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新型コロナウイルスに関する論文

パンデミックによる「学校閉鎖」と格差拡大
―― 途上国の学校再開への投資を

2021年7月号

エミリアナ・ベガス  ブルッキングス研究所 シニアフェロー

富裕国に比べて低所得国や中所得国でより長期にわたって学校が閉鎖され、そもそも恵まれない生活環境にあるか、クラスについていけずにいた子供たちがリモートによる学習でさらに取り残されている。こうした学習機会の損失が世界の貧困国で集中的に起きている。質の高い学校教育を受けた子供たちは、そうできなかった子供よりも将来多くの所得を得るようになり、国レベルでみても質の高い教育を与える国は、より高い経済成長率を達成する傾向がある。このトレンドからみれば、現状は今後問題がさらに深刻化していくことを示唆している。低所得国と中所得国の学校をこのままの状態で放置すれば、貧困と格差はますます深刻になる。コミュニティ、政府、国際機関は公立学校、特に貧しく、疎外された地域で暮らす子供たちが通う学校の再開と改善に投資する必要がある。

新型コロナの不都合な真実
―― 永続化するウイルスとの闘い

2021年7月号

ラリー・ブリリアント パンディフェンス・アドバイザリーCEO
リサ・ダンジグ  パンディフェンス・アドバイザリーのアドバイザー
カレン・オッペンハイマー  グローバルヘルス戦略&オペレーションアドバイザー
アガストヤ・モンダル  カリフォルニア大学バークレー校博士課程(伝染病学、計算生物学)
リック・ブライト  前米連邦厚生省副次官補(準備・対応担当)
W・イアン・リプキン コロンビア大学教授(感染症学)で同大学付属感染症・免疫センターのディレクター。

すでに10数種の動物種に感染を広げている以上、新型コロナウイルスは根絶できない。世界規模の集団免疫も期待できない。十分なワクチンを生産・供給するには長い時間がかかるし、反ワクチンムーブメントの存在も集団免疫を達成させる見込みを遠ざけている。一方では、新種の変異株が次々と登場している。より高度な耐性をもつか、より感染力の強い新型の変異株については、追加のブースターショット、あるいは全く新しいワクチンが必要になるかもしれず、この場合、ほぼ200カ国の数十億人にワクチンを接種するというロジスティック上の大きな課題に世界は直面する。現在の検査キットをすり抜ける変異株が出てくる恐れもある。要するに、パンデミックが最終局面にあるわけではない。多くの人が短期間で終わることを願った危機は終わらず、現実には、驚くほどレジリアントなウイルスに対する長くゆっくりとした闘いが続く。

インド変異株の悪夢
―― 変異株と政治災害が引き起こしたインドの悲劇

2021年6月号

マンダキニ・ガーロット  ジャーナリスト / 映画監督

世界における新規コロナ感染の三つに一つがいまやインドで起きている。だが、こうなる必然性はなかった。狼狽、間違い、奢りを通じて黙示録的世界を招き入れたのはモディ政権に他ならない。「国内のコロナを抑え込み、いまや世界のパンデミックを終わらせるのを助ける立場にある」と対外的に表明した彼の強気が裏目に出た。人々はマスクを外し、ソーシャルディスタンスのガイドラインを無視し始めた。保健担当大臣が偽医療を公的に紹介しただけでなく、ヒンドゥー教の大規模な宗教的祝祭(クンブメーラ)のために(ウッタラカンド州にある聖地ハリドワールへの)巡礼を認めたことでも政府は感染を拡大させてしまった。しかも、二つの変異株の特徴を有するB・1・617変異株が定着しつつあることを認識しつつも、この新しい敵を理解しようと政府が力を入れることはなかった。・・・

感染症を含むグローバルヘルス対策をめぐって、これまでワシントンは国際機関や途上国を中心とする各国政府に援助を提供することで、対策を主導してきたが、このアメリカ主導型のモデルに大きな変化が生じている。いまや、慈善団体、地域機構、民間企業などの、新しいネットワークと組織がグローバルヘルス領域で大きな役割を果たしているだけでなく、途上国の科学者や組織も研究やベストプラクティスをめぐって大きな影響力をもつようになった。しかも、技術革新によって民間企業に新タイプのデータがもたらされており、今後、政府と保健機関の仕事は大きく変化していくだろう。グローバルヘルスを守る努力の中枢に、各国政府、地域機関、民間部門とのパートナーシップを据える必要がある。


変異株とグローバルな集団免疫
―― 終わらないパンデミック

2021年4月号

マイケル・T・オスタホルム ミネソタ大学兼感染症研究政策センター所長  マーク・オルシェイカー  作家

ワクチンの接種がすすみ、パンデミックが収束へ向かうことが期待されるなか、コロナウイルス変異株の出現で、逆にパンデミックが長期化するリスクが生じている。危険な変異株の出現を抑え込む最善の方法は、できるだけ多くの人々を感染から守ることだが、多くの低所得国や中所得国の民衆はまだ1回のワクチン接種も受けていない。変異株は人から人への感染力が高いかもしれない。すでに追い込まれている病院や医療施設へさらに大きな圧力をかける恐れもある。もっとも厄介なのは、ワクチン接種またはCOVID19への感染から得た免疫が、変異株への感染を防げないかもしれないことだ。・・・


