1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

国防と安全保障に関する論文

帝国の衰退と歴史の教訓
―― 米中ロの衰退と混乱に備えよ

2022年11月号

ロバート・D・カプラン 米外交政策研究所 地政学担当チェアー

米中ロという大国は、一般に考えられる以上に脆弱な存在なのかもしれない。政策破綻を回避するために必要な「悪いシナリオに備える姿勢」、つまり、悲劇を回避するために未来を悲観的に考える能力が北京、モスクワ、ワシントンでは不十分などころか、どこにもみあたらない。実際、帝国や大国はこうして自滅的な戦争を決断し、それによって歴史を左右する大きな節目が作り出されてきた。帝国や大国が突然終わりの時を迎えると、混乱と不安定化が続く。ロシアがこの運命を避けるのは、おそらくもう手遅れだろう。中国はその運命を切り抜けられるかもしれないが、容易ではないはずだ。アメリカも、先行きを悲観して現実的なアプローチに転換する時期が遅れれば、状況はさらに悪化していく。

台湾防衛のための軍事能力強化を
―― 抑止力強化を急げ

2022年10月号

ミシェル・フロノイ 元米国防次官(政策担当)
マイケル・A・ブラウン 元米国防省ディレクター (防衛イノベーションユニット)

中国軍の新戦力の多くはオンラインで大規模に結ばれており、米軍の作戦上の課題をひどく複雑にしている。一方、台湾有事の際に中国軍に対抗するためのもっとも有望な米軍の能力の多くは、2030年代まで整備されず、戦力に完全に統合されることはない。このため、2024年から2027年にかけて、台湾防衛が脆弱化する危険があり、習近平はこの段階で軍事的な台湾攻略が成功する可能性がもっとも高いと判断するかもしれない。特に、台湾に対する政治的強制策や経済的封鎖策などの優先策が失敗していれば、そう考えるだろう。米中がともに相当量の核兵器を保有していることを考えると、先制的に紛争を抑止することがゲームの要諦だろう。アメリカは台湾の自衛能力の近代化と強化を支援するとともに、台湾への武力行使を抑止する米軍の能力を強化しなければならない。・・・

権力者の盲点
―― プーチンは何を見誤ったのか

2022年9月号

ヌゲール・ウッズ オックスフォード大学教授(グローバル経済ガバナンス)

ロシアのウクライナ侵攻は権力が作り出す落とし穴の多くを裏付けている。プーチンは、ロシア軍の戦闘能力を過大評価する一方でウクライナ軍のそれを過小評価し、一部の側近が簡単に勝利できると断言し、現実には消耗戦と化した戦争に国を突入させてしまった。失敗の一因は、権力者のもう一つの落とし穴である「相談や批判を受け入れないこと」にも促されている。プーチンの失敗は彼特有のものではないし、単に独裁者の悪癖の結果でもない。民主主義国家を含むあらゆるパワフルな国家の指導者が、権力に幻惑され、不用意な決断を下すことがある。側近集団の助言、議会や世論など、権力者の判断ミスを避けるための抑制メカニズムはある。だが、これらを指導者が支配するか、無視できる環境にあれば、自分が服を着ているかどうかさえも分からなくなる。

ウクライナ戦争はもはや制御不能か
―― レッドラインとエスカレーション

2022年9月号

リアナ・フィックス 独ケルバー財団 プログラム・ディレクター(国際関係)
マイケル・キマージュ 米カトリック大学教授(歴史学)

プーチンは傲慢さと怒りから、欧米を驚かせ、徹底的に脅かすには、戦争を劇的にエスカレートさせるしかないと判断する恐れがある。「現状がかつてないものであること」を認識する必要がある。何年も続く可能性のある大きな戦争が、無政府状態に近づきつつある国際システムの中枢で血を流している。リベラルな国際秩序のルールに従うように教育されてきた同盟国の政策立案者と外交官は、無秩序のなかを歩んでいくことを学んでいかなければならない。「戦場の霧」が、ソーシャルメディアのスピードと信頼性の低さによってさらに濃くなり、辺りを覆っている。この霧がもっともうまく考案された戦略さえも曖昧にしてしまうかもしれない。世界を震撼させたキューバ・ミサイル危機は13日間続いたが、ウクライナ戦争が引き起こす危機は今後長期的に続く。

次に何が起きるのか
―― ペロシ訪台と米中関係

2022年9月号

デービッド・サックス 外交問題評議会リサーチアソシエート

第4次台湾海峡危機を前にしているというには時期尚早だが、そこに向かいつつある。中国がこれまでにとった軍事的牽制策は、手始めにすぎず、今後数週間から数カ月の間に、中国は台湾に対する軍事的圧力をさらに高めてくると予想される。より多くの航空機を使った防空識別圏への侵入や中央線の越境がより頻繁に起きるかもしれない。また、台湾の領空や上空に軍用機を飛ばし、エスカレートさせることも考えられる。さらに台湾製品の輸入を禁止し、台湾企業の大陸での活動をより困難にしようとするかもしれない。ペロシ訪中の代償を台湾が支払う以上、アメリカは台湾の痛みを和らげるための努力をしなければならない。

