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経済・金融に関する論文

インフレは今後も続くのか
―― マジックマネーの時代の終わり?

2022年1月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニアフェロー

短期的には半導体、住宅スペース、エネルギーなどのファンダメンタルズが世界的に不足しているため、物価上昇圧力はしばらく続くかもしれない。パンデミックの影響であらゆるものがデジタル化されているだけに、半導体チップの不足は特に深刻だ。それでも、いずれ落ち着いてくる。中期的に考えれば、価格を押し上げる供給不足は、永続的なものではなく、一時的なものに終わると考えられる。供給が安定し、需要が落ち着けば、適度な引き締め策で十分に対処できるようになる。2023年初頭までには、インフレ率は目標の2%を少し上回る程度で安定しているだろう。・・・

より公平な新経済システムへ
―― 増税と政府による経済管理

2021年12月号

フェリシア・ウォン  ルーズベルト研究所会長

パンデミックはフリードマノミクスをたたきのめす最後の一撃だったのかもしれない。しかし、サミュエルソンがおそらくは認識し、受け入れていたかもしれない「増税と政府による経済管理」という世界もまだ完全には出現していない。この新しいパラダイムが、1940年代のケインズ主義や1980年代のフリードマン的市場経済原理主義のように定着するかどうかは、依然として多くの要因に左右される。新たに形成されつつあるこの枠組みでは、経済と社会の健全性を促進するために、政府にさまざまな役割を担わせることが前提にされている。グリーンエネルギーに投資し、医療、育児、教育などの公共財にもっと多くのコストをかけ、賃金、富、住宅、教育、健康などの分野における人種間の格差を是正していくことが期待されている。

膨大な中国の債務問題
―― 恒大集団は氷山の一角にすぎない

2021年12月号

ベン・ステイル  外交問題評議会 国際経済担当ディレクター、 ベンジャミン・デラ・ロッカ   外交問題評議会アナリスト

本来、住宅価格と企業への貸し出しは連動している。景気が良ければ、銀行は企業への融資を増やし、所得が増えた消費者は不動産を購入し、このサイクルのなかで不動産価格は上昇していく。景気が冷え込むと、所得も減り、デフォルト(債務不履行)が増大し、これらのトレンドは逆転する。実際、アメリカでは何十年にもわたってこのような状況が続いてきた。しかし、中国では事情がまったく違う。2012年に習近平が権力を掌握して以降、中国の住宅価格と銀行の企業向け融資は連動していない。一方が上がればもう一方は下がり、逆もまた真だ。これは習近平期の中国における融資総額が、結局、政府のGDP成長率目標(今年は6%)に左右されるためだ。成長率が目標を下回りそうになると、貸し出しと融資を増やして数字が底上げされる。現状で2022年10月に3期目の政権を担うことを習近平がもっとも重視している以上、成長を実現することが最優先とされ、このやり方が続けられるだろう。


中国はクアッドの何を警戒しているか
―― 北京の野心とクアッドの目的

2021年11月号

ケビン・ラッド   アジア・ソサエティ会長

「中国が支配的優位を確立するのが必然である以上、中国の要求を譲歩して受け入れる以外に選択肢はない」。北京は各国をこのように納得させたいと考えている。それだけに、日米豪印戦略対話(クアッド)が中国への対抗バランスを形成できるような十分な規模、一貫性、包括性をもつフォーラムへ進化し、それによってアジアまたは世界的における中国の支配的優位が損なわれるのが避けられない事態になるのは、北京にとって大きな問題だ。中国がクアッドの進歩を抑え込めるような戦略を特定できるかが、一触即発の危険な時代における米中競争、中国のグローバルな野望を左右する重要な要因の一つになる。

環太平洋パートナーシップへの復帰を
―― CPTPPのアメリカにとっての価値

2021年10月号

ウェンディ・カトラー  元米通商代表部(USTR)次席代表代行

ワシントンでは「アメリカ抜きではTPPは静かに死を迎える」と考えられてきた。しかし、そうはならなかった。日本率いる残されたメンバーはCPTPPと名称を変更し、2018年に合意をまとめた。アメリカがCPTPPに参加すべき理由は数多くあるが、もっとも重要な要因はやはり中国だ。北京は(すでに正式加盟を申請し)CPTPPに参加する態勢を整えているかもしれない。中国がCPTPPのルールを守るのは難しいとしても、それで協定に参加できないということにはならない。市場が拡大することの魅力だけでなく、中国の参加を、重要な改革を先送りする機会とみなすメンバーも出てくるだろう。中国との競争を展開しているだけに、この協定はアメリカ経済にとってだけでなく、ワシントンの世界的影響力にとっても大きな価値をもつ。

今度こそアジアシフト戦略を
―― 経済・安全保障エンゲージメント

2021年10月号

ザック・クーパー アメリカンエンタープライズ研究所 リサーチフェロー アダム・P・リフ インディアナ大学 準教授(国際関係論)

