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経済・金融に関する論文

危機とグローバル化の歴史
―― グローバル化が復活する理由

2021年5月号

ハロルド・ジェームズ プリンストン大学教授(歴史学)

「大恐慌後、世界はブロック経済化し、ナショナリズム、権威主義、ゼロサム思考が台頭し、最終的には世界大戦が引き起こされた」。この流れはグローバル化からの逆コースの結末、憂鬱なエピソードとして示されることが多い。だが歴史は、多くの危機が、グローバル化を損なうのではなく、最終的には強化してきたことを教えている。近代における最初のグローバル化は、1840年代の社会的、金融的な大惨事への対応として始まっている。20世紀のグローバル化潮流も、1970年代のオイルショックに派生する経済的混乱を経て起きている。歴史的な断裂が生じても、それは、新たにグローバルなリンクを作り出し、それを増幅していく。COVID19も例外ではない。パンデミック後にグローバル化は勢いよく復活するだろう。

資本主義と民主主義は共生的か
―― 市場価値と自由

2021年4月号

ビニヤミン・アペルボーム ニューヨーク・タイムズ紙編集委員

自由な経済活動という「福音」の信者たちは「規制なき資本主義とリベラルな民主主義は共生関係にある」と主張した。半世紀後の現在、この主張を事実だと考える人を見つけるのは難しいだろう。市場経済によって経済の安全と独立を実現するという考えの問題点は(高級な)「リッツ・ホテルのように、金持ちにも貧者にも同じように門戸を開放すべきだ」という古いジョークにうまく集約されている。機会は保証されていても、誰もが代価を支払う懐の余裕があるとは限らない。しかし、アメリカ人は市場経済に代わる何を求めるべきなのか。ここに取り上げる著作によれば、市場経済は、幅広い豊かさの原動力にはならないし、政治的自由を補うものでもない。むしろ「市場へ依存すれば、自由のない状態に追い込まれる」。だが、果たしてそうなのか。・・・

インド太平洋戦略の幻想
―― 東アジアを重視すべき理由

2021年4月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 国際関係論教授

「インド太平洋」という概念が、アジアの代替表現、中国への対抗バランス形成という視点で捉えられている。「自由で開かれたインド太平洋」の目標は高貴なものに思えるかもしれないが、それを模索すれば、アメリカはおそらく道に迷う。実際には、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力にとっての中核地域は東アジアと太平洋だからだ。世界でもっとも豊かで、軍事化され、人口の多い東アジアでの戦争を防ぐこと以上に大切なアジェンダがあるだろうか。最新の地政学的流行語のためにこの地域を見放せば、壮大な失敗を招き入れることになる。

ザ・アリーナ
―― 米中対立と東南アジア

2021年3月号

ビラハリ・カウシカン 前シンガポール外務省 事務次官

中国の国家規模と経済の重みが東南アジア諸国の不安を高め、習近平国家主席の強引な外交路線がそうした感情をさらにかき立てている。しかし、こうした不安もアジア最大のパワーとの政治的、経済的つながりを維持していく必要性とともに、バランスよくとらえなければならない。「中国かアメリカか」、いずれか一つとの排他的な関係を選べる国は東南アジアには存在しない。アメリカが中国に対してあまりにも強引なスタンスをとれば、事態が紛糾するのではないかという地域的懸念を高め、あまりにも控えめな態度をとれば、見捨てられるのではないかと不安になる。だが「国家は競争する一方で、協力することもできる」。これこそ基本的に東南アジアがアメリカと中国の関係に期待していることだ。

米中衝突を制御するには
―― 対立のエスカレーションと戦争リスク

2021年3月号

ケビン・ラッド  アジア・ソサエティ会長

ワシントンが経済のディカップリング(切り離し)と全面的な対中対決路線を選べば、世界のあらゆる国はどちらかにつかざるを得なくなり、エスカレーションリスクは高まる一方となる。ワシントンと北京がそのような結末を回避できるかについて、専門家が懐疑的な見方をしているのは無理もない状況にある。必要なのは米中間の「管理された戦略競争」枠組みだろう。双方の安全保障政策と行動に一定の厳格な制約を設けつつも、外交、経済、イデオロギーの分野ではオープンで全面的な競争を展開する。一方で、二国間アレンジメントや多国間フォーラムを通じて、特定の分野では協力する。このような枠組みを構築するのは難しいとしても、不可能ではないだろう。そうしない限り、壊滅的な結末に直面する恐れがある。