世界食糧危機をいかに緩和するか
―― 農業大国アメリカのポテンシャル

2022年8月号

カーライル・フォード・ランゲ ミネソタ大学 栄誉教授(応用経済学、法学)
ロビン・S・ジョンソン 元カーギル社 上席副会長(グローバル担当)

ロシアの黒海封鎖によってウクライナの穀物輸出が妨げられ、ロシアの輸出も経済制裁によって抑え込まれている。こうして、ボスポラス海峡を通過するウクライナやロシアの小麦やトウモロコシの輸出が大きく減少し、エジプトだけでなく、アフガニスタン、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、パキスタン、南スーダン、イエメンを含む中東や北アフリカの多くの国々が食糧危機(供給不足、価格高騰)に苦しんでいる。途上国への食糧支援を十分に提供できる立場にある農業大国のアメリカは、飢餓に苦しむ世界に援助を拡大すべきだし、その経験もノウハウももっている。第二次世界大戦期のレンドリースといえば、イギリスへの船舶や軍需品を供給したことが先ず想起されるが、実は食糧援助も含まれていた。・・・

米中にとっての台湾の軍事的価値
―― 台湾とフィリピン海そして同盟諸国

2022年8月号

ブレンダン・L・グリーン シンシナティ大学准教授(政治学) ケイトリン・タルマッジ ジョージタウン大学外交大学院 准教授(安全保障研究)

台湾は、日本、フィリピン、韓国を中国の威圧や攻撃から守る上で重要なフィリピン海へのゲートウェイとして、きわめて重要な軍事的価値をもっている。中国にとっても、台湾統一を求める大きな動機はナショナリズムよりも、その軍事的価値にある。実際、北京が台湾を攻略して、そこに軍事インフラを設営し、フィリピン海への影響力を高めれば、中国の軍事的立場は大きく強化され、アジアの同盟国を防衛する米軍の能力は制限される。将来的に北京が静音型の攻撃型原子力潜水艦や弾道ミサイル潜水艦の艦隊を編成し、台湾の基地に配備すれば、北東アジアのシーレーンを脅かし、核戦力も強化できる。ワシントンの対中政策に関するすべてのジレンマが集約される場所であるだけに、台湾は世界でもっとも困難で危険な問題の一つだ。だが困ったことに、そこにあるのは、災いをもたらしかねない悪い選択肢ばかりだ。

日独の自主路線と対米協調のバランス
―― ポストアメリカの協調モデル

2022年8月号

マーク・レナード ヨーロッパ外交評議会 ディレクター

ロシアのウクライナ侵攻と米中対立の激化は、戦後秩序の現状とパックス・アメリカーナを根底から覆そうとしている。モスクワのウクライナ侵略を前に、ドイツは外交政策を抜本的に見直し、国防費の大幅増額を約束している。中国の覇権主義を警戒する日本も、同じような変貌を遂げようとしているようだ。短期的には、こうした変化は欧米世界の結束、あるいは復活さえも促すかもしれない。しかし、ドイツが新たに自主路線の道を歩み、日本も同様の道を歩めば、対米依存度は低下し、むしろ、近隣諸国との結びつきが大きくなるだろう。このようなシフトは、ヨーロッパとアジアにおける安全保障秩序だけでなく、欧米世界のダイナミクスを大きく変化させる。ベルリンと東京で進行している変化は、ワシントンが戦後に構築し維持してきたものとは異なる、よりバランスのとれた同盟関係が視野に入ってきていることを意味する。・・・

ウクライナの再建を考える
―― 人口減、都市・経済インフラの破壊に対処する

2022年8月号

アナ・レイド 前エコノミスト誌キエフ特派員

先の見通しがたたない悲惨な状態のなかでも、一定の平和が戻ったときに、この国をどのように再建したいかを考え始めている人たちがいる。楽観的なシナリオでも、東部では戦闘が何年も続く可能性が高いことは理解されている。経済的喪失だけでなく、500万人以上が国外に難を逃れ、国内にいないこと、人口が大きく減少していることにも対処しなければならない。政治腐敗国家に戻らないようにする努力も必要だろう。もちろん、安全、繁栄する近代的経済、家族の帰還、うまく計画された新しい都市建設などの夢がすべて実現するわけではないだろう。だが、過酷な戦争が続くなかでも、再建計画が話し合われている。ウクライナ人の勝利への決意は固く、ロシアの脅威によって彼らの結束とアイデンティティは逆に高まっている。・・・

安倍ビジョンと日本の安全保障
―― ナショナリズムと安全保障の間

2022年8月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授

リベラル派は、安倍首相(当時)に日本の過去の暗黒部を直視して償うことを求め、保守派は、彼の国の誇りを重視する姿勢、軍事力増強と国際的安全保障活動への参加を強化しようする試みを称賛した。多額の債務を抱え、人口減少によって長期的に不利な経済状況に直面するなかで、日本は今後防衛費を増額させていくことになるだろう。それでも、現状は安倍元首相が掲げたビジョンからはかけ離れているし、実際に彼のビジョンにたどり着けるかどうかも、わからない。現実には、市民も多くの政治家も、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な対策をとるのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。安倍は、安全保障議論を進めて国を導くことのできる知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった。その死が日本にとって悲劇的な損失であることは誰もが認めている。・・・

Page Top