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論文データベース(最新論文順)

Foreign Affairs Update
国際政治と謝罪のリスク

2014年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

日本を批判する人々は、公式に何度も謝罪し、かなりの規模の賠償を行い、第二次世界大戦の残虐行為に関する実直な歴史教科書を出版したドイツと比べて、日本のやり方は十分ではないと考えている。だが、謝罪は和解の前提ではないし、日本だけが例外的な行動をとっているわけではない。ドイツではなく、日本のスタイルが世界の規範なのだ。多くの国は、過去の残虐行為を取り繕い、自国の戦没者を弔ってきた。そして東京だけでなく、ワシントン、ロンドン、テヘラン、テルアビブを含む、世界各国の保守派は、謝罪を求める声に強い反発を示してきた。だが謝罪が必要でもなければ、関係改善の助けにならないことが多いとしても、国際的な和解を実現するには、相手国に大きなダメージを与え、苦しみを強いたことを認めなければならない。・・・

ロウハニはイランのゴルバチョフになれるか

2014年1月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学歴史学教授

当時のミハイル・ゴルバチョフは、ソビエトで過激な改革を実施しているとも、していないとも思わせる曖昧な発言をしていたために、専門家もソビエトで何が起きているかを理解できなかった。実際には、ゴルバチョフは「共産党独裁体制を終わらせる」という意図はもっていなかった。むしろ共産党体制の終焉への流れは、彼が、市民団体の組織化を認め、検閲を緩め、自由選挙を導入したことによって作り出された。つまり、イランの穏健派指導者ロウハニが抜本的な改革ではなく、政治や社会に関わってくる名ばかりの改革を表明したときこそ、われわれは注目する必要がある。そうした改革は、改革のアジェンダが想定する以上の社会・経済的流れ、政治的変化を呼び込み、ロウハニ自身管理できないような流れを作り出す可能性がある。

LIBORスキャンダルの余波 ――LIBORは消失するのか

2014年1月号

クリストファー・アレッシ CFRオンラインライター/エディター 、モハンマド・アリ・サージー CFRオンラインライター/エディター

LIBORとは、ロンドン銀行間市場において銀行が無担保資金を相互に提供する際に利用されるベンチマーク金利のことで、これまでは15の異なる満期と10の通貨で算出されてきた。世界の多くの銀行が、個人および法人向けのローン金利を設定する基本金利としてLIBORを利用してきたことからも明らかなように、短期金利のもっとも重要なグローバル・ベンチマークとみなされてきた。問題は、この金利が、トレーダーの利益、銀行の利益のために不正操作されていたことだ。すでに、バークレイズ、UBS、ラボバンク、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)など複数の銀行が、自行の利益のために金利を操作する大規模な共同謀議を行っていたことが明らかになっている。当局によるペナルティだけでなく、顧客と投資家が金融機関を相手取って起こしている民事訴訟が現在争われており、今後、銀行側は膨大なコスト負担を強いられると考えられている。これによって銀行の体力が弱まるだけでなく、LIBORへの信頼そのものが失われつつある。アメリカではLIBORは廃止すべきだという考えが主流になっている。・・・・

CFR Briefing
ミャンマーを脅かす宗教紛争

2014年1月号

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会シニアフェロー(東南アジア担当)

ミャンマーの社会不安と社会暴力は、2013年の秋から冬にかけて劇的に悪化した。10月半ばに原因不明の爆破事件がヤンゴン、マンダレー、ミャンマー北東部など各地で相次いだ。11月に公表されたミャンマー警察の報告書によれば、ラカイン州出身者とみられる仏教徒グループが、ミャンマー各地のイスラム寺院(モスク)の爆破を計画していた。爆破事件やモスク爆破計画は、この国の深刻な社会不安を映し出している。民族・宗派対立を別にしても、改革が治安や生活レベルの改善に結びついていないという失望感が社会に蔓延している。こうした社会不安、社会不満を背景に深刻化する民族・宗教を軸とする対立は、改革を中断へと追い込み、開発に不可欠な投資を抑え込み、国境線を越えて周辺国へと飛び火し、地域的な緊張を高めつつある。・・・・

Review Essay
中国との出会いとその後

2014年1月号

ジョン・ポムフレット ワシントン・ポスト紙記者

西洋人は中国を世界から切り離された存在としてロマンティックにとらえがちだ。新しい事実が出てきても、研究者たちは、自分の思い込みにしがみつこうとする。約4000万人が死亡したとされる大躍進、そして約100万人が死亡し、数百万人の人生を狂わせた文化大革命という現実を前にしても、立場を変えない人物もいる。なぜ多くの識者たちは、中国とその革命にかくも大きな期待を寄せたのか。なぜ今も同じように考えているのか。なぜ自分が間違っていたとわかっても、まったく信じられないといった怒りにも似た感情を示すのか。そして、いまやわれわれの目の前にあるのは「気まぐれな愛人」のように、外の世界がどう思おうと気にしないふりをする中国だ。「本当の中国」を探す旅はまだ終わりそうにない。

