1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

CFRアップデート
復興を越えた日本経済の再設計を

2011年5月号

ブライアン・P・クレイン 元米外交問題評議会国際関係フェロー
デビッド・S・アブラハム 米外交問題評議会国際関係フェロー

かなりの大きな余震が依然として続いているし、被災した数十万の人々が落ち着いた生活を取り戻すには数年の時間がかかるだろう。原発危機もまだ管理できるようになったとはいえない。だが、再建・復興も進められている。経済予測も、ゆっくりとだが地震前の数字へと戻りつつある。だが、必要なのは「復興・再建を越えた取り組み」であることを認識しなければならない。今回の危機を前に、政府は一刻も早く再建・復興を遂げ、かつてのような状態に被災地を戻すことを考えているかもしれない。だが、単に再建・復興を目指すのではなく、今回の危機を、日本経済を再設計する機会とすれば、今後の日本はより大きな繁栄を手にできるようになる。

エジプト、リビア、チュニジア、バーレーンなど、外国の原子力企業となんらかの合意を交わしていた中東・北アフリカ諸国政府は、政治的混乱のなかですでに倒れるか、政権の存続を脅かすような国内的混乱に直面している。現状では比較的安定しているヨルダンやサウジアラビアなどでもデモは起きているし、同様に、将来において、国内が極度の混乱に陥っていくリスクは存在する。・・・中東・北アフリカ情勢が混乱し、しかも、フクシマ原発危機が収束していないこともあって、ワシントンは、数億ドル規模の資金をもたらすとはいえ、北アフリカ・中東諸国の原子力施設建設契約にしだいに否定的になっている。実際、今後の紛争において、原子力施設が後方攪乱の対象にされれば、これまでの紛争の象徴とみなされてきた「炎上する油田の煙」が、「市民生活の拠点である都市、水や食糧の供給を汚染する放射性降下物」にとって代わられていくかもしれない。・・・

米ポピュリズムの歴史と今日的意味合い
―― ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交

2011年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード アメリカン・インタレスト誌コントリビューティング・エディター

ポピュリストの政治的エネルギーが高まる一方で、主流派メディア、外交エスタブリッシュメントに始まり、金融企業、一般企業の経営陣、そして政府にいたるまでの確立されたアメリカの組織への信頼が失墜しつつある。現在のポピュリスト運動の代名詞であるティーパーティー運動は、彼らが「憶測を間違え、腐敗している」とみなす各分野の専門家に対する反乱とみなせる。しかも、2010年3月にアメリカで実施された世論調査では、回答者の37%がティーパーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感を示していることを意味する。アメリカの政策決定者、そして外国政府の高官たちは、アメリカ政治における主要な勢力であるポピュリストを十分に理解せずして、もはや米外交に関する適切な判断を下すことができなくなっていることを認識する必要がある。

中東における2011年革命のルーツと行方
―― スルタン体制の終焉

2011年5月号

ジャック・A・ゴールドストーン ジョージメイソン大学教授

ムバラク、ベンアリのような中東におけるスルタン主義の独裁者は、個人の権力と権限を維持していくことにしか関心はない。従順な支持者を主要ポストに据え、制度の頭越しに政治を行う。水面下で富を蓄え、この資金を用いて指導者への忠誠を買う。いかなる形で国に資金が流れ込もうと、そのほとんどは、スルタンとその仲間内の懐へと流れ込む。軍を分裂させて、軍事エリートを自分の管理下に置く。だが、スルタン主義独裁制の下で、経済が成長し、教育制度が整備されてくると、状況に不満を抱き、「こうあるべきだ」と考える人が増え、警察による監視体制や権力乱用に対する反発も大きくなる。民衆を手なずけることを目的に体制側が実施してきた補助金その他のプログラムのコストが上昇すれば、大衆を政治から遠ざけておくのは難しくなり、軍の一部も状況への不信感を強める。これが中東革命の背景だった。これからどうなるか。スルタン体制の歴史をひもとけば、今後の展開が、考えられているよりも明るくも暗くもないことがわかるだろう。

フクシマ原発に壊滅的ダメージを与えた地震とツナミは、世界における原子力エネルギーへの関心の高まりに一気に冷水を浴びせかけた。相対的に生産コストは高いが、二酸化炭素をほとんど排出しない点が評価されてきた原子力による電力生産も、フクシマでの原発危機をきっかけに、安全基準や危機管理対策への再検証が進められ、原発推進計画そのものが見直されつつある。ドイツは、7基の(旧式)原子炉を閉鎖しただけでなく、2020年まで他の原子炉の使用期間を延長する計画のすべてを凍結した。イタリアも原子力開発のモラトリアムを延長し、他のEU諸国も原子力発電計画の見直しを行っている。専門家のなかには、「原子力が危険なテクノロジーであることが再認識された以上、いくらその安全性をエネルギー政策の会議で説いたところで、人々は納得しない」と明確に指摘する者もいる。たしかに、よりすぐれた安全機能や冷却装置を備えている新型の原子炉なら、大気への放射能拡散を引き起こした問題の一部を回避できるかもしれないが、どの程度の耐震機能を持っているかという点では疑問が残る。しかも、原子力は放射能の拡散リスクに加えて、核廃棄物、核兵器拡散のリスクも伴う。だが、地球温暖化に配慮する必要もあるし、新興国の電力需要の増大も考慮しなければならない。今後当面は、ジョン・ダッチが指摘するように化石燃料から再生可能エネルギーへのつなぎエネルギーとして、天然ガス、とくに液化天然ガスが注目されるようになるのかもしれない。

