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論文データベース(最新論文順)

CFRインタビュー
ウィキリークスとインターネットの自由

2011年1月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会シニア・フェロー(対テロ、国家安全保障担当)

インターネットの物理的構造は、依然として分散型で多様性に満ちている。この構造は、言論の自由や情報の拡散には適している。だが、より大きな問題がこれから表面化していくことになるだろう。インターネットは本質的にトランスナショナルな性格を持っているが、(ウェブ空間を提供する)企業は物理的なプレゼンスを持っており、(ウェブ上で問題行動が生じると)活動する国の政府によって処罰される。この領域は、まだうまく規制されていないし、概念化も進んでいない。この空間での規範やルールを作り出そうとする動きはある。グローバル・ネットワーク・イニシアティブ(GNI)は、ユーザーに公共空間におけるルールを正式に受け入れさせたいと考えている。・・・・・実際、ウィキリークス問題によって、国家と政府はこの空間でも積極的に活動せざるをえなくなったと判断し、いまや権限を確立しようとしており、一方で、サイバースペースの商業アクターは政府が指針を示すことを求めている。(A・シーガル)

CFRミーティング
アフガン撤退戦略の見直しを

2010年12月号

リチャード・アーミテージ / アーミテージ・インターナショナルL.C.

「カルザイ政権とのパートナーシップが不安定で、パキスタンとも部分的なパートナーシップしか結べていない以上、われわれは何度も同じことを繰り返して、異なる結果が出るのを期待してはならない。やり方を変える必要がある。・・・・さらに、ラシュカレトイバのことも忘れてはいけない。これまではカシミールを拠点にインドを攻撃してきた・・・ラシュカレトイバは、ハッカニ・ネットワーク同様に、インドだけでなくアメリカを敵視している。私があえてハッカニ・ネットワークについてここで述べたのは、今度、ムンバイタイプのテロが起きれば、インドは(パキスタンに対して)具体的な反撃に出ると考えるからだ。しかも、ラシュカレトイバはアルカイダの同盟勢力だ。アルカイダにとって、インドとパキスタンを戦わせることにどのような利点があるかを考えるべきだ」(R・アーミテージ)

新興国という無責任な利害共有者 ―― 時代は「協調なき、多極化」へ

2010年12月号

スチュワート・パトリック / 米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカのパワーが衰退していくにつれて、台頭する新興国は既存の制度を試し、弱め、改革して自分たちの目的に合致するように作り替えようと試み始めている。既存の大国と新興大国の間だけでなく、新興大国どうしの戦略的ライバル関係も高まりをみせている。各国が演じているゲームは一つではない。金融改革や対テロでは協調するかもしれないが、市場シェア、戦略資源、政治的影響力、軍事的優位をめぐっては競いあっている。問題は、アメリカを含む先進国が、パートナー、そしてライバルとしての二つの顔を持ち、国際社会での発言権を強化したいと望みながら、一方では自国を途上国と定義する新興諸国との関係をどのように管理していくかだ。新しい国家を制度に取り込む一方で、可能な限り、これまでの秩序を維持していくには、2世紀前のヨーロッパの大国間協調がそうだったように、常に綱渡りをしているような細かな配慮が必要になる。

アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない

2010年12月号

キショール・マブバニ シンガポール国立大学行政大学院院長

アジアの国際環境は多極化していく。中国が台頭しているとはいえ、誰もがアメリカがアジアでの強固なプレゼンスを維持していくことを願っているし、インドもパワーをつけて台頭しているからだ。この環境では、中国は地政学的に非常に慎重な行動をとらざるを得ない。中国にとっての悪夢のシナリオは、あまりに高圧的な路線をとって反発を買い、アメリカ、日本、ロシア、インド、さらにはベトナム、オーストラリアを結束させてしまうことだ。当然、中国はこの悪夢のシナリオが現実と化すのを避けようとするだろうし、自国の行動をもっと慎重に考えるようになると思う。誰もが唯一の超大国として中国が台頭してくるのではないかと心配しているが、私はそうはならないと考えている。(K・マブバニ)

CFRインタビュー
コレラ流行はパンデミック化している

2010年12月号

ローリー・ギャレット / 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

大地震が発生してまだ一年も経ってないハイチでコレラが発生し、感染が大きな広がりをみせている。汚染された水によって人間に感染するコレラは、適切な水分補給と抗生物質投与によって治療できる感染症だが、ハイチがこれまでも水道と公衆衛生インフラをうまく整備できていなかったこと、そして地震後のインフラ再建が遅れていることが災いして、問題がさらに深刻になっている。コレラが発生した場所に適切な公衆衛生、清潔な飲料水供給システムがなければ、感染は瞬く間に広がっていく。ハイチだけでなく、ナイジェリアでも、パキスタンでも同じタイプのコレラが流行している。「実際には、これはパンデミックだ」とギャレットは言う。今回のコレラ発生は、世界各地で実施されている平和維持活動、危機地域を移動する人道支援活動にとっての新たな課題を浮上させている。平和維持活動、人道支援活動が実施されるのは、往々にしてそうした公衆衛生インフラが存在しない地域だからだ。聞き手は、デボラ・ジェローム (Deputy Editor, CFR.org)

