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論文データベース(最新論文順)

石油も石炭も原子力も必要としない世界
―― 超素材と「インテグレーティブ・デザイン」の力

2012年3月号

アモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所議長

2050年までには、石油も石炭も原子力も必要とせず、天然ガスの消費量も現在の3分の2程度で済む時代が実現する。・・・自動車、建物、そして電力生産の効率をいかに高めていくかがこの変化の鍵を握る。このエネルギーシフトに必要なテクノロジーはすでに存在する。第1に自動車を、炭素繊維を用いたボディに、そのエンジンを電気稼動型に切り替え、カーシェアリング、ライドシェアリングなど車をもっと生産的に利用するようにする。第2に、ビルや工場の設計と素材を変えるだけで、エネルギーの使用効率を現在よりも数倍高めることができる。第3に、電力供給システムをより多様で分散した再生可能エネルギーを中心としたものへと近代化していけば、電力供給をよりクリーンかつ安全で信頼できるものにできる。この概念は現実離れしているように思えるかもしれない。だが、困難な問題に対処するには、(既成概念を捨てて)境界を広げて問題をとらえ直す必要がある。つまり、エネルギー消費の多い交通・運輸、ビル、産業、電力生産部門を、個別にとらえるのではなく、一つとみなすのだ。・・・

Foreign Affairs Update
シリアを擁護するロシアの立場
――宗派間抗争と中東の地政学

2012年3月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー・モスクワセンター所長

ロシア政府の高官や政府に近い専門家の多くは、昨今における欧米の行動を非常にシニカルにみている。「ワシントンは、エジプトでの影響力を確保しようと古くからの同盟パートナーであるムバラクを見限り、石油契約を維持するためにリビアとの戦争に関与し、アメリカの第五艦隊の基地が存在するという理由でバーレーンへのサウジ介入に見て見ぬふりをした。そしていまや、イランからアラブ世界における唯一の同盟国をとりあげようと、シリアのアサド政権を倒そうとしている」。ロシアはこれらの戦争に直接的な利害は持っていない。だが少なくとも、危険で根拠を失いつつあるかにみえるアメリカの地域戦略の尻馬に乗りたいとは考えていない。・・・モスクワのシリアへの態度は、最近におけるリビアの運命、シリアの反体制派に対する不信、そして、アメリカの意図に対する懸念によって規定されている。

CFR Meeting
サウジはアラブの春とイラン問題をどうとらえているか

2012年3月号

グレゴリー・ゴース/ バーモント大学教授

国内の反体制派がイデオロギー、宗派、民族などの社会集団の垣根を越えて、体制を倒すという目的にむけて連帯を組織できたかどうか。これが、アラブの春によって中東で体制が倒された国とそうでない国を分けた重要なポイントだ。サウジはどの集団をどの皇太子が担当するかを決めることで、ビジネスコミュニティ、部族社会その他とのネットワークを巧みに築き、これらの集団を政治的に去勢してきた。これが、サウジが嵐を乗り切れた理由だろう。一方、中東での宗派対立が高まれば、アルカイダのような、スンニ派の過激勢力が勢いづくだけで、サウジのためにもならない。だが、すでに宗派対立の構図で中東政治が動きだし、アラブ対ペルシャの対立図式が描かれつつある。イランが明確に核兵器の開発に乗り出すのなら、サウジも核を獲得すべきだという立場がすでにリヤドでは主流になっている。・・・

The Clash of Ideas
ヒトラーのドイツ(1933年)

2012年3月号

ハミルトン・F・アームストロング フォーリン・アフェアーズ誌初代編集長

人々は忽然と姿を消した。この14年間、ワイマール共和国の政府要人、あるいはビジネスの指導者として世界が見聞きしてきた人々は忽然と表舞台から姿を消した。例外はあるが、この波は大きなうねりとともに社会を飲み込み、連日のように、一人ずつ、昔日の指導者や仲間たちがナチスという暗黒の海にさらわれていく。

あまりにワイマール共和国の面影がなくなってしまったために、ナチス党員には、ここにかつて共和国が存在したことさえ信じられないかもしれない。このうねりは、命令を下す叫び声や行進の足音で途切れた悪夢よりも、めまぐるしいペースで社会を飲み込んでいる。・・・

Foreign Affairs Update
フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか
―米市民の保護か日米関係への配慮か

