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経済・金融に関する論文

コロナ後の経済再建を考える
―― 債務増でも積極財政をとるべき理由

2021年1月号 

ジェイソン・ファーマン  ハーバード大学ケネディスクール 教授(経済政策)

2009年と比べて今回は財政政策上より多くの手を打てる。グローバル金融危機後の2009年1月におけるアメリカの債務残高が国内総生産(GDP)の50%未満だったのに対して、パンデミックを経たバイデンの大統領就任時には債務がGDPの100%におそらく達していることを考慮すれば、この見方は間違っているようにも思えるかもしれない。だが、かつてと現在では金利に違いがある。2009年1月の段階で10年国債の実質金利はおよそ2%だったが、2021年1月のそれはマイナス1%程度になる。現在の公的債務がかつて以上に大きいとしても、キャリーコスト(持ち越し費用)は少なくて済む。バイデンがキャンペーンで約束してきた政策を実施すれば、回復は加速する。景気サイクルだけでなく、ワクチンも追い風を作り出すと期待したい。

ならず者の超大国
―― 非自由主義的アメリカの世紀?

2020年11月号

マイケル・ベックリー タフト大学准教授(政治学)

戦後秩序のなかで、ワシントンは多くの国に軍事的保護、安全なシーレーン、米ドルと米市場へのアクセスを提供し、引き換えに、これらの同盟諸国はアメリカへの忠誠を尽くし、自国の経済や政治の自由化に応じてきた。だが、アメリカ外交の底流をなしているのは、リベラリズムよりも、アメリカファーストの思想だ。(他の先進諸国の)急速な人口高齢化そしてオートメーション化の台頭によって、アメリカのリードはさらに堅固になり、パートナーへの依存レベルが低下すれば、アメリカは国際協調よりも「外交への取引的アプローチ」を重視する「ならず者の超大国」になるかもしれない。これまでの「アメリカ世紀」が、世界におけるアメリカの役割についてのリベラルなビジョンを基盤に構築されてきたのに対し、私たちの目の前にあるのは、「非自由主義的なアメリカの世紀の夜明け」なのかもしれない。

ベーシックインカムの台頭
―― パンデミックが呼び起こした構想

2020年11月号

エブリン・L・フォーゲット マニトバ大学教授(経済学)

パンデミックは、多くの人が長く気づいていた真実に政治家を目覚めさせた。「既存の社会的セーフティネットは穴だらけで、 いまや新しい何かを試すべきタイミングにある」。ベーシックインカムに反対するもっとも一般的な議論は、どんなに有益であっても、それにはコストがかかりすぎるというものだろう。だが、このプログラムがより累進的な課税システムとリンクして進められれば、そうした支出の一部は課税を通じて政府に戻される。低所得者を対象とするタイプのベーシックインカムなら、それほど大きな負担にはならない。実際、そのコストは、子どもの給付金など、多くの政府がすでに行っている社会支出と変わらず、年金については、はるかに少なくて済む。ベーシックインカムは人々が望む社会への投資であり、健康、教育、安全を重視する人がそれぞれ自分に投資する。その配当として、人々はより良い生活を手にし、一方で資金も節約され、社会も進化する。・・・。

パンデミック後の資本主義
―― 官民協調型の経済システムの模索

2020年11月号

マリアナ・マッツカート  ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン  経済学教授

多くの人が、民間部門がイノベーションと価値創造の主要な原動力だったと信じてきたために、利益は民間企業が手にする権利があると考えている。だがこれは真実ではない。医薬品、インターネット、ナノテク、原子力、再生可能エネルギーなど、これらのすべては政府の膨大な投資とリスクテイキングのおかげで実現してきた。イノベーションのために公的資金を投入しつつも、それから恩恵を引き出してきたのは、おもに企業とその投資家たちだった。COVID19危機は、この不均衡を正す機会を提供している。ベイルアウトする企業により公益のために行動するように求め、これまで民間(の企業)部門だけが手にしてきた成功を納税者が分かち合えるようにする新しい経済構造が必要だ。富の創造への公的資金の貢献を明確に理解すれば、公的投資の意味合いを変化させることができる。目の前にある課題は、よりすぐれた経済システム、よりインクルーシブで持続可能な経済を官民で形作ることであり、世界の誰もがCOVID19ワクチンを利用できるようにすることでなければならない。

日はまた昇る
―― 日本のパワーは過小評価されている

2020年11月号

ミレヤ・ソリス ブルッキングス研究所 東アジア研究所ディレクター

「日本は、経済的繁栄を中国に、安全保障をアメリカに依存しすぎている」と悲観する見方が市民の間で大きくなっている。さらに、2020年9月の安倍首相の突然の辞任によって、国内の安定した指導体制や先を見据えた外交の時代が終わるかもしれないという懸念も浮上しつつある。地政学的ライバルが大きな流れを、そしてパンデミックが混乱を作り出すなか、ワシントンは、再び、日本のポテンシャルをまともに捉えず(この国を無視する)誘惑に駆られるかもしれない。しかし、日本の戦略的選択は、日本の将来だけでなく、米中間の激しい大国間競争の行方にも影響を与える。日本の時代は終わったとみなすこれまでの見方が、時期尚早だったことはすでに明らかだ。

