1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

経済成長で債務を克服できる?
―― AI経済ブームの幻想

2026年10月号

ケネス・S・ロゴフ ハーバード大学教授

アメリカの債務拡大の軌道は持続不可能であり、債務危機に直面すれば、世界経済に衝撃が走り、ドルの地位も脅かされる。だが、一部には、目覚ましいAIの技術的進化がもたらす生産性の向上と経済成長によって、アメリカの債務問題はいずれ問題ではなくなるとみる人もいる。だが、多くのエコノミストは、AIがもたらす今後10年における(生産性向上による)トレンドチェンジは1―2%程度とみているし、しかも、人口の高齢化、グローバル化の後退に派生するコスト負担によって恩恵は部分的に相殺されるだろう。仮にAIが新たに大きな歳入をもたらしても、国防費の増額、環境災害対策など、歳出を求める圧力は大きい。実際、歳入をはるかに上回る歳出を続けることを求めてきた政治圧力を軽減することは、AIにもできないだろう。

ホルムズ危機の新地政学
―― 石油ショックと米中の影響力

2026年10月号

ジェイソン・ボードフ コロンビア大学 国際公共政策大学院教授
メーガン・L・オサリバン ハーバード大学 ケネディ・スクール教授

ホルムズ危機の本当の危険は、その衝撃が穏やかなものだったために、主要国がリスクを侮り、自国の対応能力を過信することかもしれない。実際、ホルムズ危機の第2幕は、第1幕よりもはるかに大きな被害をもたらす危険がある。在庫や備蓄が少なくなる一方で、需要が回復しているからだ。非ホルムズの代替ルートの脆弱性は高まり、石油インフラが攻撃されている。つまり、バッファーがいつまで持つか分からない。世界が将来のショックに備えるには、クリーンエネルギーや原子力への投資を含めて、レジリエンス強化のための対策が急務だろう。石油ショックへの米国と中国の影響力が高まる一方、途上国が大きな危険にさらされる構造が生まれていることも認識しなければならない。

イラン戦争の教訓
―― トランプの失策とパウエル・ドクトリン

2026年9月号

コリ・シェイク 米議会図書館 ジョン・W・クルーゲ・センター キッシンジャー・チェアー

もちろん、戦争は複雑であり、状況に左右される。トランプ大統領が(軍事介入の原則を定めた)「パウエル・ドクトリン」に従っていれば、イラン戦争は、はるかにうまく進んだと断言することはできない。それでも、ドクトリンの基準を無視したことが、作戦をさまざまな形で失敗へと追い込んだことは疑いようがない。トランプは新たな戦争のあり方を見いだしたのではなく、敗北する新たな方法を見いだしたに過ぎない。パウエル・ドクトリンの核心は、文民指導者が単に「何かをする」ためだけに軍事力へ訴えることを抑制することにあった。

米国に台湾を守る気はあるのか
―― グレーゾーン戦略の脅威

2026年9月号

ボニー・リン 戦略国際問題研究所(CSIS) ディレクター

全面侵攻シナリオだけでなく、中国による軍事演習、海上封鎖、経済制裁、情報作戦などのグレーゾーン戦略が台湾に深刻な脅威を作り出している。こうした「直ちに対抗策に訴えるインセンティブが大きくない」グレーゾーン戦略を放置すれば、北京は大きな代償を支払うことなく、自国に有利な状況へ現状を段階的に変化させていくことになりかねない。この場合、中国は、台湾をめぐって、戦わずして勝利を収める可能性が出てくる。だが、ワシントンがエスカレーションのリスクを引き受ける政治的意思をもっているかどうか、はっきりしない。いまや、台湾を守るために、ワシントンが事態をエスカレートさせ、そのコストを負担する用意があるのかが現実に問われている。

米国と同盟諸国の軍備協調を
―― 国境を越えた防衛イノベーションを

2026年9月号

コリン・H・カール スタンフォード大学 フリーマン・スポグリ国際問題研究所所長
トビアス・ヴェストナー ジュネーブ安全保障政策センター 調査・政策提言部門長

中ロ・北朝鮮・イランという敵対勢力は、防衛産業や技術だけでなく、戦力をめぐる連携を深めている。一方、アメリカと同盟諸国は、防衛力強化を主として国内プロジェクトとして扱っている。だが、現実には、アメリカと同盟国が防衛技術に関して協調することの重要性は高まっている。イラン戦争からも明らかなように、ドローン、AI、自律システム、弾薬などの開発領域で、単独で十分な規模とスピードを得るのは難しいからだ。現在の脅威に対処するには、国内での防衛力強化だけでなく、同盟諸国間の企業、大学、投資家、政府からなるネットワークを利用して、資本、技術的ノウハウ、生産能力、サプライチェーンを集団的に結集していく必要がある。

