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2015年9月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2015年9月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2015年9月号 目次

中国経済に何が起きているのか

  • 迫りくる中国経済の危機
    ―― 人民元下落は危機のプレリュードにすぎない

    サルバトーレ・バボネス

    雑誌掲載論文

    中国で金融危機が進行している。株式市場の混乱、輸出の低迷、そして人民元のクラッシュはまだ序の口にすぎない。今後、人口動態の停滞、資本逃避、そして、経済の多くを市場に委ねるとした2013年の決定がさらに大きな危機を作り出すことになるだろう。高齢化で政府の社会保障関連支出が増大していくにも関わらず、税収を通じた歳入増にはもはや多くを期待できない。「中国は豊かになる前に歳をとる」とよく言われるが、同様に、完全な税制を整備する前に、経済が自由化されれば、歳入を確保するのはますます難しくなる。課税なき自由化は中国政府を第3世界特有の永続的な金融危機に直面させるだろう。主に逆累進税で資金を調達し、社会保障上の責務を果たそうとすれば、中国は、すでにそこから抜け出したはずの第3世界のような状況に陥る。人民元の切り下げは、さらに大きな危機のプレリュードに過ぎず、そこで問題が終わることはない。

  • 中国経済の異変を読み解く
    ―― 市場経済への移行を乗り切れるのか

    ニコラス・R・ラーディ他

    雑誌掲載論文

    この30年でGDPに占める投資の割合は30%から50%に上昇し、一方で消費は50%から35%へと落ち込んだ。供給能力の急激な拡大に需要が追いついていけずにいる。いまや何を生産しても売るのが難しくなっている。われわれは、需要と供給のインバランスという、根本的で長期的な構造問題に対処していかなければならない。(鄭新立)

    デフレが問題化しつつあるのは事実としても、デフレが他の諸国のような深刻な問題を中国で作り出すことはないだろう。依然として中国経済は7%の成長を遂げており、それが3―5%へと鈍化していくとは考えにくいし、5%以上で経済が成長している国でデフレが問題になることはあり得ない。(N・ラーディ)

    「いつ経済成長の停滞が終わるか」、これは重要なポイントだ。おそらく、2015年末か2016年の第一四半期には経済は上向くとわれわれは考えている。半年以内、あるいは1年以内には景気の底を打つと思う。その後、成長率は6―7%で安定的に推移するだろう。(李稻葵)

    これまで長期的に停滞してきた不動産市場がいまや大都市を中心に復活しつつあり、価格も上昇している。もちろん、その変動性から考えて、長期的に資金が不動産市場に留まるとは思わないが、不動産市場はいまも大きな経済要因だと思う。(高西慶)

  • 株式市場の混乱と今後の中国経済

    スティーブン・ローチ

    Subscribers Only 公開論文

    中国の株式市場に火花が散ったのは2014年11月、北京が上海・香港取引所の連動を発表したときだった。二つの市場で同じ株式を投資家は購入できるようになり、このアレンジメントを通じて外国資金が中国の国内市場へと流れ込んだ。中国の株式市場はこの12カ月にわたってブームに沸き返ってきたが、株価上昇の90%は上海・香港取引所の連動以降に起きている。非常にはっきりした投機熱が生じていた。投機が過熱したことで必然的に息切れが生じて流れが変わり、信用買いの弊害が表面化した。2015年6月、中国株は30%下落した。株式市場混乱の経済への衝撃はそれほど大きくはならないだろう。問題は、これが自由化に向けた金融改革プロセスを逆行させかねないことだ。依然として中国は消費主導型経済モデルの移行にコミットしているが、中国の株式市場バブルの崩壊によって、資本市場改革の先行きは不透明になっている。・・・

  • このままでは中国経済は債務に押し潰される
    ―― 地方政府と国有企業の巨大債務

    シブ・チェン

    Subscribers Only 公開論文

    これまで中国政府は、主要銀行の不良債権が経済に悪影響を与えないようにベイルアウト(救済融資)や簿外債務化を試み、一方、地方の銀行については、地方政府が調停する「合意」で債務危機を抑え込んできた。だが、もっともリスクが高いのは地方政府そして国有企業が抱え込んでいる膨大な債務だ。不動産市場が停滞するにつれて、地方政府がデフォルトを避けるために土地をツールとして債務不履行を先送りすることもできなくなる。経済成長が鈍化している以上、国有企業がこれまでのように債務まみれでオペレーションを続けるわけにもいかない。しかも、債務の返済に苦しむ借り手は今後ますます増えていく。中国が債務問題を克服できなければ、今後の道のりは2008年当時以上に険しいものになり、中国経済に壊滅的な打撃を与える危機が起きるのは避けられなくなる。