米覇権の解体
―― アメリカパワーの衰退と中ロの台頭

2020年10月号

アレクサンダー・クーリー  バーナード・カレッジ教授(政治学) ダニエル・H・ネクソン  ジョージタウン大学外交大学院准教授

中国とロシアの台頭に伴い、「独裁的で非自由主義的プロジェクト」が米主導の「リベラルな国際システム」に対する代替策として浮上している。途上国、さらには多くの先進国でさえ、欧米の援助や支援に依存し続けるのではなく、別のパトロンによる支援を頼ることができる。こうして、アメリカのグローバルリーダーシップは単に後退しているだけではなく、解体しつつある。アメリカの衰退は、循環的というよりも、むしろ、永続的なものだ。軍事費をいかにつぎ込んでも、アメリカの覇権解体を促している流れを止めることはできない。考えるべきは、米覇権の解体がどこまで進むかだ。

民主世界と中国の冷戦
―― 北京との共存はあり得ない

2020年10月号

アーロン・L・フリードバーグ プリンストン大学教授(政治・国際関係)

欧米の期待に反し、政治体制の締め付けを緩め、開放的政策をとるどころか、習近平は国内で異常なまでに残忍で抑圧的な政策をとり、対外的にもより攻撃的な路線をとるようになった。アメリカに代わって世界を主導する経済・技術大国となり、アメリカの東アジアでの優位を切り崩そうとしている。北京は、民主社会の開放性につけ込んで、相手国における対中イメージと政策を特定の方向に向かわせようと画策している。だが、北京は、中国市民を恐れている。自分たちが「社会の安定」と称するものを無理矢理受け入れさせるために大きな努力をし、国内の治安部隊やハイテク監視プログラムに数十億ドルを費やしている。共産党が絶対的な権力をもつ中国が、リベラルな民主世界が強く団結している世界において快適に共存できるとは考え難いし、民主世界が団結を維持できれば、中国が変わるまで、ライバル関係が続くのは避けられないだろう。

米中対立の本質とは
―― イデオロギー対立を回避せよ

2020年10月号

エルブリッジ・コルビー  元米国防副次官補(戦略・戦力展開担当) ロバート・D・カプラン  外交政策研究所の地政学チェアー

ワシントンの中国批判は的外れではない。アメリカは中国との非常に深刻な競争を展開しており、多くの面で強硬路線をとらざるを得ない状況にある。だが、米中間の問題の根底にイデオロギー対立が存在するわけではない。経済、人口、国土の圧倒的な規模とそれがもたらすパワーゆえに、 たとえ中国が民主国家だったとしても、ワシントンはこの国のことを警戒するはずだ。逆に、これをイデオロギー競争とみなせば、対立の本質を見誤り、壊滅的な結末に直面する恐れがある。中国に対抗する連帯を構築するのさえ難しくなる。大国間競争では、イデオロギー的な一致を求めたり、完全な勝利を主張したりすることなど無意味であり、むしろ、壊滅的事態を招きいれることを理解する必要がある。

世界はより平等になりつつある
―― グローバル化が先進国の中間層を傷つけても

2020年10月号

ブランコ・ミラノビッチ  ニューヨーク市立大学大学院 ストーンセンター シニアスカラー

グローバル化は先進国における国内格差を拡大しつつも、世界レベルでみた(国家間)格差を低下させるという別の重要な作用を伴っていた。こうした世界の平等化は中国市民の収入が大幅に増加したことで促されてきた。つまり、アジアの成長は欧米中間層の衰退の背後で起きていたと言い換えることもできる。このトレンドが続けば、今後10年以内に中国の中間層の多くは欧米の中間層よりも豊かになる。これは、この2世紀で初めて、欧米の中間層が、世界レベルでみた所得のトップ20%に入るグローバルエリートの一部ではなくなることを意味する。そして中国の成長は、世界を平等にするのではなく、むしろ国家間格差を広げる作用をするようになる。一方で、依然として比較的貧しい人口大国・インドの成長が、世界をより平等にする上で重要な役割を果たすようになるはずだ。

破壊された米外交
―― 戦後秩序の終わりと次期政権の選択

2020年10月号

リチャード・ハース  米外交問題評議会会長

今後の世界では紛争がより一般的になり、民主主義はさほど一般的な政治制度ではなくなっていく。友人を安心させ、敵を抑止する同盟関係の作用が弱まっていけば、核拡散が加速し、大国の勢力圏が拡大していく。貿易はより管理され、ゆっくりと成長する程度で、縮小していくかもしれない。ドルの影響力も低下するだろう。そして戦後75年間続いた世界秩序は確実に終わる。唯一の疑問は、何が旧秩序にとって代わるかだ。その多くは、アメリカが今後どのコースをとるかに左右される。トランプの外交ブランドがさらに4年続くようなら、第二次世界大戦後から2016年までアメリカが主導したモデルが規範からの逸脱とみなされ、孤立主義、保護主義、ナショナリズムの単独行動が本流とみなされることになる。

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