新エリート階級と中国の格差
―― オリガークか独裁か

2021年3月号

ブランコ・ミラノビッチ  ニューヨーク市立大学大学院センター 社会経済格差研究センター  シニアスカラー

民間経済部門が力強く成長すれば、新しい社会経済階級が誕生する。この集団を取り込もうと、北京は共産党メンバーになるように彼らに働きかけて、取り込みを図るが、結局、彼らは社会の他の部分からも共産党メンバーの大半からも浮いた政治・経済的な上流階級となる。このようなエリートの力をどのように管理できるだろうか。一見すると、中国の不平等は、急速な成長と都市化から予測できた副産物のようにも思える。しかし、格差に対処するには、この新エリート層の高まるパワーを抑制するかどうか、そうするとしてどのように抑えるかという難しい選択に直面する。下手をすると、中国に残される選択肢はオリガーキーか独裁ということになる。

北京の反独占禁止策?
―― 中国のビッグテックと産業政策

2021年3月号

ジョシュ・フリードマン  ハーバード大学博士候補生(政治学)

専門家の多くは、アリババやテンセントなど、中国のビッグテックによる市場独占を阻もうとする北京の熱意を、フェイスブックやアップルを何とか抑え込もうとする欧米の試みと重ね合わせて捉えている。だがそれは、間違いだ。北京が警戒しているのは市場独占による圧倒的なパワーそのものではない。北京は、イノベーションの方向性への統制を強化し、民間大企業のパワーを共産党の産業政策の目的実現へと向かわせたいと考えている。北京が望んでいるのは党が望むイノベーションの方向に民間企業を従わせ、巨大企業が収益拡大のために党の方向から外れないようにすることにある。

産業政策と自由貿易の両立を
―― トランプ後の貿易政策と新産業政策

2021年2月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会副会長(研究担当)

米企業が特恵的な市場アクセスをもっているのは、世界の消費者の10%未満に過ぎない。対照的に、(TPP11その他に参加している)メキシコとカナダは世界市場の50%以上へのアクセスをもっている。アメリカの競争力を高めるには、自由貿易協定を産業政策の主要な要因と位置づけ、米企業が外国で直面する貿易障壁を引き下げる必要がある。TPP11などのすでに存在する自由貿易合意に参加するとともに、休眠状態にあるヨーロッパとの貿易交渉を再開しなければならない。グローバルな協力と競争、国際市場へのアクセス強化、国内の公共投資を前提に組み立てられた産業政策なら、ワシントンコンセンサスの欠点を緩和し、保護主義に陥ることも回避できるはずだ。

アジア秩序をいかに支えるか
―― 勢力均衡と秩序の正統性

2021年2月号

カート・M・キャンベル  アジアグループ 議長  ラッシュ・ドーシ  ブルッキングス研究所 中国戦略イニシアティブ ディレクター

ウィーン体制によって1815年から第一次世界大戦までの1世紀に及んだ長い平和の礎が築かれた。大国間政治が激化し、地域秩序が緊張している現在のインド太平洋はウィーン体制の歴史的教訓から多くを学べるだろう。当時も今もいかに勢力均衡を形作り、秩序の正統性を保つかが問われている。北京の行動が、アメリカやアジア諸国の「インド太平洋秩序」のビジョンと衝突するのが避けられない以上、ワシントンはシステムを強化するために他国と協力し、北京が生産的に秩序にエンゲージするインセンティブを与え、一方で中国が秩序を脅かす行動をとった場合のペナルティを他の諸国とともに考案しておく必要がある。秩序のパワーバランスと正統性をともに維持するには、同盟国やパートナーとの力強い連帯、そして中国の黙認と一定の応諾を取り付けておく必要がある。

中国が望む世界
―― そのパワーと野心を検証する

2021年1月号

ラナ・ミッター オックスフォード大学教授(現代中国史・政治)

世界第2位の経済大国である中国が、ライバルが規定した条件で世界秩序に参加するはずはない。特に、2008年のグローバル金融危機以降、中国指導部は、自国の権威主義的統治システムは、自由主義国家に至るプロセスにおける一つの形態ではなく、それ自体が目的地であると明言するようになった。明らかに国際秩序を作り替えることを望んでいる。中国は間違いなく、国際社会の「舞台中央に近づきつつある」と習はすでに宣言している。今後の展開にとっての重要な鍵は、中国が世界における自らの野心を、他国にとってある程度許容できるものにできるかどうかだ。現実には、もっともらしい新世界秩序を作る中国の能力を脅かしているのは、その権威主義体質に他ならない。

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