バラク・オバマがアジアリバランシング戦略を表明して10年。そこにある現状は「野心的なレトリックと控えめな行動間のギャップが作り出した不安と懸念」でしかない。今後、三つのポイントが重要になる。アジアへの関与を中国への対応枠組みの一部としてではなく、前向きなアジェンダ、地域戦略ととらえること。アメリカが離脱した後に成立した、TPPをベースとする「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の参加に向けて交渉を再開すること。そして、中東での軍事プレゼンスを削減してアジアでの抑止力を強化することだ。特にアジアの同盟国やパートナーと協力して、力強い拒否的抑止戦略を考案し、武力行使ではアジアでの目標は達成できないと北京に納得させる必要がある。ワシントンがアジアリバランスといったレトリックを何回使ったかはほとんど意味がない。重要なのは、実際にそうするかどうかだ。

経済制裁依存症は何を物語る
―― アメリカの衰退、外交的影響力の低下

2021年10月号

ダニエル・W・ドレズナー  タフツ大学フレッチャースクール 教授(国際政治)

経済制裁によって相手国がワシントンの意に沿って行動するようになるのなら、経済制裁に依存するのも無理はない。だが、実際にはそうではない。制裁の効果をもっとも前向きに評価した分析でも、制裁が譲歩につながるのはせいぜい3分の1から2分の1程度だ。ワシントンが制裁に固執するのは、その効果とはほとんど関係なく、実際には、アメリカの衰退が最大の要因だ。もはや無敵の大国ではなく、広く世界に影響力を行使する力はない。アメリカの軍事力と外交的影響力は相対的に縮小している。制裁は、管理された環境で効果を発揮する特別な手段で、日常的に使用できる万能ツールではない。制裁は手術用のメスであり、スイス・アーミー・ナイフのように扱うべきではない。

法人最低税率とタックスヘイブン
―― 「どこかで必ず課税される」

2021年9月号

アンシュウ・シリプラプ  エディター(経済担当)CFR.org

多国籍企業の利益の40%が毎年タックスヘイブン(租税回避地)に移転されることで、世界の法人税収2000億ドル相当が失われている。しかも、アマゾン、フェイスブック、グーグルなどのハイテク巨大企業の台頭が、「(工場などの)国内における物理的なプレゼンスを前提に課税権を認める伝統的なモデル」を揺るがしている。ハイテク企業は、ユーザーはいるが工場や店舗をもたない国で、広告その他から数十億ドルを稼ぎつつも、現在のルール下で税金を払っていないからだ。一方、提案されている世界共通の最低法人税率(15%)が導入されれば、例えばバミューダのドイツ企業子会社が税金をほとんど支払っていない場合、ドイツ政府は差額を最大15%まで課税できるようになる。そうなれば、「タックスヘイブンを含む低税率の地域に利益を移転しようとする企業のインセンティブ」は小さくなるかもしれない。・・・

(世界共通の)法人税率を「最低でも」15%以上とすることが7月のG20財務相・中央銀行総裁会議で大枠合意された。多国籍企業がどこかの国で15%を下回る税率での負担しかしていない場合、その企業の本社がある国の政府は最低税率に達するまで上乗せして課税できる。これによって、今後、タックスヘイブンの出番はなくなり、「底辺への競争」も回避されるかもしれない。だが、米議会共和党はこの合意に「反競争的で反アメリカ的、しかも有害だ」と反発し、アイルランドやルクセンブルグなどのタックスヘイブンも合意を嫌悪している。だが、流れを止めるのはほぼ不可能だろう。多国籍企業は、あまりにも長い間、あまりにも少ない支出で他の人々が負担する公共財にただ乗りしてきた。いずれにしても今後数年のうちに、多国籍企業はより多くの公共財への貢献をすることになるだろう。

北京の泥棒男爵たち
―― 中国の金ピカ時代

2021年9月号

ユエン・ユエン・アン ミシガン大学准教授(政治学)

この40年で、中国の政治腐敗は構造的に変化し、窃盗型から(特権を手に入れるための)アクセスマネー型へ変化した。資本家の利益に見合う動きをする政治家には報酬が与えられ、特権を買った資本家は私腹を肥やす。要するに、中国はいまや金ピカ時代のさなかにある。縁故資本主義の危険性に気づいている習近平は、政治腐敗が少なく、平等性が高い中国バージョンの革新主義時代を実現しようと、冷酷に強制力を用いている。だが、本当の改革とは、このような形では定着しない。むしろ、強制力を用いた上からの改革は、現在の問題を解決するカギとなる「下からのエネルギー」を抑え込んでしまい、結局は事態をさらに悪化させる。それにしても、なぜ「政治的に腐敗している国は貧しい」というトレンドを、中国は回避できているようにみえるのか。・・・

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