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新型コロナウイルスに関する論文

高まる社会不満と政治不信
―― ゼロコロナ政策の深刻な帰結

2023年2月号

リネッテ・H・オング トロント大学教授(政治学)

薬局の棚は空で、病院での診療は受けられず、火葬場は長蛇の列だ。国からの信頼できる情報もない。突然解除された規制に対する民衆の不満は高まっている。今や、中国におけるコロナウイルスの新規感染者数は1日あたり約100万人で、ウイルスは制御不能な状態にある。習近平が固執してきたゼロコロナ政策からの大転換によって、不穏な雰囲気と政府に対する反発はむしろ高まっている。共産党に対する市民の信頼も失墜しつつある。社会的不満の高まりは、やがて党内エリートの結束も弱めるかもしれない。この間違いが引き起こす政治コストがどのようなものになるか、今のところわからない。しかし、共産党が自ら作り出したこの危機を無傷で乗り切れるとは考えにくい。

次のアウトブレイク
―― パンデミック化を阻止するには

2023年2月号

ラリー・ブリリアント パンディフェンス・アドバイザリー社CEO
マーク・スモリンスキー 非営利団体エンディング・パンデミクス理事長
リサ・ダンツィグ パンディフェンス・アドバイザリー社顧問
W・イアン・リプキン コロンビア大学公衆衛生大学院 感染免疫センター所長

都市化、近代化が進んだことで、動物の病気が人間にも広がり、蔓延する危険が大きくなっている。ヒトと動物の間でウイルスの交換がますます増えて、いくつかの変異が起きれば、人類は、H1N1のように感染力が高く、MERSのように致死性の高い、新たなコロナウイルスかインフルエンザウイルスの襲撃を受けるかもしれない。このようなパンデミックは、種としての私たちの存続を脅かすことなるだろう。但し、スピルオーバー(ウイルスの異種間伝播)とアウトブレイク(感染症の発生)は避けられないとしても、パンデミックはそうではない。したがって、人類の最大の任務は、前者と後者の関連を断ち切るために手を尽くすことだ。

気候変動と感染症
―― 温暖化と感染症リスクの拡大

2022年12月号

クレア・クロブシスタ Deputy Editor for cfr.org
リンゼー・メイズランド Editor for cfr.org

多くの研究が、気候変動と人獣共通感染症の脅威拡大との関連を指摘している。温暖化によってウイルスの宿主の生息域と数が拡大し、ヒトとの接触、感染経路が増えているからだ。世界の平均気温の上昇に伴い、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)に報告される新規ライム病の患者数は、1990年代初頭からほぼ倍増し、いまや年約3万人に達している。このような状況を受けて、近年では、人間、動物、自然環境のつながりを重視した公衆衛生の考え方、「ワンヘルス」という概念が広がりをみせている。この概念の下、農業・畜産、獣医学、環境汚染などの分野や研究領域を統合することが、将来のグローバルな健康脅威に備えるために必要だと提唱されている。だが、専門家たちは、世界は気候変動に起因する感染症拡大リスクに対する備えが依然としてできていないとみている。

パンデミックの現状をどう捉えるか
―― オミクロンとニューノーマル

2022年3月号

マイケル・T・オスタホルム ミネソタ大学感染症研究・政策センター所長 マーク・オルシェーカー 作家・フィルムメーカー

考えるべきは、現在進行しているヒトへの感染が新たな変異株を作りだしている危険があることだ。世界人口の約40%は依然としてCOVID19ワクチンを一度も接種しておらず、非常に感染に脆い状態にある。もちろん、オミクロンによる大規模感染とワクチン接種率の上昇が重なることで、最終的に現在のパンデミック(世界的流行)がエンデミック(地域的流行)へ後退し、インフルエンザのような季節性の呼吸器疾患へコロナが変化していくという楽観論もある。だが悲観的な見方をすれば、デルタとオミクロンは来るべき悪夢の前触れに過ぎないかもしれない。いずれ、以前のバージョンと同じかそれ以上の感染力をもち、より重篤な症状を引き起こし、免疫を回避する能力をもつ新しい変異株が登場するかもしれない。政府や国際機関は「あらゆる問題への解決策など持ちえないこと」を認識し、未知の事態に備える必要がある。




ワクチンで変異株を抑え込むには
―― 必要とされるmRNAの進化

2022年2月号

ニコル・ルリエ   感染症流行対策イノベーション連合(CEPI) 戦略アドバイザー  ヤコブ・P・クレイマー  CEPI臨床統括者  ケート・ケランド  CEPI チーフサイエンティフィックライター リチャード・J・ハチェット CEPI最高経営責任者

深刻な脅威を作り出す変異株はオミクロン株が最後ではないかもしれない。さらなる感染症による犠牲とそれに伴う社会的・経済的混乱を世界が避けるには、もっと効果が長続きする新ワクチンが必要になる。すでに、モデルナが開発した二価ワクチンは、COVID19の原株とベータ株のスパイクタンパク質を含んでおり、それぞれの株に対して強い免疫反応が得られることがわかっている。同様に、複数のメーカーが、COVID19スパイクタンパク質の「コンセンサス(共通)配列」を用いたワクチン製造を試みている。既存の変異株や今後出現する恐れのある変異株に対して、より広範に長期にわたって感染を防ぐことができる新しいワクチンが開発されれば、次のパンデミックでこれまでのような被害を繰り返さないようにできるかもしれない。

