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経済・金融に関する論文

流れは米中デタントへ
―― 戦略的安定の本質

2026年10月号

達巍 清華大学 国際安全保障・戦略センター 所長

第2次トランプ政権の発足以降、双方にとって米中関係は「大きすぎて潰せない」ことがすでに明らかになっている。2025年の関税とレアアースをめぐる激しい衝突は、ともに相手の弱点を突けることを明らかにする一方で、両国の相互依存関係が極めて深く、経済対立をめぐって慎重な行動が必要であることを双方に再認識させた。対米競争を受け入れ、それを管理していくという北京の姿勢は「中国の自信の高まり」を反映している。いまや、戦略的安定をめぐる認識の共有へと流れは向かっている。台湾という火種は依然としてなくなっていないが、北京とワシントンは新しい均衡を見出しつつある。

経済成長で債務を克服できる?
―― AI経済ブームの幻想

2026年10月号

ケネス・S・ロゴフ ハーバード大学 教授

アメリカの債務拡大の軌道は持続不可能であり、債務危機に直面すれば、世界経済に衝撃が走り、ドルの地位も脅かされる。一部には、目覚ましいAIの技術的進化がもたらす生産性の向上と経済成長によって、アメリカの債務問題はいずれ問題ではなくなるとみる人もいる。だが、多くのエコノミストは、AIによって今後10年間の生産性上昇率が従来のトレンドから上振れする幅は1―2%程度とみている。しかも、人口の高齢化、グローバル化の後退に派生するコスト負担によって恩恵は部分的に相殺されるだろう。仮にAIが新たに大きな歳入をもたらしても、国防費の増額、環境災害対策など、歳出を求める圧力は大きい。実際、歳入をはるかに上回る歳出を続けることを求めてきた政治圧力を軽減することは、AIにもできないだろう。

ホルムズ危機の新地政学
―― 石油ショックと米中の影響力

2026年10月号

ジェイソン・ボードフ コロンビア大学 国際公共政策大学院教授
メーガン・L・オサリバン ハーバード大学 ケネディ・スクール 教授

ホルムズ危機の本当のリスクは、その衝撃が穏やかなものだったために、主要国がそのリスクを侮り、自国の対応能力を過信することかもしれない。実際、ホルムズ危機の第2幕は、第1幕よりもはるかに大きな被害をもたらす危険がある。在庫や備蓄が少なくなる一方で、需要が回復しているからだ。非ホルムズの代替ルートの脆弱性は高まり、石油インフラは攻撃されている。つまり、バッファーがいつまで持つか分からない。世界が将来のショックに備えるには、クリーンエネルギーや原子力への投資を含めて、レジリエンス強化のための対策が急務だろう。石油ショックへの米国と中国の影響力が高まる一方、途上国が大きな危険にさらされる構造が生まれていることも認識しなければならない。

米中関係の本質
―― 競争的共存の条件

2026年8月号

汪錚 シートン・ホール大学 教授(外交、国際関係学)

半導体であれ、レアアースであれ、米中双方は相手に対する手段や影響力をもっているが、どちらもそれを決定的には行使できない。これは、米中が「グローバルな経済・技術システムから相手を完全には排除できない状況を共有していること」を意味する。ともに相手を傷つけられるが、戦略的に無意味な存在に追いやることはできない。だからこそ米中は、デカップリングにも、新たな相互依存にも向かっていない。つまり両国間のダイナミクスは「競争的共存」ということになる。それには、米中がともに自制し、紛争を管理し、特に「台湾をめぐる戦略的安心感」を育むことが必要になる。

トランプ政権と新貿易秩序
―― 安全保障、貿易の均衡、成長を実現する

2026年7月号

ロバート・ライトハイザー 米通商代表(2017―2021)

トランプ政権のアジェンダは、機能不全に陥っている既存の貿易システムを、バランス・透明性・主権という原則に基づく新たなシステムに置き換えていくことにある。新秩序の最大の目的は、経済安全保障、国家安全保障を実現することだ。地政学的敵対国への富の移転を防がなければならない。さらに、各国が恒常的な貿易不均衡を是正し、公正な競争と経済安全保障を両立させることが目標とされる。貿易収支の均衡へのコミットメントに基づく新たな国際貿易体制は、世界経済全体で好ましい資源の分配を実現し、参加国に広く共有される恩恵を生み出し、予測可能性がもたらされるはずだ。

