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破綻国家へと向かうイエメン
―― イエメンにおけるサウジの挫折

ファリア・アル・ムスリム
カーネギー中東センター客員研究員

The Gulf's Failure in Yemen

Farea Al-Muslimi カーネギー中東センター客員研究員。専門はイエメンと湾岸のアラブ諸国の政治。

2015年6月号 掲載論文

空爆では何も解決しない。国際コミュニティと地域諸国がイエメンを救うためのコミットメントを示さない限り、この国はシリア、リビア、イラクのような混乱、あるいはそれ以上のカオスに陥り、これら3カ国の問題が重なり合う無残な空間と化すかもしれない。イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、・・・サウジの失敗を物語っている。アラブ世界でもっとも豊かな国がアラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。現在の危機は、この数年にわたって地域諸国がイエメンの混乱に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。仮にフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の政治的周辺化、弱体な政府といった紛争の根本要因は残存する。すでに1000人のイエメン人が空爆の犠牲になり、数千人が負傷し、数十万人が難民化している。

  • サウジの挫折
  • 国際社会の外交的関与を

<サウジの挫折>

2015年3月以降、(スンニ派の)サウジを中心とするアラブ連合軍はイエメン空爆を実施している。目的は、シーア派系武装集団フーシ派、そしてその同盟勢力であるシーア派のアリ・アブドラ・サレハ前大統領の支持勢力を粉砕することだ。アラブ連合軍はフーシ派を弱体化させ、(2011年に大統領を退陣してもなお影響力をもつ)サレハの権力基盤を切り崩そうと試みている。だが、これまでのところはっきりしているのは、空爆作戦で多くの民間人が犠牲になっていることだ。少なくとも、1000人のイエメン人が犠牲になり、数千人が負傷し、数十万の市民が難民化している。

仮にサウジが主導するアラブ連合軍が最終的にフーシ派の打倒に成功しても、イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、サウジの失敗を物語っている。実質的にアラブ世界でもっとも豊かな国が、アラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。要するに、現在の危機は地域諸国がこの数年にわたってイエメンの問題に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。・・

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