The Campaign 2015-2016

  • アメリカの宗教と政治
    ―― 宗教と政治のライフサイクル

    ジェームズ・モローン

    雑誌掲載論文

    アメリカ政治のほぼすべての側面に宗教が影響を与えている。アフリカ系アメリカ人の教会は、その多くが民主党支持者の信徒のために投票所行きのバスを運行し、白人層が中心の福音派教会の牧師は、「民主党に投票することは神に対する冒とくだ」と警告する。冷戦期、そしてレーガン政権期以降のアメリカではキリスト教保守の立場が政策化さえされた。だが今や、アメリカの道徳的・社会的な風潮は、保守的なキリスト教の理想とはかけ離れている。同性婚が容認され、マリファナが非犯罪化され、若者は組織的な宗教活動には明確に背を向けている。しかし宗教の時代は終わってはない。警察による暴力が大きなデモを引き起こしているだけに、黒人教会の宗教的道徳主義運動に火がつく可能性は高く、この運動がヒスパニック系アメリカ人と結びつけば、大きな流れを作り出すことになる。宗教の政治的台頭にはライフサイクルがある。・・・

  • 中国の対外行動をいかに制御するか
    ―― 台頭する中国とアメリカのアジア外交

    トマス・J・クリステンセン

    雑誌掲載論文

    グローバル金融危機をアメリカや他の主要国よりもうまく凌いだ中国のエリートたちは、国際的な対応への自信を深め、中国人の多くも他国に譲るのはもう止めて、自国の利益をもっと積極的に主張すべきだと考えるようになった。ナショナリズムも台頭した。一方、危機を契機に、輸出市場に多くを依存する自国の経済モデルの持続可能性を北京は心配するようになった。別の言い方をすれば、中国は大国に台頭したが、「依然として、非常に多くの国内問題と不安を内に抱える途上国でもある」。この有毒な組み合わせが、対中関係を管理していくのを難しくしている。だが、米中が明確に衝突コースへと向かうと決まっているわけではない。アメリカの力を認識し、北京がどこまでアメリカや東アジアを含むアメリカの同盟国と協調するつもりがあるか、その境界を見極めれば、リスクを抑え込むことができるはずだ。

  • 対ロ新冷戦とヨーロッパの漂流
    ―― オバマはなぜロシアの侵略を予見できなかったか

    アン・アップルボーム

    雑誌掲載論文

    「欧米はロシアに嘘をついてきた。NATOは今もロシアにとって脅威だ。・・・たとえ欧米がロシアの天然ガスに背を向けても、ロシアには東アジアに多くの潜在的顧客がいる」。すでに2009年の段階で、ロシアのラブロフ外相はこう語っていた。しかしオバマ政権は、「ヨーロッパは安全で退屈な場所で、真剣に議論すべき対象というより、記念写真に収まるサイト」としか考えていなかった。そしてウクライナ危機が起きた。それでも、オバマは危機を一貫してヨーロッパの地域問題と表現し、距離を置いた。いまやロシアの影響力が高まっているのは旧ソビエト地域だけではない。ロシアはヨーロッパの反EU・反NATO政党を資金面で支援し、ヨーロッパを内側から切り崩そうとしている。しかも、ヨーロッパはギリシャの債務問題とイギリスのEU離脱を問う国民投票、そして大規模な地中海難民の問題に翻弄されている。・・・

  • 政治から離れ、宗教へ回帰する米宗教界
      ―― 宗教右派台頭の一方で進む宗教離れ

    デヴィッド・E・キャンベル他

    Subscribers Only 公開論文

    この20年にわたって「教会のミサに参加するかどうか」が、共和党と民主党の有権者を分ける大きな指標とされてきた。現状では、宗教がアメリカ政治、特に右派勢力の立場に与える影響が非常に大きくなっているが、この現実に対する反発も大きくなっている。保守的価値、宗教的価値が否定された1960年代の反動として、その後、福音派を含む、伝統的な宗教が復活したが、いまや、この20年間で組織化され、政治的な影響力を増した宗教組織に対する反発が若者を中心に大きな広がりをみせている。特にアメリカの若者たちは、「宗教心をもつことがたんに保守政治を支持することを意味するのなら、宗教にはかかわらない」と考えている。宗教右派の台頭と宗教の政治化を前に、多くの人が宗教そのものに背を向け始めている。共和党指導者にとって頭が痛いのは、支持層の一部が強く支持する政治と宗教の融合というテーマに対して、一般有権者がますます嫌悪感を示し始めていることだ。