2012年3月号

ジェフリー・A・ベーダー 前米国家情報会議東アジア担当シニアディレクター

われわれはフクシマ第1原発で何が起きているかの情報収集に奔走した。「日本政府は分かっていることのすべてをわれわれに伝えるつもりはなく、状況を取り繕っているのではないか」と考える者もいた。だが、大統領の科学技術担当顧問を務めるジョン・ホルドレンは、「原子炉内の状態を把握するための装置がどれも機能していない以上、大枠の情報しか入手できないのは無理もない」と日本側の対応に一定の理解を示した。・・・だが、フクシマの事態が容易ならざるものであることは明らかだった。・・・われわれは、日本からの避難を求める米大使館や軍関係者のアメリカ人家族(配偶者や子供)の意向を尊重したかった。しかし、われわれは日本の社会をパニックに陥れることは望んでいなかったし・・・将来の日米関係にダメージが出ないようにする必要もあった。・・・

先の読めない 北朝鮮の権力継承プロセス

2012年2月号

スコット・A・スナイダー  米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

北朝鮮は、アメリカと韓国に異なる姿勢をみせて、米韓を離反させたいと考えているようだ。・・・北朝鮮の国防委員会は、金正日の葬儀が終わった直後に、韓国との関係、特に李明博政権との対話路線について非常に高圧的で強硬な声明を出し、一方でアメリカや日本との個別交渉には前向きな姿勢をみせた。・・・6者協議の再開にはまだ時間がかかるだろう。・・・(平壌が)もっとも重視しているのは、権力継承をスムーズに進めることだ。だが、(日本で出版された著作で)金正恩を批判する金正男の発言が引用されている。常識的に考えて、北朝鮮のエリート層内で対立が起きていない限り、彼がそうした批判的なコメントを出せたはずはない。身辺に危険が及ぶ可能性がないと確信しない限り、金正恩を公然と批判する発言をするとは思えない。・・・・

ハイチの悲惨な現実

2011年2月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

2010年1月に大地震に見舞われたハイチの復旧・再建活動はうまく進展していない。地震で家をなくした人は、いまもそのままだし、ほとんどの政府施設やインフラも依然として再建されていない。しかも、2010年10月にはコレラが発生して猛威を振るいだし、いまも感染を広げ、犠牲者が増えている。クリスマス以降、犠牲者数は1日平均100人に達し、2011年1月1日までの犠牲者総数は3651人に達している。最大の問題は清潔な飲料水を提供するインフラが存在しないことだ。いまや水田に入ればコレラに感染するのではないかと恐れて、農家が稲を水田に植えることさえ嫌がるようになった。ハイチが必要としているのはインフラと統治だが、それが短期的に満たされる可能性は低い。

パキスタンに対する強硬路線を
―― 懐柔策ではもはや協調は引き出せない

2012年2月号

スティーブン・D・クラズナー  元国務省政策企画部長

パキスタンは対米協調を装いながらも、それが対インド戦略に抵触する領域についてはアメリカの利益を公然と無視し、それに反する行動をとってきた。それにも関わらず、ワシントンはパキスタンを切り捨てるのを躊躇している。「対テロ作戦へのパキスタンの協調を得られなくなれば、アメリカのアフガンでの作戦は失敗する」と決めつけ、「外からの支援がなければ、パキスタンは破綻国家と化し、その結果、イスラム過激派が国を制圧し、悪くすると、インドとの核戦争が起きかねない」と心配しているからだ。だが、別のアングルから問題をとらえるべきだ。アメリカが対パキスタン援助と関与によって得た利益よりも、パキスタンによる核拡散やイスラム過激派支援路線がもたらすダメージのほうがはるかに大きい。パキスタンが具体的に行動を起こさなければ、パキスタンを孤立させる政策をとると、はっきりとイスラマバードに伝えるべきだ。いまや、パキスタン強硬路線へと舵を切り、パキスタンを敵国として扱ったほうが、アメリカも、パキスタンを含む地域諸国もより大きな恩恵を手にできるようになるだろう。

2012年、 われわれは何を心配すべきか
――世界のマクロ政治・経済リスクを検証する

2012年2月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・グローバルマクロ分析部門ディレクター

・ ヨーロッパがソブリン債務危機を克服することはあり得ないが、ユーロゾーンの崩壊も、ヨーロッパ主要国が2012年に信用危機に陥っていくこともない。だが、ギリシャは非常に深刻な事態に直面する。
・ アメリカ(とドル)が安全地帯とみなされる限りは、ワシントンは経済を前に進めることができる。
・ 中東地域では歴史的なスンニ派とシーア派の対立が再燃しつつある。シリア、イラク、そしてイランもこの宗派対立にとらわれている。
・ インドは今後大きな危険にさらされることになる。インドのことを南アジアにおける欧米の前哨基地とみなすテロ集団の標的にされる恐れがある。
・ 急速に北朝鮮が崩壊へと向かった場合に何が起きるか。米軍と韓国軍は核施設の安全を確保するために北へ向かい、一方で、中国軍も自国への難民流入を阻止するために、鴨緑江を越えて現地に入り、秩序を確立しようとするかもしれない。・・・

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