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新型コロナウイルスに関する論文

ワクチンナショナリズムを回避せよ
―― パンデミックを終わらせる国際協調を

2020年9月号

トマス・J・ボリキー  米外交問題評議会 シニアフェロー(グローバルヘルス担当)
チャド・P・ボウン  ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

開発中の新型コロナウイルスのワクチン候補は160に達し、すでに治験に進んでいるものも21ある。開発国を含む富裕国は、早い段階でワクチンを入手しようとすでに競い合っている。各国の目的は、他の地域でのCOVID19の感染拡大を抑えることではなく、自国市民へのワクチン供給を優先することにある。このような「ワクチンナショナリズム」は、広い範囲で深刻な帰結をもたらす。有効性が確認された最初のワクチンが出現する日が近づいているだけに、グローバルレベルでの公平な分配をめぐる執行可能なシステムを準備する時間はなくなりつつある。先ず短期的な国際合意をまとめる必要があるだろう。国内における重要な公衆衛生上の目的を達成するための目安、つまり、医療関係者などを含めて、ワクチンをどのような職種の人にどの程度接種すべきかについての信頼できる研究があれば、国内人口のすべてにワクチンで免疫をつけさせるという考えを政治家が先送りし、他国とワクチンを共有することに前向きになれるかもしれない。

CFR Briefing
ワクチンの夢とロシアの現実
―― なぜロシアはワクチン開発を急いだか

2020年9月号

ジュディ・トゥイッグ  バージニアコモンウェルス大学政治学教授

ロシア政府は、8月にCOVID19ワクチンの開発に成功し、規制当局がスプートニクVワクチンの使用許可を出したと発表した。欧米メディアは、ワクチン開発を急ぐあまり、ロシアは標準的承認プロセスの重要部分をバイパスしているのではないかと心配している。もっとも、ロシアのワクチン戦略の背後にある政治的インセンティブを理解するのは難しくない。30年前にソビエト崩壊の屈辱にまみれて以降、卓越した大国としての地位を回復するための道筋を模索してきたロシアにとって、100年に一度のパンデミックを克服するワクチンを、特にラテンアメリカやアフリカの低所得国や中所得国をウイルスが襲い始めた段階で提供できれば、1 年前には想像さえできなかった形でロシアの名声を高めることができる。しかし、そのワクチンが宣伝どおりに機能しなければ、内外で名声が失墜するし、その痛手は相当に大きなものになる。プーチンの「スプートニクの瞬間」が科学への信頼を侵食し、ロシア人の生命を奪う、広報上の勇み足であることが明らかになるとすれば、それは悲劇としか言いようがない。

迫り来るグローバル食糧危機
―― コロナウイルスと飢餓の脅威

2020年8月号

デビッド・M・ビーズリー 国連世界食糧計画 事務局長

COVID19が引き起こすパンデミックによって、飢餓状態に追い込まれる人が急増する事態を警戒しなければならない。もちろん、世界の飢餓人口を増大させる最大の要因は紛争であり、飢餓に苦しむ人々の60%が紛争地域に暮らしている。気候変動も人々を飢餓に追いやる大きな要因だ。だが、これらの危機にCOVID19が追い討ちをかけている。「突発的飢餓に陥る人は年末までにほぼ倍増し、2億6500万に達する」と、われわれ国連世界食糧計画(WFP)は予測している。決意に満ちた行動をとらない限り、飢餓や貧困が深刻化し、コストの嵩む、カオティックな時代に直面する危険がある。

グローバルパンデミックとWHO
―― パンデミックと国際システムとナショナリズム

2020年8月号

スチュワート・パトリック  米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルガバナンス)

パンデミックを前に、各国は国際協調ではなく、他の諸国とも世界保健機関(WHO)とも対立するナショナリスト路線をとった。WHOに対する批判もあるだろう。しかし、多国間システムが「必要なときに自律的に動き出すメカニズムではない」ことを認識する必要がある。どんなに専門知識や経験があって、いかに機構改革を実施しても、(メンバー国が)システムにおける政治的な方向性を示し、持続的なリーダーシップを発揮しない限り、多国間組織は効果的に動けない。現在の危機を前に、各国の指導者が、多国間組織はうまく機能しないと結論づけ、その解体を求めるようになれば、新たに大惨事が引き起こされ、人類はさらに大きな犠牲を強いられるだろう。

次のパンデミックに備えるには
―― COVID19の教訓とは何か

2020年8月号

マイケル・T・オスタホルム  ミネソタ大学感染症研究政策センター  ディレクター  マーク・オルシェイカー  ドキュメンタリー・フィルムメーカー  作家

ワクチンが開発されて利用できるようになるか、多くの人が感染して集団免疫が達成されれば、現在の危機は終わる。しかし、ワクチンであれ、集団免疫であれ、それが短期間で実現することはなく、そこに至るまでの人的・経済的コストはかなりのものになる。しかも、将来における感染症アウトブレイクはより大規模で、致死性も高いはずだ。言い換えれば、現在のパンデミックは、世界のあらゆる疫学者や公衆衛生当局者が悪夢とみなす深刻な感染症(ビッグワン)ではおそらくない。次のパンデミックは、1918年のスペインかぜと同様に壊滅的な「新型インフルエンザウイルス」になる可能性が高い。COVID19を次のパンデミックがどれほど深刻なものになるかの警告とみなすべきだし、再び手遅れになる前に、アウトブレイクを封じ込めるために必要な行動を促す必要がある。

経済活動再開の恩恵とリスク
―― 感染率拡大の国家間格差はなぜ生じたか

2020年8月号

ジョシュ・ミックハウド  カイザーファミリー財団  アソシエイト・ディレクター (グローバルヘルス政策担当) ジェン・ケーツ  カイザーファミリー財団  シニアバイスプレジデント (グローバルヘルス&HIV政策担当)