なぜ世界はパンデミックに敗れたのか
―― 国際協調を阻んだナショナリズムと保護主義

2021年3月号

ヤンゾン・ファン  米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルヘルス担当)

「協調性のない、混沌とした国中心の反応」。これが、世界のCOVID19パンデミック対策の特徴だった。必要とされる「グローバルな危機へのグローバルな対応」からはかけ離れていた。国際協調体制がうまく築かれなかったことについて、世界保健機関(WHO)を非難する分析者もいる。しかし、最大の理由は、米中対立によって対応が政治化され、ナショナリスティックで保護主義的な対応がとられたことにある。米中間の緊張は、アウトブレイクに関する調査だけでなく、ウイルスの拡散を封じ込めるための協調行動をまとめるWHOの能力も抑え込んでしまった。必要なのは、パンデミックコントロールを、あらゆる国が貢献すべき「グローバルな公共財」として位置づけることだろう。

次のパンデミックに備えよ
―― グローバルな対応をいかに整備するか

2021年2月号

ジェニファー・ナッゾ  ジョンズ・ホプキンス大学  ヘルスセキュリティセンターシニアスカラー

パンデミックの経済的、社会的余波は、今後数十年は続き、おそらく、今回の危機が21世紀最後のパンデミックになるわけでもないだろう。現在の公衆衛生構造は「感染症の(局地的な)アウトブレイク」を前提としている。だが「世界のほぼすべての国が同じようにリスクにさらされるパンデミック」には別のアプローチが必要になる。事実、パンデミックを前に、限られたリソースしかもっていない世界保健機関(WHO)、世界銀行などの国際機関が大きな圧力にさらされた結果、各国は独力で感染症対策を実施せざるを得ない状況に追い込まれた。パンデミックに対する真のグローバルな対応を実現するには、各国はデータ共有を含めて、共同の試みをすることに合意しなければならない。そうしない限り、次の危機でも、対応が小さすぎて、遅すぎることが立証されることになる。

CFR Blog
ワクチン開発と集団免疫
―― 米中免疫ギャップの意味合い

2021年1月号

ヤンゾン・ファン 米外交問題評議会シニアフェロー

ワクチンの大規模接種と感染・回復の免疫獲得によってアメリカは集団免疫を実現し、2021年秋までには平常への復帰を果たせるかもしれない。一方、コロナウイルスのアウトブレイクを短期間で封じ込めただけに、ウイルスにさらされた中国人はほとんどおらず、このままでは中国の人口の多くがこの感染症に脆弱なままの状態に置かれる。この「免疫ギャップ」によって(中国が今後集団免疫を獲得する上で大きな困難とリスクに直面するとすれば)、もはや(初期段階で感染症を封じ込めた)中国の「成功」と(そうできなかった)欧米諸国の「失敗」を、中国モデルの優位を示す証拠として指摘できなくなり、中国の指導者に政治問題を突きつけることになるかもしれない。むしろ、リベラルな民主主義国家のレジリエンス(復元力)、大きな危機に直面したときの自己修正能力が評価されるようになるかもしれない。つまり、ワクチンが大国間競争のゲームチェンジャーになる可能性がある。

農村地帯で続く小さなアウトブレイク
―― コロナ危機が長期化する理由

2021年1月号

タラ・C・スミス  ケント州立大学教授(疫学)

都市部で猛威を振るったコロナウイルスは、いまや多くの農村コミュニティを襲っている。全米で感染ケースが増えているが、一人当たりの感染率がもっとも高いのは農村部や小さな町であることが多い。農村部での感染状況は当面は悪化し続けると考えられる。地方の病院は設備も十分ではないし、ファイザーのワクチンのように保存に特殊な設備が必要なワクチンを管理していくのは難しい。1世紀前のインフルエンザがそうだったように、都市がコロナウイルス感染の拡大を制御できるようになっても、農村部では2021年あるいはより長期的にウイルスへの感染は拡大し続けるかもしれない。

ワクチンへの過大な期待と幻滅
―― 迅速な勝利は期待できない

2021年1月号

ジョシュ・ミショー  カイザーファミリー財団グローバルヘルス 政策担当アソシエートディレクター ジェン・ケイツ  カイザーファミリー財団グローバルヘルス&HIV 政策担当ディレクター 上席副会長

将来のアウトブレイクリスクを排除するには、世界人口の70%がワクチンの接種あるいは感染と回復を通じて、コロナウイルスの免疫を獲得する必要がある。COVID19に感染したのは世界人口の10%と推定されるだけに、グローバル規模のワクチン接種でリスクを抑え込むのは非常に難しい。途上国へのワクチン供給に遅れが生じるのも、ワクチン接種をいやがる人が出てくるのも避けられない。ソーシャルメディアを通じて拡散される反ワクチンのプロパガンダや偽情報が・・・ワクチンへの信頼を貶めるかもしれない。有効なワクチンの供給で、コロナ危機が終わるわけではない。迅速な勝利がもたらされることはなく、むしろ、ウイルスとの長期に及ぶデタントの時代の始まりになる可能性が高い。

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