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論文データベース(最新論文順)

アジア重視戦略が高めた軍事衝突リスク

2013年4月号

マイケル・クレア
ハンプシャーカレッジ教授

アメリカがイラクとアフガニスタンの問題に気を取られている間に、中国は東シナ海と南シナ海における「議論の余地のない」領有権を思うままに主張するようになり、自国の立場を力で裏付ける軍事戦略をとるようになった。だが、2011年、オバマ大統領は「アジア太平洋地域は、グローバルな経済ダイナミズムの新しい中枢になった」と表明し、これらの海域での米軍事力の支配的優位の再確立に乗り出した。アメリカは領有権論争をめぐって中立を装っているが、現実には、中国と敵対する諸国に肩入れしている。このため、中国人の多くは、「ワシントンは中国の台頭を牽制しようと、領有権論争のある海域でより積極的な行動をとるように日本やフィリピンに働きかけている」とみている。こうした認識が、ワシントンに対する中国の不信と反発を強め、今後、海洋で偶発事故が起きる危険を高めている。アジア重視戦略は、これらの海域での小競り合いが起きるリスク、当事国が挑発行動をとるリスクを高め、南シナ海、東シナ海で戦争が起きる危険を高めてしまっている。

H7N9型インフルエンザの謎とリスク

2013年04月

ヤンゾン・ファン
米外交問題評議会シニア・フェロー
(公衆衛生担当)

現状ではH7N9の人から人への感染のリスクはそれほど高くないかもしれないが、すでにかなりの変異を遂げ、動物から人への感染が起きている。H7N9の感染例3件のうち2件が、2万頭を超える豚の死骸が川から引き上げられた上海で報告されていることに注目する必要がある。豚がインフルエンザを人へと感染させる混合容器の役目を果たすことを考えれば、死亡した豚とH7N9という新型ウイルスの登場を関連づけてとらえてもおかしくはない。すでに死亡した27歳の上海の男性は、豚の販売ブローカーだったと報道されている。さらに、犠牲者の一人には二人の息子がおり、息子二人も急性症状を発症し、すでに一人は死亡している。家族のうちの3人が急性症状を発症するという事態、つまり、人から人への感染が生じている可能性を前に、WHO(世界保健機関)の中国代表は「憂慮すべき事態だ」とコメントしている。

スタンリー・マクリスタルが語る
イラク、アフガニスタンの教訓

2013年4月号

スタンリー・マクリスタル
前アフガン駐留軍・国際治安支援部隊司令官

イラクという戦場は複雑だった。テロだけでなく、社会問題にもわれわれは直面していた。武装勢力がいただけでなく、宗派間抗争も起きていた。ネットワーク化された敵に対して、われわれもネットワーク化する必要があった。・・・「敵はどこにいるか」、「誰が敵なのか」、「敵は何をし、何をしようとしているか」を考えた挙げ句、結局「なぜ彼らはわれわれの敵なのか」を考えた。・・・アメリカにとっては、ドローン攻撃はリスクも痛みも少ないかもしれないが、攻撃される側にとっては、戦争であることに変わりはない。アメリカ人はこの点を理解する必要がある。現状で、そうした軍事技術をわれわれが無節操に用いているとは思わないが、そうなる危険は常に存在する。・・・武装勢力との戦争の重要なポイントは、たんに敵勢力を殺害することではなく、現地の民衆の面倒をみることだ。現地の民衆を守る積極的な理由があるし、そうしないのは間違っている」。(S・マクリスタル)

北朝鮮の強硬路線と軍事衝突のリスク

2013年04月

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

「北朝鮮が強硬路線を続けているのは、外からの脅威に屈すれば、国内的に面目を失うことを懸念しているからでもある。金正恩が確固たる国内基盤を築いていないために、ここで圧力に屈することは選択肢にならない。国内基盤を確立させない限り、平壌が現在のエスカレーション路線を緩和させることはないだろう。・・・われわれは、程度の違いこそあれ、同じパターンの北朝鮮の行動を何度も目にしているが、金正恩は、彼の父親よりもさらに大きなリスクを冒す戦術をとるつもりかもしれない。・・・ 平壌は、アメリカが北朝鮮のことを核保有国として認めることを望んでいる。韓国に対しては、朴槿恵政権が、前政権よりも平壌との安定した関係を望んでいるかどうかを、見極めたいと考えていると思う。・・・現状における大きな危険は、判断ミス、状況の誤認から衝突が起きてしまうことだ。・・・判断ミスによって深刻な事態に陥る危険がある。もう一つは、確たるエビデンスは存在しないが、国内の不安定化を前に北朝鮮が無茶な行動をとり始め、これが南北間の衝突につながっていく危険もある」