ワールド・エコノミック・アップデート
不透明感漂う日米欧経済

2011年5月号

●スピーカー
ピーター・R・フィッシャー
ブラックロック債券部門シニア・マネージング・ディレクター
デスモンド・ラックマン
アメリカンエンタープライズ研究所公共政策研究フェロー
ピーター・R・オルザック
外交問題評議会非常勤シニア・フェロー
●司会
セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会・地政経済学研究センター所長

日米欧は非常に対応の困難な長期的財政問題を抱えている。政治状況ゆえにさらに厳しい状況になるまで対応策を決められずにいるのは、基本的にすべての先進諸国に共通する現象だ。(P・オルザック)

欧州で危機に直面している国々はいずれユーロから離脱し、債務不履行を宣言せざるを得なくなる。これには疑問を差し挟む余地がない。そうなるかどうかではなく、問題はいつそうなるかだ。緊急融資を利用して問題を先送りできるかもしれないが、問題を解決することにはならない。(D・ラックマン)

日本経済が脆弱であることをすでに認識している中央銀行が量的緩和を実施するのは適切な処置だが、経済再建は期待できない。経済成長を軌道にのせることにはならない。(P・フィッシャー)

CFRインタビュー
アフター・フクシマ
――フクシマ原発事故の教訓

2011年5月号

ジョン・エイハーン 前米原子力委員会委員長

フクシマ原発危機がいまも収束しないために、広く原発施設に対する不安と懸念が高まりつつある。実際、フクシマ原発がどのような状態にあるかは、いまもはっきりとしない。米原子力委員会のジョン・エイハーン前委員長によれば、フクシマ原発の「使用済み核燃料がどのような状態にあるかは依然として確認されていないし、ましてや、原子炉内の核燃料がどのような状況にあるかはわかっていない」。当然、「危機を管理できる状態にもっていくには、まだかなり長い時間がかかる」。チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原発事故以降、それぞれの事故を阻止するためにはどのような措置をとっておくべきだったかについて結論を出すには、数年の時間を要した。フクシマの原発事故についても、今後の対策に向けた結論が出るのはかなり先の話になる。だが、あらゆる設計上の規制を満たしているかどうかを検証する必要があるし、規制をいかに適切に進化させ維持していくかを考えることが絶対的に必要だ。

中国の台頭はたしかに危険をはらんでいるが、それが伴うパワーバランスの変化によって覇権競争が起きて米中の重要な国益が衝突することはおそらくない。核兵器、太平洋による隔絶、そして現在比較的良好な政治関係という三つの要因のおかげで、現在のアメリカと中国はともに高度な安全保障を手にしており、あえて関係を緊張させるような路線をとることはないだろう。米中間の緊張の高まりを抑えつつ、地域バランスを維持するには、事態をやや複雑にするとはいえ、ワシントンはアジアでもっとも重要なパートナーである日本と韓国に信頼できる拡大抑止を提供し、一方で、台湾防衛のような最重要とは言えないコミットメントについては従来の政策を見直し、アメリカは台湾から手を引くことも考えるべきだろう。何よりも、アメリカは中国の影響力と軍備増強によって生じるリスクを過大視し、過剰反応しないようにする必要がある。

米連邦準備制度理事会のベン・バーナンキ議長は、(米議会が債務上限の引き上げに応じず)アメリカ政府がディフォルトを宣言せざるを得なくなれば、「景気回復の道は断たれ、再度、金融危機を誘発する恐れがある」とコメントしている。仮にディフォルトに陥らなくても、議会が債務上限の引き上げ承認に手間取れば、アメリカ経済、そして世界経済に大きなダメージが出る。・・・・JPモルガン・チェースのジャミー・ダイモンCEOは、債務上限問題を軽くみることに警告を発し、上限引き上げに向けた行動を明確にとらなければ、近い将来に本当にディフォルトに陥る危険があると指摘し、同氏は、「今後に備えて、きわめて慎重な措置をとる」と表明している。米政府がディフォルトを宣言せざるを得なくなるリスクはどの程度あるのか、ドルは準備通貨の地位を維持できるのか。

Page Top