  • 漂流するアメリカ政治
    ―― 共和党穏健派の衰退と党派対立

    ライハン・サレーム

    Subscribers Only 公開論文

    「ドグマ的、イデオロギー的な政党は、国の政治的・社会的な基本構造を破壊する恐れがある・・・イデオロギーに凝り固まった政策を掲げる政党は政府を行き詰らせて危機に陥れる」。右寄りへシフトした共和党を嘆いて、ミット・ロムニーの父で共和党穏健派だったジョージ・ロムニーはかつてこう警告した。そのドクマ的な保守主義を、自分の息子が受け入れ、アメリカ政治が極端な党派対立に陥っている現状を父ロムニーはどう思うだろうか。かつては豊かな発想力をもつ共和党穏健派が、共和党と民主党の妥協点を見出す役割を果たしてきた。だが、穏健派の消失とともに、その機能を現在の共和党は失っている。穏健派を失った共和党は「筋肉質の体はあっても頭を持たない」存在と化した。共和党保守政権は、有権者の費用負担を「小さな政府」レベルに抑える一方で、「大きな政府」を運営し、結局、財政破綻を招き入れてしまった。

  • 米ポピュリズムの歴史と今日的意味合い
    ―― ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交

    ウォルター・ラッセル・ミード

    Subscribers Only 公開論文

    ポピュリストの政治的エネルギーが高まる一方で、主流派メディア、外交エスタブリッシュメントに始まり、金融企業、一般企業の経営陣、そして政府にいたるまでの確立されたアメリカの組織への信頼が失墜しつつある。現在のポピュリスト運動の代名詞であるティーパーティー運動は、彼らが「憶測を間違え、腐敗している」とみなす各分野の専門家に対する反乱とみなせる。しかも、2010年3月にアメリカで実施された世論調査では、回答者の37%がティーパーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感を示していることを意味する。アメリカの政策決定者、そして外国政府の高官たちは、アメリカ政治における主要な勢力であるポピュリストを十分に理解せずして、もはや米外交に関する適切な判断を下すことができなくなっていることを認識する必要がある。

  • アシュトン・カーター米国防長官との対話
    ―― 中国、ロシア、イラクとアメリカの利益

    アシュトン・カーター

    雑誌掲載論文

    多くの中国人は経済成長に道を開いた国際的自由貿易システムを今後もうまく利用していきたいと考えているが、一方で、彼らの言う「屈辱の世紀」を経て、いまや地域的支配を確立するときだと考える人々もいる。後者の考えについては、われわれの地域的プレゼンス、アメリカの同盟関係とパートナーシップを通じて牽制していかなければならない。・・・ヨーロッパ諸国政府は、東ヨーロッパ諸国とロシアの間で何が起きているか、ヨーロッパ南部、そして中東で何が起きているかを非常に心配していることだ。ヨーロッパ人は非常に深刻な安全保障環境へと足を踏み入れていること、それに備える必要があることを理解し始めている。・・・イスラム国を粉砕できると確信しているが、われわれの戦略目的はイスラム国が再生できないように、完全に打倒することだ。相手の戦力を粉砕した後、それまで彼らが制圧してきた地域を管理していく力をもつ勢力が必要になる。・・・(聞き手―― ジョナサン・テッパーマン、フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

  • 幻のドイツパワー ―― 歴史的制約という責任放棄

    パーク・ニコルソン

    雑誌掲載論文

    世界の未来を考案するレースで先頭に立っているのはドイツだと言われる。この国をG7でナンバー2の大国と位置付ける専門家もいれば、その「ソフトパワー」がアメリカのそれに匹敵すると示唆する報告もある。だが、そうしたパワーをドイツは本当にもっているだろうか。メルケルはロシアのクリミア編入を「犯罪的行為」と呼び、中国の周辺海域での行動を批判しつつも、ロシアと中国の関係を維持することを望んでいる。ドイツがヨーロッパでもっとも大きな影響力をもつ国だとしても、最終的に、ギリシャやイギリスの欧州連合(EU)離脱を阻止する力はないかもしれない。ドイツ人は自国にできることには限りがあると考えている。だがそれは、責任を回避し、国際ルールを無視した行為に対抗する対応責任と行動をとらないことの言い訳にすぎない。ドイツは過大評価に甘んじるのではなく、そのパワーをもっと前向きに行使する方法について考えるべきだろう。

