強権者エルドアンの不安と権力
―― トルコはどこへ向かうのか
2019年12月号
夕暮れ迫る帰り道に船の甲板でコーランを暗唱した少年も、いまやトルコの強権者だ。信奉するイデオロギーを数年ごとに見直してきたエルドアンは、すでにチェック&バランスシステムの多くを解体し、権力を自身に集中させている。かつてはあまりに高圧的と感じ、批判してきた近代トルコの父「アタチュルク」と驚くほど似たスタイルをとる政治家になった。これは、主に権力をアウトソースしたことの結果だった。与党内に官僚を束ねる実務家を欠いていたために、エルドアンは司法、警察、軍という国の機能をギュレン派にアウトソースし、その結果、管理権を喪失した。権力の分散化を前に「自分の権力はいつ覆されておかしくない」と考えるようになり、中東での孤立と国内での反政府行動そしてクーデター未遂事件がこれに追い打ちをかけた。・・・