残存する国内ワクチン格差
―― 周辺化されたコミュニティへの国際的対応を

2021年12月号

ダーレン・ウォーカー  フォード財団会長

グローバルな供給量を増やすだけでは、国家間あるいは国内におけるワクチンへの平等なアクセスを提供することはできない。政府や国際機関は、ドナー、市民社会グループ、地域のリーダーたちと協力して、社会から取り残され、周辺化されたコミュニティにワクチンが行き渡るように試みる必要がある。そうしない限り、弱者の多くがワクチンを受けられないままになり、世界全体が再び危険にさらされる。グローバルパンデミックを防ぐには、途上国、特に長く無視され、抑圧されてきた地域の公衆衛生インフラを強化するしかない。このワクチン格差に正面から取り組まなければならないのは、道徳的に問題があるからだけではない。そうすることが公衆衛生や安全のために必要だからだ。


パンデミック対策組織がなぜ必要か
―― パンデミックファンドの創設を

2021年11月号

アンドリュー・C・ハインリッヒ  米上院外交委員会 特別プロジェクト担当ディレクター サード・B・オマー  イェール大学 グローバルヘルス研究所ディレクター

パンデミックは今後ますます頻繁に起きるようになるかもしれない。国際的な旅行や商取引がパンデミック以前の水準に戻れば、感染が拡大するリスクは高くなる。さらに、気候変動を引き起こしている主要な要因である森林破壊が、いわゆる人獣共通感染症の多くと密接に関係していることはすでに明らかにされている。次のアウトブレイクに備え、それに対抗していくことを明確な目的とする恒久的制度・機構を考案し、維持していくべきだ。途上国に支援を迅速に提供し、最先端の研究を促し、人命を救える医薬品生産を加速できるようにしなければならない。そうしない限り、国際社会はさらに壊滅的な被害をもたらす危険のある次のパンデミックに無防備なまま直面することになる。

トランスナショナルな脅威と 「人間の安全保障」
―― パンデミックで分断された世界

2021年10月号

ラジヴ・J・シャー  ロックフェラー財団会長

世界は「パンデミックに耐える能力をもつ先進国」と「脅威に翻弄される途上国」間の「大いなる分断」によって切り裂かれている。既存のグローバル開発モデルはもはや機能していない。パンデミックと気候変動の二重の脅威からすべての人を守るために「人間の安全保障」を強化するグローバルな憲章をまとめる必要に各国は迫られている。先進国と途上国の能力と資源のギャップを埋め、官民のパートナーシップをさらに強化しなければならない。途上国でパンデミックが収束し、変異株が出現しないようにならない限り、先進国の回復プロセスが不安定化するのは避けられない以上、途上国への開発援助を、先進国の市民や経済をパンデミックの再発から守るための投資と位置づけて促進しなければならない。

分裂した世界とグローバルな脅威
―― パンデミック・気候変動と大国間競争

2021年10月号

トーマス・ライト  ブルッキングス研究所米欧センター所長

この100年で最悪のパンデミックはいまも収束していない。気候変動危機も加速する一方だ。しかも、大国間競争という環境下で、ワシントンはこれらのトランスナショナルな脅威に対処していく戦略を考案していかなければならない。米中のライバル関係は熱い戦争は引き起こしていないが、冷たい戦争に火をつけかねない状況にある。だが、未来のパンデミックに備え、気候変動と闘うには、ライバル諸国、特に中国との協調を模索しなければならない。だが一方で、協調路線が破綻した場合に備える必要もある。同盟諸国とパートナー諸国が、グローバルな公共財のためにより大きな貢献をするバックアッププランも用意しておくべきだろう。2020年には存在しなかったそうした計画を、次の危機までに間違いなく準備しておかなければならない。

ワクチン革命への課題
―― そのポテンシャルを開花させるには

2021年7月号

ニコル・ルリエ  感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)  戦略アドバイザー ヤコブ・P・クレイマー  CEPI臨床統括者 リチャード・J・ハチェット  CEPI最高経営責任者

ウイルスの遺伝子配列の特定からmRNAを利用したワクチンが臨床試験に入るまでに要した期間は3カ月足らず。この技術があれば、致命的なパンデミックを引き起こすかもしれない未知の病原体「疾病X」に備えることもできる。だが課題も多い。「免疫がどの程度持続するのか」が分かっていない。生産能力が依然として限られ、保管の問題があるために、大規模な接種キャンペーンを実施するにはロジスティック面での問題を伴う。さらに、感染力が強い変異株が世界で急速に拡散しており、それが従来の株よりも致死的なのか、ワクチンの効果が弱まるかが依然としてはっきりしない。より基本的には、迅速かつ適切に機能するアウトブレイクの監視システムと国際的なデータ共有が必要になる。・・・。

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