CFRインタビュー
P・ムシャラフが語る政界復帰

2010年12月号

スピーカー
パルベーズ・ムシャラフ 前パキスタン大統領
プレイサイダー
デボラ・S・アモス ナショナル・パブリック・ラジオ、外報コレスポンデント

パキスタンの民衆は現在の政府に大きな不満を持っている。そして、現在のパキスタン政府はすでに気力を失っている。現在のパキスタンが破綻国家同然の状態に陥っているため・・・かつて同様に、軍部に立ち上がることを求める人々もいる。だが、私は政権の打倒と移行は、あくまで平和的で憲法を踏まえたものでなければならないと考えている。そこに、軍部の役割はない。・・・私は政治家だ。新しい政党も立ち上げた。私の帰国を促す大量のメッセージを受けとっている。・・・この8カ月間でフェースブックのフォロワーは35万に達した。帰国すれば、かなりの支持を得られると思う。リスクはあるが、私はこのチャンスに賭けようと思っている。(P・ムシャラフ)

ロシアの政治・経済を支配するシロヴィキの実態
―― 連邦保安庁というロシアの新エリート層

2010年12月号

アンドレイ・ソルダトフ Agenture.Ruの共同設立者
アイリーナ・ボローガン Agenture.Ruの共同設立者

ソビエト時代の国家保安委員会(KGB)は非常に大きな力を持つ組織だったが、それでも政治体制の枠内に置かれ、共産党がKGBをあらゆるレベルで監視していた。だが、KGBとは違って、今日のFSB(連邦保安庁)は、外からの監督も干渉も受けない。プーチン時代に入ってから2年後には、FSBはソビエト時代のKGBよりもパワフルで恐れられる存在となり、政治、外交、経済領域での大きな権限から利益を引き出していた。これは、かつてのKGBのオフィサーだったプーチンが、信頼できるのはFSBだけだと考え、この10年間で、国家機関、国営企業の数多くの要職にFSBの人材を任命した結果だった。メドベージェフ大統領が本気でロシアを近代国家に作り替えるつもりなら、まったく制御されていないFSBではなく、国の安全の擁護者を新たに作り上げる必要がある。

軍事力を例外とすれば、今後、アメリカの文化も経済も21世紀初頭のようなパワーを失い、世界的な優位を保つことはないだろう。そして、今後の国家間政治においてもっとも重要な要因は、アジアが世界舞台への復活を続けていることだ。だが、中国がアメリカをアジアから締め出せるはずはない。アメリカが古代ローマのように内側から朽ち果てていったり、中国を含む国家に取って代わられたりすることはあり得ない。アメリカにとって重要なのは、移民への開放性を維持し、国内の中・高等教育を改革し、債務問題への対策をとり、制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化していくことだ。21世紀のスマートパワーのストーリーは、パワーを最大化することでも、覇権を維持することでもない。それは、パワーが拡散し、その他が台頭する環境のなかで、いかに自国のパワーリソースを優れた戦略に結びつけるか、その方法を見いだすことだ。

インターネットは自由も統制も促進する
――政治的諸刃の剣としてのインターネット

2010年12月号

イアン・ブレマー
ユーラシア・グループ代表

インターネットテクノロジーはメガホンであり、拡散機能を持っているが、この機能は、国境を越えた情報拡散の促進を望む人々だけでなく、この流れを遮断し、悪用する人々も利用できる。メディアとしてのインターネットが、民主主義を求める声を増幅させるのは、すでに、民主主義への希求が存在する場所においてだけだ。一方、権威主義国家は、彼らにとって好ましくない情報の自由な流れをブロックするために、そして、政府の立場や考えを拡散するために、情報テクノロジーを利用している。最終的には、世界のあらゆるインターネットがさまざまな政府による詳細な監視の対象にされるようになるだろう。事実、欧米のハイテク通信企業は、いまや自らを軍需企業のように考えだしている。インターネットが消失することはない。だが欧米諸国が使用し、一方で、権威主義国家の意向を満たすような一つのインターネットが存在すると考えるのは現実的ではないだろう。

インターネットと相互接続権力の台頭

2010年12月号

エリック・シュミット グーグル最高経営責任者
ジャレッド・コーエン グーグル・アイデアズ・ディレクター

インターネットの登場で、政府の力を弱め、市民の力を強めるバーチャル・コミュニティー(相互接続権力)が誕生し、人々を結びつけるコネクションテクノロジーが、世界各国の社会を変化させている。だが、この流れは、世界中の民衆と政府に困難な新課題を突きつけることになる。低開発社会ではよりオープンで透明性の高い社会を実現するように求める民衆の圧力が作りだされ、政治的緊張を高めるだろう。一方で政府も反政府勢力を封じ込める新たな技術ツールを手に入れることになり、より閉鎖的で抑圧的な社会が出現するかもしれない。民主国家政府はこの機会を見逃さずに連帯する義務があるし、変革をもたらす原動力である企業や非政府組織をプレイヤーとして尊重しなければならない。パワーを分かち合う新時代では、政府といえども、自分だけでは物事をすすめていくことはできないのだから。

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