重要鉱物という不確実性
―― 求められるルールと規制

2026年6月号

ラバ・アレズキ フランス国立科学研究センター 研究ディレクター
フレデリック・ファンデルプルーフ オックスフォード大学 経済学教授
マイケル・ロス カリフォルニア大学ロサンゼルス校 教授

重要鉱物を取り巻くテクノロジー進化の軌道も地政学的な構造も、誰が基準を設定し、採掘ルールを執行し、供給をめぐる紛争を裁くのかも大きな不確実性のなかにある。問題は「資源の呪縛」や中国の独占状況だけではない。何にどの重要鉱物が必要とされるかは、技術の進化によって決まるために、投資判断が非常に難しい。つまり、技術が進化すれば、ほぼ一夜にして無駄になる恐れのある資源への過剰投資のリスクがある。しかも、重要鉱物資源は紛争に悩まされる領有権論争のある地域に存在することが多く、その採掘や精製は石油よりも労働集約的で、市場の風向きも短期間で変わる可能性がある。どうみても、ルールと規制を含む、重要鉱物のより大きな管理システムが必要とされている。

経済戦争をいかに戦うか
―― 分断された世界と経済的繁栄

2026年6月号

エドワード・フィッシュマン 米外交問題評議会 地経学センター ディレクター

各国は自国の経済的影響力がどこに存在するかを特定し、ライバルに対して影響力を行使するためのツールを考案している。これは、経済的軍拡競争に他ならない。経済戦争に向けた武装を進める一方で、他国が自国に対して使用する可能性のある経済兵器に対する防壁を築いている。この状況で、世界経済が対立するブロックに分裂していくと警告する専門家もいる。しかし、より大きな危険は、あらゆる国が利己的な経済行動をとり、1930年代に世界経済を崩壊させ、世界を第二次世界大戦へ向かわせたような、混沌とした分断が引き起こされることだ。それを回避する道は存在するのか。

米欧中トライアングル
―― 米欧対立とヨーロッパの選択

2026年6月号

達巍 清華大学 国際安全保障・戦略センター所長

ヨーロッパにとって、アメリカとの対立は、中国との間で抱える課題以上に大きな危険をはらんでいる。中国との対立が主に貿易などの物質的利害にかかわるものであるのに対して、アメリカとの対立は欧州統合やリベラルな価値といった「アイデンティティ」そのものにかかわってくるからだ。実際、欧州右派を擁護するトランプ政権の攻撃的ナショナリズムは、ヨーロッパの統合プロジェクトそのものを脅かしている。アメリカに対抗するために、ヨーロッパが「中国カード」を切る可能性、あるいは、中国が「ヨーロッパカード」を切る可能性はどれくらいあるのか。それとも、世界は文明の衝突へ向かっていくのか。

国家資本主義の時代
―― 地政学的混乱と政府の経済介入

2026年5月号

ジャミ・ミシック 元キッシンジャーアソシエイツ会長
ピーター・オルザック ラザード 最高経営責任者
セオドア・ブンゼル ラザード地政学 アドバイザリー マネージングディレクター

貿易戦争、重要鉱物の輸出規制、そして大西洋同盟の亀裂を含む、地政学的混乱が、新たな経済手段を迅速に整備することを政府に迫り、すでに各国は国家資本主義へ深く足を踏み入れている。国の経済安全保障のために、企業行動の変化を強制する必要性があると考える政府は、輸出管理制度、投資審査メカニズム、補助金制度を駆使している。ますますホッブズ的な国際環境になる現状では、これまで以上に政府介入が必要なのかもしれない。しかし、経済ルールを政治家の恣意的な気まぐれに完全に置き換えるのは、大きな地政学的過ちにつながる。強権的で不安定な国の介入は、経済活動や競争を急速に萎縮させてしまう恐れがある。

中国のスマートな権威主義
―― 魅力的な政治経済モデル

2026年4月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学 政治学准教授

すでに中国は電気自動車、バッテリー、ドローン、ロボティクスといった産業における世界の技術最先端に到達している。しかも、社会・政治的統制を維持しつつ、こうしたイノベーションに成功している。統制を維持しつつ、イノベーションも実現する「スマートな権威主義」の指導者たちは、できるときには社会を開放し、やらなければいけないときには統制を強化する。調整が絶えず必要だとしても、このバランスを適切に保てば、イノベーションを促す「包括的な制度」がなくても技術革新が開花する。中国の「スマートな権威主義」の成功は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ベトナムなどの指導者にとって魅力的なモデルを提供している。

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