幻と化したアラブの春 ―― 過去へと回帰した抑圧体制
2014年5月号

2013年7月のモルシ大統領の解任劇以降、ムスリム同胞団のメンバーを中心に約1万9000人が投獄され、抗議デモの混乱のなかで民間人2500人以上が死亡し、1万7000人が負傷している。現在のエジプトは、その最悪の暗黒時代と同じ類の暴力のなかにある。現在の弾圧は、1952年から1955年にかけてリベラル派、極左勢力、同胞団メンバー2万人が投獄されたナセル時代を想起させる。だが、これまでと違うのは、政争を超えた存在として敬意を集めていた裁判所、軍というエジプトの政府機関が、いまや積極的に弾圧に加担しているようにみえることだ。この変化は、エジプトの裁判所と軍への国際的評価を傷つけるだけでなく、国内でもこれら機関への信頼を損なうことになる。つまり、今後、大規模な蜂起が起こるとすれば、それは、国のあらゆる機関に対する全面的な反乱になりかねない。 ・・・