軋みだした中国の統治システム
―― 変化した社会に適応できる政治構造を

2014年1月号

デビッド・M・ランプトン ジョンズ・ホプキンス大学 ポールニッツスクール教授(中国研究)

中国は力強い経済、パワフルな軍隊をもっているかもしれないが、その統治システムは非常に脆い。いまや中国を統治するのは、毛沢東や鄧小平の時代と比べてはるかに難しくなっている。中国の指導者の権力は年を追うごとに弱くなり、中国社会は、経済や官僚組織同様に分裂し、多元化している。しかも、市民社会と民間が大きな力をもちつつある。問題は、政策決定に世論の立場を取り入れつつも、政治構造をそのままに放置していることだ。法の支配への強いコミットメントを示すだけでなく、社会紛争の解決に向けて、司法や立法などの政治制度への信頼性をもっと高める必要がある。優れた政府規制を整備し、より踏み込んだ情報公開を行い、もっと説明責任を果たす必要がある。そうしない限り、今後、中国は過去40数年に経験した以上の大きな政治的混乱に直面することになる。

先進国の金融引き締めと新興市場の通貨危機リスク

2014年1月号

モハンマド・アリ・セルギー  CFRオンライン・ライター/エディター

ブラジル、トルコ、インドネシアといった新興国は、この10年で国際投資家のお気に入りの投資先になった。急成長する国内産業に外資が舞い降り、世界経済の成長を刺激することにも貢献してきた。しかし、投資家は経済になんらかの問題の兆候を見いだせば、資金を引き揚げて、出口へと殺到する。このダイナミクスが、過去数十年で多くの地域で通貨危機を引き起こしてきたし、現状でも、インドネシア、南アフリカ、ブラジル、インド、トルコという「脆弱5カ国」を同様の危機に陥れる危険がある。実際、2013年5月に、ベン・バーナンキが量的緩和の縮小を示唆しただけで、新興市場通貨は下落した。主要先進国経済の量的緩和政策が見直され始めれば、リセッション時には成長のエンジンとみなされてきたダイナミックな新興市場経済の脆弱性がさらけ出される恐れがある。

CFR Briefing
教育ローンは将来への投資か、
未来を抑え込む債務か

2013年12月号

スティーブン・J・マルコビッチ contrubuting editor@cfr.org

アメリカの一流私立大学の場合、授業料と寮費で年間600万円程度の資金が必要になる。家計所得よりも大学学費の方がはるかに高いペースで上昇しているため、いまや「高等教育バブル」が起きるのではないかとさえ懸念されている。当然、教育ローンに頼る人は増えている。だが、その結果、大学卒業時に大きな債務を抱え込むことになる。2011年でみると、米大学卒業生の3分の2が教育ローンを抱えており、平均すると一人あたり2万6600ドルの債務を抱えている。これが将来に向けた良い投資なのか、それとも、未来を拘束する債務なのかをめぐって、論争が起きている。教育ローンは人的資源の育成と将来的な経済投資になり、その恩恵はコストを上回るとする考えがある一方で、その後の経済生活を大きく制約するという批判もあり、社会問題化している。

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

CFR Interview
情報活動と情報収集規制改革

2014年12月号

マシュー・ワックスマン
米外交問題評議会シニアフェロー
(法律と外交政策担当)

12月18日、ホワイトハウスは、米国家安全保障局(NSA)による情報収集活動のあり方を見直すために大統領が設置した外部パネル(専門家グループ)がまとめた改革提言を公表した。パネルは、全般的に、一部の監視活動の「コストと恩恵のバランスがとれていない」と表現している。ここで言う「コスト」とは、プライバシーの侵害だけでなく、アメリカの情報技術ツールへの消費者の信頼が損なわれること、そして外交的悪影響が出ていることなどだ。・・・一方で多くの人が、「不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障される」と定めた米憲法修正第4条に関わる憲法ドクトリンは、デジタルコミュニケーション、クラウドコンピューティングに象徴される近代世界では、もはや合理性はないと考えている。・・・(改革に加えて)独立した監督機関の設置に向けた法制化が行われれば、市民の情報活動への信任を高められるかもしれない。・・・・(聞き手はロバート・マクマホン、Editor@cfr.org )

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