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論文データベース(最新論文順)

貿易と投資で 国内雇用を支えよ

2011年11月号

アンドリュー・H・カード 前大統領首席補佐官 (タスクフォース共同議長)
トーマス・A・ダシュル 前米民主党院内総務 (タスクフォース共同議長)
エドワード・アルデン 米外交問題評議会シニアフェロー (タスクフォース共同ディレクター)
マシュー・J・スローター 米外交問題評議会ビジネス担当シニアフェロー (タスクフォース共同ディレクター)

諸外国に対米投資を奨励すべきだし、アメリカの投資家とメーカーにも国内投資を奨励しなければならない。投資政策を実施するためのパートナーシップを構築することが長期的にアメリカの雇用を増大させることになる。(T・ダシュル)

ゲームのルールに従わなければならない大企業のCEOたちは、企業競争力の強化に取り組むため、そして株主の投資配当のために国内雇用を犠牲にすることを強いられることもある。これは難しい課題だと思う。(A・カード)

アラブ世界では、中東和平プロセスへのヨーロッパの介入を求める声が高まっており、ヨーロッパも和平プロセスへの介入に前向きだ。問題はEU(欧州連合)にもメンバー国にもその役割を果たす力がないことだ。中東和平に関する限り、ヨーロッパは常にアメリカの脇役に甘んじるしかない。和平調停をめぐってアメリカと競い合うことへのこだわりを捨て、むしろ、ヨーロッパにふさわしい役割に特化すべきだろう。それは、パレスチナの国家建設を支援し、イスラエルとパレスチナの起業家を交流させる既存のプロジェクトを支援することに他ならない。EUは新興国に対して、パレスチナ国家支援の道筋を示すモデル国家の役割を果たすこともできる。また、和平交渉プロセスではなく国家建設支援に焦点を絞れば、ヨーロッパはアメリカとの間で緊張が生じるリスクを排除できるだけでなく、EU内部の駆け引きに煩わされることもなくなる。もっとも重要なのは、このアプローチによってEUがイスラエル、パレスチナとの関係の再定義を実現できることだ。

地球温暖化リスクと原発リスク
―― フクシマの教訓と新小型原子炉のポテンシャル

2011年11月号

アーネスト・モニズ マサチューセッツ工科大学物理学教授

温室効果ガスが大気に蓄積されていくにつれて、電力をクリーンかつ安価に、しかも信頼できる形で生産する方法を見いだすことが、ますます切実な課題になっている。原子力は魔法の杖ではないが、(二酸化炭素を排出せずに)大規模な電力を生産できることが立証されている以上、フクシマを経た現在もその解決策の一部である。フクシマの教訓を生かして安全性を高めるとともに、建設コストを引き下げ、放射性廃棄物問題を解決しない限り、原子力エネルギーの大きな進展は期待できない。だが、小型モジュール炉(SMR)が実用化されれば、安全性とコストの問題は大きく改善される。SMR、再生可能エネルギー、先端型バッテリー、二酸化炭素回収・貯蔵技術の何であれ、新たなクリーンエネルギー上のオプションを作り出す試みを止めれば、10年後にわれわれは大きな後悔をすることになる。

ウォール街デモが示す新しい民主主義の可能性
――市民の苦境を無視する政治への反乱

2011年11月号

マイケル・ハート/デューク大学政治学教授
アントニオ・ネグリ/前パリ第8大学政治学教授

ウォール街デモの政治的側面を理解するには、これを2011年に世界で起きた一連の抗議行動の流れのなかに位置づける必要がある。ウォール街での抗議行動は、5月15日以降、マドリードの中央広場で展開された抗議行動、そして、それに先立つカイロのタハリール広場での民衆デモに触発されている。デモの根底にあるのは、自分たちの民意が配慮されない現実に対する人々の不満と反発だ。問われているのは、代議制民主主義の危機に他ならない。「われわれの目の前にある民主主義が大多数の人々の考えと利益を代弁していく力を失っているのなら、現状の民主主義はもはや時代遅れなのではないか」。デモが問いかけ、求めているのは「真の民主主義」の再確立だ。