イラン軍と抵抗の枢軸
―― ネットワークのレジリエンス

2026年9月号

ピーター・ソールズベリー コロンビア大学 国際公共政策大学院 客員准教授
ヴォルフ=クリスティアン・パエス 国際戦略研究所 アソシエートフェロー
ヘンリー・トンプソン 元国連イエメン専門家パネルメンバー

イスラエルによるハマス攻撃やヒズボラに対する破壊作戦、シリアのアサド政権の崩壊、さらにはアメリカとイスラエルによる2月以降のイランに対する大規模な空爆を経ても、イランを中核とする抵抗の枢軸(ヒズボラ、フーシ派、イラクのシーア派武装勢力)は、追い込まれながら、結局は再生し、復活している。指導者が殺害され、兵器の製造拠点や倉庫が爆撃され、補給路が遮断されても、これらの勢力は結局、再生する。分散化された指導体制、供給網・訓練網・技術共有によって再編と適応を続けているからだ。イランおよび「抵抗の枢軸」を構成する勢力を完全に打倒するのはおそらく不可能だが、彼らが突きつける脅威を抑えることは依然として可能だろう。

核抑止力の崩壊?
―― 問われる核の存在理由

2026年9月号

ローズ・ゴットモーラー 元米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)

もはや核戦力では、安価なドローンによる敵の集中攻撃を抑止できない。この事実を、核保有国と核兵器の開発を望んでいるかもしれない非核保有国は、改めて認識する必要がある。実際、イスラエルの核抑止力は、イランの通常兵器による攻撃に対する歯止めにはならなかった。ウクライナに攻撃された核大国ロシアも同様だった。核保有を目指す国々は、代わりに通常兵器で防衛力を強化し、通常兵器やハイブリッド攻撃に対するレジリエンスを高める方法を模索すべきだろう。核兵器は、安全保障を確実にするどころか、新しく不安を抱かせるような危険を招き入れるだけかもしれない。

民主主義の修復、それとも革命
―― 市民議会で民主主義を救えるか

2026年9月号

シェリ・バーマン コロンビア大学 バーナード・カレッジ教授

イエール大学の研究者、エレーヌ・ランデモアは、もはや選挙では「政治腐敗に手を染めやすい職業政治家を生み出すだけで、民主主義は機能しない」と断じ、むしろ、「市民議会における直接統治」の可能性に期待を託している。だが、ランデモアの著作を取り上げた、評者のシェリ・バーマンは、選挙や政党を廃止して代議制民主主義を置き換える立場には懐疑的な立場をとり、必要なのは、そのような革命ではなく、むしろ、選挙制度改革・市民教育・グラスルーツ連帯の再構築を含む代議制民主主義の「現実的な修復だ」という立場を示している。

欧州とロシアの軍事パワー
―― 変貌した脅威に備えよ

2026年9月号

マイケル・コーフマン カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

ロシア軍は戦争で大きなダメージを受け、多くの犠牲者を出しているが、それでも、戦前の兵員規模を維持し、ドローンや精密攻撃の能力を高め、防衛産業の生産能力を強化している。北大西洋条約機構(NATO)諸国は、ロシアのお粗末な戦績や、目に見える弱点を理由に油断してはならない。偵察と精密攻撃の両方をリアルタイムで実行できる安価な無人システムや自律型システムが支配する戦場で、どのような作戦行動をとればいいのかをNATOはまったく分かっていない。ヨーロッパはロシア軍の弱点を過小評価せず、ウクライナ戦争の教訓、特に大量ドローンと精密攻撃への対応を踏まえて、将来の抑止と防衛体制を早急に見直す必要がある。

これまでとは異なる反米感情
―― 信頼喪失の奥深さ

web exclusive

リチャード・ワイク ピュー・リサーチ・センター ディレクター

ピュー・リサーチ・センターが実施した最新の世論調査によると、調査対象とされた36カ国の多くで、アメリカへの評価は、われわれが2002年に調査を開始して以降、もっとも低い水準へと落ち込んでいる。いまや、アメリカの移民・貿易・軍事政策は大きな反発の対象にされ、アメリカの民主主義や個人の自由へのコミットメントそのものに対する信頼も低下している。これまでとは違って、アメリカが自由や国際協調を重視する国だというイメージそのものが揺らいでいる。世界秩序の旗手として世界中の多くの人々が抱く期待に応えられていないのだ。この信頼喪失は簡単には挽回できないかもしれない。

Page Top