  • 人道支援コミュニティに対する告発
    ―― 何が進化を阻んでいるのか

    マイケル・バーネット他

    雑誌掲載論文

    いまや「人道支援組織はむしろ問題を作り出し、金目当ての悪徳弁護士と大差ない」とみなされることもある。実際、人道危機の被災者たちは、切実に必要としている資源が無為に浪費されるのを目の当たりにし、援助機関と現地の民衆の間で真の友情が育まれることはほとんどない。国連は改革を試みてきたが、支援を求める人々が必要とするものと援助機関が提供するものがうまくマッチしないという根本問題はなくなっていない。さまざまな構造的障害ゆえに、相手の命を救うために不可欠な被害者との信頼とつながりが損なわれている。問題の多くは、「人道支援クラブ」、つまり、国連システムの中枢を構成する国家、ドナー諸国、専門機関、非政府組織から成るヒエラルヒー型ネットワークが、資源とアジェンダを独占し、その排他性を維持しようとすることによって作り出されている。このままでは、クラブは歴史的遺物と化していく。問題は、不幸にも、そうした結末によってシステムが改善していくとは限らないことだ・・・

  • 異常気象と感染症と現代の魔女狩り
    ―― なくならない魔術信仰と魔女狩り

    エヴァン・フレーサー他

    雑誌掲載論文

    根深い格差、政治の不安定化、そして異常気象による農業生産の乱れが重なり合うことで、近代世界が魔女狩りの時代へと引きずり戻されている。異常気象やエボラ出血熱の流行など、管理も説明もできない出来事を前にした人々は、特定の人間をスケープゴートにすることを安易な解決策とさしている。魔女狩りは300年前の歴史上の問題ではなく、今も続いている。近年のインド、ネパール、南アフリカでは、魔術を使ったと言いがかりをつけられ暴力の対象にされ、殺害される女性たちが増えている。子供たちもその余波に晒されている。コンゴの首都、キンシャサのストリートチルドレンの多くは「悪魔に取り憑かれた」とみなされ、捨てられた子供たちだ。宗教に関係なく、世界では(いまも)驚くほど多くの魔女狩りが行われている。

中東アップデート

  • エルドアンの大胆なギャンブル
    ―― 二正面作戦の政治的余波を考える

    ジャシュア・ウォーカー他

    雑誌掲載論文

    トルコ政府は、イスラム国の空爆に踏み切っただけでなく、イラクにいるPKK勢力を空爆する二正面作戦を展開している。さらにアメリカとの情報共有の拡大に応じ、米軍の国内基地の使用を認める一方で、シリア側国境地帯に安全地帯の設定を求めている。複雑なのは、米軍がイラクのクルド民兵組織「ペシュメルガ」、シリアのクルド民兵組織「人民防衛隊(YPG)」と協力関係にあり、しかも、YPGはトルコが空爆対象にしているPKKの関連勢力であることだ。トルコのPKK空爆によって、トルコ国内のクルド人勢力とトルコ政府との関係も微妙になる。しかも、YPGがイスラム国に対して軍事的に勝利を収め、国内ではPKK系の政党が最近の選挙で大きな躍進を遂げている。エルドアンの大胆な賭けが、国際的、そして国内政治面でどのような帰結を伴うのか、予断を許さない状況にある。

  • 地域的宗派プレイヤーに変貌したヒズボラ
    ―― 宗派間紛争という実存的戦い

    マシュー・レビット

    雑誌掲載論文

    すでにヒズボラは国内政治に専念するレバノンの政党から、イランのために中東全域で活動する地域的な宗派プレイヤーへと変貌している。ヒズボラの敵はもはやイスラエルだけではない。その活動は中東全域へと拡大し、シリアだけでなく、イラク、イエメンにも戦士や高官たちを送り込んでいる。当初は地域紛争への関与を躊躇ったヒズボラも、今ではシリアにおける戦いを、レバント地域の未来とヒズボラの地位を左右する実存的紛争とみなしている。散発的な紛争なら交渉でどうにかなるかもしれないが、宗派紛争は交渉では解決できない。しかも、ヒズボラは宗教指導者による信徒たちの指導・後見(Velayat-e-faqih)というイランのドクトリンを信奉している。・・・