Foreign Affairs Update
ダボス会議と三つのグローバルリスク
―― 国はいかに生き残り、そして繁栄できるか

2013年3月号

W・リー・ハウエル 世界経済フォーラム・マネージング・ディレクター グローバルリスク2013報告書編集者

世界経済フォーラムの調査によれば、「極端な所得格差」と「長期間にわたる財政不均衡」の二つが、現状で専門家にもっとも注目されているグローバルリスクだ。これらは、大規模な政府債務の存在と悲観的な世界経済見通しへの人々の不安を映し出している。さらに、この1年で多くの国が異常気象を経験した結果、世界の指導者の多くが「温室効果ガス排出量の増大」を3番目のグローバルリスクとして認識している。そして、所得格差、財政不均衡、地球温暖化というリスクへの対応の鍵を握るのが、国や指導者のダイナミズムと柔軟性だ。指導者たちは、変化する環境に素早く適応するために必要な、大胆に発想して、行動する力をもっているだろうか。柔軟に問題に対応する国内環境を整備できているだろうか。われわれ(世界経済フォーラム)は、政治家の統治能力、健全な企業と政府の関係、改革の効率性、政治家に対する市民の信頼、政府による効率的な支出などが、国としての柔軟性を左右するとみている。

社会保障改革を考える
―― アメリカの制度を他の先進国と比較すると

2015年3月号

キンバリー・J・モーガン ジョージ・ワシントン大学准教授

アメリカの社会保障制度は、政府がすべての市民を対象とするのではなく、企業が従業員に提供する社会サービスに大きく依存している。このために、一部の所得レベルの高い人々は全般的に手厚い社会保障の対象とされるが、所得レベルが低いか、失業している人々はそうではない。他の豊かな民主主義国と比べて、アメリカの社会保障政策による貧困と格差緩和への貢献度が低いのは、このためだ。他の多くの先進国では、官民の社会保障プログラム、減税策を組み合わせて、社会保障がより平等かつ効率的に提供されている。アメリカとの最大の違いは、他の先進国のシステムは平等と効率を目的にし、広く市民が社会保障にアクセスできるように設計されていることだ。当然、アメリカの社会保障制度の改革に向けて、こうした他の先進国のモデルを真剣に検証する必要がある。

Foreign Affairs Update
ユーロを救い、欧州連合を分割せよ

2013年3月号

ダニエル・ケレメン
ラトガース大学教授

ユーロ圏からのギリシャ離脱というシナリオが、いまやEUからのイギリス脱退というシナリオに置き換えられている。イギリスではEUに対する不信がかつてなく高まっている。EUが(ユーロを救うために)経済・政治同盟の統合を進化させるための措置を導入していくにつれて、ユーロゾーンの中核国と、統合の深化に歩調を合わせるのを嫌がっているユーロに参加していない国の間の亀裂は必然的に大きくなっていく。ヨーロッパはユーロを救うために、欧州連合を分割すべきなのか。・・・

Foreign Affairs Update
イスラエルによるシリア空爆の本当の意味合い

2013年3月号

イタマル・ラビノビッチ
元駐米イスラエル大使

イスラエルは、アサド政権が倒れた後に、イスラム主義政権、それもジハード主義政権がシリアに誕生することを警戒している。政権崩壊によってシリアが混沌とした状況に陥れば、ジハーディストがゴラン高原からイスラエルに対してテロ攻撃を試みるかもしれない。あるいは、イスラム主義政権がシリアの化学兵器や生物兵器をヒズボラに与えるか、そうした兵器を過激派勢力が混乱に乗じて手に入れる危険もある。さらには追い込まれたアサド政権が、道連れとばかりに、イスラエルに向かってミサイルを発射するリスクもある。より全般的には、イスラエルは、アサド政権とその同盟勢力がシリア内戦をイスラエルとの戦争、アラブ・イスラエル紛争へと変貌させることを警戒している。エルサレムは公的な声明を通じて、どのような事態になれば介入に踏み切るか、イスラエルにとって看過できないレッドラインを明確に示してきた。最先端の兵器システムがヒズボラの手に落ちることもレッドラインの一つだった。今回のイスラエルによるシリア空爆は、この文脈で理解されるべきだ。問題は、空爆によって抑止力が形成されたかどうかが、はっきりしないことだ。

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