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経済・金融に関する論文

アベノミクス、最後の賭
―― 消費増税の先送りと財政出動

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トバイアス・ハリス / 米笹川平和財団フェロー(経済、貿易、ビジネス担当)

世論調査で市民が増税時期の先送りを支持していることに加えて、先行き不透明なグローバル経済、円高、そして最近の熊本での地震災害は、安倍首相が(増税の先送りと財政出動に向けて)財政タカ派の反対を克服する助けになるだろう。これらの環境からみれば、首相が増税を先送りし、新たに財政出動を実施することへの支持を期待できるだろう。だがそれは、実際に経済を長期的に助け、短期的にも景気を刺激する効果のある公共事業投資を増やす、正しい財政出動でなければならない。そうできなければ債務を増やすだけに終わる。専門家のなかには、すでに安倍政権の経済プログラムは失敗していると指摘する者もいる。実際、アベノミクスにさらにてこ入れして、それでも日本経済を再生できなければ、この3年にわたって比較的安定していた安倍首相への支持は次第に低下していくことになるだろう。

中国国有企業改革の実態
―― 切り捨てられる企業と温存される
企業

2016年5月号

サルバトーレ・バボネス/シドニー大学社会学・社会政策准教授
I・ストーン(匿名)/中国国有企業を専門とする政治経済分析者

過剰生産能力を減らすために、北京は鉄鋼生産量を年間1億―1億5000万トン削減すると表明し、2月には鉄鋼部門において約50万人の雇用を削減する計画を発表している。石炭産業における生産量と雇用の削減はさらに熾烈なものになるだろう。そして北京が過剰生産能力を削減する主要なツールとして、中国の国有企業(SOE)改革を利用していくのは明らかだろう。損失を計上している部門については、民営化を通じて政府による監督を緩和するか、工場閉鎖と労働者の解雇が行われるだろう。中国のSOE改革とは、一般にイメージされるのとは違って、赤字国有企業を売却、清算するだけで、北京は利益をあげている国有企業についてはこれまでの関係を維持していくつもりだ。「政治的に正しい」立場をとる国有企業のエグゼクティブと最高経営責任者は法外な富を得て、「政治的に間違った」立場をとる者たちは政治腐敗の罪に問われ、失脚することになるだろう。

中国のコーポレートパワー
―― 中国企業が市場を制する日はやってくるのか

2016年5月号

パンカジュ・ゲマワット/ニューヨーク大学ビジネススクール教授
トマス・ホート/タフト大学シニアレクチャラー

最近の経済的失速と株式市場の混乱にも関わらず、「中国はいずれアメリカを抜いて世界最大の経済パワーになる」と考える人は多い。だが、このシナリオを検証するには、現実に成長と富を生み出している企業と産業の活動動向に目を向ける必要がある。世界でもっともパワフルな経済国家になるには、中国企業は資本財やハイテク部門でさらに競争力をつけ、半導体、医療用画像診断装置、ジェット航空機などの洗練された製品を製造し、市場シェアを拡大していく必要がある。繊維や家電製品など、そう複雑ではない第1世代部門同様に、中国企業はこうした第2世代部門でもうまくやれるだろうか。それを疑うべき理由は数多くある。途上国の企業とせめぎ合う製造業部門とは違って、資本財部門やハイテク部門では、中国企業は、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパの大規模で懐の深い多国籍企業を相手にしていかなければならない。・・・

ロシア経済のポテンシャルを開花させるには
―― 構造改革と世界経済への復帰を実現せよ

2016年5月号

セルゲイ・グリエフ パリ政治学院教授(経済学)

政治腐敗と改革の遅れ、原油・天然ガス価格の暴落、そして欧米による経済制裁という要因が重なり合うことで、ロシア経済は追い込まれ、景気回復は期待できない状況にある。ロシア経済が直面する三つの大きな問題のうち、国際的なエネルギー価格の暴落は、モスクワが管理できるものではない。しかし、ウクライナ紛争に終止符を打ち、構造改革を進めるという、残りの二つはプーチンの権限で対処できる。ウクライナへの軍事介入を止めて、経済制裁を緩和し、構造改革路線を取れば、こうしたダメージの多くは覆せる。これまでモスクワはそうした選択をしなかった。プーチン大統領も、経済改革を実行するという約束を守っていない。ロシア経済の現状は「ナット・グッド」かもしれない。だが、長期的な見通しは暗くない。たしかに、構造改革を実行し、世界経済に再び加わり、近代的な政治・経済機構を構築するのはロシアにとって容易ではない。だが、指導者たちに改革の意思さえあれば、ロシアは富裕国に追いつけるポテンシャルをもっている。

イノベーションと 「70対20対10ルール」
――ルース・ポラットとの対話

2016年4月号

ルース・ポラット アルファベット CFO(最高財務責任者)

ルース・ポラットは、テクノロジー企業のエグゼクティブとしては異例のキャリアの持ち主だ。2015年5月にグーグル、その数カ月後にグーグルの持ち株会社アルファベットの最高財務責任者(CFO)に就任するまで、彼女は米金融大手モルガン・スタンレーのCFOだった。2008年の金融危機では、経営不振に陥った米保険最大手AIGの処理について連邦準備制度理事会(FRB)と、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の処理について米財務省と協力した経験をもっている。オバマ政権下の2013年には、財務副長官候補に名前が上がったこともある。政治サイト「ポリティコ」はポラットのことを「ウォール街でもっともパワフルな女性」と呼んだが、今は「シリコンバレーでもっともパワフルな女性の1人」だ。(聞き手はジョナサン・テッパーマン、フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

