基盤とする抑止をアジアで構築すべきかもしれない。幸い、INF条約の死滅によって、ワシントンは、自国に有利な形へ軍事バランスをリセットするために必要な機会を手にいれている。

米中冷戦は避けられない
―― 貿易と国家安全保障

2019年9月号

ニッキー・ヘイリー 前米国連大使

北京にとって、経済成長は政治を支えるために必要であり、政治の目的は、内外における共産党政権のパワーを強化することにある。米司法省によれば、北京は中国企業に、米企業を含む外国企業の知的所有権を盗むように指示し、しかも中国の民間企業に、獲得したテクノロジーを軍と共有することを義務づけている。2015年に習近平が発表した軍民融合政策は、あらゆる民間企業に軍と協力することを求めており、これは、(外国企業にとって)中国企業とのビジネスがたんなるビジネスではないこと、つまり、ハイテク部門で中国企業と取引すれば、その意図にかかわらず、中国の軍事利益の強化に手を貸すことを意味する。政府の民間ビジネスへの干渉は良いことだとは思わない。しかし、この現実ゆえに、われわれは国家安全保障を市場経済政策よりも重視しなければならない。

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