エジプトの政治と外交を変えるムスリム同胞団の正体
―― その圧倒的存在感の秘密

2011年11月号

エリック・トラガー ワシントン近東政策研究所フェロー

ムスリム同胞団ほど、忠実な支援者ネットワークをもつ組織はエジプト内に存在しない。同胞団はエジプトでもっとも規律ある政治運動であり、支持者を動員するという点では圧倒的な統率力をもっている。秋に選挙を控えるエジプトにとってこれは何を意味するだろうか。ムバラク体制の打倒を目指してタハリール広場に集結した若者たちは、すでにほとんど見分けがつかない12前後の政治集団へと分裂している。旧体制の政権与党だった国民民主党(NDP)もすでに非合法とされている。つまり、2011年秋の選挙で、同胞団が議席の多くを独占する可能性は非常に高く、しかも、同胞団は組織的支援を提供することを条件に、独立系の特定候補の出馬を促し、取り込みを図っている。いずれ権力を手にするであろう同胞団はアメリカの宿敵であるイランとの関係を改善し、アメリカ外交の大きな成果であるエジプト・イスラエル間の和平合意(キャンプデービット合意)を葬り去りたいと考えている。その対策を考えるには、先ず同胞団の本質を理解する必要がある。

グローバル化した非感染性疾患

2011年11月号

Toni Johnson  Senior Staff Writer

これまで、心臓・血管系疾患、ガン、呼吸器疾患、糖尿病などの非感染性疾患(NCDs=慢性疾患)は、おもに先進諸国に特有な疾患だと考えられてきた。だが、データによると、3600万の途上国の人々がガンや心臓系疾患のようなNCDsで死亡している。「経済発展が進むと、一般的に感染症による死亡が減少し、NCDsによる死亡が増えていく。富裕国では感染症はおおむね管理されているし、NCDsによって機能障害を抱え込む人の数も減少している。対照的に、低所得・中所得諸国はNCDsが作り出す非常に大きな重荷に直面している」。栄養の十分でない食事、運動不足、アルコールの過剰摂取、タバコの喫煙がNCDsを引き起こす主要な要因だと考えられている。WHOの報告はNCDsが10%増大すれば、GDP(国内総生産)が0.5%低下すると指摘しており、米医学研究所(USIM)は2010年に、途上国における慢性疾患の経済コスト(損失)はGDPの7%に達すると報告している。

ブロークン・コントラクト
―― 不平等と格差、そしてアメリカンドリームの終焉

2011年11月号

ジョージ・パッカー
ニューヨーカー誌スタッフライター

第二次世界大戦後のアメリカの経済的繁栄の恩恵は、人類の歴史のいかなる時期と比べても、より広範な社会層へと分配されていた。税制によって、個人が手にできる富には限界があり、多くの資金を次の世代に残せないように制度設計されていたために、極端な富裕階級が誕生することはあり得なかった。だが、1978年を境に流れは変化した。その後の30年にわたって、政治の主流派は、中産階級のための社会保障ツールを解体し、政府の権限を小さくしようと試みた。組織マネーと保守派はこの瞬間をとらえ、アメリカの富裕層への富の移転という流れを作り出した。実際、この30年にわたって、政府は一貫して富裕層を優遇する政策をとってきた。その結果、いまや、あらゆる問題が格差と不平等という病によって引き起こされ、民主主義のメカニズムまでもが抑え込まれつつある。

最終的にヨーロッパの主要銀行が破綻し、ギリシャがディフォルトに陥れば、リーマンブラザーズ破綻後のような状況が再現される。この場合、グローバル経済に大きな衝撃がはしり、堅調な成長を続けている新興国も無傷ではすまない。

21世紀におけるサイバーテクノロジーは、かつての銃弾や爆弾同様に危険な兵器である。しかも、サイバー犯罪のための市場が誕生しつつあり、すでに地下の組織犯罪の世界では、(サイバー犯罪者が乗っ取り、自由に操れる多数のゾンビコンピュータで構成されるネットワーク)ボットネットのレンタルサービス、(サーバーを機能不全に追い込む)DoS攻撃のサービス提供価格さえもが決まっている。・・・政府系のネットワークだけでなく、民間のインフラも脅かされている。すでにシティバンク、ソニーのプレイステーションネットワーク、RSA、グーグル、NSDAQが被害にあっている。さらに、外国のネットワーク侵入者はこの数年で国防産業のネットワークから膨大な(テラバイトレベルの)データを盗み出している。3月に起きた一度の侵入で、2万4000ものファイルが国防企業のネットワークから盗み出されている。これらのネットワーク侵入で盗み出されたデータには、非常にセンシティブな情報データも含まれていた。・・・

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