  • ヨルダンとシリア紛争
    ―― 安全地帯設定構想の大きなリスク

    アラ・アルラバー

    雑誌掲載論文

    シリア紛争の火の粉を払おうと、ヨルダンは積極策に出ようとしている。領土拡大策を唱える専門家がいるし、国境地帯のシリア領内に安全地帯を設定する構想が政府内で検討されている。しかし、そうした安全保障策は逆にヨルダンをシリア紛争に巻き込んでいくことになりかねない。たしかに(国境地帯のシリア側に)安全地帯・緩衝地帯を作れば、難民の流入圧力を緩和できるかもしれない。しかし、領土を侵害されたシリア軍がヨルダンを攻撃する恐れもあるし、安全地帯はイスラム国、そしてアルカイダ系の征服軍など、過激派組織の格好の攻撃ターゲットにされる。そうなれば、ヨルダンもシリア内戦に実質的に引きずり込まれ、王国の安定は大きく損なわれる。・・・

  • イスラム国のサウジ攻略戦略
    ―― テロと宗派間紛争

    ビラル・Y・サーブ

    Subscribers Only 公開論文

    アルカイダは、2003―2006年にサウド家を倒そうと、テロでサウジ国内を混乱に陥れようとした。これはサウジの近代史におけるもっともせい惨で長期化した紛争だった。そしていまやイスラム国がサウジ国内でテロ攻撃を繰り返している。イスラム国の戦略は、アルカイダのそれ以上に巧妙かつ悪魔的で危険に満ちている。バグダディはサウジのシーア派コミュニティを攻撃して挑発し、その怒りをサウジ政府へと向かわせることで、宗派間戦争の構図を作り出そうとし、すでにサウジのことをイスラム国・ナジュド州と呼んでいる。一方、サウジの新聞とツイッターはシーア派に批判的な発言で溢れかえっている。政府は(反シーア派的な)メディアの主張と宗教指導者の活動をもっと厳格に監視し、抑え込む必要がある。そうしない限り、宗派間紛争が煽られ、サウジ政府とイスラム国の戦いが長期化するのは避けられないだろう。

  • 破綻国家へと向かうイエメン
    ―― イエメンにおけるサウジの挫折

    ファリア・アル・ムスリム

    Subscribers Only 公開論文

    空爆では何も解決しない。国際コミュニティと地域諸国がイエメンを救うためのコミットメントを示さない限り、この国はシリア、リビア、イラクのような混乱、あるいはそれ以上のカオスに陥り、これら3カ国の問題が重なり合う無残な空間と化すかもしれない。イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、・・・サウジの失敗を物語っている。アラブ世界でもっとも豊かな国がアラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。現在の危機は、この数年にわたって地域諸国がイエメンの混乱に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。仮にフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の政治的周辺化、弱体な政府といった紛争の根本要因は残存する。すでに1000人のイエメン人が空爆の犠牲になり、数千人が負傷し、数十万人が難民化している。

  • トルコのサウジ接近と対イラン関係
    ―― トルコの真意、サウジの思惑

    アーロン・ステイン

    Subscribers Only 公開論文

    サウジは、(イランが支援していると言われる)イエメンのシーア派武装集団フーシ派に対する空爆を実施し、サウジと同じスンニ派のトルコは、サウジの空爆を支持すると最近表明した。それでも、トルコがサウジの地域的な野心のために、イランとの関係を犠牲にするとは考えにくい。トルコは中東におけるイランの大きな役割を事実上受け入れ、これに挑戦しようとは考えていない。トルコは、サウジほどイランの核開発プログラムを警戒していないし、イラン同様にクルド人問題を抱え、イランにエネルギー資源を依存している。一方、(ムスリム同胞団の)政治的イスラム主義をめぐるサウジとトルコの対立は解消していない。イエメン空爆に対するトルコのサウジへの歩み寄りは、戦争が続く中東でトルコがとってきたこれまでのバランス戦術の継続とみなすべきで、抜本的な路線変更ではない。

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