都市封鎖、行動規制解除後の感染率の推移は国ごとにばらつきがある。感染を封じ込めるほど十分長期にわたって封鎖や行動規制を続け、公衆衛生システムを強化し、レジリエンスを高め、社会にメッセージを適切に伝えた国は、日常生活への復帰後も壊滅的な事態には陥っていない。しかし、大した準備もせずに、経済・社会活動の再開に踏み切り、いまや大きなコストを支払わされているブラジルやアメリカのような国もある。経済・社会活動再開のための最善の計画も、予期せぬ事態に遭遇することもある。各国で、ステイホームの指令やソーシャルディスタンシングのガイドラインがデモ行動で覆されたことはその具体例だ。社会・経済活動再開に向けたロードマップが存在することは安心材料だが、数週間から数カ月先にはそれを書き換える必要が出てくるだろう。

コロナウイルスと社会暴力の増大
―― パンデミックで引き裂かれた社会

2020年7月号

レイチェル・ブラウン  オーバーゼロ エグゼクティブディレクター  ヘザー・ハールバート  新アメリカ政治改革プログラム ディレクター  アレクサンドラ・スターク 新アメリカ政治改革プログラム シニアリサーチャー

国や市民にとって、平和とはたんに国家間戦争が起きていない状態ではない。人命、コミュニティ、制度や体制の安定を脅かす問題がない状態のことだ。実際、経済の不安定化、民主主義の後退、制度や体制への不信、特定の人種のスケープゴート化など、これらの全ては政治的暴力の可能性を高める。不幸にもCOVID19は、これらのトレンドを刺激している。アメリカでは、長年の人種間の不平等や社会的分断が引き起こす問題をパンデミックが増幅させ、警察官が黒人男性を死亡させた映像が大規模な抗議活動に火をつけた。アメリカだけではない。マイノリティ集団をスケープゴートや攻撃の対象にし、特定の宗教を差別する行動、アジア系やユダヤ系の人々に対する暴力行為やスケープゴート化、陰謀論の流布が世界各国で広がっている。

パンデミックと政治
―― 何が対応と結果を分けたのか

2020年7月号

フランシス・フクヤマ  スタンフォード大学 フリーマン・スポグリ国際研究所 シニアフェロー

「一部の国は他の国よりもなぜうまくパンデミック危機に対応できたのか」。答えはすでに明らかだ。パンデミック対応の成功を説明する要因は国の能力、政府への社会的信頼そして指導者のリーダーシップだ。有能な国家組織、市民が信頼して耳を傾ける政府、そして優れた指導者という三つの条件を満たす国は、ダメージをうまく抑え込む、見事な対応をみせた。一方、政府が機能不全に陥り、社会が分裂し、指導者にリーダーシップがなければ、市民や経済は、ウイルスに翻弄された。対応をひどく誤ったアメリカの威信と名声はいまや地に落ちている。今後、数年にわたって、パンデミックはアメリカの相対的な衰退とリベラルな国際秩序の形骸化をさらに進め、世界各地でファシズムの復活を促すことになるかもしれない。現在のトレンドが劇的に変化しない限り、全般的な予測は憂鬱なものにならざるを得ない。

大都市は消滅するのか
―― 適度な密度と過密を区別せよ

2020年7月号

ジェニファー・キースマート キースマートグループ 最高経営責任者

密度は必ずしも悪ではなく、そこには適度で好ましい密度もある。手頃な価格の住宅、広い歩道、多くの公園スペース、家から徒歩圏にある豊かな自然環境、学校、その他のコミュニティ施設がある町をイメージしてほしい。これらが適切な密度のイメージだ。比較的ストレスのない環境で、包含的でアクティブなコミュニティ活動を促すようにすれば、優れた公衆衛生も実現される。実際、現職のパリ市長は、住民が短時間の徒歩や自転車であらゆる仕事、買い物、レジャーのニーズを満たせる「15分で動ける都市」に変えるという公約を掲げて再出馬し、選挙を戦うつもりだ。北米の都市は、このビジョンから学ぶ必要がある。より深くつながり、住みやすく、持続可能で、混雑が少ない適切な密度へ向かっていくべきだ。

CFR Meeting
コロナウイルスが変える社会と経済
 ――経済効率を落としてもよりレジリエントな存在になる

2020年6月号

エドマンド・S・フェルプス コロンビア大学資本主義・社会センター所長  セシリア・エレナ・ラウズ プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン・スクール ディーン グレン・ハバード コロンビア大学ビジネススクール ディーン

イノベーションプロセスに参加してイマジネーションとクリエーティビティを開花できるはずの膨大な数の人々が雇用を失ったままであれば、社会紛争のなかで国が崩壊するのではないかとさえ私は懸念している。(E・フェルプス)

「病気なのに、仕事に向かい、他の人に感染させるかもしれない」。有給の病欠が認められていれば、家で安静にしていても、給料を減らされることはない。実際、(医療保険)公衆衛生は、政府が役割を果たすのが適切で、これが非常に重要な公共財であることを理解すべきだろう。公衆衛生は、国防とともにきわめて重要だ。  (C・ラウズ)

ビジネスマンは、今回の経験から(効率よりも)レジリエンス(柔軟性、ゆとり)を維持することの重要性を教訓として学んでいくだろう。(今回のように)この上なく最適化された(無駄のない)サプライチェーンが、ショックによって機能不全に陥るのを避けようとするはずだ。・・・結局、各国が新たに議論できる空間を提供する国際機関を立ち上げられるまでが、効率性や成長の重要性はこれまでよりも割り引いて捉えられるようになるかもしれない。(G・ハバード)

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