イギリスの新しい国際的役割とは
―― 衰退トレンドを克服するビジョンを

2016年3月

ピーター・マーチン APCOワールドワイド  アソシエート・ディレクター

イギリスの政治階級は、バックミラーを見ながら、将来を考えようとしている。このために、変化する世界におけるイギリスの地位について考えることができずにいる。この現状の根底にあるのは、国家アイデンティティの危機だ。歴史的に、イギリスは世界の覇権国からの凋落を正面から受け止めてこなかった。この国の世論調査では依然として「我が国は大国であり続けることを望むべきか」という問いかけがなされる。2015年の調査でも63%がイエスと答えているが、世界は、大国としてのイギリスの時代が終わっていることを知っている。イギリスの衰退を覆すには、過去を前提にするのではなく、未来から現在を捉える必要がある。ロンドンは、イギリスのことを「グローバル化を促進するとともに、その問題に対処していくことを目的とする思想と議論を提供し、橋渡し役を担う存在にすること」を考えるべきだろう。

近代化と格差を考える
―― 再び格差問題を政治課題の中枢に据えるには

2016年3月号

ロナルド・イングルハート ミシガン大学教授(政治学)

19世紀末から20世紀初頭にかけての産業革命期に、左派政党は労働者階級を動員して、累進課税制度、社会保険、福祉国家システムなど、様々な再分配政策を成立させた。しかし脱工業化社会の到来とともに、社会の争点は、経済格差ではなく、環境保護、男女平等、移民などの非経済領域の問題へと変化していった。環境保護主義が富裕層有権者の一部を左派へ、文化(や社会価値)に派生する問題が労働者階級の多くを右派へ向かわせた。そしてグローバル化と脱工業化が労働組合の力を弱め、情報革命が「勝者がすべてをとる経済」の確立を後押しした。こうして再分配政策の政治的支持基盤は形骸化し、経済的格差が再び拡大し始めた。いまや対立の構図は労働者階級と中産階級ではない。「一握りの超エリート層とその他」の対立だ。

中国経済のメルトダウンは近い
―― 中国経済はまったく成長していない

2016年3月号

サルバトーレ・バボネス シドニー大学准教授(社会学)

中国の経済成長が減速しているのは誰もが認めるところだが、北京が言うように本当に中国経済は依然として成長しているのだろうか。中国政府は2016年の成長率を6・5%と予測しているが、コンファレンス・ボードは3・7%という数値をあげている。だが、実体経済の動きを示すさまざまな指標をみると、3・7%という数字さえ、楽観的かもしれない。2015年に電力、鉄鋼、石炭の消費はいずれも低下している。購買担当者指数(PMI)もこの10カ月にわたって50を下回っており、これは製造業部門の生産が長期的な収縮トレンドにあることを意味する。中国経済の成長率は3%かそれを下回っているかもしれない。そして政府の赤字財政支出は、実際には間違いなくGDPの3%を超えている。つまり、中国の実体経済はおそらくまったく成長していないかもしれないし・・・いまや中国経済を動かしているのは政府支出だけだと考えてもおかしくない。

生産年齢人口の減少と経済の停滞
―― グローバル経済の低成長化は避けられない

2016年3月号

ルチール・シャルマ モルガン・スタンレー インベストメント・マネジメント 新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

労働人口、特に15―64歳の生産年齢人口の増加ペースが世界的に鈍化していることは否定しようのない事実だ。生産年齢人口の伸びが年2%を下回ると、その国で10年以上にわたって高度成長が起きる可能性は低くなる。生産年齢人口の減少というトレンドで、なぜ金融危機後の景気回復がスムーズに進まないか、そのかなりの部分を説明できる。出生率を上げたり、労働人口に加わる成人を増やしたりするため、各国政府はさまざまな優遇策をとれるし、実際多くの国がそうしている。しかしそれらが中途半端な施策であるために、労働人口の増大を抑え込む大きなトレンドを、ごく部分的にしか相殺できていない。結局世界は、経済成長が鈍化し、高度成長を遂げる国が少ない未来の到来を覚悟する必要がある。

長期停滞にどう向き合うか
―― 金融政策の限界と財政政策の役割

2016年3月号

ローレンス・サマーズ 元米財務長官

今後10年にわたって、先進国のインフレ率は1%程度で、実質金利はゼロに近い状態が続くと市場は読んでいる。アメリカ経済についても同様だ。回復基調に転じて7年が経つとはいえ、市場は、経済がノーマルな復活を遂げるとは考えていない。この見方を理解するには、エコノミストのアルヴィン・ハンセンが1930年に示した長期停滞論に目を向ける必要がある。長期停滞論の見方に従えば、先進国経済は、貯蓄性向が増大し、投資性向が低下していることに派生する不均衡に苦しんでいる。その結果、過剰な貯蓄が需要を抑え込み、経済成長率とインフレ率を低下させ、貯蓄と投資のインバランスが実質金利を抑え込んでいる。この数年にわたって先進国を悩ませている、こうした日本型の経済停滞が、今後、当面続くことになるかもしれない。だが、打開策はある。・・・

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